機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-後編からの登場人物-

-ヴィレッツ・ハルトマン-
 30歳。サイド3出身。「十指」の7位と呼ばれた実力者であり、ルウム戦役から戦い続けているベテラン。連邦軍が相手であろうと背を向ける者は撃たない主義の持ち主。青と緑を基調とする専用のザクIIに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はマルク先生。

-キョウイチ・ヤクモ-
 29歳。島根出身。かつては「凶鳥」の異名で恐れられていた、近接格闘戦の達人。グレーを基調とする陸戦用ジムに搭乗する。階級は少佐。
 ※原案はサンシタ先生。

-ヴェルディア・アステリオン-
 39歳。ピレウス出身。開戦当初から戦い抜いてきたベテランの1人であり、寡黙にして冷静沈着。鹵獲機のゲルググに搭乗する。階級は中尉。
 ※原案は妄想のKioku先生。

-ライゾウ・ホリウチ-
 35歳。埼玉出身。元戦車乗りのパイロットであり、120mm低反動キャノン砲を活かした砲撃戦を得意としている。陸戦型ジムに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はピノンMk-2先生。

-ヴィオレッタ・エバーグリーン-
 18歳。ローマ出身。元戦災孤児の寡黙な少女兵であり、身元を引き受けたライゾウを父のように慕っている。ヒートホークを装備した、菫色を基調とする陸戦型ジムに搭乗する。階級は軍曹。
 ※原案は赤犬先生。

-カリス・ベイル-
 26歳。サンフランシスコ出身。エディン・ギルスの幼馴染であり、小柄な少女のような容姿に反した実力を持つスピード狂。バランサーを外した専用のジムライトアーマーに搭乗する。階級は准尉。
 ※原案は魚介(改)先生。

-アシェリー・スカイ-
 24歳。デトロイト出身。クールで気の強い戦闘機乗りであり、戦場の主役となったMSに対抗心を燃やしている。コアブースターに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はMrR先生。

-アレクサンドラ・W(ウィリアムズ)・サイジョウ-
 26歳。東京出身。宇宙軍に属する姉を持つ凄腕のMSパイロットであり、物腰は丁寧だが熱い正義感を持ち合わせている。ネイビーブルーを基調とするジムキャノンに搭乗する。階級は中尉。
 ※原案はMegapolygon先生。

-アンナ・モチヅキ-
 38歳。ベネツィア出身。教導隊にも所属していた優秀なパイロットであり、士官候補生の娘を持つカルロ・ジェノヴェーゼの姉。ガンキャノンIIに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はmikagami先生。

-ジャンナ・セルペンテ-
 27歳。フィレンツェ出身。特殊部隊出身の快活な女性パイロットであり、かつてはRX-75M「スネイクマン」にも搭乗していた元戦車乗り。単座式に改修された専用の局地制圧型ガンタンクに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はアルキメです。先生。

-イサミ・チネン-
 18歳。沖縄出身。格闘戦を得意とする若手のエースであり、物静かながら気の強いナイスバディの持ち主。黒紫を基調とするジムストライカーに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はエクシリオン先生。

-ナギ・シミズ-
 20歳。茨城出身。海軍出身のテストパイロットであり、戦後は鹵獲機の試験運用を任されていた。赤を基調とするハイゴッグに搭乗する。階級は准尉。
 ※原案は黒子猫先生。

-レイジ・ホーネット-
 23歳。ハワイ出身。実力は高いがかなりの女好きなパイロットであり、好みの女性が絡むと3倍の能力を発揮すると言われている。ターコイズグリーンを基調とする陸戦型ジムに搭乗する。階級は曹長。
 ※原案はカイン大佐先生。

-ミカナ・ユズリハ-
 26歳。神奈川出身。高い協調性と指揮能力を有する穏和な人物であり、その頭脳を武器に仲間達を守るべく最善を尽くしている。ジム改に搭乗する。階級は中尉。
 ※原案は山の下に更科先生。



後編 豪傑の青鬼 -ヴィレッツ・ハルトマン-

 ――連邦軍の精鋭が集まる東京を狙うだけあって、残党達のMSも高性能なものばかりであった。

 ガンダムにも匹敵するとされるゲルググタイプを数多く運用していた彼らは、そのスペックを遺憾無く発揮しうる手腕を以て、連邦軍を圧倒せんと肉迫してきたのである。

 

 だが、それほどまでに優れた機体とパイロットを揃えてもなお、この東京に常駐する連邦軍の精鋭達には及ばなかった。ゲルググタイプすら容易く撃退してしまうほどのエース達が、この街に集まっていたのである。

 

『まだ都民の避難は完了していない……ここで奴らの暴挙を許せば、甚大な被害が出る! 是が非でも、今この場で叩き潰すぞ!』

 

 その先陣を切り、遥かに性能で勝るゲルググを相手に一歩も引かず、敢然と立ち向かっている猛者がいた。市街地戦用としてグレーに塗装された、RGM-79F「陸戦用ジム」を駆るキョウイチ・ヤクモ少佐だ。

