テラをかける少女   作:NBRK

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日付が変わる前に間に合わなかった…。


第十一話 生きる意味

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 痛い痛い痛い痛い!足が、足が!

 

 あまりの痛みに叫び声を上げてのたうち回る。アーツによる強化のお陰で何とか足は繋がっているものの、両足の骨は砕け散り赤々とした肉が顔を見せている。

 

「馬鹿ねぇ、あたしが何の準備もしてないとでも思ったのかしら?この辺りはとっくのとうに地雷原よ。あたしがアーツで直接操ってるから誤爆の心配もないわ。ロドスの連中が逃げた時起爆しなかったのはそのせいよ。」

 

 Wが何か話しているが、痛みのあまり殆ど頭に入ってこない。Wの足音が近づいてくるが、立ち上がることすらできない。

 

「それにしても…、あなたがまさか逃げ出す(・・・・)なんてね。昔のあなたなら絶対にそんなことしなかったわ。ねえ、どうして向かってこなかったの?あの死に急いでいたあなたはどこに行ったのかしら?」

 

 伸びてきた手を体を転がして避ける。抵抗されたことにWが僅かに不機嫌な顔を見せる。

 

「なんて無様な格好してるのよ。芋虫みたいに地面に這いつくばって、そこまでしてあなたはどうして生きたいと思うのかしら?まさか、さっきのウルサス達が未練なんて言わないわよね?」

 

 もう何かを答える気力も、地面を転がる体力もない。それでも最後の力を振り絞って這って動こうとしたところを、Wの足に押さえつけられる。

 

「あっはっはっはっ!あー可笑しいわ!よりにもよってあなたが!あの非感染者嫌いのあなたがそんな友情ごっこにはまるなんて!」

 

 そうしてひとしきり笑った後、Wはアタシの頭を押さえつけていた足をどかし、右手で胸倉を掴んで顔を上げさせた。そこでアタシの目に映ったWは、先ほどまで爆笑していた人物と同じとは思えない程冷酷な顔をしていた。

 

「あなた、つまらなくなったわね。元々つまらない子供だったけど、あの頃のあなたには牙があった。自分から全てを奪った奴らを殺し尽くしてやると言わんばかりの復讐心、そしてそれを叶えられるだけの才能があった。だからあたしは荒野で倒れていたあなたを拾ったのよ。でも今のあなたは違う。復讐心を忘れ馴れ合いに興じて、その力で戦わずに逃げることを選んだ。情けないわ。まるでただの子供じゃないの。今のあなたを生かしておく価値があるとは思えないわ。」

 

 Wの左手がアタシの首に添えられる。

 

「何か言い残すことがあれば言いなさい。もっとも、喋る力が残っているかもわからないけどね。」

 

 首に添えられた手に、少しずつ力が加わっていくのを感じる。幾多もの命を奪ってきた指は酷く冷たいものに感じた。そのせいだろうか、アタシの頭の中は不思議なくらい澄んでいた。

 

 走馬灯が見える。暖かい家族、それを失った日。全てを失って辿り着いた街では石を投げられ、散々に棒で打たれた。思えばその時が、アタシの復讐心の始まりだった。

 

 Wと出会い、傭兵として一人立ちしてから、健常者、感染者に関係なく数え切れないほどの命を奪った。全ては復讐の時まで生き延びるためだ。そう信じて、機械のように戦い続けていた。

 

 しかしいつしか月日が経ち、目的だったはずの復讐心すらぼやけていった。生きる意味もわからずに毎日を生き延びるために戦い続ける。そんな日々に嫌気が差して、傭兵団を抜け、流れの傭兵として旅に出た。

 

 そうして辿り着いたチェルノボーグで、復讐の相手と巡り合った。そしてメフィストの誘いでレユニオンに入り、アタシは念願の復讐を成し遂げた。駐屯地に旗が立った瞬間のレユニオンの歓声が忘れられない。痛めつけ、殺して、奪い尽くす。地獄と化したチェルノボーグには、あらゆる感染者が望み、そしてアタシも望んでいたはずだった景色が広がっていた。

 

 そう、それが、アタシの牙の存在理由。

 

 

 

 

 違うだろう…!!

 

 

 

 

 冷え切った指先に火が灯ったような感覚がした。限界を迎えたはずの右手が、首を捉えるWの手首をがっちりと掴んだ。

 

 自治団の姿が頭に浮かぶ。楽しそうに歌を歌う団員達、踊るグム、それを一歩離れた場所からくだらなそうに見るズィマー、そのズィマーを説得してつれて行こうとするイースチナ。それを見て、皆と同じ制服を着て、アタシは笑っているのだ。

 

 Wの顔が驚きに染まる。そうだ、アタシの価値をお前が決めるんじゃねえ!変わったんじゃない、アタシの人生は、ようやく始まりを迎えたんだ!

 

「感……染…者だとか…鉱石…病だとか……そんな…こと…は、どうでも…いい…!あん…な…からっぽの…ものが、アタシの…生きる…意味なわけが…ない!」

 

 だらんと下がった左手を力の限り握りしめる。爪が食い込んで血が流れてるが、その痛みすら、アタシを生につなぎ止めてくれているように感じる。

 

「ズィマー…達が…教えて…くれ…た。感染…者…だから…、そんな…ことは…言い訳だ…!こんな…アタシでも…。仲間って…言って…くれる奴らが…いる!足りない…のは、ちょっとの…勇気…それだけ…だ!それさえ…皆が持てれ…ば。きっと…この悲しみは…終わる…はずだ!」

 

 手首を掴んだ右手に力を込める。それは手首をへし折るには至らなかったが、首を掴んだWの手の力が一瞬緩んだ。

 

「アタシの力は!その為に!あるんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 アタシの左拳が、Wの腹部に突き刺さった。吹っ飛ぶW。そして、アタシはグチャグチャの両足で地面に立つ。どうやって立っているのか自分でもわからない。ただ本能が叫ぶままにWへ突撃する。

 

 体勢を立て直したWが次々と爆発物を投擲してくる。それを最小限の動きで躱し、地雷の爆発を置き去りにして走り続ける。

 

 残る距離はわずかに2メートル。Wが苦し紛れに爆発物をばら撒いた。逃げ道はなくなった。しかしそんなことは既にアタシを止めることは出来ない。

 

「アタシは!生きるんだぁぁ!!!!」

 

 そう叫んで、真正面、最もアタシとWに対して近い位置に浮いた爆弾をアタシの拳が捉えた。爆発が連鎖し、爆発音と衝撃だけがアタシの世界を支配した。

 

 薄れゆく意識の中、視界の端に仰向けに宙を舞うWの姿が映った。

 

「(ざまぁみろ。)」

 

 そして、アタシは意識を失った。




 ハイネの能力は「変性」です。サリアのように体の成分を操って体を強化しています。一つ違うのはハイネは理論ではなく、感覚でそれを行なっています。イメージとしては進撃の巨人のミカサのように、幼少期のショックで自分の体のことを感覚で理解できるようになったと考えて貰えると良いかなと思います。

 それはそうと、朝起きてなんかUA伸びてるなーと思ったら、評価に色が付いていました。二次創作は初投稿で不安も多かったですが、沢山の人に読んでもらい、こうして評価を頂けて本当に嬉しいです。

 次回、一章完結。更新は今日中か明日の予定です。
 
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