-ニコラ・バルヒェット-
26歳。サイド3出身。「五指」の4位とされるエースパイロットの1人であり、部下達を率いてジャブローへの降下を試みていた。紫紺を基調とする専用のザクIIに搭乗する。階級は少佐。
※原案はクレーエ先生。
-ラヴィエル・アリアドゥネス-
15歳。オスロ出身。10代半ばで異例の出世を果たした北欧系の天才美少女であり、経験は少ないが優れた知識と技術を有している。戦時中はジムに搭乗しており、現在は鹵獲機のゲルググに搭乗している。階級は少尉。
※原案は妄想のKioku先生。
――宇宙世紀0079、11月30日。多くの兵士達に数奇な運命を齎した、連邦軍本部「ジャブロー」を戦場とする攻防戦のさなか。
「3機、撃破。……容易いですね」
水中からの潜入を試みるジオン軍の水陸両用MSを相手に、当時のダイト・アロン准尉は愛機の水中型ガンダムを巧みに操り、優位に戦闘を進めていた。
ズゴックであろうとアッガイであろうと、ゴッグであろうとなんともない。そう、言わんばかりに。
(……しかし気掛かりなのは、本部の状況だ。ウッディ大尉ともペドロ少佐とも連絡が取れないとは……一体、地下で何が起きている?)
だが、土色に染まる大河を潜航するダイトの表情は優れない。本部に何らかの異変が起きていることは明らかである一方、その真相を確かめる術も暇もないことに言いようのない不安を覚えていたのだ。
それに加えて、ペドロ・ガルシア・ペレス少佐率いる陸戦中隊が引き受けているはずの防衛線が、心なしか手薄になっているような気がしてならない。自分が撃破してきたジオンのMS部隊も、その
あの陸戦中隊は、実力至上主義のペドロが精鋭中の精鋭を掻き集めて編成した、ジャブロー屈指のエースの集まり。そう簡単に突破されるような部隊ではないはず。
だが現実として、彼らが担っていた戦域に攻撃が集中し始めている。あの陸戦中隊が戦力の大部分を割り当ててでも、対処しなければならないような「何か」に侵入されたというのであれば、連邦軍本部未曾有の危機と言っても過言ではない。
「……!」
ダイトが胸の内に抱えていたその懸念は、水上に上がり密林地帯の戦況を目の当たりにした瞬間、確信に変わってしまった。
明らかに、迎撃に当たっているMSの数が少なくなっている。指揮系統が混乱している気配はないものの、比較的手薄な地域を狙ってくるジオンの攻勢に、押され始めているのは明らかであった。
中隊の主力を担うエースパイロット達の機体は見えない。やはり、地下では何かが起きている。
そして今は、その実態を確かめている暇もない。なぜなら敵は、手薄になったここを狙い続けているのだから。
「……ええいッ!」
ガウから次々と降下してくるザクの大部隊に向け、偏向ビームライフルを連射するダイト機だったが。何機落としても敵方の勢いは衰えず、碌に数を減らせないまま地上への到達を許してしまう。
『救援に来ました、私達も戦線に加わりますッ!』
『陸戦中隊は何をチンタラしてやがんだッ!? 地下の本部はどうなっていやがるッ!』
『文句を言っている場合か! 御託を並べる暇があるなら、さっさと奴らを迎え撃てッ!』
『んなこたぁ分かってんですよォッ!』
迎撃に駆け付けて来た他部隊のジムも、続々と防衛に加わるが――それでもやはり、押し負けていた。ビームスプレーガンやブルパップマシンガンによる一斉射撃を以てしても、全てのザクを撃ち抜くには至らない。
ラファエル・フロレンティーノ少尉。
ミヤコ・ウシザネ伍長。
デニス・ヴェランデル軍曹。
ジャン・パール・ベアルン上級曹長。
セツカ・カザマ特務少尉。
クライオゼニア・シロガネ特務曹長。
チャン・ズーロン曹長。
イ・ホジュン曹長。
リン・シャオ曹長。
フィリップ・D・ダイゴ少尉。
ヨシト・シンジョウ准尉。
マコト・クズミ少尉。
カタリナ・キャスケット少尉。
彼らもその一員として、敢然とザクの群れを迎え撃っているのだが――僅かにまだ、こちらの勢いが足りていなかった。
『我々の邪魔を……するなッ!』
『あうっ!?』
『ラヴィエル少尉ッ!』
『なんだあのザク……! は、速えッ!』
