テラをかける少女   作:NBRK

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第七話 仲間

「ズィマー、おい、しっかりしろ!くそっ、全員近くの建物の下に入れ!とにかく生きろ!」

 

 そう言った間にも、次々と隕石が降り注ぐ。すぐ近くに落下した隕石の衝撃で吹き飛ばされたアタシとズィマー。アタシはなんとか着地に成功したが、打ちどころが悪くズィマーは気絶してしまった。更に悪いことに背負っている女まで気絶している。

 

 各々が建物へ駆け込むのを確認して、体に鞭打って2人を持ち上げ近くの建物に入り、なんとか2人を起こそうと揺すってみるが、目を覚ます様子はない。こんな時に…。

 

 天災の勢いはどんどん増していく。周囲からは隕石の落下と建物の崩れる音が絶え間なく聞こえてくる。

 

 祈ることしか出来ないまま、どれくらいの時間が経っただろうか。僅かに天災の勢いが収まりはじめたと思ったその時だった。恐れていた瞬間が来た。

 

 今までとは比べ物にならない轟音が辺りを包む。天災が遂にこの建物を捉えた。

 

 崩れ落ちる天井。反射的に逃げようとして、足元に横たわる2人を思い出す。

 

 それは致命的な迷いで、アタシは完全に逃げる手段を失った。意を決して、身を挺して2人に覆い被さる。

 

 そして一瞬遅れ、大量の瓦礫がアタシ達に降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が朦朧とする。どんだけの時間が経った…?今アタシは息をしているのか?

 

 視界が霞み始めたその時、ズィマーの耳がピクリと動き、その目蓋がゆっくりと開かれた。

 

「うぅ、……ここは?一体何がどうなって…」

 

「やっと…お目覚めかよ…。ズィマー。」

 

 そこでようやく混乱していたズィマーの瞳がアタシを捉えた。

 

「ハイネ!?お前、何やってんだよ!」

 

「でかい声出さないでくれ…頭に響く。起きて早速悪いんだが、そいつ引っ張って脱出してくれ。」

 

「脱出ったってお前、お前はどうすんだよ!?」

 

「2人が居なくなれば後は自力で脱出できる…急いでくれ、流石にしんどい。」

 

 アタシの言葉を聞き、ズィマーは悔しげな顔をしながらも奇跡的に空いていた瓦礫の隙間から脱出する。さて。

 

「ぐ、うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 力を振り絞り、背中に乗った瓦礫を押し返し立ち上がる。辺りを見渡すと、建物は崩れ去り、そこら中で火の手が登っている。ちょっと前まであったチェルノボーグの景色は跡形もなくなっていた。

 

 瓦礫の山から顔を出したアタシを見てズィマーが駆け寄って来ようとする。それを手で制し、自力で瓦礫をかき分けて倒壊した建物から脱出する。

 

「はあ、はあ、ズィマー、無事か?」

 

「アタシは無事だ…けど、ボロボロじゃねえかお前!治療しねえと…。」

 

「見た目ほどダメージはないから気にしなくていい。それより他の奴らは?」

 

「っ!なんでそこまで…」

 

「…依頼だからな。それだけだよ。」

 

 ズィマーと共に、生き残った団員達を探す。幸いなことに、崩壊を免れた建物にいた者が多く、そうでないものも奇跡的に生き延びていた。グムとイースチナはかなり危険だったようだが、グムが手に持った大楯に隠れてなんとかやり過ごしたようだ。

 

「生き延びたんですね…私達は天災を。」

 

「やったあ!これで後は外に出るだけだね!あと少しだよ!」

 

 全員揃った自治団のメンバー達は喜びの声を上げる。ははっ、今日はマジで…ついてる…な、

 

「ハイネ?」

 

 あれ、力、入らない…?

 

「ハイネ!?返事しろ?おい!」

 

 視界がぐるりと回転する。あ、今アタシ転んでるのか。やべ、受け身取らないと…

 

 そうして地面に倒れ込みかけた時、ギリギリでアタシの体を誰かが支えた。

 

「馬鹿野郎!何が気にしなくていいだ…。グム、治療だ!ハイネ、どこだ、どこが痛い、しっかりしろ!死ぬな!」

 

 酷く焦った顔をしたズィマーが必死にアタシに声をかける。そんな心配しなくても死んだりしないって。

 

「ちょっと疲れちまっただけだ…。ただ、護衛はもう無理かもしれない。アタシはいいから、先に行ってくれ。」

 

「はぁ!?ふざけんな!お前1人でここに置いてけって言うのか!?」

 

「そんな心配しなくても、死ぬ気はないっての。報酬なら返す、途中で放り出すみたいになっちまうからな。」

 

「違う!そんな話をしてるんじゃねえだろ!第一、死ぬ気がないって本気で言ってんならアタシとちゃんと目を合わせろよ!オイ!」

 

 そんなのわかってる。天災がこれで終わりじゃないってことも、今のアタシじゃ到底生き残りようがないことも。

 

