宇宙で見る夢   作:メイベル

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第2話

 今日の実験を終えて自室で考えを整理する。

 

「まずは私の知識についてよね」

 

 前世で塾の先生にビデオを無理矢理貸しつけられて、ガンダムについて洗脳された。

 その時に見た作品が映画の初代『ガンダム』のI~Ⅲ。

 それで好きになって他の作品を見た。

 見た作品は確か……。

 

 Z。

 ZZ。

 08MS小隊。

 ポケットの中の戦争。

 0083。

 逆襲のシャア。

 ガンダムUC。

 

 初代関連についてはこんな所だろうか。

 これからの一年戦争とユニコーンまでカバーできれば、中々十分な知識だと思う。

 

 ……覚えていれば。

 

「確かにアニメは好きだったけど、設定とかに拘ってたわけじゃないのよね。詳細はサッパリ覚えてないわ……。そもそも前世の時もどれもあやふやだったのに、今の私が細かく覚えてるわけもないわよね……。ガンダム作品多すぎるのよ」

 

 さらに言えば覚えていたとしても問題がある。

 TV版と映画版では内容が違うし、マンガやゲームまで入れれば作品ごとの差異は多岐にわたるはずなのだ。今私が居る世界がどの世界観ベースかもわからないし、下手をすると全く違うことだってあるかもしれない。原作知識があっても歴史的な部分では大まかにしか役に立たない。

 

「と言う事にして自分を慰めましょう。うん、私は悪くない」

 

 私の死因たる強い子ジュドー・アーシタ君。

 彼の出身コロニーとかサッパリ思い出せない。

 普通は前世の知識で原作介入して、上手に死亡フラグを叩き折るはずなのになぁ。

 

「私の前世の知識、微妙……」

 

 髪留めを外す。それで自由になった髪を指ですいて軽く整える。

 

「とりあえず、今日は寝ようっと……」

 

 前世で読んだ転生物の創作に比べ、自分の知識の穴の多さに悲しくなる。

 

 疲れてたし、不貞寝したって悪くないよね?

 

 

 

 

 

 不貞寝した翌日は体調が悪いと嘘を言って自室に篭った。

 

 のんびり寝てる場合じゃなかったのだ。

 私には死亡フラグが待っているのだから。

 今後の明確な方針を決めておかなきゃいけない。

 

「まず生きる為にどうするか? 地球やどこかのコロニーでひっそり過ごせば大丈夫?」

 

 腕を組んで考える。

 悲しいかな、胸が小さいのでしっかり腕が組める。

 大人になっても胸が小さいことを知ってる身としては、これも今のうちからどうにかするべきかな?

 

「って、いけない。思考がずれた」

 

 地球やコロニーに一般人として住んだとして……。

 無事な自分が想像できない。

 何かしら事件に巻き込まれるか、最悪強化人間にされる気がする。そうしてサイコガンダムmkⅡに乗ってジュドー君と……ぶるぶる。

 

 大体、この世界は毒ガス事件やクーデターやコロニー落しやアクシズ落しがあって安心できない。

 うっかり毒ガス入れられるコロニーに居たら死んじゃうし、宇宙からの落し物がきたら地球も危なすぎる。

 

「この時代の指導者層はやりすぎな気がするわ……」

 

 12歳の少女である私が指導者になったほうがマシなんじゃないかしら?

 そう思うほどに酷い気がする。

 

「そうすると原作通り私がアクシズの指導者に……?」

 

 それが一番無難な気がする。

 

 ある程度の流れは分かってるから、危なそうな事はしなければいい。

 具体的に言うとカミーユ・ビダン君やジュドー君に優しくしたりすれば狙われないよね?

