機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-最終話からの登場人物-

-サナル・アキト-
 21歳。サイド3出身。若年ながら数多くの戦場で活躍してきた「五指」の3位だが、非常に傲慢で自信過剰な人物。後にソノ・カルマの宿敵となる男でもあり、オデッサの戦場においてはザクIIに搭乗する。階級は大尉。
 ※ターレス名義で活動していた作者の過去作「機動戦士ヘビーガンダム(http://anotheridea.nobody.jp/HeavyG.htm)」のラスボス。



最終話 驕傲の銃士 -サナル・アキト-

「……先に退却したはずの君がそれに乗っている、ということは……わざわざ私のために、そんなものまで持ち出して来たのか」

『ご、ごめんなさいっ! でも、でも私っ、どうしても待ってるだけなんてダメなんですっ! 中尉がいつも誰かのために、ボロボロになりながら戦ってるところ、ずっと見てきたからっ……!』

「アリア……」

 

 出会った頃から何かとそそっかしい上に、無鉄砲なところがあったアリアなら、確かにライノサラスを持ち出すくらいの無茶をしても不思議ではない。

 普段ならいつものように叱っているところなのだが、自分を案じての行動とあってはそれも難しいものがあった。故郷に残してきた妹によく似ている彼女に対しては、ガリウスも何かと弱いのである。

 

「……言いたいことは山ほどあるが、ここを離脱するのが先決だ。皆の脱出経路を切り開くためにも、我々で先陣を切るしかない! アリア、ユウ、頼むッ!」

『はいっ! どこまでもお供しますねっ!』

『ったく、相変わらずお高く止まった言い草だぜ』

 

 とにかく今は、ライノサラスの突破力に賭けるしかない。そんなガリウスの決断を汲み取ったユウ機は、彼のザクに肩を貸しながら、スラスターを噴かしてアリア機の上に飛び乗る。

 その際の振動を合図に。148cmという小柄な体躯に反したEカップの巨乳と、ツーサイドアップの茶髪を弾ませて、アリアは勢いよくライノサラスを走らせるのだった。

 

『いっ、けぇえぇえーっ!』

 

 大口径キャノンをはじめとする、ありとあらゆる搭載火器を惜しむことなく撃ち放ち。陸戦型ジムの部隊を全く寄せつけることなく、彼らを乗せたライノサラスは、オデッサの大地を駆け抜けて行く。

 アリア機の上部に乗っているガリウス機とユウ機も、近づいて来る敵機をザクマシンガンで懸命に迎撃していた。

 

「……!」

『ガリウスッ!』

 

 だが、連邦軍の攻撃は苛烈を極め――1機のジムが放ったミサイルランチャーの弾雨が、ガリウス機に降り掛かろうとしていた。

 ユウ機は咄嗟に身を盾にして、戦友を守ろうとする。その時だった。

 

「……フン」

 

 そこから、やや離れた場所に潜んでいた1機のザクが。命中する直前、ミサイルランチャーの弾頭全てを撃ち落としてしまったのである。

 

 ザクマシンガンの銃弾を1発たりとも無駄にすることなく、正確にミサイルを撃墜して見せたそのパイロットは――不遜に鼻を鳴らしながら。砂塵を巻き上げ、走り去って行くライノサラスを静かに見送っていた。

 

「……あれほど大勢の助けがなければ脱出すらままならんとは、『氷魔の蒼弾』が聞いて呆れる。まぁいい、これでようやく証明されたのだ」

 

 背後から迫ろうとしていたジムの群れを、一瞥もせずに撃ち抜きながら。圧倒的な力量差を見せ付けるザクのパイロットは、傲慢な笑みを浮かべる。

 

「やはりジオン地上軍最強のパイロットは、この俺だということがな……!」

 

 周囲のジムが恐怖を覚え、近づけなくなるほどのプレッシャーを全身から放ち。未だ(・・)挫折を知らないサナル・アキト大尉は、さらに歪に口角を吊り上げるのだった。

 後に、「五指」の3位たる自身のプライドを完膚無きまでに破壊してしまう、「宿敵(ソノ・カルマ)」の存在など知る由もなく――。

 

