機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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第8話 大渦の人魚 -レーナ・タイカ-

 キャリフォルニアベースでの戦いに端を発する、因縁の一騎打ち。その軍配は、カリュブス機に上がっていた。

 

 ――だが、それはあくまで「一騎打ち」の話。これはそんな崇高な果たし合いなどではなく、勝った者だけが正しいとされる泥沼の殺し合いなのだ。

 

『あんたは良くやったよ、ギー坊! 後は任せてちょうだいッ!』

『……!? レ、レーナ大尉……!』

 

 ギーア機にとどめを刺そうと拳を振り上げるカリュブス機。その一撃を阻まんと、水中用Gファイターが偏向ビームキャノンを撃ち込んできたのである。

 

『これ以上、ギー坊に手出しはさせない……! この子を死なせたりなんかしたら、ローズの奴に末代までどやされちゃうからねぇッ!』

『俺達の戦いにいけしゃあしゃあと……水差してくれてんじゃあねぇぞ、このアマァッ!』

 

 掲げられていた拳を吹き飛ばされ、隻腕となったカリュブス機は咄嗟にギーア機からハープーンガンを奪い取り、レーナ機へと狙いを定める。

 

『こいつッ……!?』

『これでも昔は、ちょいと名の売れたパイロットだったものでねっ! そんな甘い狙いで私を仕留めようなんて、10年早いってのよッ!』

 

 だが、彼女の機動力は「四海竜」最強の男すら瞠目するほどの速さであり。カリュブスは1発も撃てないまま、両脚をビームで焼き切られてしまう。

 白い長髪を振り乱し、ノーマルスーツに入り切らない特大の爆乳を弾ませながら。レーナは藍色の眼を細め、操縦桿を握り締めていた。その大胆かつ繊細な操縦は、緩急自在なGファイターの素早さに現れている。

 

『……気に食わねぇなァ、あんたはよぉッ!』

『あうッ!? こ、こいつ大したタマじゃないかッ!』

 

 それでも、こんな相手にだけは負けられないという執念が為せる技なのか。カリュブス機は遭遇から僅か数秒でレーナ機の移動速度を計測し、その「先」に向けて銛を発射するのだった。

 短時間で相手の性能を看破しての偏差射撃。それをやってのけたカリュブス機の一撃により、レーナ機の片翼が吹き飛ばされてしまう。

 

 すると、次の瞬間。

 

『……おぉおおッ!』

『な……にィッ!?』

 

 隊長(シャンデルローズ)の親友であり、実の息子のように甲斐甲斐しく接してくれる憧れの女性。そんなレーナの窮地に奮起したギーア機が、最後の力を振り絞っていた。

 

『でやぁあぁあッ!』

 

 カリュブス機に奪われたハープーンガンを掴み、力任せに銛を引き抜いたギーア機は、一気にその切っ先をザクマリンタイプのコクピットへと突き刺していく。

 海の怪物を倒す、正義の聖剣。カリュブス自身が例えた、その言葉の如く。

 

『……! おぉおぉおおッ!』

 

 咄嗟に意図に気付いたカリュブス機も、ギーア機を永遠に黙らせるべく、コクピット目掛けて最後の鉄拳を振るっていた。

 

『カリュブスゥゥウゥッ!』

『ギーアァアァアァアッ!』

 

 やがて。互いの絶叫がこの海中に轟き、両者の一撃が炸裂した。

 

 かに、見えたのだが。

 

『ギ、ギー坊ッ……!』

 

 ジムスループのコクピットに触れる寸前で、止まった拳。蘇芳色の頭部から消え去った、一つ目(モノアイ)の輝き。

 その光景が、答えであった。それを目の当たりにしたレーナが息を飲んだ瞬間、先に力尽きたザクマリンタイプが、重力に引かれるように深海へと没していく。

 

(……本当、立派になったもんだよなァ)

 

 その中で。愛機と共に沈み行くカリュブスは、先に逝った仲間達との再会を待ち侘びながらも――未熟な新兵だった男が見せた執念の一撃を、独り思い返していた。

 彼に討たれて終わる人生。それもなかなか悪くないと、ほくそ笑みながら。

 

(……よぉ)

 

 ふと、彼の眼に見覚えのある物体が留まる。それはかつてこの海に沈んだ、最強の戦艦の「象徴」とも言える残骸の一部であった。

 菊の紋章。この時代においてもなお、微かにその面影を残している歴史の一欠片が、カリュブスの魂を出迎えているのだ。

 

(あんたも大変だったよなぁ。俺もちょっと、疲れちまった)

 

 同胞の未来を守るため、その礎となり散る道を選んだ。何もかも違うようで、どこか似ているような気もする歴史の一端。

 その残滓に手を伸ばし、カリュブス・トゥーケスは永遠に眠る。かつてはこの地球の民だった、「人間」の1人として。

 

(そろそろ……眠ろうぜ。皆と、一緒にさ)

 

 ――4月7日、14時23分。戦艦大和が沈んだとされる、この時刻。

 「四海竜」の全滅を以て、コバルトキャリバー隊を筆頭とする掃討作戦は、一応の決着を迎えたのだった。

 

 この海域に居る部隊にはもう、ユーコンを追えるほどの余力はない。だが、沖縄に潜むジオンの残党を一網打尽に出来る包囲網は、すでに完成しつつあるのだ。

 「四海竜」が命を賭して仲間達を逃した先にも、安住の地はないのである。もはや、連邦海軍の完全勝利は決定的であった。

 

『……さぁ、行くわよギー坊。あんたには、帰りを待ってる人達がたくさん居るんだからね』

『……えぇ、分かってますよ。レーナ大尉』

 

 その「結末」を象徴する、「四海竜」の死。

 それを見届けながらも力尽きてしまったジムスループに、機体後部から射出されたワイヤーを巻き付けると。ダークレッドの水中用Gファイターは、ゆっくりとギーア機を引き上げて海上へと導いて行く。

 

 歓喜の笑みを浮かべ、手を差し伸べている仲間達の元へと。

 




 ついにカリュブスをはじめとする「四海竜」との死闘にも決着が付きました! 次回こそやっとこ最終話でございます。ふー長かったーε-(´∀`; )
 ラストまでどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و


Ps
 コアファイターでアッザムに突っ込んでたシンジ然り、グレネードにぎにぎしながらコクピットにパンチしてたミック然り。外伝主人公は総じて殺意高めになりがち(´ω`)
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