-リュータ・バーニング-
主人公。21歳。東京出身。かつてはジャブローで第7陸戦小隊の隊長を務めていたエースパイロットの1人。現在は休暇を利用して、実家のある東京へと帰郷していたのだが……。階級は少尉。
-ジルベルト・ロードボルト-
29歳。サイド3出身。かつては「五指」の2位と恐れられたジオン軍のエースパイロットであり、連邦軍の象徴であるガンダムの破壊を目指している。黄色を基調とする専用のザクIIS型に搭乗する。階級は大尉。
-サナル・アキト-
当時21歳。サイド3出身。若年ながら数多くの戦場で活躍してきた、「五指」の3位と目されるエースパイロットの1人。その一方で、非常に傲慢で自信過剰な人物。階級は大尉。
※ターレス名義で活動していた作者の過去作「機動戦士ヘビーガンダム」のラスボス。
前編 黄銅の雷槍 -ジルベルト・ロードボルト-
――宇宙世紀0079、11月9日。オデッサ作戦の渦中。
リュータ・バーニング少尉とガリウス・ブリゼイド中尉の因縁は、そこから始まっていた。陸戦型ガンダムと、グフの激突から。
「ブリゼイド中尉が敗れた……? しかも相手は、連邦の『白い奴』だと?」
ギャロップの艦内でその「決着」を耳にした、ジルベルト・ロードボルト大尉は怪訝な表情で振り向いていた。その視線の先に立つ1人の士官は、苛立ちを露わにした面持ちで首を振っている。
「……いや。確かに白い奴ではあるが、ガルマ大佐の仇ではなかったな。奴のデータから記録映像を確認したが……『木馬』の搭載機とはシルエットがまるで違う。とんだ紛い物だ」
不遜な佇まいで手摺りに身を預ける、ガリウスの上官――サナル・アキト大尉は、部下の不始末が余程気に食わなかったのか。衛生兵達の手当を受けている当人を一瞥し、忌々しげに顔を顰めている。
そんな彼を他所に、ジルベルトは神妙な面持ちで顎に手を当て、物思いに耽っていた。サナルとは違い、ガリウスを高く評価していた彼は、「氷魔の蒼弾」を破った「白い奴」に思いを馳せる。
「だが、ブリゼイドを破るとは侮れん機体だ。あるいは、パイロットが手練れなのか……」
「ふん。たかが
その振る舞いに眉を顰めるサナルは、苦言を呈しながら踵を返していく。自分の前から立ち去っていく彼の背を、ジルベルトは静かに見送っていた。
「……その
やがて、サナルの姿が完全に見えなくなった瞬間。彼も愛機である黄色のザクIIを仰ぎ、悠然と歩み出していく。
撤退を開始した仲間達の退路を、切り拓くために――。
◇
オデッサの防衛戦力を増強するべく、ヨーロッパやアジアの各地に展開されていた地上部隊のエースを掻き集め、編成された「オデッサ防衛隊」。
その中においても、特に優れた
さらに、その内の上位5名のパイロットは――「五指」と恐れられ、近寄るのも憚られる存在として認知される者もいたのだという。
5位、ガリウス・ブリゼイド。
4位、ニコラ・バルヒェット。
3位、サナル・アキト。
そして彼らに
しかし。終戦を迎える翌年まで戦い抜いた、彼のその後を知る者は。数えるほども、居なかったのである。
数々の伝説と悲劇を生み出した、ソロモン攻略戦から1年が過ぎようとしていた日。宇宙世紀0080、12月24日までは――。
◇
リュータ・バーニングにとって、「ガンダム」という名は呪いだった。一生背負わなければならない、枷であった。
それはオデッサ作戦で部下達を失った日から、1年以上が過ぎた今でも変わらない。陸戦型ガンダムを降り、ガンタンクの砲手に転向してからも。
だが、その胸中を誰かの前で吐露したことはない。仲間達にとって、世間にとって、ガンダムという存在は希望の象徴であることも知っていたからだ。
ガンダムの名を冠した機体に乗っていながら、部下達を守れなかったのは、自分の努力が足りなかったからなのだと。あの日のことを思い出すたび、ガンダムの名を聞くたびに己の弱さを責めてしまうのは、全て自業自得なのだと。誰かに言われずとも、分かり切っていたからだ。
故に戦後は、部下達の遺族の元を訪れ、己の非力さを何度も詫びていた。しかし、リュータを責める者は1人もいなかった。
総人口の約半数を死に至らしめた、人類史上最悪の大戦。その最前線に立つ兵士の家族として、すでに彼らは「覚悟」を済ませていたのである。
むしろ、よく最期の勇姿を報せてくれたと、感謝すらしていた。
これは戦争なのだ、仕方がない。そう割り切れてしまえば、終わる話に過ぎないのだろう。少なくともこの時代においては、ごくありふれた話なのだから。
そこまで分かっていながら、遺族の赦しを得ていながら。なおも過去に囚われている自分を恥じていたからこそ。
