-バルド・シディス-
50歳。サイド3出身。開戦前から軍務に就いていた大ベテランであり、ブリティッシュ作戦にも参加していた過去を今でも悔やみ続けている。グフのシールドを装備したザクIの現地改修機に搭乗する。階級は曹長。
※原案は赤犬先生。
「五指」の3位こと、サナル・アキト。その戦闘力はエース級の実力を有するガンダムタイプとキャノンタイプの2機掛かりでも、容易く打倒できる相手ではなく――レオとシンジは今もなお、たった1機のザクを仕留めきれずにいる。
『ぐぉあぁッ!』
『ハハハッ、強がったところで所詮は装甲だけが取り柄の木偶の坊よ! その程度でこの俺に挑もうとは、片腹痛いわッ!』
両肩に装備されたスプレーミサイルランチャーによる弾幕も、60mmバルカン砲による迎撃も、
ガンキャノンの装甲のおかげで、即座にその刃先がコクピットに及ぶことはなかったが、それも所詮は時間の問題。シンジは迫る「死」の危機を、間近に感じ取っていた。
『……へッ』
だが、それでも口元は笑っていた。ヒートホークを握っているサナル機の腕を、決して逃すまいと掴みながら。
『……ッ!? ぬ、抜けんッ!』
『あぁ……取り柄は確かに装甲だけさ。お前を仕留めるには、それで十分だからな!』
『そういうこったァッ!』
それがピクシーに逆襲のチャンスを与えるための布石なのだと、サナルが気づいた時にはすでに。真横から肉薄していたレオ機が、ビームダガーでサナル機の片腕を切り裂いていた。
まるで獲物を食い破る、牙の如く。
『ぬぐあぁあぁッ、こ、この駄犬共があぁあッ……!』
『……!? 待ちやがれッ!』
その流れるような連携と自機の損傷に、余裕の笑みを崩されたサナルは顔中に青筋を浮かせながら――片腕をもがれたザクを、素早く退避させる。
加速に特化している彼のザクを追い、レオ機とシンジ機も懸命にスラスターを噴かすのだが、それでも距離を離される一方となっていた。
やがて彼のザクは、一際巨大な格納庫の奥へと逃げ込んでいき、レオ達の前から姿を消してしまう。その様子を目撃していたシンジ機は、今度こそとどめを刺してやろうと猛進するのだが――レオ機は逆に、急停止していた。
『なんだ、あのバカデカい格納庫……! ミュラー軍曹、戻れ! あの野郎、何か隠し持ってやがるぞッ!』
『だったらそれごと、今度こそ吹っ飛ばして――!?』
そこが、運命の分かれ目だったのである。
シンジ機が格納庫の壁に向かって直進しながら、スプレーミサイルランチャーを放とうとした瞬間。
彼の砲撃よりも先に、壁の向こう側から飛んで来た連装メガ粒子砲の閃光が――シンジ機を撃ち抜いてしまったのだ。
激しいビーム攻撃はその1発だけにとどまらず、格納庫を内側から破壊しながら全方位に向かって、苛烈に乱れ飛んでいた。1番近くにいたシンジ機はその乱射によって四肢をもがれ、無惨な達磨となって落下していく。
『ミュラァアァッ!』
その惨劇は全て、一瞬のことであり。ようやく状況を把握したレオがシンジ機に向かって絶叫した頃には――すでに格納庫に隠されていた「怪物」が、その正体を露わにしていた。
ミノフスキークラフトによって飛行している、紫紺の巨大機動砲座――MAX-03「アッザム」。その巨躯は自らの手で格納庫を破壊しながら、レオ機の頭上を取るように舞い上がっていた。
『……よくも、この俺のザクを傷物にしおったな。代償は貴様らの命だ、死を以て贖えッ!』
『
接近戦に重点を置いて設計されている、レオのピクシー4号機。遥か上空からのメガ粒子砲で一方的に攻撃できる、サナルのアッザム。
――相性は、最悪であった。
◇
その頃、サトルとガルドが搭乗している2機のF2型を追っていたユウキとゼファーは――ただならぬ「強敵」の接近を予感し、足を止めている。
『くそッ、あのザクどこに……!』
『……チッ。構えろユウキ、どうやら
猛炎と黒煙が渦巻く工業地帯の戦場。その通路に立ちはだかっている1機のMS――MS-05B「ザクI」の傍らには、鉄塊と化したジムが無数に転がっていた。
旧型のザクと言ってしまえば容易い相手に聞こえるかも知れないが、件のザクの外観はすでにその域を逸している。グフのシールドを装備しているその機体は、各所の装甲を増強している現地改修機らしく、全体的なシルエットは本来のザクIに比べてかなりマッシブな印象を与えていた。
『ほう……ガンダムタイプに鹵獲機のザクとは、随分珍しい編成だな。今までの連中とは違うらしい』
『なんだ……こいつは』
だが何よりも異様なのは、その機体から漂って来る負の感情。憎悪の類とも違う、えもいわれぬ不気味さであった。
