ED騎士スバル ~漢の勇気と誇り取り戻すための戦い~   作:ZZR

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強欲のグリモア

 

 

 

 

 『男達の聖域』で意識を失ってから約3日後、再び俺とオットーは同所に舞い戻っていた。件の意識消失後、オットーとガーフィールは俺を元に戻すため苦心したらしい。幸いにも、これらの出来事はエミリアやベアトリス達にはバレていない。

 だが、俺の意気消沈ぶりを見てエミリアは抱き着く事が増えたし、ベアトリスもマナドレインを軽いもので済ましてくれるようになった。だが、このままの状態を俺はよしとしない。こうして、決意新たにした自分に、オットーは真剣な表情で更なる『提案』をしてきた。

 

「ナツキさん、これが先ほど説明したブツです」

 

「なるほど、これが……見た目は英知の書や魔女教の福音に似てるな」

 

「ええ、ですがこれは本としては使われていません。昔から一種のミーティアとして好事家や貴族が取引していたようです。まあ、ある意味で夢のようなアイテムですしね。でも、これはかなりの曰く付きです。この本の使用者の最後は狂死や衰弱死と言ったものが多かったそうです。おかげで相場はかなり落ち着いていたので僕の全財産の8割ほどで入手出来たんです」

 

「やるな、オットー」

 

「僕もこれを使う機会が来るとは思わなかったです。単に今後も関わりそうな大罪の魔女達を調査する過程で手に入れたんです。まあ、手に入れても伝わっている情報以外は得られずに放置していたのですが……」

 

 そう言って苦笑するオットーに俺はサムズアップを贈る。オットーから事前に情報を聞いていたのだが、この本はこの他にも何冊か存在していて強欲の魔女由来の品らしい。その名も『強欲のグリモア』。効果は寝る前に枕元にこの本を置くと、本の題名に関連した明晰夢を見ることができるとの事。例えば、美味しい物をたらふく食べる夢であったり、怒りに満ちた夢であったり、気持ちのいい怠惰を満喫できる夢を見れるそうだ。

 ちなみに、オットーが手に入れたグリモアには『色欲』というタイトルがつけられていた。つまりは淫夢を見られる男なら誰もが憧れるアイテムだ。

 

「噂では前の所有者は何を思ったか、自分のアレを切り取って自殺したらしいです。正直、僕は廃棄も考えていた所ですし、こんなものを友達に使わせるのは気が引けます。このグリモアを使う以外に僕が出来る事があるならどんな事であろうとしてあげます。だから……」

 

「ありがとうオットー。でも、男には引けない時というものがある。それが今だ! お前も男なら、この気持ちが分かるだろう?」

 

「ナツキさん……」

 

心配そうな表情を浮かべるオットーを例の地下空間から押しやる。そして、藁束に置かれた枕の下に『強欲のグリモア』置いた。そして、横になって目を閉じる。幸いな事に、ベアトリスとペトラの攻勢がヒドイので夜中は常に寝不足気味。俺はすぐに夢の世界へ旅立つ事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「スバル」

 

「…………」

 

「スバル?」

 

「…………」

 

「どうしたのスバル、もしかして熱でもあるの?」

 

ひんやりとして柔らか手が額に押し当てられる。それで我に返った俺は紫紺の瞳を心配そうにこちらへ向ける銀髪美少女の姿に見惚れてしまった。現実離れしていると言えるほど整った容貌に、細くしなやかな手足。しかし、くびれた腰や形のよい臀部、スカートとニーソックスの間から覗く太ももは男の視線を誘うムチムチとした肉付きがあった。何より、その胸は実に豊満であった。

わぁい巨乳……スバル巨乳大好き……!

そんなとんでもない美少女……エミリアと俺はどういうわけか彼氏彼女の関係になっていた。

 

「大丈夫だよエミリアたん。でも、俺は君の魅力にいつも風邪っぴきさ」

 

「そうやってすぐ茶化す。本当にすごーく心配なんだから」

 

「大丈夫だって……それよりこれは……?」

 

「もう、ピーマルの肉詰めです。私が夕食の準備をしている間にスバルったらぽけーっとしちゃって……体調に変わりないなら冷めないうちに食べてよね」

 

「お、おう頂きます」

 

 今更ながら自分の状況を把握する。場所は屋敷と違って狭く質素なリビングだ。窓から覗く景色には鬱蒼とした森が深く積もった白い雪で化粧をしている。

 俺はそんなリビングのダイニングテーブルの椅子に座っていた。テーブルの上には焼き上がったばかりのパンとピーマルの肉詰めが乗った皿に、付け合わせの野菜スープがある。

 少し悩んでから俺はピーマルの肉詰めを口に放り込む。この苦味はあまり好きではないのだが、肉の香ばしさと味付けとして付けられたマヨネーズがその苦味を旨味に変えていた。

