ED騎士スバル ~漢の勇気と誇り取り戻すための戦い~   作:ZZR

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戦いの始まり

 

 

 

 庭先のベンチにて自分自身でも分かるくらいボケっとした表情で佇むのはエミリアの騎士……『ナツキスバル』だ。そんなスバルの目の前にはもちろん愛しのお姫様がいる。腰ほどのにまで伸ばした美しい銀髪と、見る者を魅了する紫紺の瞳は現在薄く閉じられていた

 薄暗闇の中、ポツンと佇むエミリアの周りには蛍のように明滅する小さな光がふよふよと浮いていた。それらと楽し気に言葉を交わすエミリアの姿は非常に幻想的であった。そして、小さな光が少しづつエミリアの周りから散って行く。そうして、最後に残されたエミリアはスバルの方に顔を向け無邪気な笑顔を浮かべた。

 

「終わったよスバル。もう、別に先に寝ちゃっても良かったのに……」

 

「エミリアたん、俺は君の騎士なんだ。夜更けに君を襲っちゃうような不埒な輩が現れるかも知れないんだ。俺はそんな脅威から君を守りたいだけなんだ」

 

「ふふっ、ありがと。でも、スバルより私の方がすごーく強いんだから。そんなに心配しなくていいの」

 

「エミリアたん、事実でもそれは言っちゃあいけない。俺のガラスの心にヒビが入りまくりだよ。これはもう、熱いハグを君の熱いハグで癒してもらうしか……!」

 

 スバルの言葉は物理的に中断される。それもそのはず、エミリアがスバルをぎゅっと抱きしめてきたのだ。エミリアの暖かく優しい抱擁はスバルの脳内を甘く溶かしていた。そんな時間がどれくらい続いたのだろう。気が付けばスバルの目の前に、頬を薄く紅潮させたエミリアが笑顔を浮かべていた。

 

「スバル、貴方はこんなことで癒されるの?」

 

「お、おう……」

 

「それなら今度からいつでもしてあげる。でも、今日はダメ。何だか私、すごーく変な気分なの。だから、おやすみスバル」

 

「あ、はいエミリアさん。お休みなさいませ……」

 

「ふふっ、スバルったらおかしい……それじゃあお休みなさい。また明日、ラジオ体操でね……」

 

 軽く手を振るエミリアにスバルも手を振り返す。それから、スバルはエミリアが去った庭先でしばし熱くなった頭を冷やしていた。それから小一時間経過した後、スバルは屋敷へと足を踏み出した。

現在、お世話になっているのはミロード家の屋敷だ。しかし、その屋敷にもすでに慣れたもの。俺の足は迷わず彼女の元へと足を運んでいた。

 

「やあ、レム。俺ちょっとやばいわ……もうちょっとで天使なエミリアたんの手で天国に連れてかれる所だったよ」

 

スバルの言葉に彼女は答えを返さない。でも、スバルは構わず言葉を交わし続けた。それから、おやすみなさいの挨拶を告げ、自室へと足を向けた。

 

 

「まったく、遅いのよスバル。ベティの大切な睡眠時間を削るなんてダメダメかしら」

 

 

 自室の扉を開けると、ベッドの上で仏頂面をしたドリルロリがお出迎えしてくれた。ここまではいつも通りなのだが、そんな彼女の横にはピンクのパジャマ姿で笑顔を浮かべるペトラの姿があった。

 

「スバル、今日は一緒に寝ましょ!」

 

「どったのペトラ? まさか部屋間違えたの? ここは俺とベア子の……」

 

「ふっふっふ! 実は今日ベアトリスちゃんと一緒に寝る約束してたの! だから早く寝よ! 今すぐ寝ましょう!」

 

「おいおい!」

 

 顔を紅潮させ、何故か鼻息も荒いペトラにスバルはベッドへ引きずりこまれる。そして、スバルの左右にベアトリスとペトラがぴったりと身体を密着させてきた。色々と言いたい事はあるが彼自身疲れていたのだろう。スバルは目を閉じてやり過ごす道を選択した。

 

「んっ……はむっ……スバル……スバルゥ……!」

 

「おっと、やめるんだペトラ。俺の顔をベロベロ舐めるんじゃない。それに眼球付近はやめてね。俺のトラウマがビシビシ刺激されちゃう……こら、俺の身体に向かって腰をへこへこさせない! 犬かお前は!」

 

「スバル、ペトラばっかりずるいのよ! ベティも今日の分のマナを頂くのよ……んあっ……はう……スバル……!」

 

「やめて! なんかやめて! 腕に抱き着くのはいいけど、俺の手のひらがなんかマズイところに当たってる! 熱っ……うわぬるぬる! なんかぬるぬるしてる!」

 

 毎夜のように引き起こされるベアトリスとペトラの襲撃は何だかどんどん過激になってきた気がする。しかし、スバルはそれを軽く受け流し、気が付けばぐーすか寝息を立てる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと目が覚めたスバルは、両隣で天使のような寝顔を浮かべるベアトリスとペトラの姿を見てため息をつく。それから窓の外がまだ暗闇に包まれている事に気づいた彼は、天使が引き起こした悪魔の所業を片付けるため、ネバついた顔をタオルで拭き、何故か両腕がグッショリと濡れてしまった上着を脱ぎ捨てる。それから、二人を起こさないようにスバルはそっとベッドを離れた。

 スバルがたどり着いたのは、ごく普通の客室の一つ。そこに用意されたベッドに腰かけた彼は溜まった鬱憤を盛大に晴らそうとした。しかし、彼の身体はその期待には応えてくれなかった。その後、部屋でうだうだと過ごした彼はもう一度大きくため息をついてゆっくりと部屋を出る。それから、とある居室へと足を踏み入れ、幸せそうに眠るバカ面を引っ叩いた。

 

「ふにゃあ!? て、敵襲!? わわっ、お金でもなんでも上げるから僕の命だけは……」

 

「オットー」

 

「えっ……あっ……ナツキさん?」

 

焦った表情を、困惑に変えたオットー・スーウェンは幽鬼のように佇むスバルの姿に近づく。幸せな眠りを邪魔された事への怒りはあるが、それよりは目の前の変わり果てた親友の姿の方が心配であった。

 

「どうしたんですかナツキさん、こんな夜更けに……」

 

「オットー、俺を助けてくれないか……?」

 

「それは……いいですよ。なんでも言ってください。僕が力になれるなら、なんだってしてあげます!」

 

 

 オットーにとって、スバルは唯一無二の親友であった。スバルの助けになるなら自分は何だって出来る。そして、それはスバルにとってもそれは同じであった。だから、スバルは正直に悩みを打ち明ける事にした。しかし、幽鬼となったスバルにとってもそれは屈辱的なものだったのであろう。彼の噛み締めた唇からは、滲んだ血が滴り落ちていた。

 

「なあ、オットー……」

 

「はい……落ち着いて……僕は貴方の味方ですから」

 

「笑ったりするなよ……」

 

「当たり前です。親友の悩みを笑うやつなんていませんよ」

 

 

 その言葉にスバルは涙を流す。それから大きくため息をついてから、小さく悩みを打ち明けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たたない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

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