 左肩に八咫烏のエンブレムを刻む彼の陸戦用ジムは、ビームダガーを武器に懐へ飛び込み、ゲルググ相手に接近戦を挑んでいる。

 

『ここで振るうには、少しばかり狭いだろうッ!』

 

 ビームナギナタを振るうには、あまりにも近過ぎる距離。そこまで接近したキョウイチ機は、ビームダガーでゲルググの両肩を突き刺し、反撃を封じる。

 膝に装備された打突用のスパイクで、コクピットを貫いたのはその直後だった。一つ目から光を失ったゲルググが、事切れたように倒れていく。かつての異名である「凶鳥」に恥じない、苛烈なまでの連撃だ。

 

『……全く、相変わらず容赦のない御仁だ』

 

 その様を見届けながら、片手間(・・・)で残党達を切り捨てていくヴェルディア・アステリオン中尉。彼が駆る鹵獲機のゲルググの手には、かつての乗機・ジムストライカーのツインビームスピアが握られていた。

 調整中の鹵獲機という、本調子には程遠いコンディションでの参戦でありながら。彼は同規格のゲルググ達を相手に、全く引けを取らない戦いを見せつけていた。

 

『……いつでも掛かって来ていいぞ。この機体にも、そろそろ慣れてきたところだ』

 

 その発言を傍受するまでもなく、彼の挑発を肌で感じ取ったのだろう。ゲルググの群れは四方八方から、ビームナギナタを振るいヴェルディア機に飛び掛かって来る。

 圧倒的にリーチで勝る、ツインビームスピアの薙ぎ払いによって。その悉くが横一文字に両断されたのは、それから間もなくのことであった。

 

『……ヴェルディア中尉もキョウイチ少佐も、随分派手に暴れてくれる。おかげで、こちらの仕事もやりやすくなるというものだ』

 

 陽動を兼ねた前衛として、派手に暴れ回るキョウイチ機とヴェルディア機を遠方から捕捉しつつ。その周囲から彼らを狙っている別働隊を狙撃し、奇襲を阻止する。

 

『生憎だが……俺が狙いを付けた以上、お前達に逃げ場はない』

 

 それが、RRf-06「ザニー」の装備である120mm低反動キャノン砲を携行している、ライゾウ・ホリウチ大尉の陸戦型ジムに課せられた使命だった。

 元戦車乗りとしてのセンスを武器に、次々とゲルググの急所(コクピット)を狙撃していく彼の愛機は、その砲口から絶えず硝煙を噴き上げている。絶え間ない砲撃によって同胞達を失っていく中で、辛うじて生き延びていた残党の1人は、彼の存在に一つ目を光らせていた。

 

『……大尉に仇なす者は、この私が征伐します』

 

 だが、その硝煙を目印にライゾウ機を狙うゲルググは、背後から現れたさらなる「伏兵」によって首を刎ねられてしまう。

 ゲルググの頭部を刈り取った、その刃――ヒートホークを握り締めていたのは、菫色に塗装された1機の陸戦型ジム。そのパイロットであるヴィオレッタ・エバーグリーン軍曹は、砲撃戦に徹しているライゾウの護衛を引き受けていたのだ。

 

『助かったぞ、ヴィオラ。やはりお前がそばにいると、安心感が違う』

『……ありがとうございます、大尉』

 

 かつて戦災孤児だった自分を引き取り、実の家族のように愛情を注いでくれたライゾウのため。ただその一心で、MSパイロットとしての腕を磨き続けてきたヴィオレッタは、親代わりであるライゾウからの畏憚なき賞賛に頬を緩めている。

 普段から無表情で、人形のようだと言われている彼女が、1人の少女としての貌を見せる数少ない瞬間であった。

 

『……なに? フィーネの奴が……!?』

 

 その時。戦況を報せるオペレーターの通信から、思いもよらぬ情報を耳にしたキョウイチが眉を顰める。

 それは、この東京に常駐するMSパイロット達の中においても、揺るぎなき「最強」の座に君臨していたフィーネ・エイムの敗北という内容であった。

 

 ゲルググの群れを蹴散らしながら、その報せを聞き付けてきた部下達も、皆一様に「信じられない」という表情を浮かべている。

 キョウイチでさえ一度も勝ったことがない彼女が、ただの黄色いザクに敗れたというのだから。

 

『少佐、ここは我々が動くべきかと。あのフィーネ少佐が敵わぬ相手、見過ごすわけには……!』

『……いや。まだ戦闘が続いている以上、ここを手薄にするわけにはいかん。俺達だけが東京の戦力ではないのだ、ここは別働隊の働きを信じよう』

 

 だが、その焦燥に駆られて連携を乱しているようでは、これ以上の被害を食い止めることはできない。まだ全てのゲルググを撃滅したわけではないのだから。

 その判断を下したキョウイチに従い、ヴェルディア達は不安を飲み込みそれぞれの持ち場に戻っていく。

 

 そんな彼らの背を頼もしく思いながらも――キョウイチは独り、誰よりも戦友(フィーネ)の元に駆けつけたい想いを堪え、唇を噛み締めていた。

 「五指」の2位。その力を、知るが故に。

 

(……黄色いザク、か。オデッサで猛威を振るったという例の奴は、今のフィーネですら仕留め切れないというのか……!?)

