テラをかける少女   作:NBRK

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何とか間に合いました。
今回、アーミヤ視点から始まります。


第五話 邂逅

「エクシアさんの情報によると、今回の調査目標はこの辺りのはずですね。」

 

 ウェイ長官との交渉から2日、私達は近衛局からの要請でこのスラム街に潜むレユニオンの調査にあたっています。

 

 残念ながら龍門とロドスはまだ信頼関係を築けていないのが現実です。こう言った小さな任務から信頼を勝ち取っていくしかありません。

 

「もう!またこんな使いっ走りみたいな任務?やる気出ないわねー。」

 

「フランカ、気持ちはわかるけどそんなこと言っちゃダメだよ。チェルノボーグ襲撃で龍門も警戒を強めてる。すぐには信頼されないのは当然だよ。だから、こういう任務をしっかりやらないと。」

 

「はいはい、わかってるわよー。これだから真面目ちゃんは。もうちょっと肩の力抜いた方がいいんじゃない?それっ!」

 

「ひゃっ!?もう、フランカ!!」

 

 今回の任務にはペンギン急便からテキサスさんとエクシアさん、BSWからはフランカさんとリスカムさんに来てもらっています。フランカさんとリスカムさんは先ほどから後ろでじゃれあっているようですが、いざという時にはとても頼りになる人達です。

 

 そんな風にしてスラムを探索すると、そこでは何やら異様な雰囲気が漂っていました。いつの間にかBSWのお二人も真剣な表情に変わって周囲を観察しています。一体何が起きているのでしょうか。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そんな風に思っていると、近くから叫び声がしました。声のした方向へ向かうと、そこには必死にもがく男の子と、それを押さえつける男性の姿がありました。

 

「おいテメェ、さっきのあいつはどこに行った!言え!今度こそぶっ殺すぞ!」

 

「い…やだ。絶対に…言うもんか!」

 

「チッ、強情なガキだな。そんなに痛いのが好きならたっぷり味あわせてやるよ!」

 

 そう言って男性は拳を振り上げました。いけない、止めないと。ドクターに目配せすると、ドクターは小さく頷いてくれました。

 

 片手を男性の近くの地面に向け、アーツの弾を飛ばします。突然の出来事に戸惑う男性は、地面に空いた穴を見てぎょっとした顔をしました。

 

「警告します、今すぐその子から離れてください。さもなければ…。」

 

「ヒッ!じゅ、術師かよ!なんでこんなところに…畜生!」

 

 脅しが効いたのか、すぐに男性は走り去って行きました。残された男の子の方を向くと、彼は何かを探してキョロキョロと辺りを見回しています。

 

「大丈夫だった?何か探してるの?」

 

「う、うん。ナイフが…大事なナイフが何処かに行っちゃったんだ。さっきの奴に捕まったときに何処かに放り投げられちゃって…。」

 

「ナイフ?もしかしてこれかしら。」

 

 フランカさんの手には、刃渡り20センチ程の小ぶりのナイフが握られていました。それを見た男の子は目をぱあっ、と輝かせて私達にお礼を言ってきました。

 

「お姉ちゃん達ありがとう!」

 

「ふふ、どうもいたしまして。そのナイフ、大事なものなの?」

 

「うん…。悪い人に見つかったらこれを向けて突進しろって渡されたの。さっきは上手く行かなかったけど…。」

 

 そう言って、男の子はナイフをぎゅっと握りしめました。その様子を見て、少し悲しい気持ちになりました。この子が感染者なのかはわかりませんが、この場所で生き抜くには幼いうちから自分の身を守る術を身につける必要があったのでしょう。しかしここで、意外な情報がもたらされました。

 

「あれ…?そのナイフ、ハイネのやつと同じじゃない?」

 

 そう言ったのは、先鋒オペレーターのヴィグナさんでした。そう言えばヴィグナさんはロドスでハイネさんと戦闘訓練をしていました。その時見た彼女の装備の中に、このナイフがあったということでしょうか…。男の子はそれを聞いて、驚いた様子で私達に詰め寄ってきました。

 

「えっ、お姉ちゃん達、ハイネ姉ちゃんの仲間なのか!?」

 

「え、は、はい。確かにハイネさんとは協力関係になっていますが…。」

 

「そ、それなら、ハイネ姉ちゃん達を助けて!今ハイネ姉ちゃんとミーシャ姉ちゃんがあいつらに追われてるんだ!このナイフもおれを逃がす時にハイネ姉ちゃんが渡してくれたんだ…。」

 

 思いもよらぬ状況にオペレーター達からざわめきが生まれます。まさかハイネさんが騒動を起こすとは…。彼女の実力ならばそうそう遅れを取ることはないと思いますが、一体何が…。まさか、レユニオンが彼女を追ってきたのでしょうか?

