機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

66 / 177
-第4話からの登場人物-

-ヒダカ・アマサキ-
 20歳。兵庫出身。第9陸戦小隊の元所属パイロットであり、普段は飄々としているが時折熱い一面を見せることもある。オレンジ色に塗装された鹵獲機のザクIIに搭乗する。階級は少尉。
 ※原案はシズマ先生。

-ゾネス・ゴルドー-
 34歳。ワシントンD.C.出身。「切り裂き道化師」という異名で恐れられている、ルウム戦役から戦い続けてきたベテランパイロット。ビームダガーを装備した専用のジムに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案はバッフロン先生。

-ミランダ・ヴェルテ-
 19歳。テキサスコロニー出身。マルティナ・テキサスの従妹であり、現在はジオン軍人として連邦軍に立ちはだかっている。緑基調に塗装された鹵獲機の陸戦型ガンダムに搭乗する。階級は軍曹。
 ※原案は速水厚志先生。

-ユリウス・ヴォルケンシュタイン-
 20歳。サイド3出身。少年のような小柄な体躯に反した、優れた操縦技術の持ち主。陸戦型ゲルググに搭乗する。階級は軍曹。
 ※原案はmikagami先生。



第4話 激情の戦斧 -ヒダカ・アマサキ-

 HLVを守るべく、マデラスの指揮下で戦っている防衛隊の兵士達。その中には陸戦型ガンダムを手土産に、連邦軍から寝返ってきた「裏切り者」も含まれていた。

 

『……「暴風」の異名で恐れられている、ジオン軍のミランダ・ヴェルテ。それはあんたで、間違いないな』

『そう……私のことは、連邦軍にも知れ渡っているのね』

 

 その戦い振りから「暴風」という異名で恐れられていた、ミランダ・ヴェルテ軍曹の陸戦型ガンダムを前に。ヒダカ・アマサキ少尉は、低くくぐもった声色で「確認」していた。

 オレンジ基調のザクIIと、緑基調の陸戦型ガンダム。鹵獲機同士の対決であるこの構図はまるで、双方の陣営が入れ替わったかのようであった。

 

『あんたのことを噂で知ってるのは、北米戦線にいるごく一部の兵士達だけさ。……ラッキーなことに、宇宙軍にまではあんたのことは広まっちゃいない』

『ラッキー……?』

 

 かつて共にジャブローで戦った、マルティナ・テキサス中尉。彼女の面影を残しているミランダを前にして、ヒダカは溢れんばかりの「怒り」を。少しずつ、露わにしていく。

 それはジャブローの第9陸戦小隊にいた頃、リュータ・バーニングやアリサ・ヴァンクリーフらの前で飄々と振る舞っていた彼とは、まるで別人のようであった。

 

『……なぜなんだ。なぜあんたは、ジオン軍にいる! マルティナ・テキサス中尉の従妹であるあんたが、そんなところで何してやがるッ!』

『……!』

 

 その激情が完全に発露した瞬間。それまでは冷ややかな貌でヒダカ機と対峙していたミランダは、初めて目を剥いた。

 かつては故郷で朗らかに笑い合い、共に同じ時間を過ごしていた最愛の従姉。その名前を出された事実は、凄まじい衝撃となって彼女の心を襲っている。

 

『そう……姉さんを知ってるのね』

『知ってるなんてもんじゃないさ……! よく聞かされてきたぜ、あの人がどれほど、生き別れたあんたの身を案じていたのかも! あんたを探すために、宇宙軍に行くことに決めたって話もな!』

『……そう……姉さんが……』

 

 相手が従姉の知人と知り、一瞬でも飲まれかけていたミランダだったが。その脳裏に過る「過去」を思い返す度に、彼女は戦うしかないのだという結論に至っていた。

 

『……スペースノイドの私には、これしかなかったのよ。私は姉さんのように、出自に纏わる誹りに耐えられるほど強くはなれない。これが弱い私なりに見つけた、私の生き方なの』

『それでマルティナ中尉の仲間達を、大勢ぶち殺してきたってのか。あんただって、元々は連邦軍人だったろうにッ!』

 

 テキサスコロニー出身の彼女達は、決して最初から歓迎されて連邦軍に入ったわけではない。「コロニー落とし」から日も浅く、親兄弟を失ったアースノイド達からの差別も激しい時期だったこともあり、ミランダもマルティナも苦難の連続だったのだ。

 それでもマルティナは類稀な実力を以て信頼を勝ち取り、陸戦中隊でも名を馳せたが。味方に背を撃たれたミランダは、ジオン軍に流れるしかなかったのである。

 

『だったら……なんだっていうの。私を殺すの? それで満足?』

『俺の満足なんざ、どうでもいい』

 

 だが、それを訴えたところで、自分の手が多くの連邦兵の命を奪ってきた事実に変わりはない。故にミランダは赦しを乞うわけでもなく、ヒダカの言葉を待つ。

 

『まずはあんたをその鹵獲機から引き摺り出す。そしてマルティナ中尉に直接詫びさせてやる! 今まで、心配かけてごめんなさいってなッ!』

『そんなこと言ったって……今更、もう遅いの。私はもう……戻れないのッ!』

 

 やがて絞り出されたヒダカの言葉は、ある意味では救いだったのかも知れない。両者はヒートホークとビームサーベルを構え、互いに斬り掛かるが――ミランダ機の方が一瞬、出遅れていた。

 

『はぁあぁあッ!』

『……ッ!』

 

