機動戦士ガンダム -烈火のジャブロー-   作:オリーブドラブ

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 皆様、お久しぶりでございます! 前回の最終話で、本編はスッパリと完結を迎えたわけですが。
 今回は第1部や第2部にあったような、各応募キャラにもう一度スポットを当てる日常回を書いておきたいなーと思いまして。この度番外編として、このお話をお送りさせて頂くことになりました。どうぞ!(*≧∀≦*)



番外編 未開の花蕾 -ルーデル・シャカタク-

 ――宇宙世紀0080、1月上旬。グラナダで終戦協定が結ばれてから、数日が過ぎたこの頃。

 ケンジロー・カブトを含むア・バオア・クー攻撃隊の面々は、小惑星基地「ルナツー」に寄港していた。これから始まるジオン残党の掃討戦に備えて、先の戦闘で消耗した物資全般を補給するためだ。

 

 戦争が終わったと言っても、ジオン軍人全てが例外なく銃を手放したわけではない。強硬な姿勢を貫く残存部隊が激しく抵抗したというケースは、すでに何度か報告されている。

 総人口の半数という途方もない犠牲を経て、ようやく掴んだ平和を乱されるわけにはいかない。戦士達はその想いを秘めながらも、束の間の休息を取っていた。

 

「……戦いは終わったが、平和と安寧が約束されたわけではない……ということか。我々もこれからは、さらに忙しくなるな」

「どうということはない。……義妹(ロビン)を見つけるまで、俺の旅は続く。これまで通り、変わらんままさ」

「そうか……。ならば1日も早く再会が果たされることを、私も祈るとしよう。こんな時代だ、家族は大切にしなくてはな」

「……あぁ」

 

 ルナツーに身を寄せる数隻のサラミスと、ペガサス級揚陸艦。その傷付いた姿を仰ぐベネッタ・ヒューリンデンとアリスノア・カーターは、終戦を迎えた先に待つ新たな旅路に想いを馳せている。

 アリスノアの肩に手を乗せ、励ましの声を掛けるベネッタの茶髪は、穏やかに揺らめいていた。

 

「隊長、従姉妹(アリサ)さんに手紙送らなくても良いんですかぁ? なんでも最近、気になる人がいるって話らしいじゃないですかぁ! 根掘り葉掘りよっく聞いて、見定めておくべきではありませんかぁー?」

「……別に、気にしてなどいない。だいたいお前、そんな話どこから聞いてきた」

「カナン准尉ですよー。地球の友達がジャブローの陸戦中隊に居るらしいんですけど、その人の話だと従姉妹さん、気になる人の前だとすっごく分かりやすいカオになるんですってー!」

「……あいつめ……」

 

 その一方。傷付いたMSの整備で慌ただしくなっている、格納庫の前では。オレンジ色のショートヘアを弾ませるダイナ・スレイヴが、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、上官であるテオ・アルムガルトを見上げていた。

 地球に居る従姉妹の近況が気になるあまり、ダイナに看破されるほどソワソワしていたテオは。従姉妹が仄かに好意を抱いているという男の影に、気が気でないらしく……普段のクールな佇まいに、若干の乱れが生じているようだった。

 

 そんな彼らを他所に、整備に追われるメカニック達は忙しく格納庫内を行き交っている。

 

「しっかし、ジムにサラミス砲を持たせるなんて無茶にも程があるぜ。専用のジェネレーターも砲身もズタボロじゃねぇか」

「当分は、通常装備(ビームスプレーガン)での運用に戻ることになるでしょうね。……少々、愛機に無茶をさせ過ぎてしまいました」

「いいさ、お前の援護があったら俺達も……ケンジローも助かったんだ。こいつも本望だろうさ」

「えぇ……ありがとうございます、中尉」

 

 格納庫で修理を受けているMSの中には、装備を丸ごと交換しなければならないほど損耗している機体も多い。サラミス砲を携行していたタシギ・メスヴェンのジムも、その一つであった。

 満身創痍の愛機を仰ぐ彼女の頭を撫で、励ましの声を掛けるジュスト・ベルティーニの言葉に救われたのか。水色の髪を靡かせる1人の美女は、はにかむように笑っている。

 

「シエラ……お前、また整備士達にブースターを強化させたな? これ以上速くなってどうするつもりなんだ、全く」

「誰よりも速く動き、撃つ。ミノフスキー下の戦闘においてはその機動力こそが戦果に直結するのだと、『赤い彗星』が証明していますわ。……私のデータを使えば、皆様もより速く、強くなれましてよ……うふふっ」

