「なんですって……!? ラゼル達が!?」
ゴールドホーク隊のミデアに帰還してから、コンテナ内での緊急整備を受けていたコアファイター。そのパイロットだったアシェリー・スカイは、
「は、はい……! 奴らの隊長機に苦戦を強いられていて、撃破される寸前だとか……って、中尉!? 何をするつもりですか!?」
「決まってるでしょ、援護に行くのよ! いつまでもここでジッとしているわけには行かないわ!」
ラゼル達の窮地を知るや否や、アシェリーは迷いなく愛機に乗り込もうとしていた。そんな彼女の肉感的な太腿にしがみ付き、整備員は必死に止めようとしている。肉厚たっぷりの太腿に抱き付いた彼の腕に、彼女の温もりが伝わっていた。
「何を馬鹿なこと言ってるんですか、対艦ミサイルもとっくに弾切れなのに! 悔しいのは俺達も同じですけど、相手はこっちのエース3機をたった1機で返り討ちにするような化け物なんですよ!? コアファイターなんて今さら通用するわけが……いだっ!?」
「……だから何よ! ラゼル達が命懸けで戦ってる時に何も出来ないなんて、それこそ耐えられないわ! それに私はねぇっ、そうやって
コクピットに乗り込もうとするアシェリーは、太腿に抱き付いていた整備員を振り解こうとしなやかな美脚を大きく振っていた。そんな彼女を行かせまいと太腿にしがみ付いている整備員は、無我夢中で彼女の巨尻を鷲掴みにしている。
太く逞しい彼の指が105cmの豊満な尻房にむにゅりと沈み込んだ瞬間、羞恥と怒りで頬を染めた彼女のキックが閃き、整備員の顔面に炸裂してしまう。その一撃にたまらず転落してしまった整備員を置き去りにして、アシェリーは素早くコクピットに乗り込んでしまった。
「ハ、ハッチを開けるなァーッ! 中尉を行かせたらダメだーッ!」
それでも整備員はアシェリーの出撃を阻止するべく、転倒したまま同僚の仲間達に声を掛けている。しかしそんな彼の声を遮るように、アシェリー機はその場でバルカン砲を連射していた。その発砲によって、コンテナのハッチが破壊されてしまう。
『死にたくなかったら道を開けなさいッ!』
「ひょえぇえぇッ!?」
「め、めちゃくちゃだこの人ーッ!」
整備員達は射撃に巻き込まれまいと頭を抱えて地面に伏せている。その隙にエンジンを噴かせたアシェリーは、コアファイターをその場で緊急発進させていた。そんな彼女が飛び立って行く姿を、整備員達は唖然とした面持ちで見送っている。
『待っててラゼル、皆……今行くわ!』
一方。コクピット内で鋭く目を細めているアシェリーは、毅然とした面持ちでコアファイターの操縦桿を握っていた。豊満な巨乳をぶるんっと揺らしている彼女は、真っ直ぐな眼差しで前だけを見据えている。
今度は復讐のためではなく、仲間達を救うために。彼女は愛機をさらに加速させ、夜明けが近づく密林の上空を駆け抜けて行く――。
◇
かつては東南アジア戦線でも猛威を振るっていた「森夜叉」。その戦鬼達を率いて来た「漆黒の戦闘鬼」ことルーク・アルフィスのザクは、長期戦に向かない機体でありながら規格外のタフネスを見せ付けていた。
ゴールドホーク隊、プラチナファルコン隊、そしてアイアングース隊。この3部隊の隊長達と
『まだ……このザクは、斃れないのかッ……!?』
『いい加減……こっちは限界だってぇのによッ……!』
対して、プラチナファルコン隊のフランツ機とアイアングース隊のJ.J.機は、すでに限界を迎えていた。すでに大破している彼らのガンキャノンIIは、仰向けに倒れたまま全身から黒煙を漂わせており、これ以上の戦闘が不可能であることを告げている。
自分達が限界を超えるほど身を削っても、片腕を破壊することが精一杯だった。ノイズが走るモニターの向こう側に映し出されたその「光景」に、2人は悔しげな表情を浮かべていた。飛び散る部品に切り裂かれた彼らの額からは、鮮血が滴り落ちている。
『……だとしても。俺達は絶対に……お前を逃すわけには行かないッ……!』
その状況でもなお、ゴールドホーク隊のラゼル機は辛うじて継戦能力を維持しているようだった。彼のジムスナイパーIIからも黒煙と火花が飛び散っているのだが、それでも何とか片膝で立った姿勢を維持している。
しかしそれはもはや、1機のMSとして満足に戦える状態とは呼べない。まともに動き回ることも叶わないラゼル機は、今や死を待つ鉄の棺桶と化していた。それでも彼の愛機は軋む腕でブルパップマシンガンを構え、引き金を引こうとしている。
『……見事なものだ』
『なに……?』
『腕前だけの話ではない。勝ち目が薄くとも撤退よりも相討ちを望み、死の一瞬まで前進を試みる。お前達の戦士としての覚悟、しかと見届けた』
そんなラゼル達の信念を戦いの中で感じ取っていたルーク機は、彼らに賞賛の言葉を送りつつも――ラゼル機の右腕をザクマシンガンで容赦なく撃ち抜いて行く。ブルパップマシンガンを握っていたマニピュレーターを破壊され、ラゼル機は今度こそ戦う術を失ってしまった。
『ぐぁッ……!』
『貴様達のような真の戦士と巡り逢えたのだから、この「殿」を引き受けた甲斐もあったというものよ。連邦の兵など、魂なき雑兵ばかりと侮っていたが……その評は改めねばなるまい』
『ぐ、う……!』
『感謝するぞ、連邦のエース。貴様達との経験を糧に……我ら「森夜叉」は、さらに強くなるッ!』
ラゼル達の戦い振りに賛辞を送るルーク機は、好敵手と認めた相手にとどめを刺すべく、ザクマシンガンの銃口をラゼル機のコクピットに向ける。もはや抗う術などない、絶体絶命の窮地であった。
『ラゼルーッ!』
『なにッ……!? あの戦闘機、まだッ!?』
だが、その時。夜明け前の空から、1機の戦闘機が飛来する。それは紛れもなく、アシェリー機のコアファイターだった。ブースターユニットを破壊されてもなお向かって来た彼女の参戦に、ラゼル達のみならずルークも瞠目する。
『……ッ!? 来るなアシェリー、戻れ! コアファイターの武器じゃコイツは……!』
『舐めないでラゼルッ! 私の機体だって……
いくら凄腕の
そんなラゼルの心配をよそに、アシェリー機は猛烈な速度で漆黒のザクに肉薄する。彼女の技量に合わせて推力を強化されている
『その勇気は買うが……些か蛮勇が過ぎたなァッ!』
『勝った気になるのは……まだ早いわよッ!』
それでもルーク機のザクマシンガンの照準は、アシェリー機を確実に捉えようとしている。ルークの並外れた動体視力は、他のパイロットではまともに視認することさえ叶わないアシェリー機の飛行速度にも完璧に対応していた。
(……ッ! この戦闘機……疾いッ!)
