-ケンジロー・カブト-
主人公。18歳。福島出身。リュータの同期であり、オデッサ作戦から戦い続けてきた新任少尉の1人。星一号作戦の渦中、クーディアと巡り会う。ジムに搭乗する。階級は少尉。
-クーディア・ブリゼイド-
ヒロイン。15歳。サイド3出身。ガリウスの妹であり、学徒動員された少女兵の1人。学友達と共に、ア・バオア・クーの防衛戦に加わるが……。ゲルググに搭乗する。階級は伍長。
-レゾルグ・バルバ-
33歳。サイド3出身。クーディア達学徒動員兵を扱き上げてきた鬼教官であり、ザビ家への忠誠を絶対とする「五指」の1位。戦火の中、クーディアを保護したケンジローに襲い掛かる。ザクレロに搭乗する。階級は大尉。
第1話 白麗の妖精 -クーディア・ブリゼイド-
宇宙世紀0079、12月31日。宇宙要塞ア・バオア・クーを舞台とする、連邦軍とジオン軍の最終決戦は――阿鼻叫喚の煉獄と化していた。
連邦軍がソーラ・レイによって壊滅的な打撃を受けた一方で、ジオン軍は正規パイロットの不足による戦力低下に苛まれていたのである。
今日に至るまでの激戦で名だたるエースの多くを失い、学徒動員された少年少女達をMSに乗せるしかなくなっていたのだ。
『ぁあぁああっ! 母さぁぁあんっ!』
『いやぁ、熱いっ! 熱い熱い熱いっ! クーディアッ! 出して、ここから出してよぉぉおっ!』
「み、皆脱出してっ! ここはもうダメ、もうダメだから……お願い、逃げてぇっ!」
同じ学び舎で同じひと時を過ごしてきた学友達が、戦火に焼かれていく姿を、ただ見ているしかなかった――クーディア・ブリゼイド伍長もその1人。
時には喧嘩し、時には笑い合い。ジオンの勝利と独立の実現を純真に信じて、勉学に打ち込んできた仲間達が、彼らを乗せたMSと共に爆散していく。
「なんでっ……! 私達が頑張れば、ジオンは絶対に勝てるって……! お兄様も帰ってくるって……! なんでっ、どうしてぇっ!」
その光景に慟哭し、白銀の髪を振り乱す美少女は、眼前の惨劇を嘆くばかりであった。そんな彼女の幼気な姿が見えていれば、連邦兵達も情に突き動かされ、手を差し伸べていただろう。
だが、MSという鎧に全てを覆い尽くされている今の彼女は。連邦兵にとってはMS-14A「ゲルググ」という、敵MSでしかない。
彼女自身が数多のジムを撃破してきた優秀なパイロットだということも、その「すれ違い」を加速させている。もはや誰も彼女を、友人達の死に悲しむ1人の少女だとは見れないのだ。
「お父様、お母様……お兄様。どうか、どうかクーディアをお守りください……!」
クーディア自身も、それはとうに理解していることであった。地球で消息を絶ったという兄への想いを胸に、涙を拭う彼女は傷付きながらも、1人の兵士として操縦桿を握り締める。
やがて。爆炎の光に彩られた星の大海へと、彼女を乗せた角付きのゲルググが飛び立った瞬間、「その時」が訪れた。
「あッ……!」
『貰ったァッ!』
要塞内部から飛び出して来る敵機を墜とすため、出入口付近の外壁に張り付いていたジムが襲い掛かってきたのだ。戦闘濃度のミノフスキー下でありながら、パイロットの声を傍受してしまうほどまでに接近を許してしまい、クーディアは声にならない悲鳴を上げる。
だが、相手が幼い少女とは知らないジムは、躊躇うことなくビームスプレーガンを撃ち放ち。彼女を乗せたゲルググの機体に、風穴を開けてしまうのだった。
「お兄様……助けてぇっ!」
咄嗟に機体を傾けたことで、奇跡的にコクピットへの直撃だけは免れたのだが――すでにゲルググの全身からは、火の手が上がっている。ビームライフルで反撃する暇など、あるはずもない。
クーディアは機内に篭る熱気に怯え、逃げ出すようにコクピットから飛び出すのだった。その脳裏には、内側から焼き殺された学友達の断末魔がこびりついている。
本来なら乗機を失った以上、戦う術がない状況なのだから要塞へと戻るのがセオリーなのだが。彼女は錯乱するあまり、帰投するどころか要塞から逃げ出すかのように、戦闘中の宙域に向かって漂い続けていた。
『……っ!? おい、生身でどこに行くつもりなんだ! 死にたいのかッ!?』
ノーマルスーツを着ているだけの人間が、MSやビームが絶えず飛び交う戦場に巻き込まれれば、ひとたまりもない。ジムのパイロットは怒号を上げながら、もがくように手足を振るクーディアの身体を、優しく掴み取る。
「た……助けてっ! こ、殺さないでぇっ!」
『なっ……!? こ、子供ッ……!?』
そして、涙を浮かべて自分を見つめる少女の顔が、ようやく視えた時。ジムのパイロット――ケンジロー・カブト少尉はついに、自身が戦っていた「敵」の正体に、辿り着くのだった。
◇
――ジオンの兵は年端もいかない少年少女が非常に多く、正規兵が不足しているような印象を受ける。
宇宙に発つ直前、同期のリュータ・バーニング少尉からそのような話を聞いたことはあった。ジオンが学生を駆り出すようになった、という噂も艦内で何度か耳にしている。
