そう言えば今更なのですが、2章からはヴィグナのように弊ロドスの攻略メンバーの一部が出てくる場合があります。まあそんなに重要な事では無いので、ストーリーに居ないキャラが出てきたらそういう事か、と思ってください。
「あれー、もう終わり?なんか呆気ないなぁ。どうする?追っちゃう?」
「やめておけエクシア。作戦目標は確保したんだ。余計なリスクを負う必要はない。」
「ちぇーっ。で、なになに?その子が例のミーシャって子なの?」
戦闘が終わり、場にはやや緩んだ空気が流れていた。短髪のラテラーノ人が興味津々といった様子でミーシャに詰め寄ろうとするのを、隣のループスがやれやれと言った顔で止めている。一方で詰め寄られる側のミーシャは表情も変えず、どこかぼうっとした様子で遠くを見つめていた。
…あの冷たい声は何だったのだろうか。真相を問いたい所だったが、アタシはそれを聞くことは出来なかった。アタシとミーシャの間に、何か見えない壁の様なものができた気がした。
ミーシャに何も言えず気まずい思いをしていると、アタシを追っていた奴ら…近衛局とかいうのと話をしていたアーミヤがこちらにやってきた。
「お二人とも、怪我はありませんか?」
「ああ、何とかな。それでどうしてロドスがここに?しかも…。」
ちらりと近衛局の奴らの方に視線を送る。それだけでアーミヤはアタシの懸念を察したらしい。落ち着いた様子で説明を始めた。
「大丈夫です。ハイネさんがロドスの協力員であることを近衛局の皆さんに説明したので、取り敢えずは安心していいと思います。私達は龍門からの要請でこのスラムに隠れたレユニオンの捜索にあたっていたのですが、そこで偶然ハイネさんのナイフを持った子供と出会いました。その子からハイネさん達が追われていると聞いて駆けつけた次第です。」
「そうか…助かった。」
「いえ、当然のことですから。ところで、そちらの方がミーシャさんで間違い無いですか?」
「!、そうだ!ロドスに頼みたいことがあるんだ!」
それからアタシはアーミヤにミーシャの病状と、ロドスでミーシャを診てほしい旨を伝えた。この3日間で気付いたことなどを余さず伝えると、アーミヤの表情が真剣なものになった。やはりあまり病状が良いとは言えないらしい。
「ミーシャさん。貴女の容態についてですが…。どうやらミーシャさんの鉱石病は急性のもののようです。詳しく話すと長くなってしまうのですが、早急に適切な処置を行わなければ命が危ないです。」
「そ、そんな…。」
「アーミヤ、ロドスで処置をすればミーシャは助かるのか?」
「…私達もまだ鉱石病の完全な治療法は開発できていません。でも、今きちんと治療すればそれなりに長い期間普通に過ごすことが出来るはずです。」
「そうか…!な?ミーシャ、言ったろ?ロドスに行けば何とかなるかも知れないって。」
「そうだね…。私、普通に生きられるんだ…。」
先ほどまで冷え切っていたミーシャの声に暖かみが差し込んだ。硬かった表情も少し緩み、ほっとした様子を見せている。
しかし、その表情は続く言葉によってすぐに一変した。
「ただ一つ問題が…。私達のもう一つの任務は、ミーシャさんを保護することだったんです。それで今、近衛局からミーシャさんを引き渡すように指示があって…。」
「えっ?…近衛局が…どうして?」
「すみません、実は私達にもそれが分からなくて…。」
「…龍門の感染者への対応の話は聞いたことがあるし、この目で見たこともある…。あんなのウルサスと大差ない。…少しだけ信用したのが馬鹿みたい。どうして感染者の貴女達が龍門に協力するの?」
そこまで一息で言った後、今度はミーシャはアタシに目を向けてきた。今までにない、鋭く冷やかな瞳だった。
「…ハイネはこれを知っていたの?知っていて私をロドスに連れて行こうとしたの?それなら…初めからそう言えばいいのに。こんな回りくどい真似をしないで。」
「違う…。違うんだよ、ミーシャ…!」
「…知ってる。ごめん、今の私、凄く嫌な女になってると思う。それでもやっぱり私は…貴女を信じられない。」
そう言って、ミーシャはアタシに背を向けた。何か言おう、と思って口を開くも、アタシの喉からは「あ…」だの「うぅ…」だのと言った意味のない音が漏れたのみだった。ミーシャから発せられた「貴女」という言葉が、アタシとミーシャの関係の決裂を決定的なものとしていた。
「ミーシャさん…。確かに、今の話だけを聞くと私たちが悪者に見えるのは仕方ないと思います。けれど、私達はミーシャさんの味方です。そこだけは絶対に本当なんです。とにかく、今は安全なところに行くことが第一です。そこへ着いたらきちんと話し合いましょう。きちんと話し合えば、分かり合えるはずなんです。近衛局の皆さんも…きっと。」
「……どの道選択権は無いんでしょ。近衛局でもどこでも、好きに連れて行けばいいよ。」
「……ありがとうございます。」
アーミヤの必死の言葉も、今のミーシャには響かなかった。結局その後移動を開始するまで、ミーシャが口を開くことは一度もなかった。
よろよろと壁に持たれかかる。分からない、どうしてこんなにも上手くいかないのか。行き場のない憤りを感じて拳を壁に打ち付けると、あっさりと壁にヒビが入った。力ならある。でも、この力は今のアタシの問題を解決してはくれない。
もしも、ズィマーがここに居たらどうするのだろうか。ズィマーじゃない他の誰かでもいい、この場における正解を誰かに教えて欲しかった。だって、アタシには家族もいなければ友達もいなかった。ましてや、仲直りの方法なんて知っている訳がないのだから。
そうして俯いていると、浮かない顔をしたアーミヤが遠慮がちに話し掛けてきた。
「あの、ハイネさん…。ごめんなさい、こんなつもりじゃなかったんです…。」
「わかってるよ。アーミヤが悪いわけじゃない。ミーシャも悪くない。誰も悪くないはずなんだ…。」
「…そろそろ出発します。ハイネさんも一緒に来てもらえますか?」
「…ああ。」
その後の動きは非常にスムーズに行われた。特に大きな戦闘も起きることなく、アタシ達は合流地点へと到着した。そこには、龍門に来た日、アタシを追いかけて来た龍女が険しい表情で待っていた。
「君がミーシャか。では今から近衛局が君を保護する。こちらの指示には従ってもらう。」
「…はい。」
「チェンさん。龍門がこの方に何をする気かはわかりませんが…。この方の安全と適切な治療を約束してください。彼女の病状は芳しくありません。この件が終わったら、私はミーシャさんにはロドスで治療を受けてもらいたいと思っています。」
「…わかった。ウェイ長官に申請しておく。検査で何も問題がなければ、我々はすぐに彼女の身柄をロドスへ引き渡すつもりだ。」
「わかりました…信用します。」
アーミヤと龍女の話が終わると、ミーシャはすぐに近衛局に連れて行かれることとなった。そこで、ずっと目を合わせなかったミーシャがアタシの方を見て言った。
「…私が居ない間、子供たちのことをお願い。…それだけ。」
「っ!ミーシャ、アタシは…!」
ミーシャはそれだけ言い残すと、アタシの返事を聞くことなく背を向けてしまった。そして一度も振り返ることなく、近衛局と共にミーシャは出発してしまった。アタシは酷い無力感に襲われて、思わず天を見上げた。
西の空を、巨大な黒い雲が覆っていた。
次回、2章最終話。土曜日に更新…出来たらいいなぁと思います。