彼は今日、劇的な復興を遂げた故郷――東京へと足を運んでいたのである。
クリスマスの時期だから、というわけではない。その都心部で開催されていた、とあるパレードが目的であった。
――先の戦争で伝説的な活躍を果たし、地球の英雄としてその名を知らしめたRX-78-2「ガンダム」。その外観を精巧に再現したレプリカを、都民の前に展示するパレードが企画されていたのだ。
間もなく終戦から1年を迎えるというこの時期に、改めて連邦軍の存在感を強調するためのプロパガンダとして。
そこへ訪れたリュータは、ガンダムの勇姿に沸き立つ都民を他所に。かつて追い求めた「力」を想起させる巨躯を、ただ神妙に仰いでいた。
今一度、その存在と真正面から向き合い。遺族達のように過去を乗り越え、前へと進むために。
――僅か、数分前までは。
「きゃああぁーっ!」
「な、なんでここにジオンが来てるんだよおぉおっ!」
『落ち着いてください! ただちに連邦軍が対処に向かいます、皆様は係員の誘導に従い冷静に避難を――!』
パレードの最中、突如鳴り響いたサイレン。それは
レプリカを展示していた都心部の会場は瞬く間にパニックに陥り、ガンダムを一目見に集まっていた人々は、阿鼻叫喚の渦に呑まれている。
すでに彼らは肉眼で、東京の上空を舞う無数の
「きゃあっ!」
我先にと逃げ出していく人々は、街を彩る飾りを蹴り倒し、転んだ子供さえ踏み付けようとする。足元を顧みず、上ばかりに気を取られて。
「……危ないッ!」
ただ1人、その危機を察知していた近場の青年は、咄嗟に少女の上に覆い被さると。彼女に代わって人々に蹴られ、踏まれ、額を切ってしまう。
だが、燃えるように紅いその眼には。恐怖や苦痛の色などなく、少女が無傷であることへの安堵だけが顕れていた。
やがてピークを過ぎた人の波が僅かに減り、立ち上がれる余裕が生まれてくると。彼は素早く少女の身を起こし、目線を合わせて微笑を送る。
「……もう大丈夫だ。よく、頑張ったね」
「……!」
その笑顔を前にした瞬間。この状況に翻弄され続けてきた幼気な子供は、ようやく一縷の安心感を得たのだった。だが、それも長くは続かない。
「お、お兄ちゃん、おでこ……!」
「……これくらい平気さ。君は先に避難するんだ、きっとお母さんも心配してる。あとは連邦軍が何とかしてくれるから」
「で、でもっ……」
「大丈夫だって。……ここには『ガンダム』があるんだ、ジオンなんて怖くない。そうだろ?」
「う、うん……お兄ちゃん、ありがとね! お兄ちゃんも、早く逃げてね!?」
自分の額に滲む血を見遣り、青ざめた表情で気遣う少女に対しても、青年は気丈に励ましの言葉を送っている。
やがて少女も、状況を鑑みて逃げる道を選んだのだが――それでも彼女は、姿が見えなくなるまで青年の身を案じ続けていた。恐らくは薄々、気づいていたのだろう。
人々に絶え間なく踏まれ、蹴られ続けた中で、肋骨が数本ほど折れていることにも。
「……」
そして、少女の避難を静かに見送っていた青年――リュータは、額や肋よりも痛む「過去」に眉を顰めながらも。ガンダムの外観を模した「
「……
――きっと今こそ。守るべきものを守れる「ガンダム」の在り方を、取り戻す時なのだと。
◇
同時刻。ジャブローの地下に設けられた、捕虜の身柄を預かる独房にて。
食事を運びに訪れたソノ・カルマ曹長を呼び止めた、ガリウス・ブリゼイドは。ある一つの、「懸念」を訴えていた。
「地上で抵抗を続けてる残党の中に、黄色のザクが居たって噂は……確かに聞いた覚えがある。あんたの話を信じるなら、とんでもなくヤバい奴がそこに紛れてるかも知れないってことか」
「私を含む『五指』など、ジオン軍全体から見れば井の中の蛙かも知れん。だが……あの『1位』と『2位』だけは、別格なのだ」
鉄格子を握り、剣呑な面持ちでカルマに語り掛けるガリウスは――戦場で直に見てきた「彼」の戦いを思い出し、その手を震わせていた。
味方すら戦慄させる、圧倒的な強さを知るが故に。
「……そのザクが現れた時は、決して侮るな! 彼は……ジルベルト・ロードボルトは、多少の性能差など容易く凌駕する! もう戦争は終わったのだ、これ以上悪戯に犠牲者を増やしてはならんッ!」
あらすじにもある通り、現在は作者の活動報告にてキャラ募集企画を開催しております!(*≧∀≦*)
そしてキャラ募集の締め切りが11月28日なので、完結はそれ以降になります。暫しお待ち下さいませ(´・ω・`)
Ps
エピソードのナンバリングが結構ややこしくなってきましたので、この第1.5部については完結後に第1部と第2部の中間に移そうかと思いますー_(:3」z)_