「……その速さのGに耐えられる奴なんて、お前くらいしかいないだろうが。他の連中をぺしゃんこにする気か?」

 

 一方で。シエラ・マクナイトの主張を肯定するかのように、彼女のコアブースターには殆ど損傷が見られない。増設されたバーニアに眉を潜めるジャック・オコーネルは、彼女の価値観に他のパイロット達が巻き込まれないかと、肝を冷やしているようだった。

 愛機の上に腰掛けながら、艶やかなラインを描く扇情的な美脚を組み。桜色のポニーテールを、挑発的に揺らすシエラ。そんな彼女を見上げ、ジャックは深々とため息をつく。

 

「あらあら……でしたら、大尉だけでも付いてきて(・・・・・)くださいな。張り合いのない殿方ばかりというのは、寂しいものでしてよ?」

「……俺の身体が持てば、な」

 

 彼女がそんな自分の姿に愉悦を覚えながら、妖艶に頬を染めていることにも気づかずに。

 

「Bガンダムか……クククッ、お前なかなか良いセンスをしているなッ! 特に、顔だけをとにかく主張するかのようなこのディテール! 威圧感に溢れていて、非常に良いッ! 良いぞッ!」

「さっすがバルソー中佐、分かっていらっしゃるッ! 他の奴らにはこのセンスが理解できないんだから、困ったモンなのですよ全くー! 特にあの幼児体形は……ゲッ!」

「ウ〜モ〜ン〜っ!」

 

 ボールの顔をガンダムのものに改修した、Bガンダム。多くの整備士達が微妙な表情でその姿を仰ぐ中、バルソー・ブレンダンだけは豪快に笑いながらそのセンスを肯定していた。

 そんな彼の前で満面の笑みを浮かべ、ゴマを擦るウモン・サモンは口を滑らせてしまい――後ろで聞いていたダイナに追い回されている。

 

「これは別に分かりたくない、かなぁ……」

 

 そんな彼らを一瞥し、整備士達と同様に難色を示していたユウキ・ハルカゼは、なんとも言えない表情を浮かべていた。

 

「……さっきから、何をジロジロ見ている」

「あんたってさぁ……変わんないね。戦争が終わっても、そうやって独りで調整ばっかりしててさ」

 

 その頃、Bガンダムの隣に立つジムライトアーマーのコクピットでは。リュート・カドクラが次の出撃に向けて、機体の調整を行っていた。

 

「何も終わってなどいない。……この平和を脅かす奴らがいるのなら、俺は戦う。そのために今、出来ることをする。それだけのことだ」

「……ふーん」

 

 そんな彼の様子を開かれたハッチから、身を乗り出すように覗き込んでいるドロテア・ルイーゼ・マルティンは。相棒のひたむきな姿に微笑に浮かべ、その真剣な眼差しを見守っている。

 

「話はそれだけか。なら、さっさと失せろ。気が散る」

「ふふっ……やーだ。見てたいから」

「……ちっ、勝手にしろ」

「アタシはいつも勝手でしょ」

 

 ふわりと揺れる彼女の紫紺の髪からは、リュートを癒す優しげな香りが漂っていた。甘い熱を帯びた妖艶な唇は、見る者を魅了する色香を放っている。

 

「ご、ごめんなさい少尉……私がもっとしっかり出来ていたら……!」

「大丈夫だよルーデル、あなたが頑張ってくれてたのは分かってるから。……私も、もっと強くならないと。このままじゃ、ケンジロー先輩にどんどん置いて行かれちゃう」

「よし、じゃあ今度の訓練にはボクも付き合うよ! ボクだって、ケンジローやグーイの奴には負けてられないからねっ!」

 

 左腕を失ったジムコマンドを仰ぎ、意気消沈していたリューコ・タカスギとルーデル・シャカタク。

 そんな彼女達のために、訓練に付き合う約束を取り付けたカタリナ・キャスケットは、ヘルメットを取ってベリーショートの黒髪を露わにしながら、快活な笑みを浮かべている。

 

「カタリナ先輩……! はいっ、ご指導よろしくお願いしますっ!」

「わ、私もっ! 私にも、よろしくお願いしますっ!」

「あははっ、よぉーし。2人まとめて、どんと来いっ!」

 

 ケンジローの存在を強く意識していたカタリナとしても、彼を慕うリューコ達を放っておくわけにはいかなかったのだ。

 そんな彼女の言葉に、未開の花蕾達は黒のポニーテールと赤のサイドテールを弾ませて、拳を握り締めていた。

 

