-フロンレシア・ノートン-
14歳。シドニー出身。地球連邦ならぬ「地球帝国」の「皇帝」を自称する名家の令嬢であり、戦いの終わりを純粋に願う心優しい美少女。薄青色を基調としつつ煌びやかな装飾が施されたデザートジムに搭乗する。階級は少佐。
※原案はただのおじさん先生。
-レイン・ウォーミング-
21歳。バトンルージュ出身。連邦兵でありながらジオンに対する憎悪を持たず、犠牲者を少しでも減らしたいと考えている作家志望の青年。デザートジムに搭乗する。階級は伍長。
※原案は凛九郎先生。
第4ナミブ基地こと「デザートキングダム」。その牙城を崩さんと迫り来る連邦軍の先陣には、ペガサス級強襲揚陸艦の姿があった。
かの「木馬」を想起させるその荘厳な外観は、破滅を恐れぬはずの死兵達すら戦慄させている。巨大な白馬の如きその巨影からは、ビッグトレーのものとは比べ物にならない量の弾幕が飛び出していた。
機銃も、メガ粒子砲も、ミサイルも。何もかもが、桁違いだったのである。魂に刻まれた恐怖を振り払い、その白馬を堕とさんと飛び立つザクやドムは皆、羽虫の如く叩き落とされていた。
『……さすがはペガサス級だな、大した弾幕だ。少尉、一旦散るぞ。連中も、俺達のことはよくご存知らしい』
『そのようですね……了解しました。後ほど、「地獄」で落ち合いましょう』
デザートキングダムの死兵達を率いる「双天獅」達にとっても、その弾幕は凄まじい脅威となっていたのである。ブルース・ゲイボルグが搭乗する群青色のザクは、メガ粒子砲による掃射を紙一重でかわしながら、後方に飛び退いていた。
一方、ジョウ・ヒューガの乗機である枯れ色のザクは、ペガサス級の懐に飛び込まんと猛進し続けている。その巨艦のハッチから飛び出して来た1機のデザートジムが、彼の前に立ちはだかったのはその直後だった。
『その枯れ色のボディ! 貴公こそが、この「デザートキングダム」の兵達を率いているという、かの「双天獅」の一角であるとお見受けするッ!』
『……我々のことをご存知とは、光栄だな』
薄青色を基調とするそのボディは煌びやかな装飾で彩られており、通常のデザートジムからは想像も付かない外観となっていた。
スラスターを覆い隠すように纏っているマント状の布には、地球連邦の象徴とは異なるデザインの国旗が描かれている。それはこの機体のパイロットが掲げている、「地球帝国」なる非公式の国家のものであった。
『朕は地球帝国が皇帝、ノートンVIII世! 朕は戦闘を望まぬ、直ちに武装解除せよ! 朕をはじめ、地球帝国は南極条約を厳守する!』
『……噂に聞く、ノートン家のお姫様か。そんな博愛主義が通じる世界ならば、我々もMSに乗る必要などなかったかも知れんな』
このペガサス級が擁している第10独立遊撃部隊「カーマインパンサー」。その一員にして、連邦政府の名家出身でもあるフロンレシア・ノートン少佐は、愛機の中から透き通るような声を張り上げていた。
地球連邦ならぬ「地球帝国」の「皇帝」を自称する彼女は、戦前の頃から平和的な解決を目指して奔走し続けて来た、筋金入りの博愛主義者なのだ。
その可憐な容姿と慈愛に満ちた振る舞いから、市井の人気を一身に集めている彼女は今、地球各地で暴走し続けているジオン残党を説得して回るため、MSパイロットとしてカーマインパンサー隊に加わっているのである。
そんな彼女の存在と名声は、このナミブ砂漠にまで届いていたのだ。そしてそれ故に、ジョウ機は躊躇うことなくヒートホークを構え――瞬く間に、フロンレシア機のコクピットに向けて振り抜いていた。
多くの民に愛される正義の美少女。そんな彼女こそ、汚れ果て堕ちるしかない死兵達がこの世に遺す「爪痕」に相応しい。そんな生贄として選ばれてしまった彼女の愛機は、必死にビームサーベルでヒートホークの一閃を凌いでいた。
『くッ……! や、やはり一筋縄では行かぬか……! だが、だがそれでも朕は……!』
『今さら争いのない世界など、望めるはずがなかろうッ! もし望みがあるとするなら、それは我々のような旧い人間が1人残らず死に絶えた、遥か先の未来だッ!』
先の戦争が生んだ数多の悲劇。その現実を深く知る者ほど、彼女の理想を冷たく嘲笑うものなのだが。開戦当初から一介のジオン兵として、あらゆる惨劇を目の当たりにしてきたジョウは敢えて茶化すことなく、真剣に彼女の想いを否定する。
フロンレシアの思想は少なくとも、この時代に相応しいものではない。いつかは彼女のような指導者が必要となる時代が来るのかも知れないが、その時には自分達のような愚者など1人残らず滅びている。
そんな答えを突きつけるかのように、ジョウ機はフロンレシア機の胸を蹴り付け、転倒させていた。そのまま砂塵に汚れた「皇帝」の機体を撃破するべく、彼は追撃のヒートホークを振り上げる。
