-ディートハルト・クリーガー-
17歳。サイド3出身。「十指」の10位とも呼ばれる、フラナガン機関から派遣されたニュータイプであり、「黒い烈風」という異名を持つ。アッシュパープルに塗装された、予備機のザクIに搭乗する。階級は少尉。
※原案はmikagami先生。
-ヨウヘイ・チネン-
21歳。静岡出身。荒々しい言動が目立つ好戦的なパイロットだが、敬愛する上官の口癖である「命は宝」を信条としており、人一倍仲間思いでもある。薄い灰色を基調としたジム改に搭乗する。階級は中尉。
※原案はエクシリオン先生。
-ルイ・ヤクモ-
18歳。愛媛出身。元戦闘機乗りでもある若手のエースであり、冷静沈着で寡黙な印象を与えているが、実は誰よりも熱い闘志の持ち主。ジムキャノンに搭乗する。階級は少尉。
※原案はシズマ先生。
-マイ・ユウキ-
22歳。茨城出身。技術者としての知識と優れた操縦技術を併せ持つ才色兼備の美女……なのだが、マゾヒストな言動がその全てを台無しにしている。自身がテストを担当している、ジムのボディを内蔵したGアーマーに搭乗する。階級は技術大尉。
※原案は黒子猫先生。
前編 沈黙の砲兵 -ルイ・ヤクモ-
――宇宙世紀0079、12月25日。ジオンの宇宙要塞「ソロモン」が陥落した、「チェンバロ作戦」の翌日。
最後の砦となるジオン最大の宇宙要塞「ア・バオア・クー」への進攻に向けて、暗黒の大海を進んでいた連邦軍のとある艦隊は。
「な、何をしておるのだ! たった3機のザクを相手に、何を手こずっておるのだッ!?」
「MS隊、全滅! 全滅です艦長ッ!」
「バカな……! あんな、あんなザク如きに我が艦隊のMSが全滅した挙句……4隻ものサラミスがッ……!」
3機。そう、たった3機のザクに翻弄され、壊滅の危機に瀕していた。
ソロモンを脱出し、ア・バオア・クーを目指して航行していた傷だらけのムサイを発見した彼らは、満身創痍の敗残兵を嘲笑うように攻撃を仕掛けたのだが。その後に待っていたのは、常軌を逸した戦闘力を持つ3機のザクによる、苛烈な逆襲だったのである。
「ザク3機、き、来ますッ!」
「う、撃てぇぇえッ! 我が艦に、近寄らせるなぁあぁあーッ!」
楽に狩れる獲物と侮った彼らは、死の間際にようやく悟ったのだ。自分達は、虎の尾を踏んでいたのだということを――。
◇
かつてオデッサに集結していた、10人の修羅。その技量と気迫を以て戦場を席巻し、連邦軍を恐怖に陥れたという戦鬼の群れ。
彼らはあらゆる戦場で牙を剥き、連邦軍の兵士達を脅かしている。オデッサの陥落を受け、散り散りになってからも。
「十指」と呼ばれた彼らの戦いは、今もなお続いているのだ。敵味方問わず「魔王」と畏怖された、「五指」の1位ことレゾルグ・バルバ大尉を筆頭として――。
◇
当然ながら、連邦軍はMSの分野においてはジオン軍よりも大きく遅れている。高性能機の開発こそ順調であるものの、肝心のパイロットの練度は未だに追い付いていないのが実情だ。
しかし連邦軍には、ジオン軍にはない圧倒的な物量というアドバンテージがある。先のチェンバロ作戦で命を落としたドズル・ザビ中将の言う通り、「戦いとは数」なのだ。
如何に操縦技術においてはジオンの方が上回っているのだとしても、3機以上のMSで包囲されては基本的に勝ち目などない。そういった集団戦法を徹底してさえいれば、
――そして、最初に「彼ら」と遭遇したサラミスの艦隊は。その鉄則を遵守し、最善を尽くした上で壊滅した。
相手は、そのような理など容易く踏み越えてしまうほどの修羅――「十指」の者達だったのだから。
その大損害を受け、チェンバロ作戦にも参加していた連邦軍のエース部隊に
単騎でも、ジオン軍のベテランパイロットに対抗出来るほどの技量を持っている自分達が。一切の慢心を捨てて、集団戦法に頼らねばならないほどの相手なのだということを。
『ったくよォ……! ガラじゃねぇマネしてまで潰しに掛かってるってのに、ここまで手こずることになるなんてなァッ!』
『……しかも相手はかなりの旧型。どうやら、随分とこちらをナメているようですね』
薄い灰色を基調とするRGM-79C「ジム改」に搭乗している、ヨウヘイ・チネン中尉。RGC-80「ジムキャノン」を駆り、彼のサポートに徹しているルイ・ヤクモ少尉。
彼ら2機が狙いを定めているのは――撃沈寸前のムサイを守るべく、真っ向から猛進してくる1機のザクI《・・・》。その機体は、キシリア部隊機のアクトザクを想起させる、漆黒に近しいアッシュパープルで統一されていた。