 ザクIIと陸戦型ガンダムという、MSの性能差を鑑みても。元整備士のヒダカと、生粋の戦闘員であるミランダの技量差を考慮しても。

 ヒダカ機には、万に一つも勝ち目がなかったはずなのに。すでにヒートホークの光刃は、ミランダ機の首を捉えている。

 

(……姉さん。マルティナ姉さん……ごめんね。ごめんなさい。弱い従妹で、ごめんなさい)

 

 それは心のどこかで、敗北を願うほどに追い詰められていたが故の、イレギュラーであった。もはや何を以てしても許されない、咎を背おうが故の。

 

『ぐッ……!?』

『落ち着け、ミランダ! お前らしくもないッ!』

『ユリウス……!』

 

 だが、そんな今の彼女にも、死なせまいと動く仲間がいる。MS-14G「陸戦型ゲルググ」を駆るユリウス・ヴォルケンシュタイン軍曹の檄が、ミランダを我に帰らせていた。

 彼の愛機が握っているビームナギナタの光刃は、ヒダカ機のヒートホークを容易く受け止めている。ただでさえミランダ機だけでもかなりの脅威なのに、ゲルググタイプまで増援に来たとあっては、ヒダカには為す術もない。

 

『元連邦兵だろうが、こいつはもう俺達の仲間なんだ! 今更、見殺しになんかしてたまるか――ッ!?』

『見つけたぞッ! 今度こそ苦しむ間もなく、コクピットを焼き切って即死させてやるッ!』

 

 だが、彼らの戦いが引き寄せた機影は、ユリウス機だけではなかったのである。ヒダカ機に光刃を向けていた陸戦型ゲルググは、自分を先程まで狙っていた「追手」の殺気を敏感に感じ取っていた。

 ナイフを持ったピエロのエンブレムを右肩に施した、1機のジムが現れた瞬間。戦局は、さらに激しく変化する。

 

『ヒダカ少尉、下がれ! あの新型は少々手強いぞッ! ジオンに残った北米の拠点はもはやこのキャリフォルニアベースだけだ、奪われたものは全て取り戻すッ!』

『ゾネス大尉ッ!』

『くッ、もう追い付いてきたのかッ!』

 

 ゾネス・ゴルドー大尉の愛機であるそのジムは、2本のビームダガーを振るいユリウス機を圧倒していた。「切り裂き道化師」という異名を、体現するかの如く。

 

『才能は充分、気勢も申し分なし。……だが経験は足りていないようだな。敵同士であること、惜しく思うぞッ!』

『ぎ、技量が違い過ぎるッ……! こいつ、本当にただの量産機なのかッ!?』

 

 後にユーグ・クーロ大尉に並ぶ、北米奪還の英雄として名を馳せる武人の刃は。才能に秀でた若獅子という芽を、容赦なく摘み取ろうとしていた。

 

『生憎だが、接近戦は俺の十八番なのだよッ!』

『くそッ、このままじゃ殺られるッ……!?』

 

 全ては、先のキャリフォルニアベース防衛戦で命を落とした同胞達を、弔うために。

 

『……! ユリウス、聞いた?』

『あ、あぁ……! HLVの発射も秒読みに入ってる、そろそろ俺達も引き上げよう!』

 

 その時、ユリウス機とミランダ機に、ガルド機からの通信が入ってくる。沿岸部に待機している潜水艦(ユーコン)が、撤退の準備を進めている、という内容だった。

 ヒダカ機のザクだけならともかく、ゾネス機のジムまで加わった今では、継戦も困難。ならば、もはや選択の余地などない。

 

 と、言わんばかりに。ユリウス機とミランダ機は、腕部グレネードランチャーとロケットランチャーで牽制射撃を繰り返しながら、スラスターを噴かして後退し始めていく。

 ヒダカ機とゾネス機も、ブルパップマシンガンと79F-1型ビームスプレーガンで追撃するが、その連射は1発も当たることなく――とうとう、見えなくなってしまった。

 

『なッ……! この期に及んで逃げるってのか、ミランダ・ヴェルテッ!』

『ヒダカ少尉、深追いするな! 我々の目的はあくまで、HLVの発射阻止だ。……決着を付ける機会は、いずれ訪れる』

『くッ……ちくしょおッ!』

 

 マルティナの苦悩を知るが故に、なんとしてもミランダを捕らえたかったヒダカは。ゾネスの励ましに耳を貸す余裕もなく、コクピットの壁を殴り付けている。

 キャリフォルニアベースに轟く爆音は、そんな彼の慟哭さえも掻き消していった。

 

(あの人……すごく、怒り慣れてない感じだった。本気で戦おうとはしてたけど……私を殺そうとは、してなかった。怒ることも、私を倒そうとすることも……本意じゃなかったんだ)

 

 一方、ユリウスと共にヒダカ達の追撃を振り切っていたミランダは――胸中にズキリと走る痛みを覚えながら、戦火の中で対峙していたヒダカの様子を思い返していた。どこか不器用だった彼の姿に、幾度となく想いを馳せて。

 

(それなら、その優しさは……全部、姉さんのために使ってあげて欲しい。どうしたって私はもう……「殺すべき敵」なのだから)

 

 それでも彼女は、今の仲間達と肩を並べ、脱出を目指している。もう戻れないのだと、改めて己自身に突きつけるかのように――。

 




 活動報告にある通り、連邦軍及びジオン軍の新オリキャラ募集企画は1月15日00:00まで続いております。機会がありましたらお気軽にどうぞー(о´∀`о)

Ps
 陣営選択式というのはシリーズ初の試みなのですが、これはこれで「どの組み合わせが1番面白いか」というシチュエーションを考えるのが楽しくなってきちゃいますね(*´꒳`*)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。