機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第4話からの登場人物-

-ウルガ・オックス-
 43歳。サイド3出身。戦術試験的に設立されていた遊撃部隊の隊長であり、のらりくらりとしていて掴みどころのない人物だが、実力は確かであり部下達からの信頼も厚い。ドムキャノンに搭乗する。階級は大尉。
 ※原案は試作強化型アサルト先生。

-ホウカ・ツクヨミ-
 17歳。奈良出身。アースノイドでありながらニュータイプとしての素養を持っている少女兵であり、スペースノイドの劣悪な環境に対する地球連邦政府の傲慢な対応を知って以来、ジオン軍に付くことを決意した正義感の持ち主。ザクⅡS型に搭乗する。階級は曹長。
 ※原案は魚介(改)先生。

-ユイ・カーマイン-
 15歳。サイド3出身。ホウカと同じくニュータイプとしての素養を持った少女兵であり、ホウカの部下として彼女を支えている。キャリフォルニアベースから脱出する際に持ち出していた、グフ複合試験型に搭乗する。階級は伍長。
 ※原案は黒子猫先生。



第4話 密林の穴馬 -ジーン・パチョレック-

 

 キャロル隊を筆頭とする西部の部隊が、先行して来た事務の待遇を相手に奮闘していた頃。彼らより早く「炎葬隊」との交戦を開始した「北部の部隊」は、マッチ・シュッポーのガンキャノンと遭遇していた。

 

 ――そして、今。彼らの多くは漆黒の奏者が放つ猛火に焼かれ、愛機もろとも焼き尽くされてしまっている。

 黒と白銀のガンキャノンが背にしている火の海からは、兵士達の断末魔が響き渡っていた。

 

『んん〜……良い天気だなァ。空は晴れやか、風は良好、空気も乾燥してる。こりゃあ、絶好の炎葬日和(・・・・)だぜ』

 

 240mmキャノン砲の中距離砲撃。右手に装備された、高火力のビームライフルによる牽制射撃。そして、その砲火を掻い潜って来た勇者達をも容赦なく焼き尽くす、左手の火炎放射器。

 中距離だけでなく、近距離での戦闘にも対応出来るその三段構えの機構は、マッチ自身の技量によって遺憾無く発揮されているのだ。

 

 彼の射撃を回避しながらガンキャノンの重装甲を削ることすら、至難の業だというのに。近距離での戦闘には弱いというキャノンタイプならではの弱点も、最悪な形でカバーされてしまっているのである。

 

 ジオン兵達の断末魔でアレンジされた交響曲を奏でながら、まるで指揮者のような挙動で左手から火を放ち。その凶行に怒り、突撃して来る敵機を「火に入る虫」の如くいたぶり、やがては無惨に焼き殺す。

 彼はこれまでずっと、そのやり方で死体と鉄屑の山を築き上げて来たのだ。

 

『気持ち良いなァ、心地良いなァ……後ろから、いい声が聞こえるなァ。俺の曲が、また一段と美しくなるぜェ……!』

 

 マッチ・シュッポーという男は、自身に向けられる殺意と憤怒すら己の「作曲」に利用する。そんな彼の狂気を前に、北部の部隊はすでに壊滅寸前となっていた。

 

 ――だが、マッチ機も決して無傷ではない。その装甲はあらゆる箇所がすでに破壊されており、内部の機構が剥き出しになっている部分もある。

 死に瀕しているのは、この男も同じなのだ。そして彼をそこまで追い詰めた北部の部隊の「精鋭達」は、今もなお健在なのである。

 

『……お前の悪趣味にも磨きが掛かるってことかい? やれやれ、こっちは今にも気が狂いそうだというのに』

 

 その精鋭達の筆頭――ウルガ・オックス大尉の乗機・MS-09K-1「ドムキャノン」はすでに大破寸前となっており、薙ぎ倒された木々に背を預けた格好となっている。

 だが、気怠げな佇まいに反した殺意の眼光だけは、今もなお苛烈な輝きを放っていた。そんな彼の殺気を悟ったマッチ機は、「死に損ない」のドムキャノンを嘲るように見下ろしている。

 

『おーおォー……これだけ痛め付けてやっても、まァだ勝てると思っていやがるのかい。随分と諦めの悪い御仁だなァ、あんた』

『生憎だが……しぶとさだけには自信があるのよ。それに、お前だけは見逃すわけにはいかんからなァ』

『見逃す? ハッハハハ、まるで主導権はそっちにあるかのような言い草じゃあねぇか! 操縦の腕だけは良いようだが、状況の理解度の方は残念なモンらしいなァ?』

 

 「十指」や「四海竜」にも迫る技量を持つウルガの力は、実際に交戦したマッチ自身も肌で理解していた。だからこそ彼は、ウルガにとっての大切なものを目の前で壊し、強者の心が折れた瞬間の「悲鳴」を引き出そうとしている。