 ◇

 

 ――そして、ライノサラスの圧倒的な突破力が功を奏して。ガリウス達は連邦軍の追撃を振り切り、ついにアブストのガウへと辿り着いたのだった。

 苦闘の末に勝ち取った、「生還」という名の戦果に沸き立つ仲間達を他所に。すでに満身創痍となっていたガリウスは、緊張の糸が切れたこともあって気を失いかけている。

 

「……ぁあ、私は、また」

 

 助けられてしまった。自分は何度も仲間を死に追いやってしまう、死神だというのに。

 そんな想いを抱えながらも、仲間達の勇姿を仰ぎ。薄れゆく意識の中で、ガリウスは自分にすら(・・・・・)手を差し伸べる戦士達へと、精一杯の感謝を伝えようとする。

 

「……すま、ない。アリア、皆……」

 

 だが、失血と疲弊によって意識を手放す直前。出て来たのは、感謝ではなく、謝罪の言葉だった。

 軍人をやるには優し過ぎた彼には、救われた喜びよりも。死神の負け戦に付き合わせてしまった、という引け目が、先に来ていたのである。

 

 ――やがて、アブストが艦長を務めているガウの艦内で、目を覚ました彼は。あの激戦区の中で自分を救ってくれた、戦友達を探す暇もなく。

 

「ブリゼイド中尉。この作戦が成功した暁には、君を死神と誹る者など1人も居なくなるだろう。『氷魔の蒼弾』という異名は、『赤い彗星』の如き雷名として生まれ変わるのだ」

「……ハッ!」

 

 自分を亡き者にして、見目麗しい妹を手篭めにしようと目論んでいた、ベルドド・デムスの命によって。アリアのライノサラスをベースに現地改修された、かつての愛機「特攻型グフタンク」と共に。

 決死隊同然の任務を帯びて、ジャブロー降下作戦に参加することになった――の、だが。

 

「死んでいった仲間の命を背負って、生きようとも思わないような奴にッ! お望み通りの死なんて、くれてやるものかよッ!」

 

 その先には。数奇な運命と、再会が待っていたのである。

 

 ◇

 

 ――そして。宇宙世紀0080、3月下旬。

 

 プロパガンダの一環として制作された、「パリ防衛隊」に属する美女達の活躍を記録したドキュメンタリー映画が、全世界で公開され。若者達を中心に、人気を博していた頃。

 

「……行くのか」

「あぁ。……彼ら(・・)が、待っている」

 

 海辺を一望できるテラスで、穏やかなひと時を過ごしていたガリウス・ブリゼイドは。終戦を経て再会を果たしたリュータ・バーニングに背を向け、席を立とうとしていた。

 

 1月上旬にグラナダ条約が締結され、後に「一年戦争」と称されるこの戦いは幕を下ろした。だが、誰もがその条約に恭順し、矛を収めたわけではない。

 終戦協定を受け入れずに戦闘を続行しているジオン軍残党は、今もなお戦い続けているのだ。彼らの戦争はまだ、終わってはいないのである。

 

 当然ながら連邦軍も彼らを野放しにしているわけではなく、現在は地上で抵抗を続けている彼らを掃討するべく、世界各地で動き始めている。勝敗など、初めから見えていると言ってもいい。

 だからこそ、悪戯に戦力を消耗しないよう、可能な限り投降を呼び掛けるようになっているのだが。それは追い詰められた彼らを挑発する結果を招き、現在に至るまで説得に成功したケースはほとんどないのだという。

 

 ――そこで。今後は捕虜の元ジオン兵を、説得役として起用するという案も検討され始めている。

 それが単なる噂話ではないことは、席から立ち上がったガリウスの眼が証明していた。すでに連邦軍によって、賽は投げられていたのである。

 

「死すらも貴君に奪われたあの日から、ずっと考えてきた。今もなお生き長らえている私の命に、何の意味があるのかと」

「……答えは、見つかったんだな」

「あぁ。……伝える(・・・)こと。それが私に課せられた真の罰なのだと、ようやく悟ったよ」

 

