テラをかける少女   作:NBRK

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今回、アーミヤ視点がメインです。


第三話 強制退場

 くっ、早くチェルノボーグから脱出しなければならないのに!

 

 メフィストを二アールさんが連れてきてくれた行動隊の方々が引き付けている間に突破しようとする私達の前に立ち塞がった1人の女の子。彼女を前にして、私達は歩みを進められずにいます。

 

 ドクターの指揮により有効打を与えたと思った直後、彼女の様子が変わってから、私達は防戦一方です。

 

 ドーベルマン教官でさえ反撃すらできないほどのスピード、二アールさんが歯が立たないほどのパワー。何より痛みを全く感じていないかのような強引な攻めに、術師や狙撃手でも手に負えません。

 

 さらには断続的に襲いかかるレユニオンの兵士たちも居ます。このままでは…。

 

「あっ…嫌ッ!」

 

 !不味いです、ついに医療オペレーター達にまで敵の攻撃が及び始めました!

 

「クソッ!どうするっ!グズグズしているとメフィストを抑えているE3小隊が壊滅するぞ!そうなれば全滅だ!」

 

「しかしあの少女の攻撃…あれは私の盾でも1発防げるかどうか…。」

 

 いつも頼りになるドーベルマン教官と二アールさんの声にも焦りが見えます、いや、2人だけではありません。この戦場に立つオペレーター全員が焦燥を覚えています。

 

 その時、援護射撃をしているAceさんから通信が入りました。

 

「仕方ない、このままでは埒が明かない。ドクター、アーミヤ、ここは私のチームが引き受けよう。」

 

「だ、駄目ですAceさん!誰かを置いていくなんて…全員で行くんです…誰かを見捨てるなんてできません!」

 

「落ち着くんだアーミヤ、死ぬつもりなど無いさ。後から絶対に追いつく。」

 

 そんな…私は、私が皆さんを守らないといけないのに。

 

 ドーベルマン教官も二アールさんも、覚悟を決めた声でAceさんに賛同します。わかっています。これが誰のための決断なのか。それでも…!

 

 無意識に私は隣に居るドクターを見上げてしまいます。私が誰よりも信頼している人。記憶を失くしていながらもその指揮は神がかり的な冴えを見せています。ドクターなら…!

 

 黙って通信を聞いていたドクターでしたが、私のすがる様な目を見て、なにかを決心した様子で深呼吸します。

 

「あー…聞いてくれ。策はある。成功すれば全員でここを突破できる。」

 

 通信機を通して告げられた言葉は、今の私の1番欲しい言葉でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 動きが変わった?

 

 アーツを全開にしたアタシに一方的に攻撃されてヘロヘロになっていたはずだったが、さっきから急に士気が上がった様に見える。だんだんと目が慣れてきたのかアタシの動きに反応する奴も増えてきた。

 

 消耗の激しいこの状態はあまり長くは続けたくないし、そろそろ方をつけたい所だ。

 

 すると何を思ったのか、あの騎士が意志の籠もった目をして盾を構えて叫んだ。

 

「来い!レユニオンの戦士よ!私が決着をつけてやる!」

 

「上等!」

 

 迷わずにそこへ三たび突撃する。最初の激突の焼き直しの様に拳と盾がぶつかり合う。

 

「ぐっ!うおおおおおおお!!!」

 

 だが、騎士は僅かに盾の角度を変え、アタシの突進を受け流した。勢いを殺しきれないまま進むアタシの目の前に現れたのは、メフィストが操るレユニオン兵だった。

 

 まずいっ、止まれないっ!

 

 激突。きりきり舞いして吹っ飛ぶレユニオン兵。突然目の前で起きた仲間割れに、レユニオンメンバー達の動きに動揺が生じる。

 

「(舐めやがって!)」

 

 振り返り反撃しようとしたところに、アタシを囲う様に怒涛のアーツと爆撃が振りかかる。直撃弾は無いものの、煙や粉塵で視界が悪くなる。そこに、あの犬耳女の声が響いた。

 

「引き裂け!」

 

 馬鹿め!今のアタシの感覚は音だけでも大体の位置を把握できる!