その機体を駆る壮年のパイロット――バルド・シディス曹長は、暗澹とした眼でゼファー達を見つめている。
『……随分と辛気臭いオーラのザクだな。ユウキ、こいつは俺に任せて先を急げ』
『しかし、2人掛かりの方が……!』
『このままあのザク共に逃げられる方が、こちらにとっては痛手だ。……こいつを片付けたらすぐに追う、何も心配するな』
『……はい。分かりました……お願いします、ゼファー中尉!』
年若い少年兵では、その独特なプレッシャーに飲まれてしまう危険性がある。そう危惧したゼファーはユウキを先行させるべく、「俺が相手だ」と言わんばかりにザクIの視界に入り込んでいった。
そんな彼の心遣いを汲み、ユウキはスラスターを噴かしてザクIを飛び越えていく。
『……むッ!』
『あいつは追わせん。……見てわからないか? 貴様の相手はこの俺だ』
去りゆく局地型ガンダムを追おうとした件のザクは、ブルパップマシンガンによる牽制射撃に邪魔され、足を止めてしまう。やがて振り返った彼は、屍人のような眼差しでゼファー機を見据えていた。
『悪いが貴様には、この場でさっさと退場してもらうぞッ!』
『……好きにしてみろ。これ以上、若い芽を摘ませはせん』
やがて、バルド機がその手に握っていたジムの首を投げ捨てた瞬間。
それを開戦の合図とするかの如く、両者は同時にヒートホークを振るい、真っ向から激突する。互いのコクピットを狙い、僅か一瞬の隙も逃すまいと、男達は光刃を閃かせた。
脚、両腕、肩。時には顔面にも刃が沈み、双方の鎧を溶かしていく。黒煙が噴き上がり、火花が飛び散っても。内部の機構が剥き出しになるほど、装甲を抉られても。
彼らは決して怯むことなく、互いの命を刈り取らんとしていた。
『……妙なザクだな。在って然るべき殺意というものが感じられない。むしろ、死に場所を求めているようにも……』
『よりによってザクの手で……か。私には、似合いの末路かも知れんな』
その渦中、互いにはそれぞれ、思うところがあったのか。ゼファーもバルドも、神妙な面持ちで操縦桿を握り――最後の一閃を放っていた。
紙一重の接戦を制したのは――ゼファーのザクであり。首を刎ねられ、両脚の関節を斬り払われたバルド機は、力尽きたように崩れ落ちていく。
『……何も躊躇うことはない。ブリティッシュ作戦に携わった大罪人の命だ。遠慮なく刈り取るが良い』
『ブリティッシュ作戦……そういうことか』
その決着の後、ゼファーによる「介錯」を待つバルドは、ようやく憑き物が落ちたと言わんばかりに安らかな表情を浮かべていた。これから殺されるという場面だというのに、その貌には安堵の色すら滲んでいる。
――人類史上最悪の惨劇、コロニー落とし。その実行に関わっていたバルドの心は常に、自責と後悔に塗れていた。
せめて盾となり、若い兵達の未来だけは守りたい。それだけが、辛うじて彼を生かしている唯一の原動力だったのである。
(……こいつらが、理解し難いエイリアンのような連中だったなら。きっと俺も、迷うことなくこの刃を振り下ろせただろうに)
スペースノイドであろうとアースノイドであろうと、同じ人間であるなら。胸中にのし掛かる痛みは、察するに余りある。
(向き合えば向き合うほど、己の命を差し出すことしか思いつかなくなる。そういう考えに至ってしまう。そんな男にまで……犠牲を強いるのか? それが望みだったのか? 俺は……)
ブリティッシュ作戦によって妻と子を失って以来、ジオンへの憎しみを胸に戦い抜いてきたゼファーだからこそ。憎しみを向けてきた側に立つ男だからこそ。バルドの苦悩にも、触れられるのだ。
やがてヒートホークの刃先を下ろしたゼファー機は、他部隊に身動きできない捕虜がいることを通達しながら――横たわるバルド機の傍らを、通り過ぎていく。
それが僅かな逡巡を経て導き出された、ゼファー・アルビオンという男の「答え」であった。
『……この場で殺す価値すらない。そう、言いたいわけか』
『生殺与奪を握っているのは、戦いを制したこの俺だ。……文句があるなら掛かって来い。
そして、飛び去っていくゼファー機を見送るしかないバルドは。命を奪われるよりも重い「敗北」というものがあることを、ようやく思い知るのだった――。
本日を以て、オリキャラ募集企画は終了となりました! 本企画にご参加頂いた全ての皆様、ご協力誠にありがとうございます!(*≧∀≦*)
まだまだ連載は続いておりますので、どうぞ最後までお楽しみにー!٩( 'ω' )و
Ps
お馴染みの240mmキャノン仕様だったデューク機のガンキャノンとの差別化として、シンジ機のガンキャノンはスプレーミサイルランチャー仕様となっております。あれすこ(*´꒳`*)