 アムロ・レイとは接点があまりなかったはずだから気にしない。

 もし敵になって直接戦闘にでもなったら……怖いから考えない。

 

「よし、頑張って原作よりはましな未来を迎えられるようにしましょう」

 

 地球圏の支配という本来の私が目指す事に比べたら低すぎる志だけど……。

 それを考えるほど私は野心に溢れてない。

 

 さて、目標……というには大雑把過ぎるかな。

 大まかな方針が決まったので具体策を考えなきゃ。

 

「確か……お父様が亡くなられて私がアクシズの代表になるのよね」

 

 平和主義で穏健で娘達を愛しているお父様。

 亡くなると思うと涙が出てくる。

 死因は知らないけど、願わくば死なないで欲しい。

 死なないでアクシズの指導者のままなら、その時は私がお父様を支えよう。

 

「まだ起きて無い事で泣いてる場合じゃなかったわ」

 

 お父様を支えるにも自分が上に立つにも必要な物、それは。

 

「忠実な部下ね。それも有能な。ある程度自己判断が出来て艦隊指揮も出来て、MSの操縦技術も高い人が良いわね」

 

 理想を口に出してみたけれど……そんな人居るだろうか?

 

 ベッドに寝っ転がって考える。

 置いてあったウサギの抱き枕を抱きしめる。

 

 アニメ作品だけじゃなく、ゲームや漫画からも良さげな人物を思い浮かべてみる。

 

「シロー・アマダ少尉。部下思いできっと忠誠心も篤い。正義の人で信頼も出来るし、実行力もある。……けど連邦の人」

 

 ロミオとジュリエット的な恋愛をしてた。あんな恋愛は憧れる。

 相手のアイナさんが羨ましい。

 

「マスター・ピース・レイヤー。隊長だし指揮はできる。MS技術も悪くないはず。でもやっぱり連邦所属で、なんとなくだけど存在しない気がする」

 

 ギレンの野望シリーズに出てたから知っているけど、本来のゲームでの活躍は知らない。

 アクション系が苦手でシミュレーションが得意だったから野望シリーズは少しやったのよね。

 

「って前世の思い出に浸ってる場合じゃなくて! う~ん、ジオンの人で良い人は~。あ、アナベル・ガトー少佐! 忠誠心篤くて真っ直ぐで、カリスマもあるし、MSの操縦だけじゃなく、生身での潜入までする有望株!」

 

 ……なんだけど、確かギレン・ザビの親衛隊所属だっけ?

 その関係でエギーユ・デラーズ大佐とも面識があって、ア・バオア・クーの戦い以降は彼に忠誠を誓ってたっけ。

 0083はニュータイプが活躍しない作品で結構好きだったなぁ。

 必死に頑張ってる男達の戦い!みたいで。

 

「アナベルって名前が可愛くて呼びやすくて、とっても良いんだけどなぁ。あ……」

 

 ギレン親衛隊所属のガトー少佐の確保は無理そうだ。

 だけどそれに関連して良さそうな人物に思い至る。

 

 艦隊指揮にMS技術も高いし、戦術眼も持ってる。

 それだけじゃなく約3年も戦犯として追われながらも艦隊を維持し、色々な所の要人との交渉能力もある。これは素晴らしい事だ。この世界は闘う力も必要だけど、秘密裏の交渉能力はさらに重要だと思う。

 

「うん、良いかもしれない。時期的にまだスレてないだろうし、こう、上手く転がせば……」

 

 スレてない今なら、交渉次第で私に忠誠を尽くしてくれるだろう。

 元々は性格が悪くなかったはずなのだ。どこかのお嬢様だったとか聞いた事もある……ような気もするし。

 

 部下候補その1を決めたとして、どうしましょう。

 私には彼女と会うコネもなければ権力もない。

 将来ならまだしも、現時点では12歳の少女でしかないのだ。

 

「しょうがない、ソフィアーネに相談しましょう」

 

 彼女はお父様が私の護衛兼侍女として配属してくれたのだ。

 相談すれば何とかしてくれるかもしれない。というか、他に相談できる人がいない。

 

 内線電話で彼女の部屋へと繋ぐ。

 

「あ、ソフィアーネ、ちょっと相談したいことがあって――」

 

 

 




昔友人が貸してくれた0083は、今でも大好きです。
初代の世界作品でニュータイプが基本的に関わらないガンダム作品って珍しいですよね。
ハマーン様がワンシーン出ておりましたが(*´ω`)

※ガトー少佐はドズル配下の部隊なので、親衛隊所属ではありません。
作中でそのうち主人公の勘違いを指摘いたします。
感想でのご指摘ありがとうございます。

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