 

 先を急ぐという男の子に別れを告げ、私達はとりあえずハイネさんを探してみることにしました。そして行動を開始しようとしたその時、今度は近衛局から通信が入りました。どうやら人探しの依頼のようです。白髪のウルサス人の少女で、名前は…ミーシャ?

 

「リスカムさん、代わってください。…もしもしチェンさん、聞こえますか、アーミヤです。なぜこの少女を探すのか、理由を教えてください。」

 

「それを説明する必要はない。ただ、この少女を急いで保護する必要がある。すぐに取り掛かってくれ。」

 

「わかりました…。」

 

 結局詳しいことは何も聞けず、通信を切られてしまいました。ミーシャという名前は先ほどの男の子の話に出てきましたが、どうやらハイネさんと行動を共にしているようです。

 

 一体このスラム街で何が起こっているのでしょうか。そんな不安を抱えつつも、私達は行動を開始しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、くそっ、聞いてないぞこんなの…!うわぁぁぁ!」

 

「邪魔だ、ぶっ飛べ!」

 

 立ちはだかった集団の最後の一人を殴り飛ばす。周囲には夥しい数の暴徒が痛みにうめき倒れ込んでいる。背後に立つミーシャが驚きの声を上げた。

 

「凄い…。ハイネってこんなに強かったんだ。」

 

「大したことないって。というか、さっきから何回も見てるだろ?」

 

「いや、そうなんだけど…。」

 

「まあいいや。しかしここは本当に走りにくいな。さっきからずっと似たような景色ばっかりだし。」

 

 もうだいぶ走った気がするのだが、視界には所狭しと立ち並ぶ建物ばかりが映し出される。自分がどこへ向かっているのかわからなくなりそうだ。

 

 自分1人なら屋上を走っていくのもアリだが、今はミーシャが居るから狙撃が怖い。仕方ないので今は時折アタシが屋上に乗って方角を確認しながら進んでいる。

 

「ミーシャ、頭痛は大丈夫か?」

 

「うん、今のところは痛みは出てないよ。もっとスピードを上げても大丈夫だよ?」

 

「いや、無理すんなって。敵もこのくらいなら十分対処できるし、むしろ後で倒れられたりした方が困る。」

 

「そっか。ごめん、ありがとう。」

 

「気にすんな。あと半分くらいだから頑張ろう。」

 

 そう言って走ること5分、アタシ達はやや広めの通りに出た。そう言えばアタシがこのスラムに入った時もこのくらいの道を通った気がする。もしかするとここがメインストリートなのか?

 

 もし予想が正しければ、この道を辿っていけば外に出られるはずだ。ミーシャも同意見のようで、アタシに向かって頷いてきた。よし、これなら…。

 

 その時、ぞわりとした感覚が背中を伝った。今、何か発射音がしたような…!!

 

 ミーシャを抱き寄せ、覆い被さるようにして庇う。その直後、アタシのすぐ後ろで大爆発が起きた。とっさにアーツで体を強化したが、その衝撃に思わず歯を食いしばった。

 

「ハイネ!大丈夫!?」

 

「ああ。一体誰が…。」

 

 爆発によって舞い上がった砂煙が晴れると、誰かがこちらに歩み寄ってくるのが見えた。その後ろには数え切れないほどの暴徒…いや、レユニオンの制服を着た者たちが武器を構えて控えている。歩み寄ってくる奴は顔を覆うガスマスクにフードを被っており、その細い両腕には二丁のグレネードランチャーが握られている。じりじりと後退しながら睨み合っていると、相手が先に沈黙を破った。

 

「やっと…見つけた。ミーシャ。」

 

「え…?何で私の名前を…?」

 

「俺は…ずっと…お前を探して…。」

 

 そう言って奴はミーシャに近づいてくる。アタシはミーシャを庇うようにその間に体を割り込ませた。

 

「おい、それ以上近づくな。テメェは何者だ、どうしてミーシャを狙う!」

 

「お前は…Wが言っていた奴か。聞いたぞ…ウルサス人やロドスを助けたそうだな…。この、裏切り者が!」

 

 W、その名前が出てきて心臓がドクンと鳴った。まさかまたあの人がここに来てるってのか?

 

 奴は手に持ったグレネードランチャーをアタシに向け、怒りの篭った声で名乗りを上げた。

 

「俺の名は…スカルシュレッダー。裏切り者め…ミーシャは返してもらうぞ…!」




次回は土曜日か日曜日の予定です。
それから、一話あたりの長さについてのアンケートを設置しました。今後の執筆の参考にしたいのでお答え頂けると嬉しいです。
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