機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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第27話 遺志の見手 -リーガル・ウォルバーグ-

 レインの決死の呼び掛けが届いたことで、デザートキングダムの兵士達は続々と武器を地に落とし、言外に「降伏」の意を告げていく。その光景は多くの連邦兵達を驚愕させていた。

 

『あれは……カーマインパンサー隊の、レイン伍長か!?』

『あいつの言葉で、これほど殺気立っていた連中が次々と武装を解除していやがる……! ど、どうなってやがんだよ……!?』

 

 ガンド・オロシュゲンのジムガードカスタムと、ハテム・ザキのデザートジムを取り囲み、とどめの一斉射撃を放とうとしていた残党達のMSも。レインに託されたブルースの「遺言」を耳にした途端、あっさりとザクマシンガンを放り捨ててしまったのである。

 

『……彼だけの言葉じゃない。ブルース・ゲイボルグの遺言だと確信させる何かがあったんだ……』

『何が何だかよく分かんないけど……要するに、私達の勝ちってこと!?』

 

 その瞬間を目撃したリーガル・ウォルバーグが搭乗している、満身創痍のデザートジムを庇うように立っていた、アリア・ヤグモのジムスナイパーカスタムは。緊張の糸が切れたかのように、片膝を着いてしまう。

 

『どうしたんですかァ、隊長。やっとこの戦いも終わりそうだってのに、やけに浮かない顔しちゃって』

『……ジオン残党を抹殺したいと声高に叫んでいるのは、「火葬」だけじゃないのよ。彼らを正しく裁いて罪を償わせるためにも、連邦政府に対しては厳正な審判を要求する必要があるわ。忙しくなるのは、これからよ』

『うへぇ……政府官僚のご令嬢は見てる世界のスケールが違いますなァ』

 

 傷だらけのジムスナイパーIIを駆るレティシア・シェフィールドの言葉に辟易しているチャン・ズーロンの愛機――量産型ガンキャノンは、動いているのが不思議なほどに損耗していた。あと1分でも戦いが長引いていたら、彼の命はなかっただろう。

 

『……何を今更、って思ってるでしょ』

『思ってる。……でも、私はこの憎しみとも戦うよ。それもきっと、生きてる人間の特権だから』

 

 モスグリーンのジムスナイパーIIに搭乗しているスナイパーの言葉に頷き、陸戦型ガンダムのコクピットから周囲を見渡しているアルカ・M・カルヴァーンは。間一髪で生き残った「想い人」の姿に胸を撫で下ろし、微笑を浮かべている。

 

『……やってくれたのだな、カーマインパンサー。俺達もようやく、少しは肩の荷を下ろせるというものだ』

『お互い、よく生き残れたものですよねぇ。もう残弾もエネルギーも、すっからかんですよ……』

 

 フィリップ・D・ダイゴのジムストライカーと、グーイ・ノアの装甲強化型ジムも、満身創痍の状態であった。背を預け合い、同時に尻餅を着いた両機のパイロットは、共に乾いた笑みを溢している。

 

『そうだな……そうだろうよ。死なずに済むってんなら、その方が良いに決まってるさ』

『あぁ……全くな』

『この世が本当に生き地獄なのか、意外とそうでもないのか……それは、とりあえず生きてみなきゃ分からないことですからねぇ』

 

 ランダ・バーロンのジムライトアーマーは背面の装甲も破壊され、大破寸前にまで痛め付けられている。クルト・クニスペルの61式戦車と、ライヤ・ペオニーのガンキャノンIIに至っては、すでに行動不能となっていた。

 

 それでも彼らは、不遜な笑みを浮かべている。死ぬためではなく、生きるための戦いに身を投じ続けてきた彼らにとっては、この程度の修羅場など今に始まったことでもないのだ。

 

「アッハッハ! やりやがっなァ、あいつ! さっすが我がカーマインパンサーのエース――アイタタタタ!」

「あーもー、何をやってるんですかカナタ大尉! そんなにはしゃいだらまた傷が開いて――アイタタタタ!」

 

 その頃。ペガサス級の艦内にある医務室に搬送されていたカナタ・アマサキとダイナ・スレイヴは、レインが掴み取った勝利に歓声を上げ――ほぼ同時にのたうち回っていた。

 

 彼らの愛機である陸戦型ゲルググと陸戦高機動型ザクは、ペガサス級の格納庫で静かに眠り続けている。その周囲を慌ただしく駆け回っていた整備兵達も、レインが齎した結末に歓喜していた。

 

『……終わった、か。よくやったな、レイン。君とフロンレシアが、繋いだ未来だ』

『うんうん、全くもってその通り。……これでようやく、大手を振って「菫の君」と再会できますなぁ?』

『だから茶化すなと言ってるだろうが!』

 

 ペガサス級とダブデの防衛に奔走していたジルバート・ブーガンヴィルとデネエル・オルダスも、ようやく肩の荷が降りたと表情を和らげていた。

 ここぞとばかりにからかってくるデネエルのグフカスタムはすでに中破しており、声を荒げるジルバートのデザートジムも、ほぼ大破している。

 

 それでもこうして言い合っていられるのも、彼らが数多の死線を潜り抜けてきた猛者である証の一つ……なのかも知れない。

 

『……へっ。戦時中の頃よりは、ちったぁマシな男に成長したじゃねぇか。だがまだまだ、この俺には遠く及ばねぇな!』

『腕はともかく、性格面では少尉の惨敗ですけどね。その分野ではあなたに負ける方が難しいくらいですし』

『ハハッ、こいつはなかなか手厳しいぜ!』

 

 この修羅場を生き延びたエースの1人であるイサミ・チネンは、小破したジムストライカーの中で上官の口振りに苦言を呈している。

 陸戦強襲型ガンタンクを駆るカルロ・ジェノヴェーゼは、そんな彼女の辛辣なコメントを浴びせられてもなお、快活に笑い飛ばしていた。

 

『……ようやく終わったのだな、フィーネ』

『あぁ。……例えこれが序章に過ぎないのだとしても。せめて今だけは、勝利と生還の喜びを分かち合おうではないか。レインと、フロンレシアのためにもな』

 

 部下を連れてデザートキングダムから退却する途中だったフィーネ・エイムの陸戦型ガンダムと、キョウイチ・ヤクモの陸戦用ジムも、レインの言葉に足を止めている。

 

 フロンレシアとレインの「綺麗事」が生み出した奇跡に、両者は瞼を閉じ優しげな微笑を浮かべていた。

 

『……まさか、本気でこの戦いを止めちゃうとはねぇ。しかもよりによって、あの下っ端のレインが……』

『ああいう奴だからこそ、最後の最後に奇跡を呼び込めるのだよ。……だからブルースも、あいつに賭けたのだろう』

 

 ジェイムズ・キャラウェイのゲルググを量産型ガンタンクで牽引していたイコ・シュタイナーは、レインの意外な活躍に感嘆の意を示している。

 

 そんな彼女の様子にほくそ笑むジェイムズは、「遺言」を託す相手に恵まれた戦友(ブルース)の魂が、安らかに眠れるよう静かに祈っていた。

 




 これまで登場してきた読者応募キャラは全員しっかり生存しております。結構ギリギリの戦いだった模様ですε-(´∀`; )
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