『……生憎ですが、俺が生きている内は仲間達に手出しはさせません。死にたい人だけ、いつでもどうぞ』
ムサイに積まれていた、その予備機だけでここまで戦い抜いてきた「十指」の10位――ディートハルト・クリーガー少尉。「黒い烈風」とも呼ばれてきた彼は、圧倒的に性能で劣っている旧型機に乗りながらも、その異名に違わぬ実力を発揮しているのだ。
『貰ったぜ、今度こそ……ぐッ!?』
『中尉、下がってください……!』
『……良い機体ですが、まだスペックを活かし切れる技量ではないようですね。これまでの相手とは少し違うようですが、俺にとっては大差ありません』
2本のヒートホークを振るって、最大速度で斬り掛かり。かわされても即座に切り返し、撃たれる前にクラッカーを投げ付け牽制する。そんな変幻自在の立ち回りを前に、ヨウヘイ機とルイ機は後手に回ることを余儀なくされていた。
ヨウヘイもルイも、チェンバロ作戦においては何機ものリックドムを仕留めてきたエースだというのに。そんな彼らですら、ディートハルトは有象無象のパイロット達と同一視している。
『……あぁクソッ、自分の甘さが嫌になってきやがる。油断なんかしてるつもりはなかったが……それでも心のどっかでは、俺達こそ奴をナメてたのかもな』
『俺も同じ思いです、中尉。……そろそろこちらも、
通信を傍受しているわけでなくとも、振る舞いからそのような雰囲気を感じ取ったのだろう。明らかにこちらを見下しているディートハルト機を仰ぎ、ヨウヘイとルイは静かに、そして厳かに怒りを滾らせる。
『……!
そんな彼らの変化を、ディートハルトの方も敏感に感じ取っていた。ニュータイプの1人として、機体を通して伝わって来る激情のうねりが、彼にかつてない危機感を齎している。
『行くぜオラァッ!』
『そんな単調な攻撃でッ――!?』
弾かれるようにヨウヘイ機が急発進したのは、その直後だった。真っ向からビームガンを連射する彼に狙いを定め、紙一重でかわしながらヒートホークを振るおうとした瞬間――ディートハルトは、彼らの思惑を察知する。
『――貴様は必ず、ここで落とす』
『まずいッ!』
銃口を向けるヨウヘイ機が、ヒートホークの間合いに入る瞬間。そこからザクIの頭上へとスラスターの軌道を変え、ディートハルトの視界から消えてしまったのである。
その
コンマ1秒でも上昇のタイミングが狂えば、間違いなく弾頭がヨウヘイ機の背面に直撃していた。それほどの限界を攻めた、賭けにも等しい時間差攻撃だったのだ。
『く、ぁッ……!』
『何ッ……!?』
『おいおい冗談だろ、アレをかわすってかァ……!?』
だが、それでも事前に彼らの作戦を察知していたことが功を奏して。ディートハルトも間一髪で、ルイ機の砲撃をかわすことに成功していた。
本気の連携攻撃すら回避してしまう「十指」の10位。その実力の片鱗を目の当たりにした2人は、改めて自分達が戦っている相手の「異常性」を痛感する。こいつだけは、野放しには出来ないと。
『……最初の急接近とまばらな射撃は、俺の注意を分散させるためだったのか。しかもキャノン付きの方は、僚機が軌道を変える前からすでに引き金を引いていた。一歩間違えば誤射にもなりかねない、ギリギリのタイミングで……!』
一方で、ディートハルトも2人に対する評価を大きく改めていた。これまでがほんの小手調べに過ぎなかったのだと悟った彼は、エース同士の連携能力に戦慄を覚えている。
戦法の予測に長ける彼でなければ、間違いなく今の一撃で即死していた。「十指」に数えられる程度の腕もなければ、何が起きたのかすら分からないまま散華していただろう。
突貫工事のチューンナップで出力を増している彼のザクIは、長期戦こそ出来ないが並のザクIIよりは遥かに疾い。それでも、回避に成功したのは奇跡であった。
ニュータイプですら、為す術なく殺されかねない。それがエースパイロット達が、慢心を捨てて発揮する集団戦法の威力なのだ。
その恐ろしさを肌で思い知ったディートハルトは、自分と同様に冷や汗をかいているヨウヘイとルイの方へと向き直り――ヒートホークを構える。
これからはもう、一切の油断もしないし隙も与えない。命を賭け、全身全霊を以て撃破する。その信念を、纏うように。
『……もう、同じ手は通用しねぇだろうな。向こうもマジになりやがったことだし……腹ァ括れよ、ルイ! 「命は宝」だ、くたばったら承知しねぇからなッ!』
『言われるまでもありません……!』
ここから始まるのは、先に気力が尽きた者から死ぬ泥沼の消耗戦。お互いにそれを覚悟しつつ、引き金を引こうとした――その時だった。