 

 ◇

 

 ――634mにも及ぶ、この街の名所の一つとされる電波塔。「東京スカイツリー」と呼ばれているその巨塔の頂には、1機のザクIIが佇んでいた。

 

『俺を屠れる数が揃うまで、待つ気がなかったのか。それとも、この程度で十分だとでも思ったのか。……何にせよ、愚かなものだ』

 

 青と緑を基調とするその機体を駆る、「十指」の7位――ヴィレッツ・ハルトマン大尉は、死屍累々と横たわる連邦製MSの残骸を一瞥し、深々とため息をついている。

 彼を乗せたザクIIの一つ目が、接近してくる「新手」に向けられたのはその直後だった。

 

『MSも気に食わないけど……その一つ目、もっと気に食わないのよね』

『仲間達をやってくれた代償、高くつくよッ!』

 

 アシェリー・スカイ大尉のFF-X7-Bst「コアブースター」に掴まり、スカイツリーをなぞるように急上昇してくるRGM-79L「ジムライトアーマー」。

 左上にダイヤマークと右に三日月、というパーソナルマークを備えたその機体は、仇討ちに燃えるカリス・ベイル准尉の愛機だった。自分目掛けて真っ直ぐに猛進してくる彼女達を、ヴィレッツ機の一つ目は冷徹に見下ろしている。

 

『逃げれば撃たんと何度も言っただろうに、なぜ向かってくる。……逐次投入などという愚策で、この俺に勝てると思うか!』

 

 背中さえ向ければ、撃たずに済むというのに。そんな静かな怒りを一つ目に宿し、ヴィレッツ機は頭上からザクマシンガンを掃射する。

 

『そんなもの当たらないわ……! 待たせたわねカリス、ここからはあなたの出番よ!』

『ありがとうございます! ……たっぷりとお礼しちゃいますよ〜ッ!』

 

 だが、MSへの対抗意識に燃えるアシェリー機はその全弾を巧みにかわし、メガ粒子砲を連射してきた。それを回避した弾みで、スカイツリーの頂上から滑り降りることになったヴィレッツ機を追うように、コアブースターからカリス機も飛び降りて来る。

 スカイツリーを滑るヴィレッツ機に猛スピードで迫る、カリスのライトアーマーは――バランサーを外した改造機であり。ひたすら速さだけを追求するスピード狂のニーズに応じた、人型の弾丸であった。

 

『無駄な足掻きはやめることね! エディンでも捉えられなかった私のライトアーマーからは、絶対に逃げられないんだからッ!』

『そうか、逃げられんか』

 

 そして、ついに接近戦の間合いに入るまで距離を詰めた瞬間。ビームサーベルを振り上げたカリス機が飛び込んで来たタイミングで――ヴィレッツ機は急ブレーキを掛けるように、スラスターを全力で噴射する。

 

『がッ……!?』

『――そもそも俺には、逃げる必要もないのだがな』

 

 重力とスラスターによる加速。急停止による衝撃。

 その両方が最悪の形で合わさり、ヴィレッツ機の左肩のスパイクは、カリス機の懐にめり込んでしまうのだった。そのまま真上に突き上げられたカリスのライトアーマーは、東京の夜空へと吹き飛ばされてしまう。

 

『カリス! ……このぉッ!』

『他人の心配などしている場合か? ……時代遅れの戦闘機如きがッ!』

『くぅッ!?』

 

 その光景を目の当たりにしたアシェリー機が、急降下しながら機関砲とミサイルを連射してくるが。ヴィレッツ機はその猛攻さえ紙一重でかわし、ザクマシンガンで撃ち返してしまう。

 

『む……!』

 

 だが、逆に被弾してしまったアシェリー機が、バランスを乱して隙を見せた瞬間。

 とどめを刺そうと銃口を向けたヴィレッツ機が、自身に迫る危機に気付き、咄嗟にその場から飛び退くと――そこへ、「援軍」の砲撃が炸裂するのだった。

 

『サンディ、カリスは無事か!? ……ウチのエースを随分と可愛がってくれたな。礼はたっぷりと返してやる』

 

 両肩のビームキャノンから放つ閃光を以て、ヴィレッツ機を狙うRX-77-4「ガンキャノンII」。その操縦を担うアンナ・モチヅキ大尉は、元教導隊の経歴に恥じない正確さで、ヴィレッツのザクを捕捉している。

 

『カリス准尉は……気を失っているだけですね、良かった……! あのザクをこのままにはしておけません、何としてもこの場で撃破しないと!』

 

 一方、彼女に付き従うアレクサンドラ・W(ウィリアムズ)・サイジョウ中尉は、愛機のRGC-80「ジムキャノン」のスラスターを噴かして、東京の夜空から落ちるカリス機をキャッチしていた。ネイビーブルーを基調とするそのボディの左肩には、紅蓮華のマークが描かれている。

 

『当然! そのためにアタシらが出張って来てんですから、しっかりブチかましてやりませんとね! サンディ中尉、アンナ大尉、巻き込まれないでくださいよッ!』

 