だが、実際に自分自身の目で見るまでは、半信半疑だったのである。
……否。ただただ、認めてしまうのが怖かったのだ。
自分が敵として殺してきた相手が、時代に翻弄され前線に送り込まれてしまった、前途ある少年少女なのだということを。
「くそッ……! こんなこと、許されるわけないだろ……許されてたまるかよッ!」
「カ、カブト少尉……」
コクピットの中で声を荒げるケンジローの肩に、クーディアのか細い指が優しく触れる。戦う力も意志もない以上、彼女はもはやただの少女でしかない。
(……すみません、教官。やはりあなたに言われた通り、俺は兵士失格です)
だからこそケンジローも、躊躇うことなく彼女を
本来なら戦う必要もない学生を、このような最前線に引き摺り出す。そのようなザビ家のやり方に憤る彼が、クーディアのような少女を見殺しに出来るわけがないのだから。
「せめて、君だけでも連邦軍に送り届けたい。……いいかな」
「……はい」
少しだけ落ち着きを取り戻したケンジローは、自分の肩に触れているクーディアの細い手に、掌を重ねる。彼の問い掛けに、少女は力無く頷いていた。
ケンジローが所属しているサラミスのクルー達は、南極条約を律儀に遵守する「お人好し」の集まりとして知られている。戦意を失った少女兵に、乱暴を働くこともないだろう。
当のクーディア本人も、連邦の軍門に下る屈辱より、戦場への恐怖の方が勝っているようだった。学友達との別れを悲しむ今の彼女は、死に場所を見つける戦士になるには、あまりにも幼過ぎる。
『クーディア・ブリゼイドォォッ! やはり貴様ァ、裏切りおったなァッ! ダイクン派出身の貴様が、ジオンの栄光に殉ずるはずがないものなァァアッ!』
「ひっ……!」
「なにッ……!?」
だが、本人の意思を問わず。死ぬ覚悟を強いる諸悪の根源は、ジムのコクピットに逃げ込むクーディアの姿を目撃し、怒号を上げていた。
ジムやボールを次々と蹴散らして、宙域を駆け抜け肉迫するMA-04X「ザクレロ」。そのパイロットであるレゾルグ・バルバ大尉は、クーディア達学徒動員兵を「捨て駒」として育て上げた、かつての鬼教官であった。
「きょ、教官っ……!」
『亡き戦友達の無念を置き去りにして、1人逃げ出すとは愚劣の極みッ! 兄はジャブローで消息を絶ち、妹の貴様はこの期に及んで敵前逃亡! 兄妹揃って、なんたる不届きなことかッ! ジオン勝利の暁には、一族郎党処刑してくれるッ!』
「……勝手なことをッ!」
元々、ザビ家に心酔していた彼はダイクン派のブリゼイド家を良く思っておらず、クーディアに対しては特に厳しく接していた。それは指導の範疇を逸脱したものであり、彼女に植え付けられた感情は「恐怖」しかなかったのである。
怒号によって、その当時の恐ろしさを思い出したクーディアは、身を震わせてケンジローの後ろに隠れてしまった。詳しい経緯は知らずとも、彼女の怯えようから彼らの関係を察したケンジローは、キッと鋭い視線をザクレロに向ける。
「ぐッ……!」
『ぬははははァッ! そんな玩具のようなMSが、このザクレロに通用するものかァッ!』
だが、気持ちだけで勝てるほど戦争は甘いものではない。ジムとザクレロとでは、あまりにも性能差が違い過ぎるのだ。ましてや相手は、「五指」の1位。
ビームサーベルを振るう暇もなく、常軌を逸した加速による体当たりに吹っ飛ばされ、ケンジロー機は要塞の壁に叩きつけられてしまった。
『くたばれぇええッ!』
「このッ……!」
追い討ちを掛けるように放たれる、拡散ビーム砲と4連装ミサイルランチャー。その猛攻をスラスターの推力でかわしながら、ケンジロー機もビームスプレーガンを連射するが――ザクレロの機動力は、彼の想定を遥かに上回っている。
『死ねぇえぇッ!』
「……くそッ!」
レゾルグ機がヒートナタを振りかぶり、とどめを刺そうと肉迫してきたのは、その直後だった。
「お兄様ぁあぁあっ!」
そして、最愛の兄に助けを乞うように、クーディアが悲鳴を上げた――その時だった。
『ぐおォッ……!?』
「……!?」
真横から飛んできた、何者かの不意打ちが。ヒートナタを振り上げたザクレロの一撃を、阻んだのである――。
今回はア・バオア・クーが舞台のお話となっております。設定だけの存在だった「ガリウスの妹」にもスポットを当てたかったものでしてε-(´∀`; )
もうジャブローとか全く関係ないところにまで来ておりますが、タイトルは変えませんぞー( ゚д゚)
さてさて。実は現在、本章を進めるにあたり第3弾のキャラ募集企画を開催しようと思っておりまして。
再び連邦軍パイロットのオリキャラを募集したいなーと考えております。詳しくは私の活動報告を参照! ですぞ(*´ω`*)
Ps
一年戦争のラストを飾るこの戦いが舞台なわけですし、今回の第3弾を最後のキャラ募集にしようかなーと思います。当初の予定を遥かに超えるスパンでの連載となりましたが、最後までお付き合い頂けると幸いであります(>人<;)