『んはぁあぁあんっ! この加速しゅごいのぉおぉぉっ!』
『!?』
突如この場に響き渡る、女性の上擦った絶叫。その内容を受信していたヨウヘイとルイはもちろん、女性の思念を感知していたディートハルトも、あまりのことに硬直してしまう。
『ヨウヘイ中尉、ルイ少尉、私が来たからにはもう安心ですよ! このGアーマーの加速ならザクなんて簡単に翻弄……あはぁあぁんっ!』
『……』
ジムの機体を専用パーツで覆い尽くした重爆撃機形態「Gアーマー」。レビル将軍からその機体のテストを任されている、技術大尉のマイ・ユウキは――実数データを取るべく、この戦場に駆け付けてきたのだが。
技術者として兵器の性能を追求する余り、凄まじい加速に伴うGにすら悦びを覚えてしまう、独特のマゾヒズムを露呈していたのである。かつては純粋に空を飛びたいと願う無垢な少女だったのだと本人は語るが、ヨウヘイもルイも全く信じていないのが現状だ。
――やばい女が来てしまった。それが、ディートハルトも含む男達3人が共有している感想であった。
『な、なんだかよく分からない新手が来たが……やることは変わらない! 今この場で、撃ち落とすッ!』
『んふふっ……当たりませんよぉ? 大事なテスト機なんですから、傷なんて付けさせませぇんっ!』
やがて気を取り直したザクIが、マイ機にクラッカーを投げ付けていくのだが。彼女のGアーマーはその全てを巧みにかわし、ビームキャノンとミサイルを連射している。
決してかわせない攻撃ではないものの、ディートハルトを警戒させるには十分過ぎる正確さであった。その射撃技術はすでに、テストパイロットの範疇を大きく超えている。
『はぁうぅっ! か、感じますぅ……! 兵器に命を預けるパイロットの皆様のために、誠心誠意を以て開発に励んできたこの私に対して、男の人達が向けてくる侮蔑の眼差し……!』
『……マイ大尉、実戦データが欲しいのであれば真面目に飛んでください。心底、邪魔なので』
『んはぁあんっ!? イイ、すごくイイィ……! ルイ少尉の冷たい罵声と眼差し、やっぱりたまらないですぅっ……!』
『おいルイ、これ以上あの人を刺激すんな。……余計やべー方に拗れるから』
だが、その無駄に扇情的な声と振る舞いに対しては友軍すらも辟易しており。ヨウヘイもルイも、援護射撃に徹しながらため息をついている。
『クッ、ただでさえ強敵揃いなのに新手の戦闘機まで……! しかもなんだろう、あのパイロット……すごく嫌! 上手く言えないけど、すっごく嫌だ!』
『ひぃいんっ!? さ、殺意です! 突き刺すような殺意を感じますぅっ! こ、これが実戦というものなのですね……! 期待以上の素晴らしいデータが集まりそうですぅ! じゅるり!』
黙ってさえいれば、知的で優雅な絶世の美女なのに。
そんな周囲からの評価に違わず、彼女は己の美貌を台無しにするような蕩けた貌で、だらしなく涎を垂らしている。ノーマルスーツを押し上げる豊満な肢体を、絶えずくねらせて。
自機の周囲を翻弄するように旋回している、そんな彼女のGアーマーに狙われながら。ディートハルトは、筆舌に尽くし難い寒気に襲われていた。
『ダメだ、クラッカーはもうないしマシンガンはとっくに弾切れ……! ムサイがこの宙域から離脱するまでは、俺がなんとか持ち堪えるしかッ!』
形勢は不利。それでも彼には、退けない理由がある。
傷付いたムサイを護衛するために動けるザクは、たったの3機。その一翼を担う「十指」の1人として、ディートハルトも逃げるわけにはいかないのだ。
『俺1人に主力を全て割いているとは思えない……!
マイ機の掃射をかわしながら、ヨウヘイ機とルイ機の連携攻撃にも対応し続けている彼は。同じくエース部隊の強襲を受けているのであろう、戦友のことを慮っていた。
先のソロモン攻略戦で片腕を失ってから間もなく、筋電義手を装着したばかりの負傷兵――「悲笑の亡者」こと、アドラス・センの窮状を。
このお話は番外編込みで全4話の予定となっており、タイトル通りソロモン攻略戦の辺りを舞台にしたエピソードとなっております。今回も第1.5部と同様に、完結後しばらく経ったらナンバリング通りに並べ替える予定ですぞー_(┐「ε:)_
他の応募キャラ達もこれから続々と登場してきますので、次回の中編もお楽しみに!٩( 'ω' )و
Ps
マイのキャラ付けについては、かなりプリコネのクウカを意識しております。初期案に「ドM」とあった時点で彼女の運命は決まっていたのかも知れません(゚ω゚)