宇宙で見る夢   作:メイベル

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第11話

 シロー・アマダが拘束されて数日が過ぎた。

 

 アイナ様とパーティーの時に話した約束――口約束とも言えないものだったが――を果たす為に、お話しを聞く事にした。シーマ中佐とソフィアーネの3人で、直接アイナ様から事情を聴いた。

 

 聴いた内容は信じられない事に、ギニアス少将が身を挺してケルゲレンを庇ったらしい。それだけではなく傘下の開発者達も無事で、さらにはシロー少尉の為に偽の身分を作っていたという事だ。話すアイナ様からは敬愛と微かな後悔を感じた。

 

「宇宙へ上がってから何度か連邦軍に追われましたが、シローが指揮を執り何とか無事に中立であるサイド6まで行く事が出来たのです」

 

 怪我人や技術者を除けは、将校や佐官すら居なかったケルゲレン。

 アイナ様は庇ってくれた兄の為、兄と同じ様に犠牲になったユーリ少将の為、兄と共に残り脱出を援護していたノリス大佐の為にも必死に指揮をして連邦軍と戦ったらしい。

 しかし元々軍人ではないアイナ様では上手くいかず、危うく撃沈されるかもしれないという時にシロー少尉が助けてくれたそうだ。偽りのジオン軍少佐の立場と、連邦軍と戦う事に対する苦悩を抱えた彼だったが、アイナ様に対する思いで乗り越えたそうだ。

 

 平然と話されるアイナ様からは、シロー少尉に対する深い信頼と愛情が溢れていた。

 

「シーマ中佐、ソフィアーネ。シロー……少佐の人柄はアイナ様の話で分かったと思うけど、どうかしら?」

「そうさね。裏表がない不器用な人間だってのは分かったよ」

「馬鹿正直で腹芸の出来ない人間なのでしょうね」

 

 返事をする二人はやる気と言うか元気がなかった。話を聞く前の真剣さが無くなっていた。

 二人の気持ちはなんとなく察せられる。アイナ様には申し訳ないけれど、深い愛情を隠さないアイナ様の話はほとんどシロー少尉に対するノロケ話のように聞こえたからだろう。ロマンス溢れる話に私も羨ましさを感じているし。

 

「監察官の立場でシロー・アマダ本人から事情は聴いたんだけどねぇ。何故あんな事を言ったか聴いた返事が『後から言って疑われるより、最初から連邦に居た事を言うべきだと考えたからだ』そうだよ」

「もっとやりようがありましたでしょうに……」

「そうかもしれません。ですが、ここに来るまでに色々あったものですから、私もシローの行動を止めませんでした」

 

 いつも真面目で格好良いシーマ中佐が、アイナ様の言葉を聴いて溜息をついていた。

 ソフィアーネに至っては明らかに不機嫌な表情をしている。

 

 普段は見られない二人の様子に思わず苦笑してしまう。

 

「アイナ様の為にシロー少佐の拘束を解きたいのですが、どうにかできますか?」

「ハマーン様が助けたいって言うなら何とかするけどねぇ。しかし命令書や任官書は問題ないのだし、何もせずとも大丈夫じゃないかい?」

「そうなんですか?」

「今回の件で騒いでるのは、エンツォ大佐くらいさね。スパイの可能性が在るってね」

「愚かしい。本当のスパイはあんな事は絶対に言いませんけどね」

 

 ソフィアーネの言葉に棘がある。

 確かに本物のスパイはシロー少尉みたいな事は言わないと思う。私に色々良くしてくれているエンツォ大佐だけど、シロー少尉を即拘束したのは軽率過ぎたのかな。でも彼の軍事統括顧問という立場を考えたら仕方がないのかもしれない。

 

「まぁそう心配しなさんな。実際に何もしてないんだから実刑になることはないさね。それにねぇ、サハリン家縁の軍人じゃない、ユーリ少将の部下だったボーン・アブスト大尉や秘書官のシンシア大尉からも冤罪を訴える嘆願書が出てるからねぇ。いつまでも拘束してたら、エンツォ大佐が余計な恨みを買うだけだろうね」

 

 さすがシロー・アマダと言うべきだろうか?

