宇宙で見る夢   作:メイベル

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第1話

 NT研究所であるフラナガン機関へやってきて数日が経った。

 

 かなり優秀なNTであるらしい私は様々な実験をさせられた。

 下らないトランプの絵柄当てからモビルスーツ訓練用シミュレーターまで色々と。

 最初の薬品で過剰反応を示して以来、薬物投与をされてないのが救いか。

 

 まぁ今はそれはどうでもいい。

 検査や試験の結果に一喜一憂する科学者達には苛立つし、自分の体の内部を勝手に調べ上げられたりする事には嫌悪するが置いておく。

 

 数日経ったしそろそろ認めよう。

 

「ここはガンダムの世界で、私はネオジオンのハマーン・カーンってことね」

 

 前世の記憶を思い出して、今やっと認めることが出来た。

 

「父はマハラジャ・カーン。姉はドズル・ザビの侍女だったが亡くなっている。妹のセラーナはお父様と一緒かしら? フラナガン機関へは人質の意味合いとサイド6に在ることで戦禍に巻き込ませたくない父の意向で、グラナダのニュータイプ研究所からやってきた……か」

 

 前世を思い出したとは言え、しっかりと自分はハマーンとしての記憶と自我がある。

 しかしなんとなくだが――。

 

「前世の方が生きた時間が長い分、日本人の自分に毒されている気がする」

 

 根拠は自室にある鏡を見て実感した事。

 

「どう見てもツインテールの可愛い少女よね。数日前まで当たり前だった自分の姿に違和感を感じるなんて……」

 

 私と言うか、アニメで見たハマーンって髪形違うよね?

 こう、ミンキーでモモ的な髪型だったと記憶しているんだけど……。

 

「もしかして前世の記憶自体が妄想?」

 

 だったらいいなぁ。

 そうじゃなければ、私は確か20代でお亡くなりになっちゃうはずだ。

 それはとても嫌だ。当然の事として死にたくはないし、死ぬ前に大恋愛の一つもしたい。

 

「恋愛……か」

 

 その言葉で思い浮かぶ人物は一人。

 

「シャア・アズナブル……」

 

 Zガンダムでハマーン・カーンが恋していた男性。

 わざわざエゥーゴと接触してシャアを自分の元に来させようとし、戦いの終盤は自分の物にならない苛立ちから殺しかけるも、最後の最後まで拘っていた男性。

 

 イケメン、家柄よし、能力優秀、財力もきっとある、人望は言うまでもない。未来の私が惚れるのもわかる。ここまでだけなら。

 

「でもあの人、シスコンでロリコンでマザコンなのよね……」

 

 セイラ・マスに対するシスコン。

 これはまぁいいでしょう。肉親の情は大切だと思う。

 

 問題はララァ・スンに対するロリコンにマザコン……。

 自分より年下の少女に恋して、その上に母になってくれるかもしれなかった!と言っちゃうのはどうなの?

 

 女としてはマザコンだけでも引くと言うのに、年下の少女をマザコンの対象にするのだ。ありえない。

 

 鏡で見る自分はツインテールの可愛い少女。

 将来アクシズでシャアと出会う時もきっとこのままだろう。

 12歳の私はロリコンのシャア大佐にはストライクだろう。出会うのは14歳かもしれないけど、十分あの人のストライクゾーンだ。

 

 コンコンコンコン。

 

 自室の部屋にノックの音が響いた。

 

「ハマーン様、ソフィアーネでございます」

「入って良いわよ」

「失礼いたします」

 

 私の護衛兼侍女として父より配属されたソフィアーネ。

 前世の記憶の中には居ないけど、きっとモブだったのかな?

 って思うのは失礼な事かしら。

 

「ハマーン様、お食事の時間なのでお迎えに参りました」

「そのくらいで来なくても良いのに」

「仕事でございますれば」

「真面目ね」

 

 父の部下とは言え、現在仕える私に『仕事だから来たんだ』と言うのはどうかと思うわ。

 前世の記憶を思い出し、大人の余裕を持った私は彼女の不敬も軽く流してあげるけど。

 

 一緒に食堂へ向かう途中に彼女が口を開いた。

 

「何かお考えだったようですが、問題がございましたか?」

「フラナガン機関自体が問題だらけな気がするけど……」

 

 ジオンの高級官僚の娘(私)に薬物投与して実験したりとか、孤児やら娼館から買い取った子供で実験したり……。

 アニメの時はムラサメ研究所やオーガスタ研究所が酷いと思ったが、体験してみて思う。ここも変わらない。

 

 私の返事に何かを思ったのか、ソフィアーネが小声で話しかけてきた。

 

「キシリアに対する貸しにもなるのでフラナガン機関へ来ておりますが、ご不満なら違う場所、グラナダやサイド3辺りへ行くこともできますが」

「そうなんだ? でも今すぐは良いかな。ここでやりたいこともあるし」

 

 自分の将来の為に色々とする必要がある。

 折角フラナガン機関に居るんだし、出来ることをやってから出て行こう。

 グラナダに戻れば、そっちはそっちでモルモットでしょうしね。

 

「お部屋で一人、ご自分の処遇に悩んでおられるとは気づきませんでした。申し訳ありません」

「あぁ、気にしないでいいわ。さっき部屋で考えてたのは別の事だし」

 

 心配顔のソフィアーネに悪戯するように言ってあげた。

 

「シスコンでロリコンでマザコンの男性とは、恋をしないぞって思ってただけだから」

 

 シャアとは絶対に恋仲にならない。

 これは心しておこうと思う。

 

 ソフィアーネは「それはひどい男性ですね」と笑って応えてくれる。

 私も調子に乗って彼の悪口をさらに言う。

 

 食堂へつくまでの間、まだ見ぬ赤い彗星の悪口で盛り上がった。

 

 

 

 




私はシャアさんがとても大好きです。
主人公は出会ってないのでイメージだけで決め付けています。

侍女のソフィアーネさんはオリキャラです。

投稿の仕方が合ってるのか不安(;´ω`)投稿できてるのかな~。


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