憑依転生失敗話   作:天狗道の射干

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漸く技クロスのタグが仕事をします。声優ネタなので、Gではなく∀の方です。


第20話 この掌は烈火の如く

 無数の骨が積み重なり、山を成している牢獄内。出口がないかと手分けして探して回るニコル達だが、案の定とでも言うべきか。骨の山を掻き分けてまで隈なく探すも、抜け出せそうな場所は何処にも見当たらない。

 

 捕えた人間を生かして出す気など、最初からなかったのだろう。食事を差し入れするような小窓もなければ、排泄用の設備だってありはしない。

 人の出入りを行う為の扉もないのだ。施錠されている訳ではなく、端から作られてはいない欠陥構造。

 落下こそが恐らくは、正規の投獄手段なのであろう。元々上の階に罪人を落とす為の穴が用意されていて、それが老朽化故に壊れた結果床が抜けてしまったのだ。

 

 そうと察した所で、結果は何も改善しない。行く道も戻る道もないのなら、何れは此処で朽ち果てるだけの事。或いはその前に、不浄な空気に当てられ病に倒れるか。ともあれ、どちらにせよ死は免れない。

 

「どうだ? 壊せそうか?」

 

「素手じゃ無理ね。熊でも連れてくれば別だけど」

 

 古びた鉄格子を前に集まった一行は、募る焦りを堪えながらにその意見を一致させる。即ち、これ以上は時間の無駄だと。

 ならばと考えたのは、横紙破りとも言える手段。逃げ道を探す事が無意味であれば、逃げ道を新たに作る事は出来ないだろうかと。

 

 諦める事が自殺と同義である以上、他に選択の余地もない。故にと問い掛けたエドワードの言葉に、格子を掴んだままのクーデルカが返す。

 石壁の中で固定されている鉄棒は、古びて錆び掛けてはいるが頑丈だ。人の手で壊すのは、極めて難しいと言わざるを得ない状態だった。

 

「ニコル君でも、無理かね?」

 

「熊と一緒にされるとは、人を何だと思っているですか? ……まあ、出来ますけど」

 

「出来るのかよ!?」

 

 そんな人の力では壊せない拘束も、特異な力に頼れば破壊出来ないと言う訳ではない。無理を承知で問い掛けたジェームズに対し、ニコルは進まぬ顔で答えを返した。

 少年の言葉に驚きを隠せぬエドワードに、嘆息と共にニコルは語る。気が進まない理由は単純に、コストやリスクの問題だった。

 

「シャインオイルをベースにした香で、肉体のリミッターを外します。そうすれば、古びた鉄格子を捻じ曲げるくらいは簡単でしょう」

 

 元々白魔法も黒魔術も、どちらも物理的な威力は然程強くはない。魔法の本質とは、精神への干渉だ。人の心の隙に付け入り、精神世界を改竄する事で物質世界を歪める秘術が魔法である。

 言ってしまえば魔法が見せる破壊行為の大半は、一種の幻覚作用でしかない。他者の心を圧し折って心を弱体化させる事で、より強く精神世界へと干渉出来るようにする。要は虚仮威しに過ぎぬのだ。

 

 無論、上位の物となれば物理的な威力も伴ってはこよう。ガアプが落とした隕石で、実際に森の一部を禿山と化した事がその証左。

 ガアプよりも強大なアモンやアスモデウスがその力を振るったならば、天凱凰が降臨した上海のように大都市の一つ程度は炎に飲まれ崩壊しよう。

 

 だがそれも最上級の存在である彼らが、ある程度以上の力を行使した場合の話。今のニコルに同様の事が出来る筈もない。

 人の身で鋼鉄を壊そうとするならば、魔法を使うよりも物理的な手段に頼った方が遥かに簡単なのだ。

 

「ただ、アロマも余り数がある訳ではないので、出来れば最後の手段としておきたいのですが」

 

 打つ手はある。しかし今後を考えれば、それは出来れば控えたい事。唯でさえ此処に来て、大量に香を消費している。これ以上の出費は、痛いなんて物ではない。

 

 更に言えば、肉体のリミッターを外すと言う行為にもリスクが伴う。限界を超えた肉体は、己自身の筋力で自傷してしまいかねない。

 多少の怪我ならば治癒の魔法で如何とでもなるが、その場合もやはり消費の多さが目に付くだろう。

 