 幸せって何なのかが、アタシには分からない。分からないけど、少なくとも死ぬことではないと思って、今日まで生にしがみついてきた。

 

 念願の復讐を果たせばそれが見つかるかも知れない、そうも思っていたけれど、実際にやってきたのは酷く空虚な感覚だった。

 

 その後戦った謎の集団、あの時はただ戦いを楽しんでいたが、思えばあいつらは全員が命を捨てる覚悟を持って戦っていた。あいつらは一体どうしてそんな風に戦っていたのだろうか。今ならそれが、少しわかる気がする。

 

 負けて、ふっとばされて、辿り着いたのは自治団の隠れ場所。弱いし、臆病だし、その上どいつもこいつもウルサス人。でも、仲間のために泣いて、笑って、支え合う姿を見て、酷く懐かしいものを見た気分になった。

 

 グムが言っていた。私達は家族みたいなものだ、と。そうだ、遠い記憶だけど、アタシにも家族がいた。父さんと母さんとアタシの3人、明日の暮らしも困るくらいには貧しかったけど、とっても暖かかった場所。

 

 そっか、アタシは…家族が…仲間が欲しかったのか。あの集団や、ズィマーのように、それを守るためなら命だって惜しくはないような、そんな居場所が欲しかったんだ。

 

 あーあ、なんで今になって気付いちゃったんだろうな。もっと早く気付いていれば、こんな呆気なく終わるんじゃなくて、もっと良い命の使い方が見つかったかも知れないのに。

 

 まあ、でもこれもそんなに悪くない…か。

 

「ズィマー、ありがとな。おかげで、大事なことに気づけた気がする。」

 

「…」

 

 だから、笑顔を作ってズィマーに礼を言う。しかし肝心のズィマーの反応がない。

 

「ズィマー?」

 

「ふっざけんじゃねえぞゴラァ!」

 

「ブヘェッ!?」

 

 ズィマーの渾身のビンタが左頬に突き刺さる!そのあまりの強さにアタシの体が地面に投げ出される。困惑して顔を上げると、怒りが収まらない様子のズィマーが制止を振り切りアタシの胸ぐらを掴む。

 

「いい加減にしろよテメェ!さっきから勝手に好き放題しやがって!なんだ、そんなにアタシ達のことを馬鹿にしてえのか!?」

 

「違…そんなつもりじゃ」

 

「どう違うってんだよ!?そんなにアタシ達が頼りねぇか!?確かにアタシ達はお前に比べりゃ弱いかも知れねぇが、それでもここで自分達だけ逃げ出すような腰抜けになるつもりはねぇ!アタシ達を…ウルサス人を舐めてんじゃねえ!」

 

「何だよ…だって、仲間を助けたいんじゃないのかよ。あの時命をかけて土下座までして、だからアタシは…。」

 

「お前だって仲間だろうが!!!」

 

「!?」

 

 顔がぶつかりそうなほどの距離で叫ばれたその言葉は、直接ハンマーを打ちつけるようにアタシの心を揺さぶった。

 

「仲間…アタシが?」

 

「そう思っちゃ悪いかよ!始まりがどうだろうが、一緒に行動して、戦って、そしてこの天災を生き抜いた。そんだけあって仲間って言わずに何て言うんだ!確かにアタシ達はお前に助けられてばかりだった。だから、次はアタシ達が義理を見せる番だ!ほら、立て!」

 

 ぐいっ、と手を引かれ無理やり立ち上がらせられる。よろけた所をいつの間にかそばにいたイースチナに支えられて、ズィマーとイースチナに肩を貸される形になる。

 

「前方確認はグムに任せて!ハイネちゃん、あと少しだから頑張ろ!」

 

 2人だけじゃない。いつの間にか全員がアタシを囲むように陣形を整えて待っていた。先頭に立ったグムが弾けるような笑顔を向けてくる。どうして…。

 

「なんで…」

 

「どいつもアタシと同じ意見だってことだろ。こうなったら何としても[全員]で脱出するからな。」

 

「ええ、[全員]ですよ、ハイネ。貴女に繋いでもらったこの命、次は貴女の命を繋ぐのに使わせてください。」

 

 胸が、苦しい。何だこの感覚は。つらくないのに息が苦しい。悲しくないのに目尻が熱い。何か言葉にしたいことがあるのに、言葉が出てこない。出したいわけじゃ無いのに、嗚咽が漏れる。

 

「っぐ、ひっぐ、えぐっ。」

 

「…何だ、こう言うところはまだまだガキじゃねーか。よし!お前ら、準備はいいな!これが多分最後だ!西門まで突っ切るぞ!前進…開始!」

 

 ズィマーの号令で、再び自治団は歩み始めた。その目指す先を、西の遥か先の空でオレンジに光る太陽が照らしていた。




ウルサス学生自治団の5人のうちあと2人はどんなキャラなんですかね?実装が楽しみです。

それはそうとして、次回更新は土曜日の予定です。
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