しかし、ルーク自身の視力がアシェリー機を捉えられても、乗機のザクがその操縦に付いて来られないのでは意味が無い。ザクマシンガンの銃口がアシェリー機を捕捉するよりも僅かに早く、コアファイターの機首部に搭載された2連装30mmバルカン砲が火を噴いた。
『うぐぉッ……!? ちぃいッ、たかがメインカメラをやられた程度でぇえッ!』
次の瞬間、ルーク機の頭上を駆け抜けて行くアシェリー機が、すれ違いざまにザクの頭部を破壊してしまう。しかしルーク機はメインカメラを破壊されたというのに、己の直感だけを頼りにアシェリー機を撃ち落とそうとしていた。
コアファイターの軌道を読んでいたルーク機は、頭部を破壊された直後に勢いよく振り返り、アシェリー機が向かうであろう空中に向かってザクマシンガンを発砲したのである。その読み通り、アシェリー機はルーク機による対空射撃の方向に自ら飛び込んでしまった。
『きゃあぁあッ!?』
『見事な意地だったが……ここまでだ、連邦の戦闘機乗りッ!』
自分の動きを読んでいたかのように背後から飛んで来た実弾の雨。その猛攻を浴びせられたアシェリー機は、咄嗟にバレルロールで対空射撃をかわそうとしたのだが――意表を突かれたためか僅かに間に合わず、片翼を撃ち抜かれてしまう。
乗機の制御を大きく狂わされたアシェリーはコクピットの中で激しく肢体を揺さぶられ、豊かな巨乳を上下左右にばるるんっと弾ませていた。そんな彼女にとどめを刺そうと、ルーク機はザクマシンガンの銃口を空に向けようとする。
『がはぁあッ!?』
『……アシェリーがくれた、この一瞬でぇえぇッ!』
だが、そこへ両腕を失ったラゼル機が飛び込んで来た。ルーク機のコクピット目掛けて、ラゼル機のジムスナイパーIIが渾身の頭突きを仕掛けたのである。
武装を失ってもなお闘志を絶やさないラゼルの意地に虚を突かれたルーク機は、そのタックルをまともに喰らってしまう。あまりの衝撃に、ザクの胸部装甲が大きくひしゃげていた。
『ま……だ、だぁああッ! 俺は、俺はまだ堕ちぃいぃんッ!』
『ぐぉああッ……!』
しかし、まだルーク機のコクピットは潰されていない。押し倒される前にスラスターを噴かして踏み止まったザクは、残された片腕での肘鉄でラゼル機を叩き落としてしまう。うつ伏せに倒れ伏したラゼル機は、今度こそ戦闘不能に陥っていた。
『ラゼルッ!』
『ラゼル、立てぇッ! 奴が来るぞぉッ!』
『ぐぅ、うぅッ……!』
このままでは確実にとどめを刺されてしまう。戦友の窮地を前にしたフランツとJ.J.は懸命に声を荒げるが、両腕を失ったラゼル機はもはや自力で立ち上がることも出来ない。
『もう遅いッ! 賞賛に値する勇姿であったが……貴様の命運もここまでだッ!』
『く、そぉッ……! 機体が……言うことをッ!』
『終わりだぁあぁあッ!』
一方、ラゼルの鬼気迫る闘志を前にしたルークも焦燥を露わにしていた。羅刹の如きこの男だけは、確実にこの場で抹殺しておかねばならない。この男は確実に、ジオンの同胞達を脅かす絶大な脅威となる。
そんな焦りを剥き出しにしたルーク機は、倒れ伏したラゼル機にザクマシンガンの銃口を向けていた。この男を生かしておくのはあまりに危険だという本能が、ルークに引き金を引かせようとしている。
『大佐ァァッ! そいつはもういいッ! 後ろだ避けろッ、避けろぉおーッ!』
『なにィッ……!?』
しかし、次の瞬間。突如、友軍機からの通信がルーク機に飛び込んで来る。それは、河川の中を潜航してこの近くまで来ていた、リュウジ機のプロトタイプケンプファーだった。
本章も次回でようやく最終話。間も無く完結となりますが、最後まで見届けて頂ければ幸いですm(_ _)m