 サハリン家に従う人達だけではなく、ユーリ少将の部下の人達からも信頼を得ているとは。きっとアクシズに来るまでの間に、アイナ様が言うように色々あったのだろう。

 

「『本当に連邦の人間だった』事は私らの胸の内に仕舞っておくとして、出来るだけ早く釈放されるように動く事にするさ」

「ハマーン様、シーマ中佐、ソフィアーネさん。シローの為にありがとうございます」

 

 シーマ中佐の言葉を聴いてお礼を言ってくるアイナ様。

 受ける中佐とソフィアーネの表情は微妙だった。

 

 私は知識として知っていたから気にならないけど、アイナ様は殆ど初対面の二人にもシロー少尉が本当に連邦軍人だった事を話したのだ。力になりたいと訪ねた私達を信用して。そんなアイナ様に、たぶん呆れと羨ましさを感じて微妙な表情になってしまったのだろう。

 

 話が終わったと思ったら、最後にアイナ様からある物を託された。

 

 シロー少尉の釈放の為に役立てて欲しいと、アプサラスの開発データとギニアス少将が率いていた開発チームを。

 

 

 

 

 

 14歳の誕生日も過ぎ、1月も終わりに近づいた日。

 

 ナタリーと一緒にゼロ・ジ・アールのテストに向かっている最中の会話で、驚くべき事実を知った。

 

「ゼロ・ジ・アールが完成した!?」

「えぇ、そうよ。だから今日のテストは全体の操作系のバランスを見るのが――」

「ちょっと待ってナタリー! ゼロ・ジ・アールは前にテストした時、色々問題があったはずよね?」

「あ、そうだったわよね。凄いわよね。ハマーン専属の開発チームの人達って。MS開発担当のユルゲン少佐が驚いていたわ」

 

 アイナ様から託されたアプサラス開発チームは、現在私のテストしているゼロ・ジ・アールの開発を担当する事になった。何故か周りから私の専属開発チームという認識になっている。おそらくだが、アイナ様が彼らに『ハマーン様に従うように』と言ったからだろう。

 

 彼らがゼロ・ジ・アールを担当する事に決まってから今日まで、シュネー・ヴァイスのテストばかりしていたのだが、まさか1ヶ月しか経ってないのに完成した?

 

「Iフィールドジェネレーターの出力の問題や、メガ粒子砲の収束の問題、機体制御の問題とかあったはずよ。それらをまさか1ヶ月足らずで改善したって言うの?」

「完成したって言うからそうなんじゃない? ユルゲン少佐が言うには、彼らの問題点の炙り出し、修正案の立案実装、無人状態でのテスト。その間隔が早いんですって」

 

 ナタリーは笑顔で平然と言うが、私はポカンとして聞いていた。

 元々居たアクシズの開発者達だって頑張っていたはずなのに、半年以上完成していなかったのだ。私が驚くのも当然だと思う。

 

 しかしよく考えてみると、彼らは08小隊の作中でアプサラスを完成させた開発チームだ。正確な期間は知らないが、地上に降りてから長くない月日でアプサラス、アプサラスⅡ、アプサラスⅢと作っていたはず。ジオンが押され補給も不足する中で、だ。

 

 最前線で開発をしていた彼らは、アクシズの技術者に比べ開発ペースが速いのも納得する。

 

「難しい顔をしてどうしたの? ハマーン」

「え? あ、ちょっと考え事をしてたの」

「調子が悪いなら、今日のテストは無しにしてもらう?」

「大丈夫よ。むしろ完成したゼロ・ジ・アールのテストなら楽しみだわ」

 

 私の事を自然と心配してくれるナタリーの優しさが嬉しい。本当の姉妹のように接してくれる彼女の前では、飾らない自分で居られる気がした。

 

「ナタリーと出会えてよかった」

「急にどうしたの?」

「ふふ、なんでもないわ」

「何か隠し事? 白状しなさい。今なら許してあげるから」

「そんなんじゃないってばぁ」

 

 ナタリーとじゃれ合いながらMSデッキへ向けて進んでいく。

 

 後日、じゃれ合う姿をシーマ中佐やモニカ大尉、マリオンに見られていた事を知る事となる。シーマ中佐とモニカ大尉からは遠回しに注意をされ、マリオンからは微笑みと共に仲良しですねと言われ恥かしい思いをする事となった。

 

 テストをしたゼロ・ジ・アールは完成したと言うだけあって、目玉であるIフィールドの安定性も操作性も機動力もビーム兵器の威力も申し分なかった。特に頭部メガ粒子砲は、チャージすれば射程と威力が大幅にあがる物だった。アプサラスのデータを応用した物だろうその威力は、アクシズの開発者達を驚かせていた。

 

