テラをかける少女   作:NBRK

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先に言っておきます。私はズィマー大好きです。


第四話 ウルサス学生自治団

「(あーもー何であんな馬鹿みたいな罠に引っかかってんだアタシは!クソッ、今から戻るのは無理か。てか着地どーするよ…。)」

 

 自分の不甲斐なさに腹が立つ。折角久々に面白いと思える戦いだったのが、まさかこんな形で終わってしまうとは。

 

 それはともかくとして、現在絶賛飛翔中である。既に落下が始まっているが、当然のことながら空中での姿勢制御の練習などしたことはない。

 

「(ええい。ままよ!)」

 

 綺麗な着地を諦め、目を閉じて全身を硬質化させる。これなら運が悪くなければ死にはしないはずだ。

 

 そして数秒後、アタシは轟音を伴って建物の天井を突き破り、地面に頭から突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 真っ暗だ。息ができない。

 

 どうやら上半身が完全に埋まってしまったらしい。生命の危機を感じ体に力を込めると、周囲の地面が砕けて体を引き抜くことに成功する。

 

 衝撃で朦朧とする頭を押さえながら辺りを見渡すと、そこそこに広い空間が広がっていて、10数人ほどの若いウルサスが何か恐ろしいものを見る目でこちらを見ている。

 

「て、敵襲ー!」

 

 1人の男が声を上げるとそれを皮切りにウルサスたちが悲鳴を上げ逃走を図る。しかし運の悪いことにアタシが着地したのが出入り口側だったらしく、壁際に追い詰められてしまう。

 

「お、おい落ち着けよ。アタシは偶然ここに落ちただけで…」

 

「何言ってんだ!俺はお前らが俺達を殺して回ってるのを何回も見てるんだ!」「嫌…殺さないで…!死にたくないよぉ!」「お母さん…お父さん…」

 

 そこでようやく自分の格好を思い出す。こいつらからすればアタシは自分の友達や親兄弟をぶっ殺した相手の仲間だ。…元はといえば、こいつらがアタシ達に同じことをしてきたから今の状況があるのだが。

 

「はぁ…。流石に部屋の隅でビビってる奴らをいきなり攻撃したりはしねぇよ。そっちから手を出してこない限りはな。」

 

「ほ、本当か…?」

 

「ああ。まあ勝手にしてろ。アタシは行くから。」

 

 それだけ言って振り返り、外へ出ようとすると、勝手にドアが開いた。そして数人の男女が入ってきて扉の前に立っていたアタシと目が合う。

 

 一瞬の硬直の後、先に動いたのは先頭にいた女だった。

 

 一瞬の躊躇もなく、手に持った手斧を叩きつけてくる。しかし大振りで隙だらけだ。手斧が体に届く前にガラ空きの胴に1発。腹にめり込んだ拳をそのまま振り切り壁に叩きつける。

 

「団長!?チクショウ!かかれぇ!」

 

 ここでようやく硬直が溶けた他の奴らが思い思いの武器を振り上げ襲いかかってくる。が、狭い室内でそれは自殺行為だ。先頭の男の攻撃を身を引いて躱し、後ろ蹴りを叩き込むと、他の奴らも巻き込まれてあっという間に決着がついた。

 

「は、話が違う!手は出さないって言ったじゃないか!」

 

「あ?それはそっちから攻撃しなけりゃの話だろ?今のはどう見てもアタシより先に手を出したのはそっちだろーが。」

 

 情けないことを喚く男を睨みつけて黙らせて、団長、と呼ばれた女の前へと歩く。相手も腹を抑えて咳き込みながらもこちらから目を逸らさない。

 

「あいつが言ってた通り、そっちから手を出さないならアタシは別にあんたらに攻撃する気はない。今ので分かったと思うけど、その気になればいつでもアタシはあんたらを殺せるしな。」

 

「っ!どのクチが言いやがる!」

 

「よせ!団長!ムチャだ!」

 

 なおもアタシに向かってこようとする女を、初めからいた奴らが数人がかりで押さえ込む。

 

 

 そうして暴れること数分。ようやく落ち着きを取り戻したらしい女はやはり不信感に溢れる瞳でこちらを見つめてきた。

 

「何が目的だ。」

 

「いや、別に目的なんてないけど。」

 

「はぁ!?じゃあ何でアタシ達を殺さない?どう考えても裏があるに決まってんだろうが!」

 

「アタシは傭兵だ。命令には従うけど、命令にないことをわざわざする気はねーよ。」

 

「んな話を信じられるか!」

 

「あーあーわかったわかった。なら別にそれでいいから、アタシは行くぞ。まあ精々頑張って逃げな。」

 

 そう言って今度こそこの建物から出ようとする。しかし今度は青みがかった髪を持つ眼鏡をかけたウルサスの女が立ち塞がる。

 