 そして、部下の救助に徹しているアレクサンドラ機を庇うように、キャタピラで前進しながら砲撃を繰り返しているのは――RMV-3M「局地制圧型ガンタンク」と。そのパイロットである、ジャンナ・セルペンテ少尉であった。

 都市迷彩を施されたその機体には、コブラをモチーフにしたエンブレムが刻まれている。ジャンナ専用機として単座式に改修されている彼女の愛機は、ヴィレッツ機を近付けさせまいと120mmキャノンを連射していた。

 

『……砲撃戦に特化した3機1組(スリーマンセル)か。面白い、ようやくそれくらいは揃えなければと学んだようだなッ!』

『こちらは全く面白くないぞ。……何しろ、楽しみにしていた旦那様との甘い聖夜を過ごす予定(クリスマスデート)まで潰されたのだからなッ! これ以上貴様らの勝手を許していては、士官候補生の娘にも示しがつかんッ!』

『そ、それは大尉の私怨では……?』

 

 微妙な表情を浮かべるアレクサンドラの追及を他所に、アンナ機はR-4型ビームライフルを手に怒涛の一斉射撃を叩き込む。だが、すでに彼女の射線を把握していたヴィレッツ機は、その悉くを巧みにかわしていた。

 

『こいつ、全然当たらない……! この機体だって、「スネイクマン」よりはずっと高性能だってのにッ!』

『は、速いッ……! (ミコト)や姉さんなら、絶対外さないのにッ……!』

『フン。こう遮蔽物が多くては、俺に当たる前に街は壊滅だな!』

 

 アレクサンドラ機とジャンナ機も、肩部240mmロケット砲と3連装ミサイルランチャーで追い討ちを掛けるが。東京の都心に立ち並ぶビル群を盾にされては、決定打を与えられるはずもない。

 その一方で、常にヴィレッツ機の行き先を予測して動いていたアンナ機は、彼の眼前に「先回り」している。曲がり角で鉢合わせした瞬間、青と緑のザクは自分を狙うビームキャノンの洗礼を浴びるのだった。

 

『ちッ、さすがにそう易々とは行かんか!』

『残念だが、私はジャブローの愚弟(カルロ)とは一味違うぞ!』

 

 咄嗟に減速されたことで擦り傷に止まったが、確かな手答えがある。そう実感したアンナ機は、一気に畳み掛けるべく銃口を向けたのだが――次の瞬間、ガンキャノンIIのセンサーは別の熱源を感知した。

 ヴィレッツ機の危機を察知したゲルググ部隊が、アンナ隊を撃滅すべく動き始めたのである。彼を追ううちに、いつしか彼女達はゲルググの群れの前へと誘い込まれていたのだ。

 

『新手のゲルググタイプ!? くそっ、あのザクどこに行った!』

『ちぃッ、まんまと乗せられたわけか……! ジャンナ、奴だけに囚われるな! サンディ、弾幕を張りつつ後退するぞ! ゲルググタイプに接近を許せば、我々と言えど勝ち目は薄い!』

『くっ……了解ですッ!』

 

 いくら砲撃戦に秀でた女傑達でも、入り組んだ市街地でゲルググタイプを相手に接近戦を挑まれては、さすがに分が悪い。適切な間合いで確実に彼らを撃退し、部下を守るべく――アンナはヴィレッツ機の追撃を断念するという、苦渋の判断を下すのだった。

 

 そんな彼女達を尻目に、まんまと索敵圏外へと脱したヴィレッツ機の前に――今度は、RGM-79FP「ジムストライカー」が立ちはだかる。黒紫色を基調とするその機体には、カンヒザクラのパーソナルマークが刻まれていた。

 

『絶対、ここで仕留める……!』

『なるほど、奴らを撒いたところへ近接専用の機体……か。良い采配だ』

 

 アンナ隊が突破された場合に備え、ヴィレッツ機を待ち伏せていたイサミ・チネン少尉は――ツインビームスピアを握る愛機を駆り、得意とする接近戦に持ち込んだ。

 静かな言葉に秘められた、熱い怒りを宿した槍の一閃。その鋭さは、この東京に攻め入る多くのMSを葬って来た。

 

 だが、機体を僅かに掠めながらも紙一重でかわし、左肩のスパイクで体当たりを仕掛けて来るヴィレッツ機は、それ以上の「技量差」を突きつけて来る。

 

『くぅッ!?』

『確かに筋はいいが……まだまだ未熟だなッ!』

 

 伸び切った腕を掴まれ、相手の間合いへと引き込まれてしまったイサミ機に、ヴィレッツ機のヒートホークが迫る。だが、彼はイサミ機への対処に気を取られるあまり、失念していた。

 

 背後に流れる、隅田川の水中に潜んでいた熱源の存在を。

 

『連邦海軍テストパイロット、ナギ・シミズ! ハイゴッグ、行っきまぁーすっ!』

 