「めでたく戦争は終わったわけですが……少佐殿は、これからどうするおつもりで? サイド3には家族もいるでしょうし、今なら戻っても良いんじゃあないですか」

「いや……条約が締結されて間もない今の情勢では、難しいものがある。もうしばらくは、ここで世話になるつもりだ。……ジオン出身の俺を色眼鏡で見ない、変わり者も多いことだしな」

「……俺も、その変わり者の1人ってとこですかい」

「褒め言葉だ」

「分かってますよ」

 

 そんな青春の一幕を、上階から見守っていた屈強な男達――ピーター・バルバとバートルの2人は、強面な口元を僅かに緩めている。

 

(アドラス……ディートハルト……)

 

 ジオンと袂を分かった戦士の帰郷は、まだしばらくは先になるらしい。風の噂で、終戦後はアクシズに渡ったと聞く2人の戦友――アドラス・センとディートハルト・クリーガーへの思いを馳せ、ピーターは憂いを帯びた表情を浮かべていた。

 

「じゃあ、明後日には地球に降りることになるわけか」

「パスカル少佐直々の要請とあっては、無碍には出来んからな。……今後の隊の指揮は、お前に託すことになる。頼むぞ、ソニア」

 

 愛機を仰ぐマルティナ・テキサスとアンソニア・W(ウィリアムズ)・サイジョウは、暫しの別れに苦笑を浮かべ、固い握手を交わしていた。彼女達の青と黒の艶やかな髪が、静かに揺らめいている。

 

「あぁ、任せておけ。地球に居る(サンディ)に恥じないよう、やり遂げてみせるさ。……カナンの奴も、私がしっかりと面倒見てやるよ」

「ひっでぇなー、俺のことそんなに信用ならないんですかぁ?」

「だったら普段から、腕以外も信用されるよう徳を積むことだな。機体に変なペイントするわ、自作の漫画を整備士達に売り付けるわ……お前の問題行動には、いい加減ウンザリしていたところだ」

 

 地球に居るパスカル・ネヴィルの要請により「パリ防衛隊」への転属が決まっていたマルティナは、アンソニアの隣に立つカナン・エスペランザの相変わらずな様子に、微笑を浮かべていた。

 

「勘弁してくださいよー、俺にとっちゃあ貴重な資金源なんですからぁ。……隊長も、まぁ、その、お気をつけて」

「……ふふっ。あぁ、分かってる。お前もほどほどにな、カナン」

 

 アンソニアの追及を受けても飄々としているカナンも、マルティナとの別れには思うところがあったのか。へらへらと笑っているように見えて、その表情の奥底には「寂しさ」の色が垣間見えていた。

 それを看破した上で、知らぬ振りを通しているマルティナは、弟のように接してきた部下を穏やかに見守っている。

 

「……で、あの人のことはどうするつもりなんだ? マルティナ」

「……本来、私が釣り合うような御仁ではないのだがな。まぁ……そろそろ、食事くらいには付き合って差し上げようかと思う」

 

 やがて、アンソニアが苦笑混じりに出してきた話題に、困ったような笑みを零しながら。マルティナは、地球から届けられた数枚の手紙に視線を落とす。

 それは、陸戦中隊を率いていたペドロ・ガルシア・ペレスからのお誘い。どうやら彼は今もマルティナに執心しているらしく、その文面には歯の浮くような口説き文句ばかりが並べられていた。

 

(……お前も、きっとどこかで生きている。そうだな、ミランダ)

 

 そして。地球へと想いを馳せる彼女の脳裏には――戦火の中で生き別れた、最愛の従妹。ミランダ・ヴェルテの影が過っていた。

 

『リリ先輩、Gダッシュの速さ……アテにしてますよッ! 今日こそは、あの2人に勝ちましょう!』

『オッケー、お姉さんに任せなさいっ! 勝ったら今度、買い物(デート)に付き合ってもらうからね、ケンっ!』

『それって俺がまた荷物持ちってことですかぁ!?』

『大丈夫だよー、アクセルにも持たせるから!』

 

 同時刻、ルナツー近辺の宙域において。愛用のジムを駆るケンジロー・カブトは、リリアーヌ・ガブリエルのガンダムGダッシュと共に、ペイント弾を使った模擬戦に臨んでいた。

 

『ジムで俺達相手に勝とうってか……! 良い根性してるじゃねぇか、ケンジロー!』

『……ふっ、随分と舐められたものだ。マサヒコ、俺達で少し手本を見せてやるとしよう』

『はいよッ!』

 

