機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第10話からの登場人物-

-ジルバート・ブーガンヴィル-
 31歳。パリ出身。代々続く名門出身の誠実な士官であり、コバルトキャリバー隊に属していたヴィオレッタ・エバーグリーンに想いを寄せている。花を守る犬のパーソナルマークを施した、専用のデザートジムに搭乗する。階級は少佐。
 ※原案は赤犬先生。

-デネエル・オルダス-
 29歳。ゴダルミング出身。鹵獲したダブデを母艦とする特殊部隊の隊長であり、奇襲を得意としているベテランパイロット。特殊部隊仕様としてダークグレーに塗装された、鹵獲機のグフカスタムに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はGF少尉先生。



第10話 鉄色の熱刀 -デネエル・オルダス-

『くッ……!』

『さて。お前の鈍足でこのビームキャノンをかわせるか否か……試してみるか?』

 

 イコ機を捉えているジョウ機は、すでに右肩のビームキャノンの砲口を彼女に向けている。

 両機の間にはかなりの距離があるが、量産型ガンタンクの機動力でもかわしきれるほど遠くもない。このままでは間違いなく、頭部を消し飛ばされたカナタ機の二の舞だ。

 

『……!』

 

 そんな絶体絶命の状況を一変させたのは――ブルパップマシンガンを連射しながら突撃して来た、1機のデザートジムだった。

 その掃射をかわすために砲撃を中断したゲルググキャノンは、スラスターを噴かして後方に飛び退いて行く。

 

 RGM-79G「ジムコマンド」のものと同じシールドを装備しているその機体の左胸部分には、花を守る犬のパーソナルマークが施されている。それはイコとカナタの上官である、ジルバート・ブーガンヴィル少佐の愛機であった。

 

『イコ少尉、カナタ大尉を引き戻して後退しろ! 後は私が引き受けるッ!』

『ジルバート少佐……!』

 

 元より、撃破より牽制が目的だったのだろう。ジルバート機はイコ機を庇うような位置に立ちながら、ゲルググキャノンに向けてブルパップマシンガンを連射し続けている。

 

 そんな上官に命じられるまま、イコ機は両腕に搭載されている牽引ワイヤーを飛ばしてカナタ機の両肩を絡め取り、そのまま彼を引き摺るように後退し始めた。彼女のその動作を目の当たりにしたジョウ機が、そうはさせまいと右腕部の3連装ミサイルランチャーを構える。

 

 だが、そこからミサイルを放つことは出来なかった。その右腕を斬り落とそうと、真横から振り下ろされたヒートサーベルをかわすため、引かざるを得なかったのだ。

 

『戦力の温存と奇襲を兼ねての埋設とは考えたもんだが……そんな小細工だけじゃあ俺達は狩れないぜッ!』

『グフカスタム、だと……!?』

 

 咄嗟に右腕を引いて回避したジョウ機の眼前には、MS-07B-3「グフカスタム」の姿があった。データ収集用の鹵獲機のみで編成された特殊部隊を率いている、デネエル・オルダス大尉の機体が、奇襲を仕掛けていたのである。

 背部に連邦軍のマークを刻み、その全身を特殊部隊仕様のダークグレーで塗装している彼の愛機は、奇襲が失敗しても攻撃の手を緩めることなく、ヒートサーベルを振り続けている。ジョウ機のゲルググキャノンもビームナギナタを振るい、互角の剣戟を繰り広げていた。

 

『ゲルググキャノンか……ペガサス級の真下で奴を暴れさせては、厄介なことにもなりかねんぞ。ここは俺達に任せて、カナタを助けてやりな!』

『……了解! ほらカナタ大尉、しっかりしてください! こんなところで死んだりしたら、あの世まで追っ掛けてシバき倒しますからね!』

『ははっ……そいつは恐ろしいな。済まんデネエル、後は任せるぜ』

『気にすんな、上等な酒1本でチャラにしといてやるよ!』

 

 彼に促されたこともあり、イコ機もキャタピラの回転速度を早めて行く。砂を掻き分けながら引き摺られていくカナタ機を一瞥したデネエル機は、体勢を立て直すべく一旦距離を取っていた。

 

『ジルバート少佐ァ!』

『あぁ分かっている、任せろデネエルッ!』

 

 だが、相手に休む暇は与えない。そう言わんばかりにビームサーベルを引き抜いたジルバート機は、怒涛の急加速と共にその光刃でジョウ機に斬り掛かっていた。操縦桿を握る青年士官の手は、己の命すらも軽んじる残党達への怒りに打ち震えている。

 

『引き際を見誤った挙げ句、無体な扱いを恐れて降伏を拒絶する癖、テロリストとして処分されることは許容する。「三獣鬼」も「四海竜」も貴様らも、そうして無駄な犠牲を増やすことがジオン軍人の誇りとでも言うつもりかッ!? 生きて敗者の役割を全うする気などないというのなら、自分達だけで勝手に死ねッ!』

 

 軍の名門たるブーガンヴィル家の出身であるジルバートには、「負け方」にも「正しい形」があるという考えがあった。どんな戦争にも最低限のルールがあるように、人が獣に堕ちぬための作法というものがあるのだと。

 だからこそ、その全てを踏み躙らんとする「双天獅」達の蛮行に、激しい怒りを燃やしているのである。

 

 3ヶ月前、サイド3の進駐軍に属していた彼はヴァイス・ヴァレンタイン達と同様に、「三獣鬼」と呼ばれるジオン残党のテロリストと交戦したことがあった。彼が密かに愛している女性――ヴィオレッタ・エバーグリーンは戦艦「大和」が沈んだ海で、自ら滅びに向かう「四海竜」と戦った。

 それらの苦い経験が、「双天獅」への怒りをさらに強く焚き付けているのだ。軍人としての矜持を捨てて猛獣に成り下がっただけでなく、想い人のヴィオレッタまで悪戯に苦しめた。そんな残党達に対する義憤は、すでに天を衝いている。

 

『……追い込まれた鼠は猫にも噛み付くのだよ。そう言われて素直に従えるような性根が我々にあるのなら、「デザートキングダム」など生まれてはおらん! 好きなように罵るが良い、蔑むが良い! それが勝者の特権よ! 我々はただ、醜い敗者として見るに堪えん足掻きを見せ付けるのみだッ!』

 

 その怒りを真っ向からぶつけられたジョウもまた、ジルバートの言葉に呼応するかのように声を張り上げていた。ビームサーベルとビームナギナタの鍔迫り合いは、決して引かぬという両者の意地に比例して、ますます白熱していく。

 

 やがて、その熱戦を制したのは――ジョウ機のゲルググキャノンだった。体重を乗せた薙ぎ払いで体勢を崩されたジルバート機は、仇敵の眼前で大きな隙を晒してしまう。

 

『ぐぅうッ!?』

『滅びるしかない者にも感情というものがある! 憎しみを募らせる心がある! それを満たさんと己の身体を突き動かす情動は、破滅の未来すらも乗り越えるのだッ!』

 

 それは、死に向かうしかない者が最期に見せた意地だったのか。ジョウ機は無防備な体勢となったジルバート機に、己の「死に様」を突き付けるかの如く。

 ビームナギナタによる刺突を、繰り出すのだった。

 




 本日を以て、今回のキャラ募集企画は終了となりました。今回もたくさんのご応募を頂き、誠にありがとうございます!(*≧∀≦*)
 これからは頂いたキャラ案をベースにモリモリ書いていこうと思いますので、ラストまでは今しばらくお待ちくださいませ〜٩( 'ω' )و
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