 刹那。そこから残党の新手――ではないジオン製MSが、水飛沫を上げて飛び出して来たことで、戦況は一変する。

 錆止め塗料である赤色で全身を染め上げている、MSM-03C「ハイゴッグ」。戦後に鹵獲された後、試験運用されていたその機体は今――テストパイロットのナギ・シミズ准尉の手で動き出しているのだ。

 

 ヴィレッツ機の背後に飛び出して来た彼女の乗機は、両腕のバイスクローでザクの両肩を捕まえる。イサミ機の勝利を、確実なものとするために。

 

『むッ!? ……ハイゴッグだとッ!?』

『イサミ少尉、今ですよぉっ! やっちゃってくださいっ!』

『……わかった!』

 

 彼女が生み出した好機を、逃すわけにはいかない。イサミ機はナギ機を傷つけることなくヴィレッツ機を両断するべく、ツインビームスピアを一気に振り上げる。

 これで、今度こそ決着が付く。どちらも、そう思っていた。

 

 ――専用機としてチューンナップされている、ヴィレッツのザクがその出力を「全開」にするまでは。

 

『小賢……しいわぁッ!』

『えっ、ちょ、ちょっと嘘ぉっ!?』

『……ナギッ!』

 

 両腕で、自分を捕まえているバイスクローを掴んだヴィレッツ機は――逆にナギ機をその体勢のまま持ち上げ、イサミ機目掛けて投げ飛ばしてしまったのである。

 予想外の反撃に瞠目するナギは、そのまま為す術なく吹っ飛ばされてしまう。咄嗟に斬撃を中断し、彼女のハイゴッグを受け止めたイサミ機も、衝撃で転倒していた。

 

 一方、連邦軍に接収されたハイゴッグを前にしたヴィレッツ機は怒りを露わに、ヒートホークを振り上げている。その矛先は、ナギに向けられていた。

 

『まさかハイゴッグを持ち出して来ようとはな……! 同胞(ジオン)のMSまでぶつけて来るとは、余程この俺を怒らせたいと見える!』

『はぇっ!? いやその、私そんなつもりじゃあ……!』

『いいだろう……その挑発、敢えて乗ってやる! どこからでも掛かって来るが良い! 来ないのであれば、こちらから行くぞッ!』

『は、話を聞いてくださーいっ!』

 

 連邦兵がジオン製MSに乗っていることを、挑発と受け取ったヴィレッツは、怒りのままにナギ機を追い回していく。ビームカノンによる牽制射撃も容易く回避しつつ、間合いを詰めて来る彼から距離を取ろうと、ナギ機も必死にスラスターを噴かしていた。

 イサミも懸命に加勢しようとしているのだが、ハイゴッグを受け止めた弾みでアクチュエーターが故障したのか、すでに彼女のジムストライカーはまともに身動きが取れなくなっている。

 

『だったら俺が相手してやるぜッ! イサミちゃんにもナギちゃんにも、手出しはさせねぇーよッ!』

 

 まさしく、絶体絶命。そんな彼女達の前に颯爽と飛び込んで来たのは、ターコイズグリーンで全身を統一している、1機の陸戦型ジムだった。

 そのパイロットであるレイジ・ ホーネット曹長は、イサミとナギに色目を使いながらヴィレッツ機と対峙する。……自分達の窮地に駆けつけて来た増援だというのに、2人の表情はどこか渋い。

 

 戦時中から、若くして数多くの戦果を挙げてきた有数のエース。その実力はまさしく本物であり、その点においてはイサミもナギも疑っていない。

 ただ、その佇まいが全てを帳消しにしているのだ。真っ向から相対しているヴィレッツも、若干引いている。

 

『……今度はまた、随分と活きの良い若造が出てきたものだな』

『活きが良くなきゃあ、レディーは守れないからなッ! かわいこちゃんが絡んだ時の俺は、いつもより3倍は強いぜッ!』

 

 それでも、たった1機でヴィレッツ機に立ち向かえる自信と、それを裏付ける実力だけは、確かなのだ。

 ビームサーベルを手に挑み掛かるレイジ機の挙動は、これまでヴィレッツが叩き伏せて来た陸戦型ジムとは、比べ物にならない精度だったのである。

 

『……ほう、他の連中とは少々違うらしい』

 

 100mmマシンガンでの牽制射撃と、ビームサーベルによる斬撃を巧みに使い分ける彼の立ち回りは、「十指」の8位に対しても全く引けを取らない。

 僅かな物怖じもなく、真っ向から自分と渡り合ってくるレイジ機の戦い振りに、ヴィレッツも嘆息していた。

 

『だが、所詮はまだまだ青二才だなッ!』

『ぐッ……!』

 

 だが、それもいつまでは続かない。徐々に速さと手数を増やして来るヴィレッツ機に追い付けず、とうとうレイジ機は回し蹴りを浴びて吹っ飛ばされてしまう。

 廃ビルに叩き付けられた陸戦型ジムの中で、破片を浴び額を切ったレイジは、視界を阻む血を拭い操縦桿を握り締める。その闘志はまだ、消えていない。

 

