機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第1話からの登場人物-

-エリムス・ナイドレイブン-
 32歳。ブラウナウアムイン出身。ジオンへの激しい憎悪を胸に戦い続けている生粋の武闘派であり、敵を1人残らず焼き払うためなら周囲への2次被害も顧みない危険人物。両腕部に専用の火炎放射器を搭載した、黒と白銀を基調とするガンタンクに搭乗する。階級は中佐。
 ※原案は秋赤音の空先生。

-マッチ・シュッポー-
 35歳。オシフィエンチム出身。エリムスとバディを組んで行動しているベテランパイロットであり、焼き殺した相手の悲鳴や断末魔を録音して編集した楽曲を流す狂気の自称芸術家。左手をマニピュレーター型の火炎放射器に改造した、黒と白銀を基調とするガンキャノンに搭乗する。階級は中佐。



外伝 ガダルカナル・ストレンジャーズ -0079年12月22日-
第1話 炎葬の狂人 -マッチ・シュッポー-


 ――宇宙世紀0079、12月22日。

 南太平洋にあるソロモン諸島最大の島、ガダルカナル島。

 

 連邦軍の猛攻により陥落したキャリフォルニアベースから脱出し、北米から遠く離れたこの島へと落ち延びていた、ジオン地上軍の敗残兵達は――

 

「ひ、ひぃいぃッ! 総員退避、退避ィイッ!」

「ぐぁ……あぁああーッ!」

 

 ――容赦のない連邦軍の追撃部隊により、火の海へと叩き込まれていた。

 黒と白銀を基調とする彼らのMSは、「喪服」を彷彿とさせるカラーリングであり。彼らの機体が携行している火炎放射器から放たれた猛炎は、海岸線を警備していたジオン軍の歩兵達を骨も残さず焼き尽くしている。

 

「ち、ちくしょう、ちくしょう……! あいつら、一体どこまで俺達をいたぶれば気が済むんだよッ!? あ、あぁああーッ!」

「マデラス准尉、カリュブス曹長……! 申し訳ありません、あなた達に助けて頂いた命だというのに、こんなところでッ……ひぎぃあぁあぁッ!」

 

 「五指(ごし)」の3位ことサナル・アキト大尉に代わり、撤退する友軍の援護に奔走していた「十指(じゅっし)」の6位――マデラス准尉。

 水中戦のエキスパートであるカリュブス・トゥーケス曹長を筆頭とする、4人組のエース集団――「四海竜(しかいりゅう)」。

 

 彼らの援護によって、辛うじてこのガダルカナル島まで生き延びたというのに。黒と白銀のMS部隊は、決死の尽力に紡がれた命を無慈悲に踏み躙り、焼き払っている。

 北米から脱出する旅路の中で、幾度となく傷付きながらも最後の力を振り絞り、彼らをこの島まで運んだザンジバル級の残骸も。その凄惨な光景を、ただ見ていることしか出来なかった。

 

「あ、あれが連邦の『炎葬隊(えんそうたい)』……! 俺達ジオンを嬲り尽くすことにのみ執念を燃やしてるっていう……最凶最悪の追撃部隊か……!」

「キャリフォルニアベースから逃げて来た仲間達も、大勢あいつらに殺られちまったって話だが……まさか、こんなところにまで追って来やがるなんてッ……!」

 

 鹵獲したユーコンから出撃し、海中から迫り上がるように上陸して来た漆黒のMS部隊。

 RX-77-2「ガンキャノン」と、RX-75「ガンタンク」の2機を先頭に展開されているその部隊は、携行している専用の火炎放射器で海岸線を火の海へと変えている。

 

「ひっ!? た、助けっ……あぁあぁああーッ!」

 

 部隊の大半を占めている黒と白銀のジムは、遮蔽物に隠れて炎から逃れていた歩兵を見つけては、その抵抗を嘲笑うかのように踏み潰していた。

 

「し、報せるんだ……! この状況を、この事態を……お、俺達の無念をッ!」

 

 そんな彼らの悲鳴と断末魔を耳にしながら、悲しみと怒りにその顔を歪めながら。奇跡的に灼熱の海から逃れていた通信兵は、島の各地域に展開している他の残存部隊に襲撃を報せるべく、森の入り口付近に設けられていた通信機に駆け寄っていた。

 

 かつてはキャリフォルニアベースの守護を担う、精鋭のMS部隊に居た彼らなら。共にザンジバル級に乗り込み、このガダルカナル島に辿り着いた彼らなら。

 きっと、あの「炎葬隊」さえも退けてくれる。自分達の仇を討ってくれる。その僅かな望みに、縋るしかなかったのだ。

 

 そして、涙を飲んで絶叫の渦に背を向け、必死に走り続け。やっとの思いで、通信機に手を掛けた――その時だった。

 

