機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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第28話 救命の仲人 -ハリー・シールズ-

『この辺りの残党達も皆、武器を捨ててる……! レイン伍長って凄い人なんですね、リーフ少尉っ!』

『……あぁ。あいつは昔から、やる時はとことんやってくれる奴なのさ』

 

 レベッカ・ターナーのジムに抱えられたガンナーガンダムの中で、リーフ・T・ライアも誇らしげな微笑を浮かべている。

 戦時中の頃から良い意味で変わらなかった、レインの優しさによって導かれた最善の結末に、レベッカも華やかな笑みを溢していた。

 

『レベッカ、こっちだ! フェザール大尉から話は聞いてるぜ!』

『こりゃひでぇな……ガンダムタイプがこの有様かよ』

『ハリー1等兵、クラウディオ伍長! リーフ少尉をお願いしますっ!』

『任せな! きっちり医務室まで運んでやるよッ!』

 

 そんな2人を、ソノ・カルマの部下達が素早く出迎えている。ハリー・シールズ1等兵とクラウディオ・メロ伍長が搭乗している2機のジムが、無惨な姿と化したガンナーガンダムのボディをスムーズに受け止めていた。

 

『……つくづく、笑えねぇ冗談だぜ。残党狩りのやることか? これが……』

『あなたとはやり方が違う、というだけのことですよ。……彼は、悪戯に戦火を広げる闘志だけを殺したのです。力だけに委ねていては、叶わないやり方でね』

 

 その一方で、不遜に鼻を鳴らして独り憎まれ口を叩くエリムス・ナイドレイブンは、大破した量産型ガンキャノンの中で口元を歪めていた。

 

 そんな彼の愛機を踏み付けている、ジムナイトシーカーのフェザール・スコッツマンは――レインのような者にしか実現出来なかったであろう終幕に、不敵な笑みを浮かべている。

 

『やったんだな、レイン……! ついに……!』

『くひひっ……無事に戦いが終わった今なら、フィリップ様にも会いに行ける……くふひひひっ……!』

 

 フロンレシア・ノートンのデザートジムを守らんと奮戦していたショウ・カナタとブラン・ドゥルジーも、レインの勝利に朗らかな笑顔を咲かせていた。

 半死半生のジムドミナンスと陸戦型ガンダムは、ガウの上に立つレインのガンダムに希望の眼差しを向けている。

 

 ブランが恍惚の笑みを浮かべて豊満な肢体をよじらせると、遠方にいるフィリップは謎の悪寒に震え上がっていた。

 

 ――そして。

 

『レイン、レインっ、ありがとう……! 朕の想いを、繋いでくれてっ……!』

 

 愛する男が紡ぎ、築き上げた「勝利」を目の当たりにした1人の美少女は。濁流のように溢れ出す感涙を拭うことすら忘れ、愛機の中で独り思いの丈を告げていた。

 

 彼女の博愛主義に端を発する、生きる意思のバトンは。レインからブルースへ、ブルースから兵士達へと、確かに届けられたのである。

 

 ◇

 

 その頃――デザートキングダムの景色を一望できる、遥か遠方の地では。

 

 3機のザクが身を引き摺るように、砂漠の大地を静かに歩んでいた。戦いの終わりを悟って振り返ったその3機は、砂塵の中で妖しく一つ目(モノアイ)を輝かせている。

 

『……師父よ。なぜ、(それがし)達を待ってくださらなかったのですか』

 

 その中心に居る、黄色(・・)のザクを駆る1人の男は。自分達にとっての「師父」であるブルース・ゲイボルグの死を感じ取り、物憂げに呟いていた。

 

 彼の両脇を固めている()()のザクを操るパイロット達も、口惜しげに眉を顰めている。

 

『あの程度の規模の残党狩りなら、容易く突破して大佐と合流出来るはずだったんだが……読みが外れたな。奴らのほとんどが、エース級の化け物揃いと来やがった。一度の戦闘で沈めた敵艦がたったの1隻とは、俺達「十指」も随分と鈍ったもんだぜ』

『……「十指(おれたち)」の中でも「3位」に相当する男を倒した、「ヘビーガンダム」という奴が居たとはいえ。我々がこれほど早々に引き上げる羽目になったのは、戦時中を含めても稀だぞ』

 

 彼らこそが、ブルースが育て上げた10人の猛者――「十指」の生き残りだったのだ。

 自分達の師が今も地球で生き延びていたことを知った彼ら3人は、師との再会を目指して今回の戦闘に介入していたのである。

 

『……あの高慢ちきな「3位の男(サナル・アキト)」の野郎なんぞどうでもいい。それより、「5位の男(ガリウス・ブリゼイド)」を倒した「焦熱の爀弾」だ。まさか奴と、例の「ヘビーガンダム」が2人組(ツーマンセル)で迎え撃って来るとはよ……』

 

 だが、それは叶わなかった。

 戦時中の頃から確かな実績を重ねていた、ソノ・カルマ専用のヘビーガンダムと――ジャブローから派遣されていた、「焦熱の爀弾」ことリュータ・バーニングが駆るガンキャノンに行手を阻まれた彼らは、連邦軍の迎撃を突破出来なかったのである。

 

『あの「菫色の戦乙女」とも呼ばれていた量産機(ジム)といい、あの2機以外の連中も相当な手練ればかりではあったが……「十指」の生き残りが3人も居たと言うのに、なんと不甲斐ない。ブルース大佐が健在だったならば、さぞ落胆されたであろうな……』

 

 元コバルトキャリバー隊である「菫色の戦乙女」ヴィオレッタ・エバーグリーンも含む、彼らの防衛戦力に撃退された「十指」の生き残り達は、師父の最期を看取ることも出来なかったのだ。その悔しさは、計り知れない。

 

 赤と青のザクを歩ませている男達の呟きを背に、先頭の黄色いザクを前進させているリーダー格の男は。ブルースの「遺言」を通達している機体の姿を一瞥し、口元を静かに歪めていた。

 

『……ガンダム、か』

 

 連邦における「正義」の象徴にして、ジオンにおける「悪魔」の象徴。

 

 その姿形を目にして、操縦桿を握る手を震わせていた彼は――2人の同胞が察するほどにまで、闘志の刃を鋭く研ぎ澄ましていた。

 

『……行くのだな、ジルベルト』

『俺達なら、いつでも構わんぜ』

 

 そんな彼の勢いに、続かんとばかりに。2人の同胞達も不遜な笑みを浮かべ、追従の意を示している。

 彼らの意思を受け取った、「ジルベルト」と呼ばれるリーダー格の男は――次の目的地を目指し、その双眸を見開くのだった。

 

『うむ。……我々はこれより、「東京」に向かう。亡き師父の無念を晴らすためにも……そこにあるという「ガンダム」は、必ずや我々の手で破壊してくれるッ!』

 

 その目的地の名は、東京。

 

 ジオン残党に対する威圧を強めるべく、RX-78-2「ガンダム」のレプリカを展示するという、軍事パレードの開催地であった。

 




 そして物語の舞台は、第1.5部「トーキョー・ファランクス」へ……というところまで来ました! 残り2話でようやく本章も完結を迎えることになるかと思われます。次回からは後日談的な小話になりますので、どうぞ最後までお楽しみに!٩( 'ω' )و
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