 

 ここで獲る!足にアーツを集中させ、今出せる最速で犬耳女の場所へ走り、ブッ飛ばす、はずだったのだが。

 

「へ?」

 

何かに足を取られ、超スピードのままアタシは真っ直ぐに転がっていく。煙から脱出したアタシの目の前には犬耳女…の前にピンと張られた4本の鞭が現れた。

 

「まさか!?」

 

しかし完全に体勢を崩したアタシはどうすることもできない。アタシの突進を受け止めた戦闘用の強靭な鞭はゴムのように伸び…そしてそのままアタシの体を空高く打ち上げた!

 

「うっそだろぉぉぉぉオイ!?」

 

 精一杯の叫びも虚しく、戦場は遥かに遠ざかっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、よく聞いてくれ。まずここまでの戦闘であの少女は爆発力はあるがその力を持て余し気味だと感じたが、間違いないな?」

 

「ああ、確かにパワーもスピードも桁違いだが、動きは直線的でバリエーションも少ない。力でごまかしているが、感覚に頼り過ぎてこちらのフェイントなどには対応できていない。」

 

「OK。次にあれはメフィストの指揮に恐らく入っていない。先ほどメフィストと戦った時、奴はまるでチェスの駒のように兵を操っていた。しかしあの少女は完全に独立して動いているように見える。つまり、メフィスト戦のような連携を相手は取れない。」

 

「あ、なるほど!つまり相手の行動を誘導して同士討ちを狙うということですね!」

 

「確かにそれは有効そうだ…だが、我々の攻撃でも全く効果のない様子だぞ?レユニオンの攻撃などそれこそ意味がないに等しいだろう?」

 

 名案に思えたドクターの言葉でしたが、ドーベルマン教官の冷静な一言がバッサリと可能性を断ち切ってしまいました。

 

 でも、ドクターにはまだ考えがあるようです。

 

「そうだ、だからそれは相手の動揺を誘うために使う。よく考えてみろ。私達はここを突破出来さえすればいい。倒す必要はない。そこで、だ。彼女にはこの戦場からご退場願おう。ドーベルマン、君のその鞭、予備はあるか?」

 

「?、いつも2本持ち歩いているが、それがどうした?」

 

「2本か…もう1本、いや欲を言えばもう2本欲しいのだが…。」

 

「それなら問題ない。私の他にも鞭を使うオペレーターは数人いる。」

 

「材質は同じか?」

 

「ロドス製の量産品だ。個人用にマイナーチェンジはしてあるが概ね同じ品質だ。」

 

「よし、それなら問題ない。作戦を伝える!チャンスは一回だ!必ず成功させるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドクターの作戦は大成功でした。ドクターの指揮の下、敵味方の配置を調整し、同士討ちを誘発。動揺が収まらないうちに視界を潰し、感覚に頼る相手の特徴を逆手に取りわざと音を出すことで相手を誘い出し、初めのかかと落としでめくれ上がったアスファルトまで利用しました。

 

 最後は突っ込んできた2人をAceさんともう1人力自慢のオペレーターが張った鞭の即席トランポリンで、遠くへ相手を吹き飛ばしてしまいました!

 

 そして作戦の成功で士気の上がった私達は、勢いのままに突破に成功しました!

 

 しかし、その肝心のドクターは何処か影のある表情をしています。

 

「ドクター?どうしましたか?もしや…何処か痛みますか?」

 

「いや…、軽かったな、と思ってな。」

 

 軽かった…?何のことか検討のつかない私にドクターは言葉を続けます。

 

「いや、さっきの作戦だが、正直大分ムチャな話だった。成功したのは運が良かったのと、後、あの少女の体重がとても軽かったからだろう。…この世界は、あんな歳の少女が戦うのが普通の世界なのか。」

 

 その言葉はまさにこの世界の真実を突いていました。

 

 感染者は1度そうなってしまえば最後、老若男女問わず元の生活には戻れません。

 

 彼女のように、いえ、それこそ年齢が一桁のうちから少年兵として戦うしかない子供も沢山います。

 

 ですが…それでも。

 

 私はドクターの手を握り、バイザーの奥の目を見つめてはっきりと言います。

 

「それを無くすために、私達は今動いているんです。感染者の未来を作るために、ロドスは絶対に諦めずに戦い続けます。そのためにはドクターの力が絶対に必要なんです。だから、私を信じてください。」

 

 そうです。私達はここで立ち止まるわけにはいきません。

 

 絶対に、ロドスにドクターを連れ帰って見せます!

 




ガバガバ物理…。一応イメージとしては上方向と言うより30度くらいの角度で吹っ飛ばしてます。
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