 それ故にマッチ機は、「減らず口」を叩いているウルガ機ではなく――彼の部下達が搭乗している機体へと、視線を移したのだ。ウルガ機以上に痛め付けられている、2機のMSへと。

 

『てめぇらにも困ったもんだぜ……。せっかく「女の声」にありつけそうだってのに、ちっとも悲鳴を上げてくれねぇ。俺が何のために手加減してあげてるのか、分かってんのかァ?』

『……あなたのような下衆が喜ぶような声など、私達が出すと思いますか。アースノイドの風上にも置けない、畜生風情が……!』

『私達が……あんたみたいなクズ野郎の思い通りになるなんて、思わないでよねっ……!』

 

 アースノイドでありながらニュータイプとしての素養を持ち、スペースノイドに対する弾圧に怒りを燃やしているホウカ・ツクヨミ曹長。彼女のMS-06S「ザクIIS型」も、ウルガ機と同じく満身創痍となっていた。

 両脚部のミサイルポッドはすでにほとんど撃ち尽くされており、両肩部のシールドも焼け爛れている。稼働していること自体が奇跡と言えるほどにまで大破しており、いつ爆散してもおかしくない状態だ。

 

 ユイ・カーマイン伍長の愛機――MS-07W「グフ複合試験型」も、激しく損傷している。両腕部のシールドは元より、その盾が辛うじて守っていたボディの装甲も、無惨に溶解していた。両脚もビームライフルに撃ち抜かれ、立ち上がることすらままならなくなっている。

 

 だが、それでも彼女達の眼は死の恐怖に屈することなく。マッチ機を真っ向から見据えていた。絶対に許さない、という確かな殺意を込めて。

 

 一方、マッチはそんな彼女達の姿勢に忌々しげな表情を浮かべていた。やっとの思いで見つけた「女」だというのに、どれほど追い詰めても彼女達2人は、「音源」に使えそうな悲鳴を出さないのである。

 幾度となく火炎放射を喰らい、装甲を溶かされ。その先にあるコクピットへと伝わる高熱が、死の恐怖を知らせても。ホウカとマイはその恐れに屈することなく、気高い戦乙女で在り続けていたのだ。

 

 それは、シンプルに。マッチ・シュッポーという男にとっては、「気に入らない」反応だったのである。恐怖にのたうち回る女の悲鳴が、全く聞こえて来ないのだから。

 やがて。彼は憎々しげに舌打ちしながら、左手の火炎放射器を彼女達の機体へと向ける。この苛立ちを鎮めるためだけに死ねと、無慈悲に告げているかのようであった。

 

『……チッ。だったらお望み通り、最大火力で蒸し焼きにしてやる。最期まで声を我慢するってぇなら、好きにしやがれ。どうやら「良い声」で鳴きそうな女は、他にも居るらしいからなァ……?』

『ホウカ、マイ! 退避しろッ!』

 

 隊長であるウルガは彼女達だけでも救わねばと声を張り上げる。だが、もはや彼のドムキャノンだけでなくホウカ達の機体も、まともに動ける状態ではないのだ。

 待っているのは、仲間達が味わった凄惨なる焼死。それを理解した上で、ホウカとマイは気丈な眼差しでマッチを射抜いていた。

 

『キャロル中佐達に手を出したらッ……!』

『私達が絶対に、許さなッ――!』

 

 この期に及んでも、自分達よりも仲間の身を案じている2人の気高さに、口元を歪めながら。マッチ機の左手は彼女達を永遠に黙らせるべく、猛火を放とうとする。

 

 ――その時だった。

 

『が……あ、ァッ……!?』

『えっ……!?』

 

 突如、マッチ機のランドセルが轟音と共に爆ぜたのである。背面から噴き上がる炎に飲み込まれたガンキャノンは、瞬く間に火だるまと化していた。

 その異常事態にはマッチ本人だけでなく、ホウカ達も瞠目している。この光景を前に、「してやったり」と笑っているのは――木々の影からマッチ機の背後を取っていた、「伏兵」ただ1人であった。

 

『ハッ……コイツは傑作だぜ。「炎葬隊」のランドセルが火を噴くなんて、最高のコメディじゃあねぇか?』

 

 単座式の機動浮遊機――PVN.4/3「ワッパ」。その脆弱な兵器に跨るジーン・パチョレック伍長は、煙を噴く無反動砲を手に、不敵な笑みを浮かべている。

 

 これまで全く歯牙にも掛けられていなかった彼は。燃料が満載されていたマッチ機のランドセルに、報復の一撃を撃ち込んでいたのである。

 




 次回でいよいよマッチ戦にも決着が付きます。どうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و
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