機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-最終話からの登場人物-

-シャティー・トゥリープ-
 23歳。サイド3出身。腐敗した連邦政府への復讐に燃える美女であり、かつてはグフのパイロットとして猛威を振るっていた。かつての愛機であるグフに代わる、アッグガイに搭乗する。階級は曹長。
 ※原案は黒子猫先生。

-アクア・ハーフェン-
 19歳。サイド6出身。元テストパイロットであり、普段はものぐさだがやる時はやる少女兵。ゴッグに搭乗する。階級は伍長。
 ※原案はピノンMk-2先生。

-クイ・バーバランド-
 31歳。サイド3出身。ガルドが手配していたユーコンを守り続けていたベテランパイロットであり、シャティーの部下。グフに搭乗する。階級は軍曹。
 ※原案はダス・ライヒ先生。

-チトセ-
 21歳。サイド3出身。ブリゼイド家に仕えるメイドであり、幼少の頃から同家に尽くしてきた心優しい美女。令嬢のクーディアとは主従の関係を超えた友情を育んでおり、実はFカップという巨乳の持ち主。



最終話 復讐の鉄鞭 -シャティー・トゥリープ-

 サナル達防衛隊が守り抜いたHLVが、無事に宇宙へと打ち上げられた頃。マデラスの命令を優先し、沿岸部に待機していた潜水艦(ユーコン)へと駆け付けてきたジオン兵達は、脱出の準備を急いでいた。

 すでにこの動きは連邦軍にも察知されていたらしく、戦闘可能な一部の機体は迎撃に駆り出されている。

 

『動けない機体は捨てて構わん、人命が最優先だ! それまでは私達で食い止めるぞ!』

 

 その急先鋒として、襲い来るジムを次々と撃破しているシャティー・トゥリープ曹長は、MSM-04N「アッグガイ」を駆り連邦軍を翻弄していた。

 

『……しかし、これはこれでなかなかの代物だな。合計4本のヒートロッド、ありがたく使わせて貰うッ!』

 

 元歩兵からの叩き上げである彼女は、かつての愛機であるグフに代わるこの機体を巧みに操り、両腕のヒートロッドを振るい続けている。

 両親と弟をこの戦争で喪った彼女の胸中に渦巻く、苛烈な怒りを纏い。しなる4本の鞭の先は、立ちはだかるジムのボディを粉々に打ち砕いていった。

 

『連邦の豚共めが……! 貴様らに家族を奪われた者達の痛みと怒り、篤と思い知れッ!』

 

 どんな状況でも、どんな装備でも生き残るために使いこなして来た彼女なら、初めて乗るMSでも十二分にポテンシャルを発揮し得るのだ。

 

『曹長、ちょっと前に出過ぎですよぉ! 潜水艦を沈められたら、私達の帰る場所もなくなっちゃうんですからねっ!』

『……ふっ、すまんすまん。少しばかり、熱くなりすぎてしまったらしい』

 

 そんな彼女の僚機として行動を共にしている、アクア・ハーフェン伍長のMSM-03「ゴッグ」も。メガ粒子砲による牽制射撃を懸命に繰り返し、連邦軍を潜水艦に近寄らせまいと奮戦している。

 

 その間に、退却してきた同胞達は次々と潜水艦へと乗り込み始めていた。ヨゼフィーネ、サトル、ガルド、ミランダ、ユリウス、カイナン、スティクス、アイレ。

 無事にここまで到達した彼らは、傷だらけになった一部の機体を廃棄しながら、潜水艦に退避している。その様子を見届けつつ、シャティー達は連邦軍の追手に抗い続けていた。

 

『アクア、残りは!?』

『サナル大尉とマデラス准尉がまだ……きゃあっ!?』

 

 しかし、あまりの戦力差に次第に追い詰められていく彼女達の機体は、装甲を削られ中破寸前に陥ってしまう。ハイパーバズーカの直撃を浴びたアクア機も、片腕を吹き飛ばされていた。

 

『アクア、大丈夫か!?』

『……さすがのゴッグでも、なんともない……とは、ちょっと言い切れないですね』

 

 これ以上の継戦は、不可能に近い。だが、彼女達に投降という選択肢はなかった。

 シャティーもアクアも、道行く同胞達が振り返るほどの美女なのだ。捕虜の女は例外なく辱めると噂されている連邦軍に捕まれば、間違いなく生き地獄に突き落とされてしまう。

 