続々と地上に降下し、ザクマシンガンを連射しながら前進してくる侵入者の群れ。ラファエル達を翻弄しつつ、その先陣を切る「五指」の4位――ニコラ・バルヒェット少佐のザクIIは、ラヴィエル・アリアドゥネス少尉のジムに容赦なく襲い掛かっていた。
『これ以上連邦の戦力を、ガリウスに集中させるわけには行かんッ! ……
『ひ……いっ!?』
『私達と貴様らとでは、覚悟が違う! 気骨が違う! 闘志が違うッ! 1機たりとも、ガリウスのところへ行かせはせんッ! 行かせはせんぞぉッ!』
見る者に不気味な印象を与える、毒々しい紫紺の装甲を纏うニコラ専用のザクは、実戦経験が浅いラヴィエルが相手でも慢心することなく、ヒートホークを振るっていた。その攻撃の手はジムの両腕を切り落としても緩む気配はなく、誤射を恐れて迂闊に射撃できない連邦側の混乱に乗じた彼女は、とどめを刺そうと一気に刃を振り上げる。
『きゃあぁああッ!』
「やられる……! ラヴィエル少尉、逃げてくださいッ!」
『これでまずは1機ッ――!?』
もはや、絶体絶命。ラヴィエル自身も、その瞬間を目撃していたダイトも、そう思わずにはいられなかった。
が、その時。
『行かせる……かぁあぁあぁッ!』
『なにッ!? あのMS、まだ動ッ――!』
「――!」
ラヴィエル機の脇を背後から抜き去るように飛ぶ、240mmキャノン砲の砲弾が――彼女を狙っていたニコラ機の頭部を、瞬く間に吹き飛ばしてしまったのである。首を失った紫紺のザクは、パイロットが気絶したせいなのか、そのまま動かなくなってしまった。
たった一撃で「五指」の4位を撃破してみせた、その砲撃は。地下への入り口を背に片膝を着いていた、満身創痍のガンキャノンによるものであった。
「……今ですッ! 共に奴らを押し返しましょうッ!」
『おぉッ!』
『そうこなくっちゃッ!』
この攻撃によって
しかしその逆襲に、きっかけとなったガンキャノンは加わっていない。
今まで激しい攻撃に晒されて来た中で振り絞った、最後の一撃だったのか。砲身も機体も、ほとんど原型を留めていなかった。その残骸同然の鉄塊を庇うように立つデニス機も、「もう死んでるだろアレ」と苦々しい呟きを漏らしている。
自分達がここへ駆け付けてくるまでの、長い間。彼は一体、どれだけ耐え忍び、どんな思いでここを死守していたのか。
察するに余りあるその惨状に、ダイトは憂いを帯びた表情を浮かべながらも。今はただ撃たねばと、ジオン軍に向けて引き金を引く。
その激戦はペドロ率いる陸戦中隊が戻って来てからも、しばらく続き――ようやく周囲からジオンの反応が消えた瞬間。ダイトとラヴィエルは一目散に自機から飛び降り、ガンキャノンのコクピットに駆け付けていた。
ひしゃげて外れかかっていたハッチをこじ開け、コクピットへと辿り着いた彼らの眼前には。傷だらけの若者が、血みどろの操縦桿を握っている姿が映されていた。
「ご無事ですか!? 今救護班を呼びます、あと少しの辛抱です!」
「……耐え、しか……」
「喋らないでください……! 我々が必ず助けますから!」
譫言のように何かを呟く姿に、まだ生きているのだと僅かに安心を覚えながら。一刻も早く救助しなければと、ダイトはラヴィエルに応急手当てを任せつつ、焦燥に駆られながらコクピットを後にする。
「……僕が、耐えなきゃ。耐え忍ばなきゃ。僕には、耐えるくらいしか、出来ないんだから」
「……っ!」
刹那。気を失う寸前にパイロットが発した、その譫言に。振り返ったダイトは万感の思いを込めた眼差しで、気絶したパイロットの貌を見遣っていた。
「……あなたは、分かっていませんね。たったそれだけが、どれほど尊いか」
アースノイドの名家に仕える執事の務めとして、次代を担う令嬢を護るべく連邦軍に志願してから、今日に至るまで。これほどの理想に、巡り合えたことはない。
どんなに打ちのめされても、傷付いても。守るべきもののために、血反吐を吐いてでも立ち上がる。
自分が思い描く「騎士」の理想像そのものとも言うべき、そんな彼の姿に――ダイトは言葉にならない感銘を受け、そう呟いていた。
――そして、これが。のちに無二の親友となる、デューク・ラングレイ准尉との出逢いになるのだった。
