機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第8話からの登場人物-

-ダファーズ-
 42歳。ウェリントン出身。戦火の中で妻子と左脚を失った民間人であり、連邦軍への恨みを糧にジオン軍に協力している。爆弾を満載した中古のホバーエレカに搭乗する。
 ※原案は灰汁人先生。

-カポル・フェイネック-
 20歳。ベオグラード出身。空間認識能力に秀でた元サーカス団員のパイロットであり、大人を自称しているが非常に子供っぽい。大型の高機動バックパックを搭載した、薄い赤と青を基調とする専用のジムに搭乗する。
 ※原案はアルキメです。先生。



第8話 捨身の伏兵 -ダファーズ-

 サナルとマデラス率いる防衛隊が盾となり、守り続けているHLV。その発射がすでに秒読みに入っている中で――行手を阻むジオン軍のMSを次々と蹴散らしている、1機のジムがいた。

 

『さぁーて! 私のパフォーマンスはまだまだこれからだよぉ。舞台装置になりたい子から、じゃんじゃん掛かって来なさいっ!』

 

 薄い赤と青で派手に彩られたカラーリング。背部に装備された大型高機動バックパック。そして胸部右側に刻まれた、丸い尾で弾や斧を弾くフェネックのエンブレム。

 それらの特徴を有するカポル・フェイネック軍曹の専用機は、まるで曲芸のように宙返りしながら、2本のビームサーベルで何機ものザクを斬り伏せている。

 

『ジャジャーンっ! どう? サーカス仕込みのド派手なアクションっ! 君達に付いて来られるかな〜っ!?』

 

 突出した空間認識能力を持つ彼女の操縦は、極めて人間的(・・・)であり――2丁の100mmマシンガンに切り替え、複数機を同時に撃ち抜いていくその姿は、生身の人間が演じているかのような挙動であった。

 

「……クソッタレ。連邦のクソッタレ共がッ……!」

 

 ――その大立ち回りの裏側で。爆弾を満載したホバーエレカに1人乗り込み、単身でカポル機に特攻を掛けようと目論む男がいた。

 男の名はダファーズ。ジオン軍の第3次降下作戦に伴う戦闘で妻子を失って以来、不甲斐ない連邦軍への復讐のため、ジオンに従い続けてきた民間人である。

 

 左膝から下を失い、妻子まで奪われたというのに、連邦政府からは小遣い程度の見舞金だけ。

 そんな無情な世界への恨みと諦念ばかりを募らせ、酒に溺れながらも辛うじて生き延びてきた彼は今、自らの手でこの過酷な人生に幕を下ろそうとしていた。

 

『おっ? そこの君、ジオン軍とは違うね……民間人かな? 危ないから降りた方が良いよー。そのホバーエレカ、めちゃくちゃヤバそうだし』

 

 MSとは異なる熱源反応を感知していたカポル機も、すでにその存在には気づいている。ハンドルを握るダファーズの血走った眼と、その背後に積み上げられた爆弾を目の当たりにした彼女は、スゥッと目を細めていた。

 

「るっせぇっ! そのやべぇ車でこれから、てめぇを吹っ飛ばしてやるってんだよっ!」

『なるほどなるほど……そういうことね。ジオン軍に与するなら敵兵と見做して……っていうのがお上の意向だけど、それは私のやり方じゃないからなぁ』

 

 当然ながら2人は初対面であり、ダファーズの背景などカポルには知る由もない。それでも彼の絶望に満ちた貌は、言葉だけでの説得が困難であることを理解させていた。

 すでにホバーエレカを発進させているダファーズとカポル機の間には、まだかなりの距離がある。今なら両手のマシンガンで、容易く爆弾ごと吹き飛ばしてしまえる。

 

『……うん、いいよ! じゃあそのまま突っ込んでごらん、記念に素敵な脱出ショーを見せてあげるっ!』

 

 だが、そうと分かっていながら。カポル機はダファーズの前で2丁のマシンガンを手放し、その両手を広げていた。

 まるで、これからパフォーマンスを始める曲芸師のように。

 

「なにを意味のわかんねぇことをごちゃごちゃ抜かしてやがるッ! その派手な色のMSごと、イカれた脳みそ吹っ飛ばしてや――!?」

 

 自らの命を賭して、連邦軍に一矢報いようとしていたダファーズが、信じられない光景に直面したのはその直後。

 カポル機に激突し、自身もろとも彼女を爆殺するはずだった彼のホバーエレカは――瞬く間に、掴み上げられてしまったのである。

 

「なっ……!? ど、どうなってっ……!?」

『一定の衝撃が起爆のスイッチになるんだから、そのラインを超えないように接触すればいい。単純な話だよね』

 

 激突する寸前、大型バックパックの推力で急上昇した彼女は、ダファーズの頭上を飛び越したかと思うと。

 機体を捻ってホバーエレカの背後に回り込み、そのまま地を這うような低空飛行で、彼の車体を掬い取ってしまったのである。

 

 一目見た瞬間から、ホバーエレカに積まれているのが衝撃感知式の爆弾と看破していたカポルは、移動しているホバーエレカに合わせた速度で接触することにより、起爆させることなく無力化させたのだ。

 

 ――ダファーズの車を優しく包み込むジムの両手は、まるで。指先1本に至るまで、カポルの神経が通っているかのような挙動であった。

 

「どわぁぁっ!?」

『ふふん、びっくりしたでしょ? 私ねー、MS操縦の繊細さには自信あるんだ! あとはこの爆薬を捨てれば……ほらっ!』

 

 常軌を逸するカポル機の器用さ(・・・)は、それだけには留まらず。車体からダファーズの身柄だけを摘み出した彼女は、爆弾を残したホバーエレカを放り投げてしまう。

 やがて無人のまま激しい爆炎を上げた車体の末路は、ショーを盛り上げる演出のようであった。

 

『ジャジャーン、脱出成功っ! ジオンに利用されてしまった悲劇の民間人は見事に、爆弾満載のホバーエレカからの脱出を果たすのでしたぁー!』

「な、なぁっ……!?」

 

 たった今、信じがたい離れ業をやってのけたばかりだというのに。彼女はまるで子供のように、能天気な声を上げている。

 そんな異様な光景に目を剥きながら、カポル機の掌上に降ろされたダファーズは、茫然と膝を着くばかりであった。

 

「……つくづく、イカれてやがるぜ。俺はてめぇを、吹っ飛ばそうとしてたんだぞ」

『やだなぁ、もー。お客さんを傷付けるようなパフォーマンスが、どこの世界にあるっていうの?』

「……」

 

 言葉だけを切り取れば、ここが戦場であることすら理解していない異常者の発言だが。その端々には、厳しくも優しく嗜めようとしている彼女の、情緒が込められている。

 ジオン軍に与することも、自爆に走ることも、絶望に沈むことさえも許さない。そんな彼女の声色に滲む、ある種の母性に触れたダファーズは、疲れ果てた様子で倒れ込んでしまう。

 

「あぁ……ちっくしょう。こんな訳わかんねぇ奴と居たら……いよいよどうでも良くなっちまうぜ」

『うんうん、それが1番! 辛気臭い空気を吹っ飛ばしてこそ、エンターテイメントというものだからねっ!』

「……へっ、そうかよ」

 

 だが、もはやその貌に憎しみの色はなく。抵抗するのも馬鹿馬鹿しい、と言わんばかりの薄ら笑いを浮かべていた――。

 




 カポルは締め切り直前にご応募頂いたキャラなのですが、彼女が来るまではダファーズはフランベに続いて戦死する予定でした。シリアスブレイカーつよい(゚ω゚)
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