機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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第9話 鈍色の凶鳥 -キョウイチ・ヤクモ-

 一方、HLVの目前では。キョウイチ機の陸戦用ジムとヨシナオ機の陸戦型ガンダムが、ついに「十指」の6位との決着を付けようとしていた。

 キョウイチ機のビームダガーが唸り、ヨシナオ機のビームサーベルが振るわれる瞬間。マデラス機のザクはその装甲に光刃を浴び、黒煙を上げる。

 

『はぁあぁあッ!』

『おぉおおッ!』

『ぬぅ……うぅうんッ!』

 

 マデラス機も彼ら2機を相手に、ヒートサーベルとヒートホークを巧みに使い分けているのだが。キョウイチ達はすでに、その刃の軌道を見切っていた。

 

『此奴ら、戦いの中で成長している……! この私の動きに、適応し始めているッ!』

『でぇあぁああッ!』

 

 その成長速度に焦燥を覚えたマデラスが、一気に斬り伏せようとする――よりも疾く。

 

『おおぉおッ!』

『とぁあぁあッ!』

『ぐぉあぁッ……!』

 

 キョウイチ機のビームダガーがマデラス機の左腕を斬り落とし、ヨシナオ機のビームサーベルがその首を刎ね飛ばしてしまった。

 

『これで今度こそ終わりだッ! とどめをッ――!?』

 

 もはや、これまでと同じ要領で戦闘を続行できる状態ではない。そこに絶対の勝機を見出したヨシナオ機が、ビームサーベルを突き立てようとした――その時。

 

『うぉあぁあッ!?』

『ヨシナオッ!』

 

 HLVの打ち上げに伴う猛煙が、近くに居た彼らを瞬く間に飲み込んでしまった。

 ついに発射の瞬間を迎えた巨大ポッドは、轟音と共に凄まじい炎を噴かせながら、宇宙を目指して急上昇していく。

 

 それからしばらくの時間が経過し、ようやく視界を取り戻した頃には――すでにHLVも、マデラス機のザクも、2人の前から姿を消していた。

 

『く……そッ、HLVが……!』

『大尉、あのザクも姿が見えません! あいつ、今のを目眩しに……!』

『してやられた……! 万一自分が追い込まれても、こういう煙幕(・・)で逃げる算段だったわけかッ……!』

 

 HLVの打ち上げ阻止に失敗した上に、それを護衛していたザクにまで逃げられた。これ以上の敗北があるだろうかと、キョウイチ達は唇を噛み締める。

 

『ゾネス大尉、あれ……!』

『チッ……遅かったか。どうやら奴ら、かなりの手練れを揃えていたらしい』

 

 そんな彼らの前に一足遅れて到着したゾネス機とヒダカ機は、空を仰ぎ状況を察していた。その痛いほどの悔しさに寄り添うように、ゾネス機はキョウイチ機の肩に手を置く。

 

『……まだ戦いは終わっていないぞ、キョウイチ。敵の残存部隊はまだこの近辺で抵抗を続けている。キャリフォルニアベースから奴らが消え去るまで、俺達が立ち止まるわけにはいかん』

『あぁ……そうだな、ゾネス。俺達はまだ、戦いを続けているんだ。こんなところで、燻ってはいられない』

『……うむ。それでこそ、「凶鳥」と恐れられた男というものだ』

 

 旧友の気遣いに、少しばかり心を救われたキョウイチが、ようやく顔を上げる。ヨシナオ機もヒダカ機と向き合い、改めて戦闘を続行する意思を固めていた。

 

『よし……それでは、俺達も直ちに……ッ!?』

 

 そして、次の瞬間。激しい爆音が響き渡ると同時に、MSの腕らしきものが彼らの前に落下して来る。

 

『なッ……!?』

『レ……レオッ……!?』

 

 見間違えるはずもない。それは紛れもなく、レオ・アークライトの愛機であるピクシー4号機のものであった。

 

 レオほどのエースが、一体()に。その思考を巡らせる4人が、爆音の方向へと視線を向けた瞬間――彼らの視界に、空中を浮遊する機動砲座の巨躯が留まる。

 

『ヨシナオ中尉、あれ……!』

『あれは「トリカゴ」……!? この基地にまで配備されていたのか!』

『……次の標的は決まったな。行くぞッ!』

 

 その光景から状況を素早く理解した4機は、即座にスラスターを噴かせて機動砲座――アッザムの元へと向かう。

 同時刻には他の連邦兵達も、この近辺で暴れ狂うアッザムの姿を捕捉し、集結し始めていた。

 

『あの新型にもHLVにも逃げられるし、挙げ句の果てにはあんなバケモノまで出て来やがってさァ……全く冗談じゃないよッ! こうなったらアタシの手で、1機でも多くブチのめしてやっからなァッ!』

 

 ヨゼフィーネ機を取り逃したアンリエット・ダルシアク。

 

『うそ……今の聞いた? レオ大尉がやられてるって……!』

『……あの機動砲座の仕業ね。行こう、ディーネ。私達にはまだ、出来ることがある』

『……うんっ!』

 

 レオの窮地に固唾を飲むディーネ・エイムと、ようやく落ち着きを取り戻したクーナ・フェニー。

 

『ふーん……どうやらまだ、おいたが過ぎる子がいるらしいねえ。ちょーっと、思い知らせてあげる必要……あるかな』

 

 ダファーズの身柄を他部隊に託し、鋭く目を細めて動き出したカポル・フェルネック。

 

 それぞれの位置からアッザムがいる地点を目指す彼女達は、各々の得物を手に闘志を滾らせていた。

 HLVに離脱された今でも、戦いが終わっていないのなら。自分達の手で、これから終わらせてやる。そう、言わんばかりに。

 




 本章も徐々にクライマックスに向かいつつありますぞー。ユウキとゼファーは脱出準備中のユーコン狙いで行動しているので、キョウイチ達とは別行動となっております(´-ω-`)
 まだ登場してない読者応募キャラにつきましては次回以降からの初披露となる予定ですので、まったりお待ちくださいませ〜(о´∀`о)
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