小説版アマガミ ~森島先輩はそこにいる~   作:橘美夜

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レンアイ PART III

 ペットボトルのミネラルウォーターをグビグビと飲みながら、純一はホテルのロビーに再び戻って来ていた。口から流れ込む水は急速に体を冷やしたが、それでも彼はまだ芯から熱を帯びていた。当分、この熱は冷めることはないだろう。

 それもそのはずで、純一はプールで一通り遊んだ後、はるかに手を引っ張られてサウナに入っていたのだった。プールはまだたくさんの客から聞こえてくる歓声があったが、サウナでは二人から発せられる音しかなかった。だから扉が閉まった時の突然切り替わったような静けさに純一は少し気まずさを覚えた。はるかはやけに自分の肌と純一の肌を触れ合わせようとしていた。先ほどのプールの時も、いつもよりずっとスキンシップが多かったように彼は感じたが、この時はじめてはっきりとそう感じた。はるかは自分の肩から流れてくる汗が密着した純一の腕に伝わって、彼の汗と交じり合っているところを見て「見て! 見て!」と嬉しそうにしていた。これは無邪気なのか、それともアッチの趣味なのか、彼には判別がつかなかった。しかし、その考えを吹き飛ばすほど興奮と気まずさが入り混じったものが彼の中で膨れ上がり、今にも爆発しそうだった。はるかはずっと自分の体と彼の顔を交互に見ていた、それ以外の余計なところは見ていないはずだ、と彼は思っていたが、もしかしたら、口には出さないだけで、横目で彼の盛んな「ある一部分」の異変に気付いていたのではないかと思って、より一層突き上げる興奮は増した。暑さが先か、気まずさが先か、彼は耐えられず、「お先に失礼します!」と言ってサウナを出た。

 水を飲み終わって一息ついていると、はるかが「ごめーん! 着替えるのに手間取っちゃって!」と言ってロビーに現れた。

「ふぅ~! 楽しかったねぇ~!」

 純一はまるで今日の全部の予定を終えたような満足感に浸っている彼女を見て、家族との待ち合わせの件が気になって聞いてみた。

「そう言えば先輩、ご家族との待ち合わせの時間は何時なんですか?」

「うーん、たしか七時!」

 腕時計を確認した。すでに八時をまわっていた。

「え……?」

 さらに恐る恐る聞いてみた。

「ちなみに待ち合わせ場所って……?」

 はるかは床を指さした。

「ここ!」

「えええぇぇぇ!!」

「ど、どうしたのまたそんなに大声出して!」

「一時間以上も遅れてるんですよ! 急がないと!」

「大丈夫よ、そんなに急がなくても。お母さんたちとは上の階で会うことになってるから」

「な、なるほど~。そうだったんですね……って、じゃあ早くエレベーターに乗りましょう!」

 と言って彼は勢いではるかの手を握ってエレベーターへ連れて行った。

 高級なホテルらしく重厚な扉は重々しく閉まり、次第に高度を増していくエレベーターの箱は透明なガラス張りだった。だから、外のクリスマスのきらびやかな景色をそのまま見られるようになっていた。

 高所恐怖症の純一は、遠くの景色を見るまでもなく、そのガラスを見ただけで足がすくんでしまっていた。彼は今にも気が動転しそうになり、それを免れるために、何かはるかに話題を振って話をしなければいけないと思った。

「そ、そういえば今日はイギリスからおじいさんとおばあさんもいらっしゃってるんですよね?」

 それに対しての答えは、あまりに予想だにしないものだった。

「あ、うーん、実はね。飛行機の都合で、今日はおじいちゃんたち、来られなくなっちゃったの。だから、二人っきり」

「あ、ああ、そうなんですか……って! 二人きり!?」

「うん」

「ご両親はどうしてるんですか?」

「おじいちゃんたちが来られないんじゃ意味ないって家に居るわよ」

 クリスマスのイルミネーションで飾られた夜景を眺めつつ、はるかは純一に背中を向けたまま、そう言った。

「あ、ああ、家に……ね」

「でね、せっかく予約してある部屋がもったいないなぁーって思って、泊まりに来たの」

「確かにもったいない……ですね」

 エレベーターは到着し、はるかに続いて純一も降りたが、純一は今聞いたことが飲み込めないまま部屋へと向かっていた。

 森島先輩とホテルで二人っきり? クリスマスイブに?

 

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