感想、評価を下さった皆さん、本当にありがとうございます!おかげでなんと日刊ランキングにこの小説が乗りました。今後ともお付き合い頂けるととても嬉しいです!
また、整理の関係で、各話タイトルの前に話数を追加しました。今後も誤字以外での変更があった場合は前書きでお伝えします。
長文失礼しました、それでは本編をどうぞ!
6/15 追記 行動予備隊A1をA4と間違えていたので修正しました。
二章第一話 出発
レユニオンによるチェルノボーグ襲撃が世界を震撼させてから3日が経った。今アタシは例の青い奴ら…ロドスの基地に乗って、丁度今日滞在許可が下りたらしい龍門へ向かっている。
知らない間に連れてこられて最初は戸惑ったが、今では大分ここでの生活に慣れてきた。むしろここには感染者だからと言って差別する奴も居ないし、今までに比べたらずっと快適だ。正直なところ、元の生活に戻れるか不安なくらいだ。
「…い。おい!聞いてんのかハイネ!」
「へ?あ、すまん。聞いてなかった。何だって?」
「だから!ロドスの誘いを断ったってどういうことだって聞いてんだろうが!全く…ようやくベッドから出てきたと思ったらこれだ。ちゃんと説明してくれるんだろうな?」
不機嫌さを隠さずに問い詰めてくるのは、先日チェルノボーグで出会ったズィマーだった。食堂の日替わり定食を食べる彼女の体にもまだ傷が目立つ。隣に座ったイースチナが、傷に触る、と言ってズィマーを宥めている。
ちなみにグムは既に調理師としてキッチンの一角を任されている。本来は専門の調理師の他に、料理の得意なオペレーターが当番制で食堂を回していたそうだが、チェルノボーグでその多くが負傷、または亡くなったせいで人手が全く足りないらしい。人手の欲しいロドスと、立場を確立したい自治団。グムは迷わずにコックとして立候補し、その料理はなかなかの好評を得ている。特に行動予備隊A1のメンバーの喜びようは凄かった。何でも、お陰でハイビス飯を回避できた、だとか。ハイビス飯って何だ…?
そんな訳で今日はそんなグムの様子を見る兼近況報告、という形で集まったわけだが…見ての通りの状況である。一体どこでそんな話を聞いてきたのか。
「そんなこと言ってもなぁ。アタシは傭兵だし、別にロドスに残る理由もないし…。」
「理由がないなら別に居てもいいだろ。結構いい条件だったって聞いたぞ?何が不満なんだよ。」
「うーん…。何と言ったらいいか…。」
別に大した理由があるわけではない。ただ、今までずっと放浪していたせいか1ヶ所に留まることに抵抗があるのが一つ。それともう一つの理由としては…。
「…なんか胡散臭いんだよなぁ。特にあのケルシーって医者は何考えてるのかわかんないし、ドクターとかいうのも記憶喪失らしいし。ここに保護してもらうように提案しといてアレだけど、アタシはまだロドスを信用できない。」
周りに聞こえないよう、小さい声で本音を打ち明けると、ズィマーとイースチナも複雑な表情を浮かべた。2人は自治団のまとめ役という立場上、アタシ以上に不安を抱えているだろう。
「それでも….私達には他に行き場所はありませんでしたから。幸いなことに悪意のある対応もされていませんし、他に滞在している人々からも評判は良いみたいですから、今のところは安心して良さそうです。」
「だな。しかしここに居るのもただって訳にはいかないだろ。早く何か仕事を貰わないとな。」
「…ズィマー?無理はしてはいけないと散々言ったはずですが。」
「う…わかってるっての。はぁ、とにかく今はグムに感謝しないとな。あいつが居なかったらアタシ達は本当にただ飯食らいだ。」
「あれ〜?グムの話をしてるの?なになに、どうしたの?」
そんな話をしていると、仕事を終えたグムがアタシ達の席までやって来た。手に持った大皿には何やら美味しそうな焼き色をした円盤状のものが3枚積まれている。
「あら、今日は早かったんですね。何かありましたか?」