 

「驚いた。エミリアたんってこんなに料理上手かったのか。少し前まで生ごみを量産してたのに」

 

「ふふーん、私だってきちんと練習してるのです。じゃあ私も頂きます!」

 

 手をあわせてから食事に箸を伸ばし始めたエミリアは、ピーマルの肉詰めを一口食べて顔を綻ばせる。そんな彼女にまたも見惚れてしまった自分自身に呆れかえる。やっぱり、俺はエミリアに骨抜きにされてしまったようだ。

 

「エミリアたん、ピーマル苦手じゃなかったの?」

 

「昔はね……でも私はもう大人なの」

 

「えらい! 苦手な食べ物を克服したエミリアたんえらい!」

 

「…………」

 

 笑顔でそう褒め称えた俺を、エミリアは紫紺の瞳を少し薄め、箸を置いて席を立ちいきなり俺の膝の上にのってきて……いわゆる『対面座位』の姿勢となった。柔らかく肉付きの良い臀部が、俺の膝上でむにゅむにゅと揺れる。そして、まっすぐ俺を見つめるエミリアに対し、何も出来ず閉口するしかなかった。

 

「私、大人になったの」

 

「え、ああ……うん……」

 

「スバルが私を大人に……女にしたんでしょ……?」

 

「へあっ!?」

 

 エミリアらしからぬ妖艶な微笑みを見せる彼女に俺はたじろぐしかない。しかし、笑顔溢れる食卓が、どろりとした濃密な愛の瘴気で満たされるのを感じた。

 

「私、すごーく嬉しいの。スバルのこと……好き……大好き……!」

 

「おうっ……おほっ!?」

 

「すきすき……すばる……すばるぅ……」

 

「あかん、これじゃ脳が死ぬぅ!」

 

 対面座位の体制で、俺の胸に顔を擦り付けるエミリアは麻薬の様に甘美なすきすきコールをしてくれる。それに脳を溶かされた俺はもう色々と限界であった。そんな自分の状態を察したのだろうか、深紅に頬を染めたエミリアが目を閉じて顔を近づける。それに抗う術を俺は持っていなかった。

 

「んっ……ちゅっ……」

 

「おふっ……」

 

「スバル……私、赤ちゃん出来ちゃった……」

 

「エミリアたん……キスじゃ子供は……んむっ!?」

 

「んぁ……二人目出来ちゃった……」

 

「気が早いねえエミリアたん!」

 

 それから何度も何度もついばむようなキスが浴びせられる。そして、少しづつ俺の口内に侵入する熱く柔らかな感触が増えていった。

 

「んへぁ……んじゅっ……どうしようスバル……もう100人も出来ちゃった……」

 

「あへっ……」

 

「ふふっ……ズバルったらおかしな顔……」

 

「おほぉ……」

 

 クスクスと笑うエミリアは俺が知る可憐な表情だ。しかし、周囲にまとわりつく熱く淫らな雰囲気は俺の知らないものであった。それから、何故かエミリアが俺の膝の上で腰をゆすり始める。どうしていいか分からない俺は、されるがままにするほかなかった。

 

「スバル、前みたいに私を大人にして……?」

 

「も、もうエミリアは大人だよ……」

 

「スバルの嘘つき……だって貴方が私に教えてくれたじゃない……」

 

 エミリアが俺にぎゅっと抱き着いてくる。うなじから香る女の子の匂いは俺の意識を混濁させ。頬に触れる柔らかくひんやりとした銀髪が俺の情欲を刺激させた。それから、エミリアが耳元で小さく囁いた。

 

 

 

「赤ちゃんはキスでは出来ないんでしょう?」

 

 

 

 

俺の脳は限界を迎えた。

 

震える……脳が震える……!

 

 

 

 

 

頭の中で狂笑がこだまし、俺は理性を取り戻す。

 

 

 

 

 おかげで全てを思い出した俺は、状況を把握して大きなため息をつく。なるほど、流石はあの強欲の魔女エキドナが作ったグリモアだ。本当に現実となんら変わらない『夢』であった。出来れば、俺もこの夢を楽しみたい。続きをすれば、俺の病も治るかもしれない。しかし、俺の男としてのプライドがそれを許さなかった。

 俺はズボンの中で這いまわっていたエミリアの手を引き抜き、彼女を膝から降ろす。最初は目を白黒させていたエミリアだが、次第にその表情は曇っていった。こんな顔にさせてしまった自分自身に腹は立つが、ここは曲げることが出来ない事だ。

 