『……まだ折れぬとは見上げた根性だ。お前も充分、強者と呼べる域にいるようだな』

『強者? 俺が? ……ハッ、とんだめでてぇ野郎がいたもんだぜ。俺如きを強者呼ばわりとは、随分とヌルい戦場を渡ってきたらしいな』

『ほう……その若さで、()を見てきたかのような口を叩くか』

 

 先の戦争で味わった苦い記憶。その一端が、操縦桿を握るレイジの身体を戦いに駆り立てていた。

 

『見てきたさ。……見てきたから、そう言ってんだ』

 

 オデッサ作戦の後、残党の掃討に当たっていたレイジは、「十指」の頂点に立つ最強の武人――「五指」の1位(・・)と遭遇し、為す術もなく所属部隊を壊滅させられてしまったのだ。

 駆け付けてきた別働隊の陸戦型ジム(・・・・・)が、レイジを逃すためにその1位に立ち向かうことがなければ、生還することさえ叶わなかっただろう。

 

 その時のことは、今でも昨日のことのように覚えている。あまりに強くあまりに恐ろしい、黒と金のツートンカラーに塗装されていたザク。その「五指」の1位に敢然と立ち向かう、「勇者」の如き陸戦型ジム。そして、彼らを背に逃げ出すしかなかった昔の自分。

 忘れたくても忘れられない、惨めにも程がある記憶の数々。追い詰められる度に蘇る、その痛みが。レイジ・ホーネットという男を、ここまで強くしていたのだ。

 

『……俺なんざを強者だと思うってんなら、てめぇの底も知れてるってなァッ!』

『面白い……! ならばその非礼は、俺の全力を以て詫びねばなァッ!』

 

 ヴィレッツ機に向けられるマシンガンの銃口が、レイジの雄叫びと共に火を噴く。その弾雨をかわしながら接近するヴィレッツ機は、今度こそとどめを刺そうとヒートホークを振りかざした。

 

『どらぁァッ!』

『ちィッ……!?』

 

 だが、刃が振り抜かれる前に手首を掴み、斬撃を阻んだレイジ機は――先ほどのお返しとばかりに、ヴィレッツ機の胸に前蹴りを叩き込んでしまう。その衝撃に姿勢を乱された青と緑のザクは、素早く受け身を取り後退していた。

 

 真っ向からの一騎打ちで、あのヴィレッツ機が一瞬とはいえ退く。それはこの戦いにおいては、初めてのことであった。

 

『どうだいお2人さんッ! 今の俺のスタイリッシュでクールな反撃! カッコ良くない!? 超イケてない!? 惚れちゃわないッ!?』

『……は、はぁ』

『……真面目にやって』

 

 の、だが。当のレイジは強敵を前にしていながら、イサミとナギへのアピールに気を取られている。「十指」を相手にしている中でもナンパを欠かさない彼の姿勢に、2人は完全に呆れ返っていた。

 

 そんな隙だらけのレイジ機に、ヴィレッツ機が飛び掛かろうとした――その時。足元に降り掛かる実弾の嵐が、彼の速攻を阻止してしまう。

 

 ――それはレイジ機に続くように、夜空から降下して来たジム改による牽制射撃だった。弟のような存在である部下のために、彼女(・・)もこの場に駆けつけて来たのである。

 

『レイジ曹長、あまり前に出過ぎては被弾リスクが上がりますよ。もっと冷静に、相手の出方を見てください』

『りょ、了解っす……』

 

 静かに、淑やかに、それでいて厳かに。部下の言動を嗜めるジム改のパイロット――ミカナ・ユズリハ中尉には、レイジでさえも頭が上がらないのだ。彼女の言葉に宿る「圧」に押され、ナンパな青年から慢心が消えていく。

 その様子を見据えていたヴィレッツも、さらなる手練れらしき新手を前に、ますます戦意を燃やしていた。

 

『……次から次へと、今になって集まりおって。俺を潰したいのであれば、もっと早く来るべきだったな!』

『えぇ……そうですね。だから今からでも、私達は最善を尽くすのです』

『ならば尽くして見せろッ!』

 

 そんな彼から迸る殺気に、突き動かされるように。同時に距離を取ったミカナ機とレイジ機が、一斉にマシンガンを連射する。

 その十字砲火をジャンプでかわしながら、ヴィレッツ機はミカナ機にヒートホークで襲い掛かった。咄嗟にシールドで凌ぐ彼女の隙を突き、腹部に蹴りを叩き込む。

 

『くッ!』

『今のを防ぐとは大した腕だが、あの程度で俺を屠れると思うなッ!』

 

 その隙にシールドを奪ってヒートホークを引き抜いたヴィレッツ機は、今度こそとどめを刺そうと刃を振り上げる。レイジ機も妨害しようとマシンガンを撃ち放つが、その弾丸は全て、ヴィレッツ機が放り投げたミカナ機のシールドによって阻まれてしまった。

 まさに、一瞬の攻防。そして、それを制したヴィレッツ機のヒートホークは、ミカナ機を完全に捉えていた。

 

 もはや、万事休す。かに見えた、その時。

 

『待てこのぉおぉッ!』

 

