機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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-第6話からの登場人物-

-ルザー・ヴァハーク-
 35歳。サイド3出身。ジオンの主力MSであるザクに絶対の信頼を寄せ、ザクこそが宇宙世紀の最高傑作と公言する変わり者だが、その点を除けば部下達を常に気に掛ける人格者。ザクⅡF2型に搭乗する。階級は少佐。
 ※原案はX2愛好家先生。

-スティレット・リズナムル-
 20歳。サイド2出身。「十指」の精鋭達を護衛するための特殊部隊「パーブ」の元隊員にして、最後の生き残り。死んで行った仲間達に報いるため、「十指」の脅威となり得る連邦のエースにも敢然と立ち向かう。特別にチューンナップされた専用のザクIに搭乗する。階級は准尉。
 ※原案は影騎士先生。

-カゲツ・クロダニ-
 15歳。サイド3出身。家族に楽をさせたい、という一心からジオン軍に志願した純朴な少年兵であり、経験は浅いが度胸は一人前。ヒートホークを試験的に装備しているザクキャノンに搭乗する。階級は2等兵。
 ※原案はバスクケーキ先生。



第6話 十指の懐刀 -スティレット・リズナムル-

 ガダルカナル島、南東部。

 その決戦の地に臨んだ3機のザクタイプは、大勢の同胞を消し炭にした因縁の宿敵――エリムス・ナイドレイブンのガンタンクと真っ向から対峙していた。逆巻く猛火の海に包まれた密林を舞台に、双方は殺意を宿した眼で睨み合っている。

 

『……マッチの野郎、くたばりやがったか。情けない奴だぜ、全くよォ』

 

 だが、激しい撃ち合いの中で消耗しつつある3機のザクタイプに対して――黒と白銀のガンタンクにはまだ、「余力」が残されているようであった。相棒(マッチ)を失ったというのに、パイロットのエリムスは薄ら笑いすら浮かべている。

 2門の120mm低反動キャノン砲が誇る圧倒的な火力。4連装ボップミサイルランチャーに代わり、両腕部に搭載されている火炎放射器の炎。そのどちらも、ザクタイプの装甲など容易く破壊出来る威力なのだ。

 

 エリムス機が放つ攻撃ならば、どれであってもザクにとっては致命傷になり得る。それ故に3機のザクタイプは、決定打になり得る接近戦に持ち込めずにいるのだ。

 本来、ガンタンクは至近距離での格闘戦となれば勝ち目がない。だが、広範囲を瞬時に焼き尽くす火炎放射の威力が、その弱点を克服してしまっているのである。

 

 離れ過ぎればこちらの攻撃は届かず、キャノン砲の餌食となる。かといって安易に接近すれば火炎放射をまともに喰らい、同胞達の二の舞にされてしまう。

 3機のザクタイプは付かず離れず……という微妙な間合いでの撃ち合いに徹し、せめて撃破だけはされないようにと立ち回るしかない状況なのだ。

 

『いいか皆、相手は高い防御力が売りの戦車もどき(ガンタンク)だ……! 決して深追いはせず、それでいて怯まず! 俺達の攻撃が当たるギリギリの間合いを保つんだッ! 宇宙世紀の最高傑作たるザクならば、絶対に負けることはないッ!』

 

 隊長機であるMS-06F-2「ザクIIF2型」を駆るルザー・ヴァハーク少佐は、「宇宙世紀の最高傑作」と信じて疑わぬ愛機を走らせ、部下達を鼓舞している。

 真正面からエリムス機の注意を引き付けているため、最も激しく狙われているのにも拘らず――彼のザクは紙一重で攻撃をかわしながら、ザクマシンガンを放ち続けていた。

 

 「決して深追いはせず、それでいて怯まず」。その言葉通りの立ち回りという「見本」を、部下達に示しているのである。

 