『くッ……! 連邦の奴らに屈するわけには……!』

『あんな連中、私の好みじゃないんですけどっ……!?』

 

 だが、そんな彼女達の貞操を賭けた意地すらも踏み付けるように。ジムの群れは少しずつ、嬲るように距離を詰めていく。

 

『しっかりしろアクア、まだ戦いは終わっていない! HLVの打ち上げを守ることだけが、俺達の使命ではないのだぞ!』

 

 ――そこへ、1機のグフが駆け付けてきたのはその直後であった。クイ・バーバランド軍曹が駆るその機体は巧みにヒートロッドを振るい、死角からの奇襲を以てジムを次々と仕留めていく。

 バルド・シディスに次ぐ歴戦の古強者として、数多の戦場を駆け巡ってきた彼は。年長者としての意地を見せ付けるかの如く、シャティー達を包囲していたジムを矢継ぎ早に捩じ伏せていく。

 

『はぁ〜……助かりましたぁ、クイ軍曹』

『お前はさっさと後退しろ、アクア。……シャティー曹長、進捗は如何です?』

『あぁ、すでにヨゼフィーネ達は無事に帰投している。……だが、フランベとアストレアと、バルドからの通信は……途絶えたままだ。ダファーズの奴とも、連絡が取れない』

 

 クイ機の合流により窮地を脱したシャティー達だが、その表情は晴れない。今の時点で生存が確認できていないということは、戦死した可能性が高いと言える。

 

 ――だが、彼らの奮闘がシャティー達を救ったことには違いないのだ。単騎での戦闘力においては防衛隊の中でも突出していた、バルドとフランベの2人が陽動と撹乱を引き受けていなければ、この程度の追撃では済まなかったのだから。

 もし、彼らという2人の強豪を破ったユウキとゼファーが、アストレアの窮地を無視して追撃を優先していたら。今頃シャティー達は、ショルダーキャノンの火力によって全滅していただろう。

 

 「十指」にも匹敵し得ると言われていたバルドとフランベですら倒せなかった相手に、シャティー達が勝てる道理などなかったのだから。

 

『……待たせたな。お前達、よくぞ耐え抜いた』

『マッ……マデラス准尉!? ご無事でしたか!』

 

 そこへ、彼女達よりも激しいダメージを負っているマデラス機のザクがついに到着する。彼の機体の掌には、パラシュートを装着したまま気絶しているサナルが横たわっていた。

 

『あぁ……サナル大尉も一緒だ。気を失われているようだが、命に別状はない。……大尉に代わり、現時刻を以て作戦の終了を宣言する。各員、直ちにこの場を脱出せよ』

『……了解! ユーコンを発進させる! 全機撤収だ、乗り遅れるなッ!』

 

 まだ、全員ではない。だがこれ以上待てる余力もない今、選択肢はないに等しい。

 絞り出されたマデラスの一言と、その胸中を汲んだシャティーは彼に代わり、声を張り上げ撤収の指揮を執る。

 

『……サナル大尉、我々は侮っていたようですな。まさか連邦軍にあれほど、骨のある連中が揃っていようとは』

 

 そんな彼女の後ろ姿を見守りながら、潜水艦に乗り込んでいくマデラスは。自機の掌で眠るサナルの、悔しさに歪んだ貌を一瞥して――独り、静かに呟いていた。

 

 そして、彼らの後を追うように続々とジオン兵達が、キャリフォルニアベースを去り。連邦軍はこの日の戦闘を以て、同基地の奪還を宣言するのだった。

 

 ◇

 

 ――その頃。豊かな緑に彩られたサイド3の辺境に建つ、ブリゼイド邸の前には。

 

「そんなっ……本気で仰っているのですか!? レゾルグ様っ!」

『我輩が冗談を言うような男に見えるのか。……2度も言わせるな、クーディア・ブリゼイド』

 

 黒と金を基調とする1機のザクが、マシンガンを手に雄々しく佇んでいた。邸宅の玄関前で、その巨影に覆われている1人の美少女――クーディア・ブリゼイドは、傍らに寄り添うメイドと共に固唾を飲んでいる。

 ツーサイドアップに束ねられた銀髪は艶やかに靡き、そのサファイアのような蒼い瞳は動揺に揺れていた。白くか細い手は、胸中に渦巻く不安を物語るように、豊かな乳房の上に置かれている。15歳という年齢に反するHカップの巨峰も、一歩後ろへ下がる度に大きく弾んでいた。