 スカイツリーの戦いでヴィレッツに一蹴されていた、カリスのライトアーマーが真横から体当たりを仕掛けて来たのである。予想だにしない角度からの不意打ちに、ヴィレッツ機は大きく体勢を崩してしまった。

 

『……ッ! もう目を覚ましおったか!』

『さっきはよくもド派手に吹っ飛ばしてくれたねっ! もうあったま来てるんだからッ!』

『ええい、そのまま寝ておれば良かったものをッ――!?』

 

 だが、気絶から目を覚まして間もない状態では、正確な攻撃は難しい。すぐに姿勢を持ち直したヴィレッツ機は、今度こそとどめを刺そうとカリス機に狙いを定める。

 

『やら……せるものですかぁあぁッ!』

『ぐッ!? あの、戦闘機風情がッ――!』

 

 それを阻んだのは、カリスと同様に辛酸を舐めさせられていた、アシェリーのコアファイター(・・・・・・・)だった。被弾したブースターユニットを切り離し、より無防備な状態になりながらも、彼女はMSへの対抗心を糧にここまで飛んで来たのである。

 30mmバルカン砲とミサイルの連射を、ヴィレッツ機の背に浴びせる彼女の鋭い眼差しは、熱い闘志を宿していた。

 

 そんな彼女の愛機を忌々しげに仰ぐヴィレッツ機が、邪魔者を撃ち落とそうとザクマシンガンを構えた、その時。

 

『……!? しまッ――!』

『レイジ曹長ッ!』

『おらぁあぁあッ!』

 

 カリス機とアシェリー機が、死力を尽くして生み出した最大の好機。それを実りあるものとするべく、レイジ機とミカナ機が同時にビームサーベルを振り上げ――ヴィレッツ機の四肢を、ついに斬り落としたのである。

 無力な達磨と化した青と緑のザクは、力無く地に落ち、その衝撃音を以て己の敗北を告げていた。

 

『……俺如き、この程度で十分だった、ということか……!』

 

 コクピットに走る、強烈な振動。その激しさに意識を失う寸前、ヴィレッツが直面したのは――己の慢心であった。

 

 逃げる必要もない相手。戦闘機如き。そんな驕りが、己の敗因だったのだと。言い訳の余地などない完全なる敗北を経て、彼はようやく受け入れたのである。

 

 故に、彼は。意識を手放す間際に、後悔などない安らかな笑みを浮かべていた。

 

『へへっ、やったぜイサミちゃん、ナギちゃん! これはさすがに惚れ直しただろッ!?』

『あ、あはは〜……どうなんでしょう?』

『……1回は惚れてたみたいな言い方、やめてくれない?』

 

 一方。ついに「十指」の8位を撃破したレイジは、いつもの調子を取り戻してナンパに勤しんでいた。

 表面上は冷たくあしらっているイサミとナギも、彼の奮戦と勝利を見届けたこともあってか、どこか安らいだ様子で頬を緩めている。

 

 そして、そんな彼らをよそに。事切れたように動かなくなったヴィレッツ機を見下ろすミカナは、独り優しげに呟いていた。

 

『あなたに言われずとも、尽くして見せます。……今の私達にも、出来ることを』

 

 改めて、誓いを立てるかのように。

 

 ◇

 

 東京の守りを担う、連邦軍のエースパイロット達。その頂点に立つフィーネ・エイムさえも打ち破り、ジルベルト機は都心部の会場を目指し続ける。傷付いた身体を、引き摺るように。

 次々と戦友を倒され、その度に仇討ちを誓いながらも。終ぞ戦う機会すら得られぬまま、終戦を迎えてしまった悔しさを糧にして。

 

「見つけたぞ……ガンダムッ!」

 

 そして、ついに。パレード会場に佇むレプリカを発見したジルベルトは、万巻の想いを込めて操縦桿を握り締める。

 彼を乗せた黄色のザクは、激しくバーニアを噴かして。クリスマスの夜空を背に、頭上から飛び掛かろうとしていた。逆手に構えたヒートホークが、熱を帯びて妖しい煌めきを放つ。

 

 ホワイトベース隊のガンダムだけではない。その名に連なるあらゆる刺客が、戦友達を屠ってきた。正義の名の下に、自分達を踏み躙ってきた。

 それでも勝てば官軍、負ければ賊軍だというのなら。賊軍としてでも、この雪辱を果たす。それがジャブローで消息を絶った、ガリウス・ブリゼイドへの手向けになると信じて。

 

「某は、例えここで果てるとしてもッ――!?」

 

 その刃を振るい、ガンダムの首を落とす。連邦軍の象徴を、この手で今度こそ破壊する。

 はず、であった。

 

 置物に過ぎなかったはずの、レプリカの首が動き。自分のザクと、視線が合うまでは。

 

「動ッ……!」

 

 咄嗟に回避行動に移ろうと、スラスターの勢いを殺すジルベルト。その判断こそが、命取りであった。

 

 ――フィーネ機との戦いによる損耗は、スラスターにも及んでいたのだから。

 

「……おおおおぉおッ!」

 

 パイロットの雄叫びと共に。不意を突くように動き出したレプリカは――すでに、ビームサーベルの間合いに入っていた。もはや、回避は間に合わない。

 

(無人機を装い、待ち構えていたというのか。某が間合いに飛び込んでくる、その一瞬を狙うために……!)