 私はNTや優秀なMSパイロットだけを自分の下へ集めようとしていた。私の知っている原作で活躍するのは、そういった者達だからだ。

 しかしゼロ・ジ・アールの完成を見て優秀な技術者の重要性を実感する。そして今後は技術者も気にかけるべきだと心に留め置く。どんなに優秀なパイロットでも、MSがなければ戦えないのだから。

 

 

 

 

 

 シロー少尉改め、シロー少佐が釈放された。

 

 サハリン家麾下の開発チームがゼロ・ジ・アールを完成させた成果の影響も在るのだろう。ケルゲレンに乗っていたギニアス少将及びユーリ・ケラーネ少将の部下だった者達は、アイナ・サハリン代理少将の麾下部隊として再編された。実質はシロー少佐が指揮するのだろう。

 

 アイナ様もシロー少佐も軍から身を引くつもりだったらしいが、ボーン大尉やシンシア大尉から請われたらしい。ケルゲレンに乗っていた軍人達からの二人の信望は高いのだろう。請われたからには、見捨てずに引き受ける二人だからこそか。

 

 アプサラス開発チームに関してはアイナ様が私の専属としたままなので、今はシュネー・ヴァイスの開発を行っていた。サイコミュとビットの親和性の問題は特殊らしく、彼らでも中々改善できずにいた。NT用の兵器は既存兵器とは別物と言うことだろう。上手くいかないものだ。

 

 

 

 

 

 2月に入り、ジオン軍の先遣艦隊がやってきた。

 

 その中にコッセル大尉が率いるシーマ艦隊の分隊が居たのは嬉しい知らせだろう。彼らは頼んでいた通りに、ジンネマン大尉と彼の部下の家族達を連れて来てくれた。捕虜となった軍人の家族と言う事で危険があると聞かされた家族の方達は、自らアクシズへ来てくれたらしい。疲労の色は隠せてなかったが、コッセル大尉らが丁寧に対応をしてくれたらしく、マリィと呼ばれた小さな子供も笑顔だった。

 

 それだけではなく、コッセル大尉達は最新鋭機であるゲルググ・マリーネも多数持って来ていた。なんでも敗戦後に連邦に接収されるなら、出来るだけアクシズへ持っていくようにとジオンの誰かが手配した結果だそうだ。これによりシーマ中佐の乗機がドムからゲルググに変わる。胴が紫で四肢がカーキ色の、私が知っているゲルググだった。

 

 コッセル大尉らは先遣艦隊、つまりもうすぐ本隊が来る。

 

 グワジン級を旗艦として、ザビ家の遺児であるミネバ・ラオ・ザビとその母であるゼナ様をアクシズまで保護して来た。ア・バオア・クーの戦場から脱出し、ジオンの英雄が指揮する艦隊。

 

 ジオンの英雄、赤い彗星がやってくる。

 

 

 

 

 

 シュネー・ヴァイスで戦艦の誘導をし終わり、コクピットから出てナタリーと合流する。

 

「ハマーン! またノーマルスーツを着てないのね!」

「ナタリー。だってアレはソフィアーネが一年以上前に用意した物よ。きつくて入らないんだもの」

「もう! だったら新しいのを申請しなきゃ駄目じゃない」

 

 怒っているナタリーの居る場所に向かってジャンプする。

 浮遊中に眼下でお父様とエンツォ大佐に出迎えられている人が目に入った。

 

 その人を見た瞬間、胸が締め付けられる。

 悲しみ、喪失感、無力感。本当なら自信に溢れているはずのその人からは、深い悲しみで自信を失い、自らを貶める虚無感を感じた。彼もNTなのにマリオンのように心が通う感覚はなく、私が一方的に感じているようだった。きっと彼は心を閉ざしている。

 

「ハマーン、どうしたの? 誰かを見ているようだけど」

「なんでもないわ。行きましょう。ナタリー」

 

 通路に入る前に振り返る。

 その時、彼と目が合った気がした。距離もあったし、サングラス越しだったので彼の目が見えるわけがない。なのに私は、悲しそうに私を見た視線を感じたのだ。

 

 ジオンの未来を握る人。

 私が最も近づいてはならない人間。

 

 だと言うのに私は――――シャア・アズナブルの悲しそうな視線を忘れる事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~~若き彗星の肖像~~

 

「シャア大佐、アクシズでの生活は少しは慣れて頂けたかな?」

「提督のおかけでゆっくり出来、旅の疲れも癒されています」

「それは結構」

 

 目の前の男、アクシズを支配するマハラジャ提督。

 彼とたわいない会話をする。しかし実際は一言一言に気を使い返事をしていた。

 