『分かっています……! 私達だって、殺されるためにここまで来たわけじゃありませんッ! 生きてこいつを倒すために……戦って来たのですからッ!』

 

 そんな彼のサポートに回っている、スティレット・リズナムル准尉。彼女が搭乗しているMS-05B「ザクI」も、古めかしい外観に反した高機動を以て、エリムス機の猛攻をかわし続けていた。

 マゼラトップ砲での援護射撃に徹しているその機体は規格外のチューンナップが施された特別機であり、頭部にあるブレードアンテナは雄々しく天を衝いている。

 

(これまでの戦いで死んでいった皆の無念を、無かったことにしないためにも……私は、こんなところでッ! こんな奴にッ! 倒されるわけには行かないんだッ!)

 

 エースパイロット集団「十指」の護衛を担う、特殊部隊「パーブ」。その最後の生き残りである彼女は今、盟友達の無念を一身に背負い、「十指」の脅威となり得るエリムス機に敢然と立ち向かっているのだ。

 

 ――そして。ルザー隊の中で最も若く、未熟であり。パイロットとしての「伸び代」を最も多く持っている少年兵も、気高く声を張り上げていた。

 

『俺も同じです、隊長……! 皆の無念を晴らすためにも、こいつだけは許してはおけないッ……! そして死人では、こいつは倒せないッ!』

 

 MS-06K「ザクキャノン」を駆る、カゲツ・クロダニ2等兵。家族を養うためだけに軍へと志願した、純真な少年だった彼は今――多くの将兵の無念を背負った1人の戦士として、エリムス機に砲口を向けている。

 

(奴に近付けるチャンスが巡って来た時は……コイツ(・・・)を使うことになるのかも知れないな)

 

 肩部の180mmキャノン砲による砲撃でルザー機をサポートしながら、火の海を掻い潜っている彼の愛機は、試験的にヒートホークを装備している実験機でもあった。パイロットであるカゲツ自身も、この戦いでその刃を試すことになるのだろうと、強く意気込んでいる。

 

 カゲツ機の腰部に収められているそのヒートホークは、エリムス機の視界にも入っていた。ザク如きが何を企んだところで無駄だというのに。そう嗤うエリムスの頬は、歪に吊り上がっている。

 

『……どっちだろうと変わりゃあしねぇよ。てめぇらが全員焼け死ぬ、っていう結末はなァ』

『貴様ァッ……!』

『いかん、スティレット! 前に出るなッ!』

 

 その言葉に激昂するスティレット機が、隊長の制止に反して飛び出してしまう。だが、してやったりと笑みを浮かべるエリムスの乗機が、両腕の火炎放射器を向けるよりも速く――「増援」のMSが、スティレット機を抜き去っていた。

 

『――そうですよ、スティレット准尉! 「十指」を護る「パーブ」に居たあなたを、ここで死なせるわけにはいきませんッ!』

『カイナン伍長……!』

 

 キャリフォルニアベースでも連邦軍のエースを相手に、激戦を繰り広げていたカイナン・トバルカイン伍長。彼が駆るMS-14GD「ゲルググG」は、スティレット機を抜き去るようにエリムス機へと突撃していた。

 

『この機体をヴァルタル大尉に届けるまで……俺は、負けるわけにはいかないんだッ!』

 

 「十指」の8位ことヴァルタル・フリーデゴード大尉の専用機として用意されていた、赤と緑を基調とするゲルググG。その機体を預かっている彼はミランダと共に、この島へと辿り着いていたのである。

 自分と同じように、「十指」のために尽くして来た「パーブ」の生き残り。そんなスティレットにシンパシーを覚えていたカイナンの機体は、彼女を守るため。強化されたスラスターの推力を活かし、エリムス機目掛けて猛進していた。

 

『ぉおぉおッ!』

『……ほう、なかなか良い動きじゃねぇか。だが、いくら機体の性能が良くたってパイロットが雑魚じゃあ意味がねぇぞ』

『果たして……そうかなッ!?』

 