『……むッ!』
『少佐、下がってください! 話して分かってくれる人じゃないですよ、この人は!』
その斬撃を中断させたのは、フロンレシア機に続いて降下してきた2機目のデザートジムだった。ビームスプレーガンを連射しながら急速に迫って来る増援の猛攻に、ジョウ機はたまらず後方に飛び退いてしまう。
異様に派手なフロンレシア機の傍らに着地したその2機目は、左肩に黒い羽のエンブレムが描かれている点を除けば、通常機と変わらない外観であったが。側にいる僚機のせいか、余計に「地味」な印象を与えていた。
しかしその印象とは裏腹に、射撃の腕はかなりのものだったらしい。これまで多くの死線を潜り抜けて来たジョウは、ブルースと共にナミブ基地に来てから初めて、「冷や汗」をかいていた。
『レイン! し、しかしのう……!』
『相手の首脳部と話し合えればって、オレも思いますけど……でも、その前に殺されてしまったら、助けられる人も助けられなくなってしまいますッ!』
その伏兵ことレイン・ウォーミング伍長は、フロンレシアを護らんと気丈に声を張り上げている。争いごとを嫌う温和な青年であるからこそ、平和を願う彼女を死なせまいと必死になっているのだ。
『……』
そんなレイン機の様子を、
『……若いな。ノートン家の娘以外にも、そんな綺麗事を抜かせる奴が連邦に居るとは思わなかったぞ』
『オレはこの戦いが終わったら……戦争の悲惨さを伝える本を出すって決めてるんです。もう2度と、誰もこんな思いを味わうことがないように! だから……この戦いを終わらせたいと願っている少佐を、やらせるわけには行かないんだ!』
『ほう……夢を持つのは良いことだ。ならばなおのこと、命があるうちにこの戦いからは手を引くのだな。せっかく終戦まで生き延びたというのに……わざわざこのような場で散ることもあるまいッ!』
えもいわれぬ哀しみさえ滲ませている、ジョウの叫びと共に。ヒートホークを振るう枯れ色のザクが、常軌を逸した疾さでレイン機に迫り来る。
レイン機も咄嗟に飛び退きながらビームスプレーガンを連射しているのだが、ジョウ機はその全弾をかわしながら確実に間合いを詰めていた。
『レインッ!』
青年の身を案じるフロンレシアの声が上がる。それと同時に、接近戦に持ち込まれたレイン機は――ビームスプレーガンを投げ捨てた瞬間。
背部から引き抜いた2本のビームサーベルで、ヒートホークの一閃を真っ向から受け止めていた。
『散るつもりなんて……ありませんッ! オレは生きて、この戦いを終わらせて見せるッ!』
『……ちッ、やはり舐めては掛かれんな。覇気のないことを言っているようでも、その実力はやはり「主力」ということか……!』
ジョウほどの経験値ではないにしろ、レインもまた、先の戦争で多くの地獄を味わって来た古強者の1人なのだ。いくら博愛主義的な台詞を叫ぼうとも、操縦桿を握るその手は、戦士としての生き延び方を鮮明に覚えている。
それを示すかの如く、ビームサーベルの「2刀流」でジョウ機を圧倒するレイン機のデザートジムは、矢継ぎ早に斬撃を繰り出していた。
『おぉおおッ!』
『ぬッ……!』
ジョウ機も負けじと、光刃の隙間を縫うようにヒートホークを振るっているのだが。一瞬の剣戟の中で相手に与えた「擦り傷」の深さでは、レイン機に軍配が上がっているようであった。
フロンレシア機の華美な装飾は、このレイン機の実力を隠すためのカモフラージュなのではないか。そんな思考が脳裏を過ぎるほど、ジョウ機は彼の強さに「虚」を突かれているのである。
(ノートン家の娘を仕留めることなど容易いと思っていたが……これほどの
だが、その状況はあくまでジョウがレインを「舐めていた」からこそ成り立っていたものであり。本気で抹殺しなければならない「強者」と認めた彼を相手に、いつまでも通用するほどのものではないのだ。
『うぐッ!? し、しまった……!』
それを証明するかのように、レイン機の2刀流をヒートホークで受け止めたジョウ機は、軽くいなすように足払いで彼を転倒させてしまう。
『……さらばだ。出来ることなら、お前のような男を殺したくはなかったぞ』
生まれた隙は、僅か一瞬。だがその一瞬は、ジョウ機が背後からレイン機を叩き斬るまでの時間としては、十分過ぎるものであった。
現在、作者の活動報告にて本章に登場する新キャラを募集しております! とうとう本日が募集最終日となりますので、機会があればお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)
Ps
一人称が「朕」のヒロインといえばダイミダラーのリッツを思い出しますなぁ。……え? ダイミダラーがもう7年前? うせやろ?(゚ω゚)