◇
その一方で。ラヴィエル・アリアドゥネスという
幼い頃から天才と称えられ、15歳という異例の若さで少尉に任官された彼女は、その美貌もあって周囲からは絶えず持て囃されてきた。本人もその立場を驕ることなく、連邦の士官として要求される知識と技術を磨き続けてきた。
そんな彼女でさえも、初陣においては終始防戦一方であり。そこで初めて、自分の積み上げてきたものが通用しないという「挫折」に直面したのである。
それでも彼女には、めげない心の強さがあった。生き残って幸せを掴むという、真の勝利に邁進できるだけの気概はあった。
ただ、そのためのノウハウまでは付いてこれなかったのである。彼女の浅い経験値では、「五指」の4位たるニコラ・バルヒェットには遠く及ばなかったのだ。
優秀だろうと天才だろうと、その芽が育つ前に摘まれては無に等しい。そんな現実に打ち勝てるほどの力を得る間もなく、彼女は死の淵に立たされたのだ。
その彼女を間一髪で救ったのが――彼女ほどの技術もなければ、天才でもない上に。彼女よりも遥かに被弾していた、デューク・ラングレイだったのである。
あれほど傷付き、死に瀕していながら。決して、突出した才能に恵まれているわけでもないのに。生還という勝利に、誰よりも近いところにいる。
それが才能の壁さえも乗り越える、弛まぬ努力の産物であると彼女が知るのは、もうしばらく先のことになるが――この時すでに、彼女の心は魅入られていたのだろう。
自分には出来ない戦い方で、自分よりも確実な勝利を引き寄せた彼の――優しげな容姿に反した、力強さに。
◇
ちなみに。この翌年の宇宙世紀0080、11月下旬頃。
ダイトは久々に執事としての礼服に袖を通し、ロンドンにある当主の屋敷へと帰って来たのだが。出迎えに駆け付けた令嬢が、彼に誘われ同伴していたデュークに一目惚れしてしまうという事態が発生。
さらにその噂を耳にしたセツカが、面白おかしくラヴィエルに告げ口したことにより、デュークはパリ基地でもロンドンでも修羅場に叩き込まれる羽目になった。
しかも、ジャブローからパリ基地へと移送されてきたニコラ・バルヒェットが、再会早々にデュークの頬へと口付けしたことでさらに事態はヒートアップ。「全てを捧げる相手は、自分を倒した男と決めていてな」と妖艶に笑う彼女に、ラヴィエルも令嬢も嫉妬の爆炎を滾らせることになるのだった。
そして、挙げ句の果てには。デュークの元同期だというディーネ・エイム中尉までもが、セツカからその話を聞いてしまったことで、1人の男を取り巻く修羅場はより苛烈さを増してしまい。キャリフォルニアベースから飛んできた彼女が、「どういうことよ!」と愛する男に突撃する事案が発生。
やがて超肉食系な4人の美女に完全包囲されたデュークは、ジャブローでの死闘以来となるプレッシャーに戦慄を覚えたのだという。
なお、散々に場を引っ掻き回していたセツカ本人は「ラヴィエル少尉の背中を押したくて」などと供述しており、現在もダイトによる厳しい追及が行われているとかいないとか……。
今回は第1部の内容に当たる、リュータ含む陸戦中隊とグフタンクの戦いの「裏側」にスポットを当てつつ、3.5部組の戦時中の様子を描くお話となりました(о´∀`о)
ダイトはこの頃から水中型ガンダムに乗っていましたが、それ以外の乗機はガンキャノンやジムだったという設定になっております。デュークはこの戦いでガンキャノンを壊された後に、重装型へと乗り換えたことになりますね。やはり主役機乗り換えは本作の伝統ですしおすし(*´꒳`*)
孤軍奮闘していた主人公の元に仲間達が駆け付けてくる、という本作のお約束に沿ったお話でもありますが、駆け付ける側の視点から主人公の姿を描くという切り口を試みた、実験的なエピソードでもありました。また何か別の募集企画を思い付いた時は、どんどこ試していきたいところでございますなー(*´ω`*)
ではではっ!٩( 'ω' )و
【挿絵表示】
Ps
重装型タイプDの方はキット化されていないようなので、ガンキャノンの旧キットでデューク機再現を目指すの巻ぃー_(:3」z)_