 対するは、マサヒコ・イシモリのフルアーマーガンダム試作0号機と、ヨシナオ・シンジョウのジムスナイパーII。普段は大型の射撃武器を携行している彼らの機体も、この時ばかりはペイント弾入りのブルパップマシンガンを使用している。

 

「ケンジロー様っ……!」

 

 星の大海を縦横無尽に飛び回り、絶え間なく撃ち合う4機。その戦況を要塞のガラス壁から、クーディア・ブリゼイドは固唾を飲んで見守っていた。

 

 リュートに蹴飛ばされたリックドムのパイロットと同様に、ア・バオア・クーの陥落後、彼女の身柄は攻撃隊によって保護されていたのである。

 テオとアリサを通じて、ヴァンクリーフ家からの協力を取り付けたケンジローとリュータの計らいにより、彼女は近いうちに地球へ降りることが決定されていた。

 

「なんだなんだ、瞬きすら忘れちまったみてぇにガン見しやがって。そんなにアイツが気になるのか?」

「ひゃっ! ゴ、ゴルドー大尉……!」

 

 余程模擬戦に夢中だったらしく、横からゾネス・ゴルドーに声を掛けられただけで、彼女は銀髪を揺らして跳ね上がってしまう。

 

「ケンジロー様はやはり、とてもお強い方なのですね……! 量産型のMSで、ガンダムタイプとあれほど渡り合えるなんて!」

「強い? アイツが? ……ハッハハハ! そうかそうか、そいつは傑作だ!」

「なっ……何がそんなにおかしいのですか! いくらケンジロー様の教官だからって、そのような言い方……!」

 

 サングラスを掛けたスキンヘッドの黒人は、そんな彼女の言葉に声を上げて笑っていた。教え子がそれほど慕われていることが、()を知る彼には可笑しくて堪らなかったのである。

 

「……お前さんには信じられないだろうがな。あいつは、士官学校きっての落ちこぼれだった奴でよ。最初は卒業出来るとすら思われてなかったのさ」

「えっ……ケ、ケンジロー様が……?」

「座学、実技、どれもビリッケツ。戦闘機乗りも戦車兵も歩兵も適性ゼロ。他の教官達が、あいつはダメだとサジを投げるなんてのはしょっちゅうよ」

 

 猛スピードで宇宙を駆けるGダッシュのブースターに取り付きながら、ペイント弾を連射するケンジロー機。

 その姿に感慨深げな視線を送りながら、ゾネスはサングラスを指先で掛け直し、言葉を紡ぐ。

 

「だが、アイツはそれでも折れなかった。だからリリアーヌもリュータも見捨てなかったし、カタリナやリューコのように慕う奴もいる」

「……」

「そして。俺達にとっても未知の領域だった、MSの操縦において……ケンジローはやっと、目にモノ見せてくれたのさ」

 

 やがては、太い腕を組んで胸を張る彼も。誇らしげに、その口元を緩めていた。その表情に釣られて、クーディアも華やかな笑顔を咲かせていく。

 

「そう、だったのですか……。ケンジロー様に、そのような過去が……」

「優等生で人気者だったリュータの奴は、『焦熱(しょうねつ)爀弾(かくだん)』なんて呼ばれてたせいで、宇宙に上がる主力部隊から外されて。落ちこぼれだったケンジローが今や、俺達攻撃隊の中心に居る。これが笑わずにいられるか? 昔のアイツを知っていれば、お前さんだってゲラゲラ笑い転げてるところだぜ」

「ゲ、ゲラゲラだなんて、そんなはしたない笑い方しませんっ! ゴルドー大尉ったら、もぉっ!」

 

 だが、ゾネスの言い方にはどうしても気に食わないところがあるらしく。からかうように笑う彼に、クーディアはぷりぷりと怒りながら、白くか細い拳を振り上げるのだった。

 

 これは。ブリゼイド兄妹が再会を果たす日から、もうしばらく前のお話――。

 




 読了ありがとうございました! 本編としてお送り出来るお話は第3部最終話でスッパリ終わりましたが、こういうちょっとした小話も書ければなーと思っておりましたので、この度番外編という形でお届けさせて頂きました(о´∀`о)
 この先も宇宙世紀では色々あるわけですが、そんな中でも彼らには逞しく生きていて欲しいなーと思うところであります。ではではっ!٩( 'ω' )و



Ps
 旧キットのガンプラ楽しいお(゚∀゚)
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