 これが現在も反連邦活動をする者達の映像を見せられた後でなければ、もう少し気を抜けたのだがな。私を呼び出した目的がわからない内は、慎重になる必要があるか。

 

「貴官がアクシズへ着て約一ヶ月か。大佐の目から見て、アクシズはどうかね?」

 

 アクシズの現状を語らせる事で私を試す気か。

 

 マハラジャ提督の真意は測りかねるが……。素直な感想を言う事にした。相手が何を求めて居るか分からぬ以上、真意を知る為にはこちらからある程度踏み込むのも必要だろう。

 

「そうですね。思った以上に活気がある気がします。人の受け入れもスムーズですし、アクシズの軍人達は敗戦したというのに活動的です。正直、活気があり過ぎる気がします」

「ふむ、なるほど」

 

 私の答えを熟考しているのか、目を閉じる提督。

 再び目を開けた時、提督の表情は柔和な物から真剣な顔つきへと変わった。

 

「率直に聞こう。先程見せた反連邦活動を行っている彼らをどう思うかね?」

 

 マハラジャ提督の質問に対し、私は素直な自分の思いを吐露した。彼の眼があまりにも真剣であったし、もしかしたら誰かに聞いて貰いたいと思っていたのかもしれない。

 

 戦中当初は局面毎の勝利しか考えていなかった事。

 しかし次第に私の意識は、人類の革新へ意識が向いていった事。

 そしてジオンが敗戦した今、連邦の軍事的抵抗をするのは被害拡大にしかならず否定的な事。

 

 話が終わると提督は笑顔で私を見た。

 

「一パイロット以上の影響力があるジオンの英雄、シャア・アズナブルが戦争継続を願っていなくて安心した。私も大佐と同意見だ。むろん、ジオン独立、ひいてはスペースノイドの自治確立を望みはするが、それは武力に寄らない方法でと考えている。しかし――」

「残念ながら、現在アクシズでは停戦を望む穏健派より、戦争継続を望む強硬派が強いのです」

 

 提督の言葉を引き継ぐように、部屋に居るもう一人の男が口を開く。

 

「紹介しよう。彼はハインツ少佐。私の補佐をしてもらっている」

「ハインツ・ヴェーベルンです。赤い彗星にお会いできて光栄です」

「先ほど大佐が、人の受け入れがスムーズだと言ったが、それは彼のおかげでもある。彼ともう一人が私に戦後の人の流入に対する施設拡張を訴えてきたからこそ、スムーズに受け入れられているのだよ」

「なるほど。優秀な方のようですね」

 

 ハインツ少佐と握手をした。

 

「さて、挨拶も終わり本題だが、大佐には強硬派を抑えて欲しいと思っている。現状はアクシズ司令である私が穏健派となって抑えてはいるのだが、徐々に強硬派が力を増していきている。このままではアクシズが戦端を開くことになりかねん」

 

 愚かな話だ。

 敗戦直後のこの時期、アクシズが反連邦として動いた所で他のスペースノイドが付いて来ないだろう。学徒まで動員した終戦直前のジオン軍の状況を知っていれば、考えられない事だ。

 ならば強硬派のトップと言うのは、ジオン有利の時期にアクシズへ来て、さらには地位の高い人物……。

 

「エンツォ大佐の抑えを私にしろと言う事ですか?」

「!?」

 

 驚きを露にするマハラジャ提督とハインツ少佐。

 アクシズに来て早々に私に粉をかけてきて、軍備の充実振りを説明したエンツォ大佐が強硬派を主導しているのではないかと思ったのだが、どうやら当たりだった――と考えるのは早計か。二人の表情が私の言葉に驚きはしても肯定はしていなかった。

 

「半年ほど前は、確かに強硬派の最大派閥はエンツォ大佐の一派だったのだが……」

 

 マハラジャ提督が言い淀む。

 提督を見てハインツ少佐が頷き代わりに説明した。

 

「現在、強硬派の最大派閥はマハラジャ提督のご息女であるハマーン様を中心とした派閥なのです」

「バカな。確か提督のご息女は14になったばかりでは?」

「そうです。ハマーン様は先の1月に14歳になったばかりなのですが……。海兵隊を率い、アクシズでの監察権を持つシーマ中佐を従え、その上サハリン家のアイナ代理少将とも懇意にし、麾下開発チームを専属としています。シーマ艦隊とアイナ代理少将麾下艦隊は、ハマーン様に従っているようなのです」