「ありがとう、エミリア。君のおかげで本当に心が癒されたし良い思いが出来た」

 

「それなら……なんで……!」

 

「ここから先の行為は俺は許さない。夢であっても俺の独りよがりで君を汚したくない」

 

「スバル……」

 

「その……現実で君が望むなら俺は喜んで君を汚す! だから、なんというか……こういうのはフェアじゃない」

 

 俺の言葉を聞いてしゅんと項垂れるエミリアの頭を俺は撫でる。さっきまで妖艶な雰囲気を漂わせていたのに、今では現実の彼女と同じくどこか幼く見えた。

 

「スバル、私は貴方の事が本当に……すごーく心配なの……」

 

「そうか……」

 

「今のスバルの悩みは私だって知ってる。それを解決させるには貴方が心の奥底で持っている恐怖心を取りのぞいて、それから……あっ……」

 

「エミリア?」

 

 

 急にエミリアの言葉が途切れる。それから、呆然とした表情を浮かべてからどさりと床に倒れた。

 

そして、床に伏した彼女の背中からは、氷で出来た大剣が突き立っていた。

 

 

 背中から心臓を一突きにされたのであろう。エミリアの真っ白な衣服が、深紅に染まって行く。俺はそれを見て叫び声を上げたかったし、駆け寄りたかった。しかし、目の前に現れた人物を目にして俺は動きが止まる。

 紫紺の瞳と眩い銀髪、肉付きの良いムチムチとした体は床で血に染まる彼女と全く一緒であった。しかし、衣服は彼女と正反対の漆黒を基調としたドレスである。

 

 何より、こちらを慈しむように見つめる紫紺の瞳からは光が消えていた。代わりにあるのはドロドロと渦巻く何かであった。

 

「ああ、間に合って良かった。でも、やっぱりスバルってばすごーくかっこいい。男の人だったら全ての理性を捨てて全てを身に任せちゃうような事態になっても私を選んでくれたんだもの。流石は私の騎士様です。褒めちゃう、すごーく褒めちゃう。でも、この紛い物に少しでも興奮したのは少し許せないかな。これって裏切りだよね。現実の私は色恋も知らない子供なのに、それを頭の中とは言ってもえっちな事させるなんてひどいと思う。これって本当の私に対する重大な権利の侵害じゃないかな。現実の私はスバルの愛をすごーくすごーく待ってるのに貴方は夢の中で紛い物相手に本来私が受け取るべき愛を振りまいてる。それって凄く無駄な事だし効率の悪い事だと思わない?」

 

「エミリア……?」

 

「あ、ごめん。スバルもいきなりの事で戸惑ってるよね本当にごめんね。私はエミリア。ただのエミリア。性格の悪いあの陰気女から貴方を救いに来たの。だからはやく私と逃げましょう。こんな所にいてもなんの解決にもならない。これは逃げの選択だし、逃げてるスバルを私は見たくない。何より、貴方の限りある愛をこんな紛い物に……んっ……!?」

 

 俺が唇で口を塞いだ漆黒のエミリアは驚きの表情で固まる。しかし、彼女もこちらに腕を回してくる。そんな彼女の事が俺は愛おしくてたまらなかった。

 

「スバルのいじわる……」

 

「なんのことやら。それより、周りがやべえ事になってきたけど、エミリアたんは何か知ってる?」

 

「貴方も理解しているでしょう? 夢から覚めるの。私がこの空間を壊したからね」

 

 少し得意気な顔でそう語るエミリアの背後で、今まで過ごしていたリビングがひび割れるように崩壊して行く。そうして、段々と漆黒に包まれてゆく中で俺はエミリアの手を取った。

 

「なあ、また会いに来ていいか?」

 

「だめ、だめったらだめ! そのうち取り返しのつかない事になるのよ! だから、もう……」

 

「いいや、来てやる。だってまだ悩みは解決してない。さっきの状況でも、残念ながら反応してないからな」

 

「もう、ばか! スバルのばか! おたんこなす!」

 

「おたんこなすって今日び聞かねえなぁ……」

 

 そうとぼけた俺の胸を、彼女が顔を真っ赤にしてぽかぽかと叩いてくる。それから、ゆっくり、ゆっくりと視界がぼやけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぁ……」

 

 

 覚醒した俺の視界は素掘りの土壁に包まれ、鼻を突く匂いに思わず顔をしかめる。それから、下半身を確認した俺は諦めのため息をついた。しかし、ほんの少し……ほんの少しピクピクとしていた。

 

 

 

「よし、続きは明日だ。だから……今日も一日頑張れ俺!」

 

 

 

 

俺は気分新たに外へと飛び出した。

 

 

 

 

 

 








テテテテーン!

夢枕~!
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