よって、20日と書いたところを5日に修正し、それに伴い台詞を一部変更しました。以下に修正後の簡単な時系列を記すので脳内補完してもらえると嬉しいです。
チェルノボーグ陥落→3日後、ハイネ目覚める→さらに4日後、龍門到着→今話
以上です。長々とすみませんでした。それでは本編をどうぞ!
5/31 ハイネの体に原石が生えた時期に誤りがあったので訂正しました。
結局あの後龍女たちは追って来ず、アタシは先ほどショッキングな出会い方をしたミーシャと共に彼女の拠点に向かっていた。最初は警戒していたミーシャだったが、アタシも感染者であること、居場所がなくて困っていることを話すと快く自分の拠点に案内してくれた。
「へぇ、ミーシャも龍門に来たのは最近なのか。」
「うん、というか3日前のことなんだけどね。街が怖い人たちに襲われて…他の人と一緒に必死で逃げて龍門まで来たんだ。でもあの検疫所でみんな捕まってしまって…。私はそこから何とか逃げ出して、ここまでたどり着いたの。」
「それは…。大変だったな。」
ミーシャの言葉を聞いて、アタシは複雑な気持ちになった。ミーシャの話に出てきた街とは、間違いなくチェルノボーグのことだろう。いくら裏切ったとはいえ、アタシが襲撃に加担した事実は変わらない。もしミーシャがそのことを知ったらどんな反応をするのだろうか。
問題の先延ばしであることはわかっているが、アタシはその事実をミーシャに告げることは出来なかった。そして、目的地にたどり着いた。ミーシャが大きめの薄汚れたバラックに声をかけると、中から数人の子供たちが姿を現した。
「ただいま。みんな。」
「おかえり!ミーシャお姉ちゃん!」
余程懐かれているのか、隣に立っていたアタシが追い出されてしまう程の勢いで子供たちはミーシャを取り囲んだ。しかしひとしきり騒いだ後、子供たちは今度はアタシの方を興味深々な様子で見つめ始めた。
「ミーシャお姉ちゃん、あの子は?」
「あ、えーとね。さっき出会ったハイネって言う子だよ。あの子も感染者で住む場所が見つからないって言ってたから連れてきたんだけど…大丈夫かな?」
「もちろん!わーい!ハイネお姉ちゃんだ!よろしくね!」
「わっ、ちょっ、引っ付くなよ!くそっ、逃げたりしないから離れろって、もう!」
ミーシャにくっついていた子供たちが今度はアタシの方へ飛びかかってきた。村が無くなって以来子供の相手なんてしていないアタシがうまく子供をあしらえる筈もなく、全身もみくちゃにされてしまう。その様子を見たミーシャが笑った。笑ってないで助けてくれよ!
「ごめんごめん、実は私もこの子たちの家に受け入れてもらったばっかりなんだ。ちょっと元気すぎる気もするけど、みんな良い子ばっかりだから…ふふっ、頑張って。」
「くそっ!後で絶対泣かすから覚えてろよミーシャ!」
その後10分ほどおもちゃにされ続けたところでミーシャが止めに入り、アタシはようやく家に入ることができた。
この家のルールは毎日の水汲み、食事は皆で摂ること、各自が食料を探してくること以外は特にないらしい。一通り説明が終わると子供たちは食料調達へ出かけていった。なんでもアタシの歓迎パーティーをしてくれるらしい。気にしなくてもいいと断ったが、子供たちはこの機会にご馳走を食べたいと言って聞く耳を持たなかった。
取り残されたアタシとミーシャは特にやる事もなかったので、この家に住むせめてものお礼として掃除をすることにした。まあ碌な道具もないので焼け石に水程度だが。
そんな時、木箱を運んでいたミーシャが突然頭を押さえて蹲った。
「!?おい、ミーシャ!大丈夫か!」