 

『貴様が直ちに徴兵に応じ、ザビ家に忠誠を誓わねば……我輩はこの邸宅を破壊し尽くす。これは、脅しではないぞ』

「ひ、ひぃっ……! メ、メイド長っ! 銃口が……あの大きな銃口がこちらにっ!」

「静かに! 騒いで相手を刺激してはなりません、あなた達は隠れていなさい!」

 

 紅く禍々しい一つ目(モノアイ)で邸宅を見下ろすその姿は、外見以上の威圧感を全身から放っており、屋敷の中から様子を窺っているメイド達を震え上がらせている。

 彼女達の筆頭格である若いメイド長も、気丈な眼差しでザクの巨躯を仰いでいるが――その細い肩は、震えを隠しきれていない。それは、クーディアも同様であった。

 

「……チトセ、あなたも下がっていてください。ここは、私が出向くしかありません」

「そ、そんな! いけませんお嬢様、旦那様をお呼びしますから……!」

「お父様はお兄様が戦争に行かれてからずっと、心労で体調を崩されています。……もう、選択肢はないのでしょう」

「お嬢様っ……!」

 

 ブリゼイド家の長男であるガリウスが出征して以来、現当主は病床に伏している。もはや、あの「五指」の1位――レゾルグ・バルバ大尉を相手に、まともな応対ができる状態ではない。

 だが、それはどこまで行っても理屈でしかなく。自分が徴兵に応じるしかないのだと、無理矢理にでも納得しようとする彼女の足も。戦争という非日常への恐怖に、震えていた。

 

「あぁ、なんという……! お嬢様、お嬢様っ……!」

 

 幼い頃から妹のように深い愛情を注ぎ、主従を超えた絆を以て仕えてきたクーディアの背に。チトセと呼ばれるメイド長はショートボブの黒髪を振り乱して、懸命に手を伸ばす。

 なぜ争いごとを嫌う心優しい少女まで、戦場に引き摺り出さねばならないのだと、嘆くように。

 

「お嬢様っ……!」

「……チトセ。生きて帰れたら、またあなたの紅茶が飲みたいです」

 

 しかし、その白い手は空を掴むばかりであり――儚げに微笑む少女の細い身体は、レゾルグ機の黒い掌に収まってしまった。目当ての「新兵」を確保した黒と金のザクは、もう用はないと言わんばかりに飛び去ろうとする。

 

「……なぜ、なのですか。なぜこのようなことがまかり通るのですか……! ザビ家がそれほどまでに、偉いのですかっ!」

『……』

 

 だが、その背に投げ掛けたメイド長の言葉が、それを阻んでしまった。彼女の声を拾ったレゾルグ機は、スラスターの噴射を中断し――ザクマシンガンの銃口を、生身の女性に向ける。

 常軌を逸するその行為にメイド長は目を剥き、屋敷のメイド達から悲鳴が上がった。レゾルグ機の掌に乗るクーディアも、半狂乱になりながら一つ目(モノアイ)を仰ぎ哀願する。

 

「チ、チトセっ! レゾルグ様、どうか、どうかおやめください! 私は戦いますから、ザビ家に忠誠を誓いますからっ! だからどうかご容赦をっ!」

『……この下賤な小娘はザビ家を愚弄したのだぞ。良い機会だ、貴様もよく見ておくが良い。ザビ家に逆らう不届き者が、どういう末路を辿るのか!』

「ひっ……!」

 

 生身の人間がザクマシンガンの掃射に晒されようものなら、骨すらまともに残らない。そんな無惨な結末が、メイド長に訪れようとしている。

 

「チトセぇえっ!」

 

 誰もがその未来を予感し、レゾルグ以外の全員が目を伏せた――その時だった。

 

『――そこまでだ』

「っ!?」

 

 突如。上空から駆けつけて来たもう1機のザクが、瞬く間にレゾルグ機の隣に降り立ち。その首に、逆手に構えたヒートホークの光刃を突き付けたのである。

 

 レゾルグの「制裁」を一瞬のうちに阻止した、黄色を基調とするそのザクは、穏やかにして荘厳な佇まいであり――全身に獰猛な殺意を宿しているレゾルグ機とは、同じ機体でありながら大きく異なる印象を与えている。

 例えるなら、「魔王」と「聖騎士」。それほどまでに違うパイロットの人格が、機体を通して滲み出ているかのようであった。

 

