機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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第19話 艶麗の救手 -イコ・シュタイナー-

 ――ビームの威力を一切殺すことなく確実に命中させるには、砂を払って銃口を露出させる必要がある。

 

 しかし当然ながら、自力で隠れ蓑の砂を排除するとなれば、エンジンを始動させて動き出すしかない。

 今のような近距離の場合、その起動の瞬間から砂の排除までに発生する僅かなタイムラグさえあれば、ブルース機が熱源反応からリーフ機の存在を感知して先手を打つことも可能。

 

 故にフィーネ機とキョウイチ機は、ブルース機の注意を逸らすだけでなく、リーフ機が自力で砂を払わずとも銃口を露出させられるように、彼の近くでスラスターを噴かしたのである。

 

 そうすることでガンナーガンダムは己の指1本動かすことなく隠れ蓑を排除することができ、起動と同時に引き金を引けるようになった。そして、熱源感知の暇も与えずブルース機を撃ち抜いて見せたのだ。

 

(……信じられん、何という奴らだッ! こいつらはジェイムズが潰された瞬間、この戦法を瞬時に思い付いたというのかッ!?)

 

 ヒートサーベルを握っていた腕が焼失し、ドムの視界がガンナーガンダムの姿を捉えてから、僅か1秒。

 たったそれだけの間に、フィーネ達の策略を理解したブルースは、鉄仮面の下で焦燥の表情を浮かべていた。

 

 ビームサーベルとビームダガーを構えたフィーネ機とキョウイチ機は、その間にドム目掛けて急降下していく。

 

『思い知ったか? これが――』

『――カーマインパンサーだ』

 

 やがて、両機が砂埃を巻き上げて着地した瞬間。振り下ろされたビームサーベルとビームダガーが、戦う術を失ったドムの全身を容赦なく斬り刻むのだった。

 

『……!?』

 

 だが、それで戦いが終わったわけではない。原型を留めなくなるほど滅多斬りにされていく中で、コクピットから飛び出したブルースが砂埃に紛れて消えていく瞬間を、フィーネはその眼で捉えていたのだ。

 

 それから間もなく、無人となったドムは糸が切れた人形のように倒れ伏してしまうのだが。その転倒に伴う砂埃が晴れた頃には、ブルースも姿を消していた。

 

 彼は勝てないと悟るや否や、攻撃に巻き込まれて即死する可能性の方が遥かに高いのにも拘らず、機体を捨てて身一つで脱出して見せたのである。

 

 倒れたドムを見下ろすフィーネ機とキョウイチ機の側へと駆け寄って来たリーフ機も、懸命に周囲を見渡しているが。ブルースらしき人影は、全く見つからない。

 

『フィーネ隊長、奴はどこへ……!』

『……見失った。まさか、我々が攻撃を仕掛けている最中にコクピットから飛び出すとは……信じられん。さすがは死をも恐れぬデザートキングダムの王……ということか』

『口惜しいが、今は追撃よりもジェイムズの救助が最優先だ。イコ少尉のガンタンクも近くに来ているらしい。彼女にゲルググを牽引させつつ、俺達はその護衛に回るとしよう』

『……ならば、奴は俺が追います。この中で最も傷が浅いのは俺の機体です。やらせてください、キョウイチ副隊長』

 

 フィーネとキョウイチとしてはブルースの捜索よりも、部下であるジェイムズの救助を急がねばならない。だが、ブルースをこのまま逃すわけにはいかない、という思いもあった。

 暫し無言で見つめ合った隊長と副隊長は、数秒の逡巡を経て決断を下す。

 

『……分かった。だが、決して無理はするな。何か危険を感じたなら、即刻引き返せ。勝利よりも、生還を優先しろ』

『了解……!』

 

 一度狙った獲物は決して逃がさない。その信念を胸に戦い続けてきたリーフの意を汲み、フィーネはブルースの捜索を命じる。

 

 その命令を受けたリーフ機は足速に、動かぬガウが鎮座しているデザートキングダムの中央部を目指して歩み出して行くのだった。

 

『待っていろ……今に、俺の手でケリを付けてやる』

 

 ――そして、それから僅か数分後。中央部の手前に位置する、大型格納庫の付近に到達した瞬間。

 

 リーフのガンナーガンダムは、この砂漠の王国を統べる最強の「王」を目の当たりにする。そして、否応なしに理解させられていた。

 

 獲物と狩人の立場はその瞬間に、逆転していたのだということを。

 




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