第五章 邂逅
第五章 邂逅
その夜秀真はまた夢を見た
悪食を手に取った女の子が悲鳴を上げている。
「朱羽!早く刀を離すんだ!」
「は、離れないの!」
「昔おじいちゃんに聞いたことがある、人の魂を吸う刀があるって、このままじゃ朱刃の魂が吸われてしまう」
「どうすればいいの!」
「僕を切れ、そうすればお前は助かるんだ!」
「やめて守恒!やめて!」
「......つま......様、秀真様!」
秀真ははっと目を覚ました。
「篝か?」
「大丈夫ですか?すごくうなされていたようですけど」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「琴里様が朝食の準備ができたと」
「ああ、すぐ行く」
夢で見た記憶、あの子供は俺、じゃあ後の二人は?」
「そのとき秀真の記憶がフラッシュバックした。
「一族を殺されて何が当主よ」・・・「あの決闘はまやかし、あれは儀式なんかじゃない、悪食を飢えを抑えるための儀式だったのよ」・・・「誰にも邪魔はさせない」
「朱刃........。」
秀真は思い出した、
「考えても無駄か......」
秀真は支度をすると五河家に向かう
「ああ、おはようございます、秀真さん」
「秀真、おはようだ」
「おはようございます」
毎日元気いっぱいの精霊たち、いっそこの世界にずっといた方が幸せなのではないかとも思ってしまう。しかし、それではこの世界の人々に迷惑をかけてしまう。すぐにその考えを捨て用意された、朝食を頬張る。すると琴里が突然こんなことを言い始めた、
「で?昨日はお楽しみだったようね?秀真?篝?」
二人の箸のの手が止まり、
「ぶほっ」
秀真は思わず吹き出してしまった。
「あんなに熱烈なキスをするなんてねえ」
「ちょっと待て!なぜ知っている!?」
「////////まさか見られていたなんて」
「あら私言ったわよね?廊下には自立型のカメラが二十四時間常に監視してるって」
「な、なに!?二人はキスをしたのか!?」
「それはよしのん気になっちゃうなあ、ねえ四糸乃」
「あの子........やるわね」
「私も篝さんとちゅーしたいですぅ」
と質問攻めになった篝と秀真、若干約1名欲望が出ているものがいたが、二人はこの間下を向き続けたままだった。
♢
食後、五河家のリビングで会議が行われた。
「篝、悪食の力はどこまで抑え切れるの?」
「現時点ではなんとも言えません、式神の魄を吸ってこの世界の霊力の力も相まってあと一ヶ月、早くても三週間くらいでしょうか......」
「そう、それならまだ時間はあるわね、そこまでになんとか犯人を見つけるしかないわね」
「あくまで目安なので早まるかもしれません」
「まあとりあえずあなたたちは記憶を取り戻す努力をしなさい」
「わかりました、秀真様、頑張りましょう」
「ああ」
そこから琴里たちは全力で調査をしたが一切の手がかりを掴めず一週間が経過したのである。
「全くどこにいるのよそんなやつ、全然見つからないわ」
「時間はもうあまりない、このままでは秀真さんが.......」
「力を抑える方法が一つだけあります」
「え?そんな方法あるんですか?」
「ええ、悪食は人の負の感情を啜る妖刀です。ということは逆に陽の感情、楽しい気持ちや嬉しさの感情を与えてやれば力を抑えられるということです。」
「なるほどね、でもどうやってその感情を与えるの?」
「私が式神を使って送ります、問題はどうやって陽の感情を溜めるかですね」
「決まってるじゃない、ここからは私たちのやり方でいくわ、デートよ」
「「で、デート!?」
秀真と篝が同時に驚くと、琴里はニヤリと笑って
「さあ、私たちの戦争《デート》を始めましょう」
♢
秀真と篝は二日後のデートに向けて着々と準備をしていた。秀真はいままでこういう経験はなかったと思うし、篝に関しても幼い頃から式神を人形のように操り、神社からだしてもらえなかった彼女にとって初めての経験だったのだ。嬉しさの反面なにをしたらいいのか分からない二人に秀真には士道、篝には精霊たちのサポートがありなんとか準備を終わらせることができた。
デート前日、篝が秀真の部屋に来た。
「突然お尋ねして申し訳ありません。今日は秀真様とどうしても一緒にいたかったのです」
「ああ、構わない」
篝を椅子に座らせお茶を出す。
「あ、ありがとうございます。いよいよ明日ですね」
「ああ、とても楽しみにしている」
「私もです」
そこから何時間経ったろうか、二人は時間を忘れていつものように会話を楽しんだ。
「あ、もうこんな時間もう戻らないと」
「待ってくれ、俺はまだ一緒にいたい」
「秀真様......」
二人は抱きしめ合い、口付けを交わした。
秀真はその夜夢を見た。それは何年も前の自分と、守恒と言われていた銀髪の男だった。
「○○、今日まで本当にありがとう、この日が来ないことを願っていた」
「今生の別れだ、秀真」
端の方では朱刃と拳と呼ばれる老人が言い争っていた。
「これが朧一族の掟だ」
「何が掟よ!」
「お前もわかっているはずだ、旅立つものを静かに見送るのだ」
秀真と守恒は静かに見つめ合う、守恒の一言が勝負の合図だった。
「来い!」
「参ります!」
二人とも隙を与えぬ攻防戦を繰り広げている
守恒が攻撃をしても秀真は完全に見切っていた、しかしそれは守恒にも同様であった。
間合いが出来たところが勝負であった、次で決まる、二人は駆け出しお互い刀を振りかぶる。
剣を交えた二人は攻撃をやめる、倒れたのは守恒だった。
「○○!」
「来るな!、朧一族の当主となる男が・・・そんな気弱で・・・どうする・・・、早く・・・刀を悪食を・・・」
そういうと守恒は悪食を秀真へ向かって投げた。守恒は座り覚悟を決める。
「忘れるな・・・私の魂がお前と共にあることを・・・」
秀真は悪食を鞘から取り出し守恒の首に向かって刀を振り上げた。
秀真が目覚めると、篝がお茶を入れていた、
「おはようございます、秀真様、!?秀真様泣いておられるのですか?」
不思議と涙が流れてきた、常に一緒にいた、儀式によって殺してしまった守恒、それは紛れもなく秀真の....
「兄上・・・」
秀真はようやく思い出せたのだ。自分が何者で何をしてきたのかそれは思い出したくなかった記憶、しかし秀真は思い出さなければならなかった。全ては篝とのため、また自分の宿命のために。秀真はしばらく泣くことしか出来なかった。