『クーディア・ブリゼイドが徴兵に応じた時点で、我々の用件は終わっているはずだぞ。……守るべき民草に銃を向けるのがお前のやり方だと言うのなら、(それがし)が相手となろう』

『ジルベルト……』

『さぁ、銃を下ろせ。「魔王」と呼ばれるお前とて、無用な争いは本意ではなかろう』

『……』

 

 その黄色いザクを駆る「五指」の2位こと、ジルベルト・ロードボルト大尉の敵意を前にして。レゾルグ機は興醒めとばかりに、メイド長に向けていたザクマシンガンを下ろしてしまう。

 傍若無人、唯我独尊。そんな印象を与えるレゾルグらしからぬ引き際であった。彼ですらも、ジルベルトに対しては真っ向からの衝突を避けようとしているのである。

 

『……ふん、興が削がれたわ。命拾いしたな、小娘』

「ま、待っ――!」

 

 やがてジルベルト機に促されるまま、レゾルグ機はスラスターを噴かして飛び去ってしまう。メイド長の言葉を、風圧で遮るかのように。

 

『……徴兵は死の宣告ではない。最後の最後まで諦めるな。当主殿には、そう伝えておけ』

「……っ」

 

 そんな彼に続くように、ジルベルト機も邸宅の前から飛び立っていくのだった。去り際に残されたその言葉にメイド長は何も言えず、頬に雫を伝わせている。

 全ての嵐が過ぎ去ったことで、緊張の糸が切れたのか。Fカップの乳房を揺らして、彼女は崩れ落ちるように両膝を着いてしまった。

 

「メ、メイド長! 大丈夫でしたかっ!?」

「お怪我は!?」

「……」

 

 2機のMSが去ったことを確認したメイド達は、邸宅前に独り残されたメイド長の元へと駆け寄ってくる。

 しかし、白くか細い指で、足元の芝生を握り締めている彼女は。自分を案じる後輩達に、笑顔を向けることは出来なかった。取り繕う余力さえ、なかった。

 

「……お願い、です。誰でも……誰でもいい。どうかお嬢様を、ガリウス様をお守りくださいっ……!」

 

 全ての使用人達に分け隔てなく接していた、心優しいブリゼイド兄妹が。このような戦争で命を落とすことなど、あってはならない。

 しかし自分達にその運命を変える力などなく、よりによってクーディアを連れ去った軍人達の1人に、情けまで掛けられてしまった。ならばもう、縋るしかないのである。

 

 戦争という時代に翻弄されゆく、敬愛すべき兄妹に救いの手を差し伸べてくれる。そんなブリゼイド家にとっての、救世主が現れることを――。

 




 本章「ドラゴン・ライズ」の本編は、これにて完結となりました! 今回のキャラ募集企画にご参加頂いた企画参加者の皆様、このお話を楽しんでくださった読者の皆様、最後まで読み進めて頂き誠にありがとうございます!(*≧∀≦*)
 あくまでナンバリングはされていない外伝という括りですが、実質的には第2部と第2.5部の間に位置するエピソードとして考えておりますので、しばらく後にその辺りへと移転させるつもりです。

 本シリーズ初となる陣営選択式を取り入れた企画となりましたが、作者としても非常に楽しませて頂きました! 私1人では到底思い付かなかったストーリーラインに仕上がったのではないかと思います。ご協力誠にありがとうございました(*´ω`*)
 このシリーズにおける主な強敵である「十指」をやっつけるエピソードも、今回の外伝であらかたやり切ってしまいましたし、今のところはこれにて完結……とさせて頂くつもりですが。もし今後、本作で出来そうな何らかのエピソードを思い付いた時は、このツラ下げて戻ってくることもあるかも知れません。その時はまた、あのバカまた始めやがったと、生暖かく見守って頂ければ幸いでございます(*´꒳`*)

 来週には、宇宙軍に加わることになるユウキの旅立ちについて掘り下げた番外編をお送りする予定ですので、ひとまずはそこが本章最後の更新となる予定です。もし機会があれば、そちらもどうぞよしなに(´ω`)

 ではではっ、本章を最後まで応援して頂き誠にありがとうございました! またどこかでお会いしましょう〜!٩( 'ω' )و


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Ps
 今回ちらっと登場したブリゼイド家のメイド「チトセ」は、40原先生原作のイラスト集「嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい」の伊東ちとせをモデルとしております。嫌パンアニメ3期はよ!( ゚д゚)
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