 

 射程圏内に入るまで引きつける、砲手の如く。焦らず、恐れず、耐え忍ぶ戦法を得手とする兵にしか出来ない、その「賭け」を目の当たりにしたジルベルトは――視界を飲み込む灼熱に飲まれ、焼かれていく。

 

 骨も残さない、その閃光に消えゆく中で。彼は、かつて記録映像で見た「紛い物」の面影を、眼前のレプリカに重ねていた。

 

(この剣閃……そうか、このガンダムのパイロットは……)

 

 ガリウスを倒したという、「白い奴」。その手で今度は、自分が討たれている。

 奇妙な因縁、とも言えるのかも知れない。気づけば彼は、消えてなくなる寸前に――笑みすら浮かべていた。

 

(皆……遅くなってしまい、済まなかったな。ようやく、私も……)

 

 そして。ビームサーベルの光刃が、ジルベルト機を貫き。その切っ先が、東京の夜空を仰いだ時。

 黄色いザクは一つ目(モノアイ)の輝きを失い、永久に静止する。安らかな眠りに、落ちていくように。

 

 それは、さながら。全ての始まりとなった、ガンダムの初陣――サイド7の遭遇戦を想起させる光景であった。

 

「……こんな無謀な戦いを挑んでまで、こいつを……ガンダムを潰したかったんだな」

 

 そして、ビームサーベルを引き抜いたレプリカのパイロット――リュータ・バーニングは。ザクの爆発で都民を巻き込まないよう、優しく機体を受け止めながら。

 静かに、パイロットを失った鉄塊を寝かせていく。まるで、その最期を看取るかのように。

 

「でも……俺は、俺達はもう、負けるわけには行かないんだ。これ以上誰も、傷つけさせないために……」

 

 コクピットの中で目を伏せ、肋の痛みに耐え忍びながら、鎮魂の祈りを捧げていたリュータは。やがて顔を上げ、強い眼差しで夜空を――その向こうの宇宙(そら)を仰ぐ。

 それでも退けないのだという、決意を表明するように。部下も仲間も、今度こそ守り抜くのだと、誓うように。

 

 ――その後、東京都内で抵抗を続けていたジルベルトの部下達も、連邦軍の精鋭達によって敢えなく鎮圧され。

 結果的にこのプロパガンダは、当初の見立て以上の広告効果を発揮してしまうのだった。

 

 ◇

 

 クリスマスイブの東京に現れ、パレードを襲撃した黄色いザク。その刺客を討ち取り、連邦軍の強さを改めて証明したガンダム。この戦いの決着を写した1枚は、翌日の朝刊の一面を派手に飾っていた。

 

「その記事の通り、例の黄色いザクなら永遠におねんねだ。記事には載ってないが……現場にいたパイロットの話によりゃあ、リュータの奴がやったらしい。ほんっと、話題に事欠かねえ奴だよな」

「……そうか」

 

 ソノ・カルマから鉄格子越しに受け取った、その朝刊を広げているガリウス・ブリゼイドは。かつて敬愛していた上官の最期を目の当たりにして、沈痛な表情を浮かべている。

 「介錯」を担ったのが自分を救ってくれたリュータ・バーニングだったことも、彼が心を痛めている一因であった。戦争が終わっている以上、2人が戦う必要などなかったはずなのだから。

 

「……後を追おう、なんて考えるんじゃねえぞ。その時は俺が、あいつに代わってブチのめす」

「心配には及ばん。……後を追う資格など、あるはずがない。私は生きる、生きねばならん」

 

 破れるほど朝刊を握り締め、肩を震わせながら。ガリウスは強固な決意を、その瞳に宿していた。

 過去に囚われ、死へと向かう兵が絶えない、この戦後だからこそ。生き延びた人間は、己に出来る働きを尽くさねばならない。

 

「死んで償いになるのなら、とうにそうしている。……それが過ちだと教えてくれたのは、貴君らなのだから」

 

 それこそが、生き恥を贖うたった一つの術なのだと、己の心に銘じるように――。

 




 ここまで読み進めて頂き、ありがとうございます! もう何度目の「最後」になるのか分からないくらい続けてきたキャラ募集企画でしたが、この度も本企画を盛り上げて頂き、誠にありがとうございました!(*≧∀≦*)
 ちなみに、このエピソードは近いうちにナンバリング通り、第1部と第2部の中間に移転する予定です。なので今回から出てきた新要素に絡む部分は、これから第2部以降のエピソードに加筆していこうと思います。一旦お話を整理したい(´-ω-`)
 ほぼ唯一と言っていい「ジオン側のドラマ」でありながら、他の部と比べて明らかにボリューム不足だった第2部を補うために始めた第1.5部でしたが、最後まで見届けて頂けたのであれば何よりであります。ではではっ、失礼しましたー!٩( 'ω' )و





Ps
 旧キットはいいぞ(゚∀゚)
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