 憂いを帯びた笑みを浮かべ、ガリウスは懐から1枚の写真を取り出していた。そこには、在りし日に集いし戦友達の笑顔が映されている。

 

 ニコラ・バルヒェット。

 

 アドラス・セン。

 

 ジェイコブ・ホーク。

 

 レノン・マーシュ。

 

 ディートハルト・クリーガー。

 

 ヴィレッツ・ハルトマン。

 

 アンナ・ブリューネル。

 

 チョー・コウ。

 

 ロビン・カーター。

 

 ゴウ・サワキ。

 

 ヴァルタル・フリーデゴード。

 

 メリッサ・マイヤー。

 

 イルザ・レーナルト。

 

 ユウ・キリシマ。

 

 そして、アリア・ホプキス。

 

 彼らはきっと、まだこの世界のどこかで戦い続けている。終戦を知らずに。あるいは、受け入れられずに。

 その苦闘が呼ぶ悲劇の連鎖を断ち切るには、微力であろうと自分が立ち上がるしかない。それが、ガリウスが見出した新たなる使命だった。

 

「分かってるのか。条約を受け入れないジオン残党の前に、お前が立つっていうのが……どういうことなのか」

「覚悟の上だ。……元より、彼らがいなければ助からなかった命だ。今更、躊躇う理由などない」

 

 ジオン兵同士の対話に持ち込めば、説得の成功に繋がる可能性も芽生えてくる。それは確かに一理はあるが、博打であることも事実であった。

 それで余計に残党を逆上させてしまった場合、間違いなく説得役を担う元ジオン兵にも危害が及ぶ。連邦軍にも残党にも見放され、命を落としてしまうことも覚悟せねばならない。

 

 だが。そのリスクに言及するリュータに対しても、ガリウスは微笑を浮かべ「覚悟の上」と言い切って見せる。

 憎むべき敵兵にまで手を差し伸べられる、この男なら。故郷に残してきた両親のことも、未だ恋すら知らない妹のことも、託すことが出来る。そんな確信が、彼をそうさせていた。

 

「在るべき自分を、思い出して欲しいと……セフィラという少女も、貴君に伝えたのであろう? ならば次は、私の番だということだ」

「……」

 

 オデッサに囚われていたのだという、ニュータイプの少女。その人物が起こしたという奇跡を信じるならば、自分もそれに続かねばならない。

 それもまた、理由の一つとなっていた。

 

「私は、迎えに行かねばならない。そして、伝えねばならない。戦いは……もう、終わったのだと」

 

 日が沈み、夜の帳が下りる頃。透き通るような海を見下ろす月の輝きを仰ぎ、銀髪の青年は静かに、そして力強く歩み始めていく。

 どこか悲壮的な色を滲ませるその背中を目にしたリュータは、半ば無意識のうちに声を掛けていた。

 

「……ガリウス」

「なんだ」

 

 特に、何を言うべきかと考えていたわけではない。彼はあるがままに、自らの想いを口にする。

 

またな(・・・)

「……あぁ」

 

 飾り気のない、その一言は。自らに近付く「死」を意識し始めていたガリウスを、振り向かせ。

 優しげな笑みを、浮かばせていた。

 

「また会おう、リュータ」

 

 そして彼は、ここに来て。再び、死にたくないと。生きたいと、願ってしまうのだった――。

 




 ここまで読み進めて頂き、ありがとうございます! そして、今回の第2弾キャラ募集企画にご参加頂いた皆様、ご協力誠にありがとうございました!(*≧∀≦*)
 ジオン軍サイドのお話にも触れたことですし、今度こそ完結! だと、思っております。とりあえず現時点では(^^;;

 もしまた何か書いておきたいネタが見つかったら、その都度カタチにしていくこともあるかも知れませんねー。その時はまた、遊びに来て頂けると幸いです(*´ω`*)
 ではではっ!٩( 'ω' )و


【挿絵表示】


Ps
 本作は、ターレス名義で活動していた頃の作品「機動戦士ヘビーガンダム」以来となる、約12年ぶりのガンダム小説でした。いやー楽しかった(*´꒳`*)
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