『よォお前、「音楽」は好きか?」

「……! あ、あぁっ……!」

 

 背後に、MSから(・・・・)声を掛けられる。

 

 振り返った先に聳え立っていたのは、「炎葬隊」の中心に居た、黒と白銀のガンキャノンだった。

 

『俺はなァ……すっごく大好きなんだよ。是非ともお前らに聞いて欲しい曲があるんだ、たっぷり堪能してくれ』

「な、何をッ……!?」

 

 阿鼻叫喚の煉獄を背にしているとは思えないほどの気さくな声色に、筆舌に尽くし難いほどの不気味さを覚えた通信兵は、青ざめた表情で尻餅をついている。

 

「……!?」

 

 その貌がますます恐怖に凍り付いたのは。ガンキャノンに備えられていたスピーカーから流れ出した、そのパイロットの云う「音楽」を耳にした時だった。

 

 それはアースノイドもスペースノイドも、一度はどこかで聞いたことがあるようなありふれた交響曲。

 

『ん〜……良いねぇ、やはり俺の曲は良い。聞き飽きた古い曲も、俺の手でアレンジすりゃあ全く新しい別物に早変わりだ。お前らジオン兵は皆、良い「音」で鳴いてくれるぜぇ』

「あ、あぁ、あぁあっ……!」

 

 だが、そのメロディは――人間の断末魔を編集したものだったのである。

 

 この世の地獄、などという言葉でも足りないほどの、絶望的な狂気。

 それを耳にした通信兵は、「ジオン訛りを持った人々」の絶叫が織り成す交響曲を奏でるガンキャノンを前に、半狂乱になりながら雄叫びを上げる。

 

「こ、このガダルカナル島に辿り着いた……全ての仲間達に告ぐッ! どうか、どうかこのクソ野郎を……このクソ野郎共を、絶対に倒してくれぇえぇッ!」

『……良い曲だろう? さぁ、お前の「音」も俺にくれ。次の作品のために、なァ?』

 

 全てのチャンネルに向けて放たれた、その「遺言」を見届けたガンキャノンは。火炎放射器に改造された左腕のマニピュレーターを通信兵に向けると、通信機諸共その一帯全てを、真紅の炎で彩るのだった。

 

 やがて、その背後に黒と白銀のガンタンクが近付いて来る。黒ずんだ炭と化したジオン兵達の遺体を粉々に轢き潰しながら、ガンキャノンの隣に移動して来たその機体のパイロットは、「相棒」の狂気にため息をついていた。

 

『全く……お前の趣味は相変わらず理解出来ねぇぜ、マッチ。それより先ほどの通信兵……どうやら、俺達のことを島中のゴミ共に報せたようだな』

『ハハッ、獲物が向こうから来てくれるってわけかい! そりゃあ良いねぇ……! 次の「音源」がどんどん集まって来るってわけだ、なぁエリムスッ!』

 

 両腕部に専用の火炎放射器を搭載した、専用のガンタンクを駆る「隊長」のエリムス・ナイドレイブン中佐。

 左手のマニピュレーターを火炎放射器に改造したガンキャノンに搭乗する、「副隊長」のマッチ・シュッポー中佐。

 

 彼らを筆頭とする「炎葬隊」は、上陸開始から僅か5分足らずで、ガダルカナル島の海岸線を警備していたジオン軍の小隊を全滅させてしまっていた。

 さらに彼らは敵の残存部隊がこちらに向かっていることを予測した上で、躊躇うことなく海岸線の先にある密林へと侵攻している。

 

『あァ〜……しかし、やっぱり男の声だけじゃあ、「高音」が足りねェなァ? いい声で鳴いてくれる「女」はいねェもんかなァ。北米にいたジオンの女部隊……確か、「ノイジー・フェアリー」とか言ったっけか。また会えねェかなァ……い〜い声してたんだよなァ、あいつら……!』

『ふん……「ノイジー・フェアリー」か。もし再び奴らに会うようなことがあれば、その時こそ地獄に叩き落としてやるぜ。女に生まれて来たことを、後悔するまでなァ……』

 

 敗残兵如きに自分達が敗れることは万に一つもあり得ない。この島に潜んでいるジオン兵達は必ず、海岸線に居た部隊と同じ末路を辿ることになる。

 その確信を胸に、彼らは無情に木々を薙ぎ倒しながら、密林の奥へと突き進んで行くのだった。それが虎の尾を踏んだ愚者達へと送られた、地獄への切符だったことなど、知る由もなく――。

 




 現在、作者の活動報告にて本章に登場する新キャラを募集しております! 機会があればお気軽に遊びに来てくださいませ〜(о´∀`о)

Ps
 本章は完結後、外伝「ドラゴン・ライズ」と第2.5部「リメンバー・ソロモン」の中間辺りに移動させる予定です。ご了承くださいm(_ _)m
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