 

 信じられん。

 14の少女がキシリア配下だったシーマ艦隊を手なずけたというのか。それだけではなく、ジオンの名家サハリン家まで取り込こんでいるなど。

 

「大佐が信じられないのも分かります。ですがハマーン様はアクシズへ来てから、MAの開発を熱心に行い、テストパイロットも自ら務めています。MSでの模擬戦闘も積極的に行い、実力はエースパイロット並です。パイロットの一部にはその実力から彼女を慕う者もいるくらいです。ニュータイプの兵器の開発にも力を入れていて、フラナガン機関に居たというマリオン・ウェルチというニュータイプの少女を使いニュータイプ専用兵器の開発も行っています」

 

 マリオン・ウェルチ。

 ララァを預ける事になったフラナガン機関のNTリストに確か名前があった。行方不明となっていた気がしたが、まさかアクシズに居るとは。

 

「一時期心を閉ざしていた娘が、未来のジオンの為にと言うので行動を許していたが、このような事になるとは」

「提督から言って、彼女の行動をやめさせる事は出来ないのですか?」

「何度か言ってみたことはあるが、ハマーンは戦力の拡充の必要性を疑っておらん。それにハマーンの行動をエンツォ大佐やシーマ中佐が認めている。私の権限でやめさせる事は難しい」

 

 マハラジャ提督の顔には苦悩が見て取れた。

 娘を思う父親としてか、またはアクシズの司令としてなのかは分からないが。

 

「エンツォ大佐が彼女を利用しているという事は?」

「当初は私もそう思ったのですが、そうではないようです。逆にエンツォ大佐の側近であるモニカ大尉が、ハマーン様の派閥に取り込まれかけているようで」

 

 エンツォ大佐は利用していたはずが、利用されていたという事か。

 

「娘が、ハマーンが悪意を持って戦力を蓄えているとは思わない。だがこのままでは、アクシズでは近い内に連邦と事を構える事に成りかねない。同じニュータイプである大佐の事を、ハマーンは尊敬しているようなのだ。何度か大佐の事を話したのだが、大佐の優秀さを楽しそうに語っていた」

 

 その時の会話を思い出したのか、微かに笑顔を見せる。

 

「同じニュータイプであり、尊敬している大佐の言う事なら聞くのではないかと思う。娘を、ハマーンを真にジオンの為、スペースノイドの為に行動できるようにお願いできないだろうか、シャア・アズナブル大佐」

 

 提督に頭を下げられ頼まれたが、私は直ぐに返事が出来なかった。

 14歳にして一大派閥を築く存在を、今の私がどうにかできるか疑問だからだ。

 

 何よりもNTの少女と言う事に引っ掛かりを覚えた。

 大切な存在を守れず失った自分が、NTであるハマーンという少女を導けるとは思えなかったのだ。

 

「提督、私には」

 

 断りの言葉を口に出そうとすると――――大佐―――と私を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。

 君を守れなかった無力な私に何を求めているというのだ。

 

 目を閉じ過去を反芻する。

 自分の過去の過ちを、力の無さを、敵であった少年の事を。

 在りし日の光景で、私は彼女にノーマルスーツを着るように言われた事を思い出す。

 

 そうだったな、ララァ。

 君が言うのなら、私は。

 

「提督、そのお話ですが――」

 

 

 

 提督との会談の後日、私は一人の少女と出会う。

 

 ハマーン・カーンという名のニュータイプの少女と。

 

 

 




ノリス大佐がカレン達を見逃したのも、シロー少尉が少佐やる気になった理由かもしれません。作中では書いてませんが。

そしてシャア登場!
原作以上に訓練やMA&MS開発に積極的、おまけに海兵隊やNT少女まで従えて、勝手に専属開発チームまで設置して戦力アップに動いている!
どう考えても周囲からは強硬派にしか見えません。

ララァさんの登場予定はなかったのですが、時の狭間から出てきました。
何故かハマーン様とシャアがお近づきになりそうです。
誰かグラサンを止めて!

ハマーン様ですが、もうすぐ進化予定ですが……。
ツインテール少女のナタリーとイチャイチャ状態の現状も捨てがたい。
どうしよう(゜д゜)



さてと……更新が遅れて申し訳ありません!
参考にとガンダム系ゲームをちょっと……ね?
ガンダム量産してソロモン攻めたら、ビグザム数体とララァinジオングに壊滅されて意地に……! ビグザム量産されたら、ソロモン落せないょ(;つдT)

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