「ううん、本当はあと1時間くらいキッチンに立つ予定だったんだけど、この3日ずっと働きっぱなしだから今日は早く上がっていいよって料理長が言ってくれたの。ハイネちゃん、約束のホットケーキ焼いてきたよ!」
「へえ…これがホットケーキか。このまま食べていいのか?」
「うん!このかかってるシロップってのが甘くて美味しいから、それに絡めて食べて!」
なるほど、匂いはうまそうだが…。言われるとおりにホットケーキを切り分けて口に運ぶ。あ、超おいしい。
夢中になって食べていると、3枚あったホットケーキはあっという間に無くなってしまった。食べ終わって顔を上げると、3人から妙に温かい視線を送られていた。そこでようやく自分が会話も忘れて食べることに熱中していたということに気づき、頰が熱くなった。
それを誤魔化すように咳払いをすると、その姿がまたおかしかったのか遂にグムが吹き出した。これは形勢が悪いと判断して、アタシは別の話題を切り出した。
「むぅ…まあロドスを離れるとは言っても、しばらくはちょくちょく顔を出すことになったから。ほら、これ。」
そう言ってポケットから顔写真の載ったカードを見せる。
「研究特別協力員…?何だこれは?」
「どうにもアタシの鉱石病の症状が特殊らしくてな。治療法の開発に役立つかも知れないからよかったら研究に協力してくれって言われたんだ。だからロドスが龍門にいる間は定期的に顔を出すよ。」
「定期的って…。具体的にはどれくらいだ?1ヶ月に1回くらいか?」
「いや、3日に1回くらい。」
「はぁ!?そんな頻繁に来るのかよ!はぁー、心配して損した。というか、それならもうロドスに居るも同然じゃねえか。」
そう、実はロドスの勧誘を断った時、ケルシーからこの話を持ち出されたのだ。アタシだってこの3日間ただぼうっとしてた訳じゃない。3日間、治療を受けながら観察した結果、何故製薬会社がこんなに戦力を集めてるかは別として、鉱石病の治療、ということに真剣なのは伝わって来た。だから、この話を受けることにしたのだ。多くはないが報酬も出るし。
驚く3人を見て、サプライズが成功した、と思わず笑ってしまった。
「はははっ。まあ確かにそうなんだけど…、アタシも、やっとやるべき事が見えてきた気がするんだ。まだ具体的に何をするかとかはわからないけど、自分の足で色んな場所に行ってそれを探したいって思ったんだ。だから、ロドスと正式に契約はしない事にした。…言っとくけど、それに気づかせてくれたのはズィマー達だからな?」
「は?アタシ達は別に何も…。」
「そりゃあズィマー達からしたら大した事じゃないかもしれないけど、アタシにとっては結構重要な事があったんだよ。だから…ありがとう。」
その後は、グムの仕事話や自治団の今の生活などの話をしながら、穏やかな時間が過ぎた。ズィマー達と別れた後も、昔の知り合いと会ったり、リハビリついでに訓練の手伝いをしたりと色々あって、あっという間に龍門に着いてしまった。
そして、たった今、アタシはロドスから降りて龍門外環に降り立った。見送りにはチェルノボーグで一緒に脱出した面子に加え、アーミヤが来てくれた。
「それではハイネさん。次は3日後にお越し下さい。ロドスはここに逗留していますから、その研究特別協力員のカードを見せれば入れると思います。…チェルノボーグの件で龍門も警戒を強めているので、トラブルに巻き込まれないよう気を付けてください。」
「ああ、わかった。そっちも大変だろうけど頑張ってくれ。ズィマー達をよろしくな。」
そうアーミヤに告げて歩き出す。ズィマー達の声に対し一度だけ振り返り片手を上げて答えたあと、目の前にそびえる巨大な都市を見据えた。
この都市では一体何を見つけられるだろうか。そんな期待を胸に、アタシは真っ直ぐに龍門へ向かって走り出した。
二章の投稿頻度に関してですが、アイデア自体はもりもり湧いているのですが、リアルの方がかなり忙しく、一章ほどの投稿頻度は保てないと思います。とりあえず次回は明日か明後日に投稿する予定です。