「う…だい、じょうぶ。ちょっと頭痛がしただけ…。すぐ収まるから…。」
その言葉は事実で、10秒ほどで痛みは収まったようだった。落ち着いたミーシャから話を聞いたところ、彼女は元々頭痛持ちではなかったらしい。しかしあの天災から逃げた後、体から鉱石が生え始めてから頻繁に痛みを感じるようになったそうだ。
「…ハイネ。私、死んじゃうのかな。あとどれくらい生きられるのかな。」
「そんな悲しい事言うなよ。アタシはこれでも鉱石病になって少なくとも10年は経ったけどピンピンしてるし、ミーシャだってきっとまだまだ生きていられる。…でも、少し症状が進むのが速いかもしれない。」
もしミーシャが鉱石病に元々かかっていなかったのならば、ミーシャは1週間ほどで鉱石が生え始めた事になる。アタシがその症状が出たのは4歳のころで少なくとも感染から2年以上経ってからだったから、相当速い筈だ。
「もし心配だったら、アタシと一緒に医者に診てもらうか?今龍門にはロドスっていう鉱石病のプロが来てるんだ。そこで診てもらえれば何か分かるかもしれない。」
「鉱石病のプロ…?でも、わたしお金が…。」
「それくらいはアタシに任せてくれって。そいつらにはちょっと貸しがあるし、きっと大丈夫だ。」
「そう…なんだ。じゃあ、お願いしようかな。ありがとう、ハイネ。」
その後はミーシャの負担にならないよう座って他愛もない話をしていた。今までの生活のこと。好きな食べ物。得意なこと。アタシの話はそんなに面白い内容がなかったと思ったが、ミーシャは楽しそうに聴いてくれた。
子供たちが帰ってきた後はさらに楽しい時間になった。魚、肉、パン、野菜。どれも質の良い食材と言うわけではなかったが、なけなしの貯金を切り崩して用意してくれたらしい。アタシが携帯していた調味料を使って作った簡単な鍋を皆で囲みワイワイと騒ぎ合う。アタシにとってはそれはとても暖かくて幸せな時間だった。
そんな風に過ごして早2日。ようやくここでの生活に慣れてきた所だったが、その平穏は突然崩れ去った。
それが起こったのはアタシとミーシャが水汲みから帰ってきた時だった。いつものバラックの前に見慣れない人影が見えたのだ。不審に思い歩みを速めると、当然そいつがバラックの扉を蹴り破った。
「なっ!?ミーシャ、アタシが先に行く!ミーシャも急いで来てくれ!」
全速力で走り中へ入ると、そこには子供の襟首を掴み乱暴に持ち上げる男がいた。
「おい!死にたくなかったらさっさと吐け!あのウルサスの女はどこに行った!」
子供を怒鳴りつけて脅すその姿を見て、プチッ、と頭の中で何かが切れる音がした。
「てぇんめぇぇ!!!誰の許可取ってそいつに触ってんだぁぁ!」
怒りのままにそいつを殴り飛ばす。壁に叩きつけられた男を放置して、子供の体を調べる。…良かった、怪我はしていないらしい。
「なあ、何があったんだ?わかる範囲で教えてくれ。」
「わからないよ…。今日は早めに食べ物が見つかったからここでみんなを待ってたら急にあの人がきて、ミーシャお姉ちゃんを出せって言ったんだ。それで怖くてドアを開けなかったら無理やり入ってきて…。」
「そうか、わかった。ありがとな。よく頑張ったな。」
乱暴に頭を撫でながら状況を整理する。敵の狙いはミーシャなのか?でも一体なぜ…。というかミーシャ、ミーシャがまだ外に!
「居たぞ!あいつだ!あいつを捕まえろ!」
外から野太い声がして、複数人の走る足音が聞こえてきた。チクショウ、間に合え!
子供を背負い、ドアがふっとんだ入り口から外へ出る。そこで目にしたのは、逃げるミーシャと、それを追う大量の暴徒の姿だった。
次回更新は月曜か火曜の予定です。