 キャノン砲の砲弾を紙一重でかわし、火炎放射器の間合いに飛び込んだカイナン機は――エリムス機が火を放つよりも疾く。すれ違いざまにビームナギナタを振るい、ガンタンクの片腕を斬り落としてしまうのだった。

 距離を取れば砲撃され、近付けば炎で焼かれる。ならば焼かれる前に、一撃だけ浴びせて炎が届かない間合いへと逃げれば良い。そんな力業を可能としているのは、ゲルググGの性能だけではない。

 

『どうだッ! 「十指」の8位……ヴァルタル大尉専用のこのゲルググGは、簡単には捉えられないぜッ!』

『カイナン伍長、やった……! 凄いっ!』

『おぉ……見事だぞ、カイナン伍長! 奴の火炎放射器が、一つ無力化されたッ!』

『す、凄いな……あれで正規パイロットじゃないっていうんだから、信じられないよ……!』

 

 本来のパイロットであるヴァルタル・フリーデゴードに次ぎ、この機体を乗りこなしているカイナンの実力があってこその芸当なのだ。エリムス機の片腕を瞬く間に切断して見せた彼は、意気揚々とした表情を浮かべている。

 その勇姿を目にしたルザー隊の面々も、状況の好転に歓声を上げていた。これなら、勝ち目も見えて来るかも知れない――と。

 

『火炎放射よりも疾く仕掛け、即座に退く一撃離脱戦法か。確かに、性能頼りってだけのひよっことは違うようだが……』

 

 だが。エリムスは乗機の片腕を斬り落とされたというのに、薄ら笑いを浮かべていた。残る火炎放射器は一つしかないというのに、彼はそれでも嗤っていたのである。

 

 急速旋回したガンタンクがゲルググGの背に向けて、残る片腕の火炎放射器を向けたのは、その直後だった。

 だが、すでにカイナン機はスラスターの推力でエリムス機の側からは離れており、火炎放射が届く間合いにはいない。その炎が、ゲルググGの背を焼けるはずはないのだ。

 

『……それだけでこの俺と渡り合える気でいるところは、やはり「ガキ」だな』

 

 ――その片腕が、伸びる(・・・)までは。

 

『なッ……なにィッ!?』

『腕が、戦車もどきの腕が伸びたッ!?』

『こいつ、まさかゾゴックの機構をッ……!?』

 

 MSM-08「ゾゴック」に用いられている、伸縮式のロッドアーム。それに通ずる技術が、エリムス機にも使われていたのだ。

 ガンタンクの片腕は、まるでジオンのMSのように。真っ直ぐに飛び出し、カイナン機の背を追いかけていたのである。

 

 だが、その伸長の距離はほんの10m程度であり、本家であるゾゴックのものには遠く及ばない。火炎放射器の機能と両立させるには、そこまでが限界だったのだろう。

 

 しかし、それで「十分」なのだ。

 

 ほんの10m。たったそれだけの「誤差」が、カイナン機を火炎放射の射程内へと招き入れていたのだから。

 

『うぐわぁあぁあーッ!?』

『カ、カイナーンッ!』

 

 伸長しきった片腕から繰り出される、灼熱の猛炎。その業火に飲み込まれたカイナン機は、火だるまになりながら密林へと墜落してしまうのだった。

 その光景を目の当たりにしたルザー隊が声を上げる中、嘲るような高笑いを響かせるエリムスは――愉悦の貌を露わにしていた。

 

『ふっ……ハッハハハ、ハァッハハハァッ! なァにを驚いていやがる!? MSの腕を伸ばすってのは、お前らジオンの十八番(オハコ)だろうがよォ!』

 

 これがお前達の末路なのだと、宣告するかの如く。

 




 エリムス戦はもうちょびっとだけ続きますぞ。次回以降もどうぞお楽しみに!٩( 'ω' )و
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