「…何だよ?まだなんかあんのか?」

 

「すみません。一つ確認させてください。貴女は傭兵をしていると言いましたね?」

 

「?、まあ言ったが…それがどうした?」

 

「…単刀直入に言います。貴女をここで、傭兵として雇うことは可能ですか?」

 

「「「はぁ!?」」」

 

 唐突の宣言に、アタシはもちろん、この部屋の誰しもが驚きの声を上げる。特に団長の女は激しくその言葉に反応した。

 

「おいイースチナ!何を勝手なことを言ってやがる!しかもよりによってこんな奴に!」

 

「ズィマー、気持ちはわかります。しかし、先ほどの偵察でまた戦闘員が減り、今は貴女まで負傷してしまっています。今のまま進んでも…全滅する可能性が高いです。」

 

「だからって……クソッ。」

 

 正論だと感じたのか、ズィマーと呼ばれた団長の女は悪態をついて目を伏せた。それを許可と判断したのか、イースチナとやらが話を続ける。

 

「貴女はレユニオンの制服を着ていますが、正式な所属ではなく外部からの契約となっている。しかも、他のレユニオンとは違い貴女は無意味に私達を攻撃しなかった。つまり民衆を攻撃する命令を受けておらず、さらにその行為に対しても良い感情を持っていない。よって、私達からの依頼を受けることも可能であると判断しました。どうか、引き受けては貰えませんか?」

 

 そこまで言い終えて、イースチナはお願いします。と頭を下げた。確かにその予想は当たっているが…

 

「…確かにちゃんとした報酬が貰えるなら引き受けてやってもいい。でも、その報酬にあんたらは何を出せる?一応言っておくが、もしも裏切りがバレたとすれば、アタシの命が危なくなる。アタシが命を賭けるだけの何かをあんたらは出せるのか?」

 

「それは…少し待ってください。」

 

 そういうと、ズィマーを除く人員が集まり、各々の今持っているものを確認し始める。最も、あの様子では大したものは期待できなさそうだが。

 

「あんたは行かなくていいのか?団長サンよ。」

 

「うるせぇな。」

 

 肝心のズィマーは、離れた場所で何か考え込んでいる様子だ。

 

 

 そして待つこと数分、イースチナから、それぞれが持っていた分をかき集めた紙幣や硬貨が詰まった袋を差し出された。中を確認すると、そこそこの金額が詰まっている。緊張した面持ちのイースチナに袋を投げ返して言う。

 

「足りねぇな。流石に真っ当な生まれなだけあってそこそこはあったが。これならレユニオンから受け取った金の方が多い。」

 

「そんなぁ!じゃ、じゃあグムのこの大事なフライパンもあげるから!ほ、他にも…」

 

「無理だ。アタシが命をかけられるだけのモノじゃない。」

 

 沈鬱な空気が流れる。それでも、イースチナはアタシに頭を下げ続ける。

 

 居心地が悪い。胸糞悪さを感じながらも、アタシは背を向け歩き出そうとする。

 

 

 

 

 

 

 

「オイ待て!イースチナ、顔を上げろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 そこへ、静観を決め込んでいたズィマーの声がかかり、足を止める。ズィマーはイースチナに顔を上げさせ、その前に立つ。

 

「で、団長サンは何を差し出すってんだ?」

 

「お前を雇うためにアタシの差し出すものは……アタシの命だ!」

 

 なっ!?と声を上げるイースチナ達一同。それを手で制し、ズィマーは覚悟のこもった目でアタシを見つめる。

 

「…あんたの命なんて欲しくない。」

 

「あぁ…分かってるそんなことは。だが、今のアタシに差し出せるのはこれしかねえ!」

 

 そう言ってズィマーは膝を突き、額を地面に着けた。

 

「頼む…アタシはここで死んでもいい!だが、こいつらだけでも助けてやってくれ!贅沢は言わない、チェルノボーグを出るところまででいい!ここから出たら、こいつら…この、ウルサス学生自治団はお前の下に就く!だから…お願い…します…。」

 

「ズィマー、辞めてください!ズィマー!」

 

「頼む…‥…頼む!」

 

 周囲の制止の声も聞かず、ズィマーは額を擦り付けて懇願する。アタシは黙ってそれを聞き、ズィマーの横に置かれた手斧を手に取る。

 

「一応聞くが、本気か?」

 

「もちろんだ…!二言はねぇよ。」

 

 それを聞き、アタシは手斧を振りかざす。それを止めようとする自治団の連中をズィマーが怒鳴りつけて止める。

 

 

 一瞬の静寂が場を支配する。

 

 

そして、アタシは斧をまっすぐにズィマーの頭目掛けて振り下ろした!

 

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