第八章 救いの手
五河士道は悔やんでいた。罠を見抜けなかったこと、篝を死なせてしまったこと、何も出来なかったことに。
「秀真さん・・・・」
「もう俺には何をする気力も起きない、篝が死んでしまったんだ、俺が戦う理由はもうない」
「でもあいつを止めないと・・・・」
「・・・・」
秀真の気持ちもわからなくない、自分も十香たちが死んだら・・・そう思うと怖かった。しかし篝は秀真に生きてと言ったのだ、なんとしても希望を持たせなければならない。
「秀真さん、気持ちはわかります。でもまだ戦ってる人がいる、朧の里が襲撃されてもあなたは戦ってきた今回も必ず・・!」
「お前に何がわかる!何もなかった俺にとって篝が唯一の希望だった!篝を失った俺にとってもう何も残っていない!」
「篝さんは言っただろ!あんたに生きてって!それはこれからあんたたちのデートみたいにあんたに楽しいことをこれからも続けて欲しいって篝さんの最後の願いだったんじゃないのか!」
「黙れ!」
士道はいきなり秀真に殴られ、後ろに吹き飛ぶ。
「何しやがる!あんたの篝さんへの気持ちはそんなもんだったのか!そんなんで篝さんが浮かばれるはずないだろ!」
今度は士道のパンチが秀真に炸裂した。
士道と秀真は殴り合いを続けたがスピード、威力、どれをとっても秀真に分があった。
「そんな弱さでどうやって精霊たちを救ってきたのか不思議だな、貴様にそんなことを言う資格はない」
「はぁはぁ・・・それでも俺は・・・あんたを助けたいんだ!」
気を抜いた秀真に士道のストレートがクリーンヒットした。油断をしていた秀真は倒れてしまった。
「あいつを倒さないとあんたの未来は永遠に失われるんだ!それは篝さんの望みを踏みにじることになるんだ!」
同時に士道も倒れてしまった。
「篝・・・・俺は・・・・・」
秀真は考える、篝との楽しい思い出を、そして死に際に言われたことも「秀真様・・・生きて・・・」その言葉が何度も秀真の脳裏をよぎった。
「俺は・・・まだ死ねない・・・・・士道、ありがとう」
「やっといつもの目になりましたね、さあリベンジに行きましょう」
「ああ」
「「俺たちの戦争《デート》を始めよう」」
士道と秀真はバシっとお互いの手を叩きつけ握った。
その時、地面が歪んだと思うとそこから一人の少女が出てきたそれは・・・
「狂三・・・!?」
「ごきげんよう士道さん、そして朧の当主さん」
そう、最悪の精霊と言われた時崎狂三であった。
♢
「狂三何しにきた?」
「あらあらずいぶんと厳しいですのね士道さん」
「士道さんの時間をもらいに来たのですわ、きひひ」
「お前・・・!?こんな時に!?」
「うふ、うふふふふ、冗談ですわ、士道さんは冗談も通じませんのね」
「へ?冗談?」
「ええ、ええ、こんな時に時間をとりにくるほど私も馬鹿じゃありませんわ、それに当主さんがいたら殺されるのが落ち、それに今日は別の目的で来たのですわ」
「別の?」
「ええ、さっそく用件を・・・」
「待て、俺はまだ完全に信用したわけではない」
「秀真さん!」
「ひとつ聞きたいことがある、お前はなぜ俺が朧の当主であったことを知っていたんだ?」
「あら、我を通すのですわね、いいですわついでに教えて差し上げますわ、まず私があなたを知った理由それはこの刻々帝《ザフキエル》の力ですわ。あの時篝さんがいましたわよね?彼女に【十の弾】《ユッド》を撃ったのですわそれであなたたちに何があったのか知ることが出来たのですわ」
士道は納得した、確かに【十の弾】《ユッド》を使えば対象の記憶を見ることができる、篝を見つけた時、狂三がいたのにも説明がつく。
「記憶を見るだと?そんなことが可能なのか、精霊というのはそんなことも出来るのだな」
確かに篝やヒルコだったら出来そうであるがこんないとも簡単に出来るとは秀真は思わなかった。
「それで狂三、お前は何のためにここに来たんだ?」
「ええ、そうでしたわね、今起きている問題、式神と呼ばれる脅威を排除するためですわ、わたくしの分身を使って調べたところDEMが裏で手を引いていた可能性がありますわ」
「DEMが・・・!?」
DEM《デウス・エクス・マキナ・インダストリー》士道たちラタトスクの宿敵とまで言われるDEM社は顕現装置《リアライザ》と呼ばれる装置を開発し主に武器製造を行いそれを世界各国またASTにも武器供給を行なっている。表向きは武器製造会社だがCEOであるアイザック・レイ・ペラム・ウェストコットは精霊の力を利用し目的を達成しようとしたが、士道たちに何度も妨害されたのである。
「ええ、ええ、彼は今、顕現装置《リアライザ》の力を使って八面王復活に力を貸していますわ」
「くそ、どうすれば」
「そのためにわたくしが来たのですわ、八面王は倒しても封印を施さなければ何度でも復活をして大量の魄を生成しますわ、それを防ぐことができるのは篝さんただ一人ですわ」
「!?しかし篝はもう・・・・・」
横たわる篝を見て秀真は俯いてしまった。
「確かに死んでしまった篝さんを生き返らせることはできませんわ、でぇもぉ、死ぬ前の篝さんを救うことは可能ですわ」
「狂三!?まさか!?」
「ええ、ええ、わたくしの奥の手【十二の弾】《ユッド・ベート》を使うのですわ」
「!?」
【十二の弾】《ユッド・ベート》・・・対象を過去に送ることができる、狂三にとってたくさんの時間《寿命》を使うため安易に使うことが出来ないのである。
「士道さんは精霊の霊力を秀真さんからは悪食の魄をでもあまり時間はありませんわ魄を使うということはそれだけタイムリミットも早くなるということですわ、それを承知でも過去へ戻られますの?」
「篝を助けられるなら、この命自由に使ってくれ」
「わかりましたわ、あら、式神が来ましたわ。時間がありませんわね。さあ、わたくしたちの戦争《デート》を始めましょう」
すると狂三は短銃を真上に掲げ、
「おいでなさい!ザアァァァァァフキエェェェェル!頼みましたわよ二人とも、【十二の弾】《ユッド・ベート》ーー」
バンッ!という発射音とともに秀真と士道は不思議な感覚に見舞われた。
士道たちが行った後少女は一人呟いた。
「教えてくださいまし、未来を変える行動がどんなに愚かかを、そして未来を変えるのにどこまで抵抗出来るかを・・・」
式神が徘徊する町で少女はただ一人そう言った。