-ガリウス・ブリゼイド-
主人公。23歳。サイド3出身。元ダイクン派の貴族・ブリゼイド家の長男であり、「
-ニコラ・バルヒェット-
26歳。サイド3出身。「五指」の4位とされるガリウスの元教官であり、戦争の激化を受けて前線に戻ってきた今も、その腕には衰えがない。地上用に改修されたヅダFに搭乗する。階級は少佐。
※原案はクレーエ先生。
第1話 灰色の閃弾 -ニコラ・バルヒェット-
――宇宙世紀0079年、11月9日。砂塵が吹き荒れるオデッサの大地を、1隻のギャロップが駆け抜けていた。
その装甲は連邦軍の追撃により激しく損耗しており、あらゆる箇所から火の手が上がっている。消化班も死力を尽くしているが、このままでは大破も時間の問題だろう。
「くそッ……! このままではやられる一方ではないか、ジルベルト大尉も戦っておられるというのにッ! 何でもいい、MSを貸してくれ! 私が時間を稼ぐッ!」
その艦内において、声を荒げていたのは――艶やかな銀髪と、凍てつくような青い瞳を持つ、1人の青年士官。オデッサで敗走を喫し、今もなお生恥を晒し続けている、ガリウス・ブリゼイド中尉だった。
先の戦闘で
「無茶を仰らないでください、中尉! もう動かせるMSといえば、あそこに突っ立ってる手負いのザクくらいですし……あれだって、まともに動かせるとは……!」
「構わんッ! 四肢をもがれた私のグフよりは使えるッ!」
「中尉ッ!?」
「死にたくなければハッチを開けろ! しくじったところで中破寸前のザク1機と、死に損ないの死神1人が消え去るだけだ! このギャロップも、少しは身軽になろうてッ!」
連邦軍による砲撃に揺れる格納庫に、怒号を響かせて。ガリウスは整備兵達の制止も聞かず、満身創痍といった様相のザクにワイヤーを伸ばしていく。
やがてコクピットに乗り込んだ彼は、自分の鎧となった一つ目の巨人を操るべく。鮮血が滲む包帯を破り捨て、痛みよりも傷よりも動きやすさを優先し、操縦桿を握り締めた。
「それも事実なのかも知れませんけど……好きじゃないですよ、そういう考え方ッ! ハッチ解放、急げッ!」
「……構わんよ、嫌われるのは慣れている。ガリウス・ブリゼイド、ザクII出るぞッ!」
開かれたハッチから身を引き摺るように現れる、1機のザク。力無くザクマシンガンを握る、その敗残兵は残された気力を振り絞るように。
背部のスラスターを噴かして、戦場の大地へと飛び出していくのだった――。
◇
ジオン公国におけるザビ家の独裁が、盤石のものとなってからは。初代首相ジオン・ズム・ダイクンに与する、いわゆる「ダイクン派」だったブリゼイド家は、事実上の迫害を受けてきた。
元々、軍人という職務が務まるような
――おやめください、お兄様! 戦争なんて、優しいお兄様に出来るはずがありません!
――ガリウス、必ず、必ず帰ってくるのですよ……!
――済まん、ガリウス……! お前が命を懸けねばならんという時に、私達は何もッ……!
思い出すのはいつも、故郷のサイド3に残してきた、家族達の沈痛な貌。父も、母も、妹も、事実上の人質故に連れては行けず。
ガリウスは彼らを守るため、独りで地球に降り立ち。何度も部下を失い死神の烙印を押され、それでも今日に至るまで戦い続けてきた。
「……それも、もはや終わりなのかも知れんな」
戦火の中でそう呟く、彼のザクは片膝を着き。その機体を覆い尽くさんと聳え立つビッグトレーの巨影と、陸戦型ジムの部隊に完全包囲されていた。
今まで何人もの連邦兵を殺めてきた彼への、報いであるかの如く。
――初陣早々、すまねぇな隊長さんよ! 死ぬのは老いた順だって、相場が決まってんだッ!
――ジオンの「氷魔の蒼弾」、相手にとって不足はねぇ。悪いが、ウチの若いモンを
――死んだ息子と同い年くらいの奴らが、俺らより先に消えていくなんざ……許せるわけがねぇからなぁッ!
――や、やめろ、やめてくれ皆ッ! あいつに近付いたら、近付いたらダメだァッ!
ふと、脳裏を過ぎる「先刻」の記憶。
激戦の渦中、接近して来た
新任の士官らしき青年を守るため、自分に立ち向かって来た彼らを1人残さず、ガリウスは斬り捨てていき。彼自身も怒りを爆発させた
――貴様だけはァッ! 貴様だけは絶対に、駆逐してやるッ!
「……ッ!」
銃口を赤熱させ、修羅の如く襲い掛かってきた陸戦型ガンダム。あの姿を思い出すだけで、全身に悪寒が走る。
家族のためなら、ブリゼイド家のためならと軍人の道を歩み。いつ命を落としても構わないと、心からそう思っていたはずなのに。
部下達の仇だと自分に迫ってきた、あの陸戦型ガンダムの形相を思い出すたびに。死にたくない、という浅ましい本心が浮き彫りにされてしまう。
生きたいと、願ってしまう。そんな己の醜さを受け止められるほど、彼は
「……笑わせる。あれほど大勢の命を奪い、憎しみを受けていながら。この期に及んで、死にたくない……などと」
故にこの当時の彼は、己の本心を認め切れず。その本能を自嘲しながら、自ら死に向かうかのように、ザクを立ち上がらせていた。
全身の各部から火花を散らす、半死半生の一つ目。その惨めな姿に、永遠の沈黙を齎すべく――無数の陸戦型ジムは一斉に、100mmマシンガンの銃口をガリウス機に向ける。
「……あぁ、これで」
ようやく。ジオン軍人としての役目を、果たすことが出来る。命と引き換えに同胞達を逃がした、栄えあるガリウス・ブリゼイドとして
そう確信した彼が、血みどろになるまで傷付いた身を震わせながら。その白い口元を、緩ませた。
――その時。
『殿を務めて栄えある戦死、か? そんな戦い方を教えた覚えはないぞ』
「……ッ!?」
ガリウス機の間近にいた陸戦型ジムの頭部が、瞬く間に吹き飛んだのである。その不意打ちを目の当たりにした僚機達は、周囲を見渡しながら散開し――やがて、崖上に立つ1機のMSを目撃した。
硝煙を放つ95mm狙撃ライフルを携えた、EMS-10F「ヅダF」。地上用に改修されたその機体はグレーに塗装され、額からは一角が伸びている。
「バルヒェット教官……!」
『「氷魔の蒼弾」などという死神の名を背負うには、お前は些か甘過ぎる。……手本を見せてやる、よく目に焼き付けておけ!』
忘れるはずもない、その声は。かつて士官学校で教鞭を執っていたガリウスの師――ニコラ・バルヒェット少佐のものだった。
戦線拡大を受け、教官職から前線に復帰してきた彼女だが、その腕は全く衰えていないらしい。「五指」の4位たる彼女のヅダFを狙う、陸戦型ジムの一斉射撃は掠りもしていなかった。
今回からは、現在活動報告で募集している新キャラ達が登場する、ジオンサイドでのお話となります。オデッサから退却中のガリウスにスポットを当てた、本編開始前のエピソードでございます( ˘ω˘ )
前回の第1弾キャラ募集企画に引き続き、今回も大変ありがたいことに多くの方々にご参加頂いております。なのでちょっと予定を変更し、今回も数話に分けて更新して行こうかなーと思います! この後も応募キャラが続々参戦していきますので、どうぞお楽しみに!(゚∀゚)