宇宙で見る夢   作:メイベル

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第5話

「ハマーン様、アクシズへ行く手はずが整いました」

 

 自室に来たソフィアーネがそう言った。

 

「昨日シーマ中佐と会談したばかりなのに唐突ね」

「お嬢様は敗戦後にアクシズでの戦力拡充を考えてらしたので、アクシズへ行くのは早い方がよろしいかと思いまして。フラナガン機関で研究の被験者として扱われるのもお嫌のようでしたので急ぎましたが……問題がありましたか?」

 

 今のところ部下候補としてはシーマ中佐以外には会う事すら出来ていない。

 配下の充足と言う意味ではまったく足りない。

 とは言え正直手詰まりだった。

 

「残念だけど問題はないわ。権力がないと会う事すら難しい現状ではね。それならアクシズで早くから準備をしているほうがいいでしょう」

 

 エース級の人材は各派閥の長のお気に入りで、シーマ中佐の時のように何かの任務に偽装させて会う事は無理だった。優秀ゆえに会えないジレンマ。

 シーマ中佐だけでも会えたのは僥倖かもしれない。

 

 それでも出来る事はしようと思う。

 

「ここを出て行く前に確認だけど、お願いしていた人物とデータは何とかなりそう?」

「フラナガン機関の被験者の事でしたら調べておきました」

「結果は?」

 

 折角フラナガン機関にいるのだ。優秀なNTには会っておきたかったし、あわよくば連れて行きたいと思っていた。

 しかし機関の施設を自由に歩きまわれなかったので、ソフィアーネに秘密裏に調べてもらっていたのだ。

 

「ララァ・スン、及びクスコ・アルに関しては在籍しておりませんでした」

「そう……」

 

 現在は6月。

 シャアがララァ・スンをどこかで見つけてくるのは、まだ先と言うことだろうか。

 色々と思うことはあるが、一度会ってみたかったのだけど……残念だ。

 

 クスコ・アルに関しては名前は知っているが詳細は知らない。

 前世で優秀なNTと聞いた事があるので期待したのだけど……。

 

「上手く行かないものね」

「お嬢様、女性ばかり調べさせてますが……そちらのご趣味で?」

「ち、違うわよ。ちゃんと部下の候補には男性のアナベル・ガトー少佐やシン・マツナガ大尉、ジョニー・ライデン少佐なんかも入ってたわよっ」

 

 胡乱な眼を向けてきたソフィアーネに必死に言い訳をする。

 

 マツナガ大尉はドズルのお気に入りでジオンの名家出身だ。とてもじゃないけど私に忠誠を誓ってくれるとは思えない。

 

 ライデン少佐はキシリア派の人間でキシリアのお気に入りだったと思う。キマイラ隊だったかのキシリアの肝いり部隊に所属するはずなのだ。マツナガ大尉と同じで忠誠を私には向けてくれないだろう。

 

「ドズル閣下麾下のエースパイロット、ガトー大尉にマツナガ中尉ですか。最後の方は存じ上げませんが」

「知らない? 紅い稲妻って言われてるはずだけど」

「赤いのは彗星では?」

「あれ? 真紅の稲妻だったっけ?」

 

 ソフィアーネと話しながら違和感に気づく。

 

 彼女が言う階級だ。

 私の知識ではアナベル・ガトーは少佐だし、シン・マツナガは大尉だ。しかし彼女は前者を大尉、後者を中尉と言った。

 軍部の情報に詳しい彼女が間違えるとは思えない。つまり現状、彼らはまだ私が知ってる階級になっていないのだろう。

 

 それともう一つ。

 ガトー少佐の事をドズル麾下と言った。

 私は前に彼はギレン親衛隊と思って除外したわけだけど……。

 ソロモンの悪夢と後に呼ばれる彼は当然ソロモンに所属する部隊。ソロモンはドズルが拠点としている。とするなら、ガトー少佐がギレン親衛隊であるはずがなく、ソロモン所属の部隊の一員だろう。

 

 ここで前世の知識の危うさを実感する。

 ソフィアーネと話して階級の事に気づけてよかった。前世の知識から階級を決め付けて話すのはどこかで問題になったかもしれない。今後気をつけよう。

 

 そして何よりも……。

 前世の私、ガトー少佐について間違って覚えていたわね。

 理由はなんとなくわかる。前世の私は一年戦争を取り扱ったゲームか何かでデラーズ大佐とガトー少佐が一緒に居るシーンを見て、親衛隊所属と勘違いしたのだ。よく考えれば『ソロモンの悪夢』なのだから、分かった事でしょうに……。

 

 ソフィアーネに彗星ではない赤いカラーのエースの事を説明しつつ反省する。

 でもガトー少佐を部下に出来るかもしれない光明が見えて、気持ちは少し明るくなった。

 

「少しはお気持ちが楽に成りましたか?」

「え? あ……」

 

 ソフィアーネに言われハッとする。

 どうやら私は落ち込んだ顔でもしてたのだろう。

 彼女は気を使って私を励ましてくれたようだ。彼女の気遣いには感謝したい。

 

「ありがとう。ソフィアーネ」

「いえ、報告途中でいちいち落ち込まれると、此方のやる気がなくなりますので」

 

 でも手段といい口といい、優秀な侍女はどこか黒かった。

 

 昨日もスカートの事を言ったり、私を辱めて元気付けるのはやめて欲しい。

 年頃の身としては、そこにこそ気を使ってもらいたい。

 

「それで報告の続きなのですが」

「どうぞ、続けて」

「マリオン・ウェルチは在籍しています」

「本当に?」

「はい。クルスト・モーゼス博士のチームが研究対象としているようですね」

 

 対NT用システムEXAM。

 それを開発する為に犠牲になるはずなのがマリオン・ウェルチだ。

 彼女も優秀なNTのはずなので、是非協力をお願いした上でアクシズへ共に行きたい。

 私への協力を拒否されたとしてもEXAMの犠牲にはなって欲しくない。助けられるなら助けたい。

 

「マリオンをアクシズへ連れて行くことはできる?」

「残念ながら難しいですね。ただの被験者ならまだしも、ニュータイプと認められて研究対象にされているので、正規の手段では……」

 

 近くに居て救えそうな悲劇すら救えない自分の力の無さに脱力してしまう。

 また落ち込みそうだったが、次の良い報告で持ち直す。

 

「人材は無理ですが、ニュータイプの研究データは持ち出せそうです。アクシズでもニュータイプの研究を進めている関係で、こちらは正規の方法である程度はデータを持っていけるかと」

「キシリアがそれを許すと言うこと?」

「マハラジャ司令もニュータイプの研究を行っていた事で、キシリア閣下の裁可がおりたようですね。キシリア閣下としてはニュータイプの有用性を証明したいらしく、意外とマハラジャ司令には好意的なのかもしれません」

 

 お父様がNTの研究を後押しするのは私の為だ。私がNTであるかもしれないとわかってから、未知の対象として迫害等をされないようにと考えたのだろう。少なからずジオン・ズム・ダイクンの影響も受けていると思うけど。

 

「もう一つ、クローン技術の研究についてですが、医療用のクローン研究データの当てが見つかりました。それらの研究データも持って行くのですね?」

「えぇ、それも是非。ニュータイプの研究と同じくらい重要よ」

 

 クローンの研究データまで見つけてくれるとは。

 落ち込みかけていた気持ちが上がるのを実感する。

 

「ダメだった事を考えても仕方ないわよね。少しでも出来る事をしてアクシズへ行きましょう」

 

 と言っても、ザビ家の独裁を認める気はないので一年戦争に介入する気はない。

 実際は権力も戦力も持って居ない今の私では介入できないのが現実ではあるのだけれど。

 

「サイクロプス隊……今はまだないかもしれないけど、将来発足される部隊への命令を一部変更したりの工作は出来る?」

「それはまた雲を掴むようなお話ですね。詳細を御伺いしてみない事にはなんとも」

「そうね。確かハーディ・シュタイナー大尉が隊長になる部隊なんだけど――」

 

 将来、連邦のNT専用機の強奪作戦を行うだろう事を説明する。

 何故分かるのかだとか理由を一切聞かずに、私の話を聞いてくれるソフィアーネ。それどころか自身がキシリア機関の諜報員である事を明かしてくれた。明かしてくれた事で相談はより密になっていく。

 

 どうにか将来のサイクロプス隊への命令書に細工が出来そうで、より私の気分は上向きになれた。

 細工が出来ても彼らが生き残るとは限らないし、部下になってくれるかもわからない。でも可能性は出たと思う。

 

 

 

 

 

 明日サイド6を出発すると言う事なので、今日の残りは荷物整理に使う。

 

 ソフィアーネも準備があると言うので自室へ戻る事になった。

 私の部屋から出る前に彼女は立ち止まり質問をしてくる。

 

「ハマーンお嬢様、ニュータイプの研究データは分かるのですが、クローン関連のデータを求めたのは何故でしょうか? まさかご自分のクローンでもお作りになる気で?」

「まさか、そんなことはしないわ。アクシズに来る兵の中にはきっと負傷兵も多いでしょう? 医療用の技術があれば助かると思ったからよ」

「そうですか」

 

 私の答えに納得したのか、すぐに部屋を出て行った。

 

 彼女に答えた返事は偽りない私の本心だ。

 だけど彼女には言わなかったもう一つの理由がある。

 

「プルツーにマリーダ・クルス、もしかしたらエルピー・プル自身も」

 

 彼女達が生まれるのにはきっと必要な技術なのだ。

 クローン技術に忌避感は多少あるが、そのせいで生まれる事さえ出来なくはしたくない。下地となる研究はしっかりしておこうと思う。

 

 プルシリーズはグレミー・トトの配下。

 私を裏切り敵となるわけだが……。

 

「裏切ると分かっているなら、どうとでもなるわよね」

 

 

 

 




実際、エース達を部下にするのは難しいと思うのです。

アムロにやられる予定のメンバー揃えたら、チート部隊になるのに……。
でもそれを阻止するとジオンが勝利してザビ家というかギレンの独裁に……。
ままならないものですね(*´ω`)

皆様が部下にしたいキャラはどなたでしょうか?
私はバーナード・ワイズマン伍長とコンスコン少将です。
バーニィはザクでアレックスを倒す才能が凄いと思います。
コンスコンはWBを仕留める為に最初から出し惜しみせずリックドムを12機だしたからです。やられましたけど、あれはWBが強すぎただけだと思うんです。

あの人を部下にして~とか考えてる時って楽しいですよね~。

あ、MSがまた出てない(;´ω`)
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