 故に下策。そう語るニコルの言葉に、エドワードは悩みながら口を開く。

 最悪の事態は免れそうだと確信したからか、音にした言葉は少し軽い物でもあった。

 

「けど他の手段って、言ってもな。他に何が出来るよ?」

 

「ふむ。エドワード。君は鍵開けとか出来ないのかね? ほら、その……君は無法者じゃないか」

 

「言葉を選んだ努力は認めるけどな。もうちょっと頑張れよ、ジェームズのおっさん。此処がイーストランドなら、アンタの首と胴がお別れしてたぜ」

 

 そうして悩むエドワードへと、再びジェームズが当たって砕けろの精神で言葉を投げる。

 だが見た目で判断したであろう言葉は、配慮しているにしても失礼と感じさせる物言いでもある。呆れたような顔で、エドワードが言葉を返すのも無理はない事だろう。

 

〈無駄なのに……どうせ何もかも〉

 

 軽口を交わす彼らの下へと、頭上から冷たい声が掛けられる。鈴のような声色は、つい先程にも聞いた物。

 ふわりと風に舞う衣が落ちて来るように、空から降りて来たのは白い少女。海のような瞳に冷たい色を宿して、彼女は嘲けるように笑うのだった。

 

「君は、さっきのお嬢ちゃん? 一体何が、無駄だって言うんだ」

 

〈あたしの名前はシャルロッテ。でも、名前なんて何の意味もない。アンタが今生きていることも、もうじき死んじゃうってことも、何の意味もないこと〉

 

 先に感じた怒りを堪えながらに、問い掛けるエドワードへと返る言葉。何もかもが無駄なのだと告げる少女の言葉に、ニコルは小さく失笑する。

 目の前で鉄格子を壊してやれば、彼女はどんな表情をするのだろうかと。無意味なのは既に死した亡霊だけなのだと、少年は内心で嘲笑う。

 

 そんなニコルの隠さぬ侮蔑に、気付いたのかシャルロッテは苛立つ。どうにも気に入らない奴だと罵倒を口にしようとして、クーデルカの問い掛けに阻まれた。

 

「あなたも、此処で死んだのね?」

 

〈……そうよ。あたしも此処で死んだの。何百年も前に〉

 

 出鼻を挫かれた苛立ちも込めて、肯定の意を返す白き衣の少女。怒りと怨嗟に塗れた声の持ち主は、独房の外を知らない。だから彼女は、世界を憎み他者を呪う。

 

〈産まれて直ぐに閉じ込められて、九歳の誕生日に首を斬られたわ! それからずっと、此処に居る。ずっと誰にも、知られずに!〉

 

 シャルロッテの慟哭を耳にして、心を揺らさない人非人などこの場に一人しかいない。

 クーデルカは息を飲み、エドワードは困ったように頭を掻いて、ジェームズは嘆きながらに十字を切る。誰もが少女を哀れんでいて、だがそんな憐憫など彼女の心には届かない。

 

「不憫な」

 

〈哀れむって言うの? あたしを? 下らない。そんなの三日もすれば、跡形もないわよ!〉

 

 だろうなと、納得するのはニコルだけ。少年は心の底から思っている。死者への憐憫程に、無意味な物もそうはないと。

 既に終わった者の過去など掘り返して、一体何の意味があるのか。結果が何も変わらないなら、それは路傍の石と同じく目を向ける価値もない事なのだ。

 

 更に言えば、場合によっては寧ろ害悪となるとも断言出来る。無意味な過去の為に、今を生きる者らが不幸となってしまうのならば。

 そう考えるが故にニコルと言う少年にとって、生者を憎むこのシャルロッテと言う亡霊は、即座に討つべき怪異であった。

 

 其処に慈悲はいらない。其処に躊躇いは必要ない。ゆっくりと気付かれないように、亡霊を剣の間合いに収めようとするニコル。そんな彼は己の心が乱れている事に、全く気付いていなかった。

 

「それは違う。どういう事情があったにせよ、君の母親は君の事を心配していた筈だ!」

 

〈母親ですって。顔も、名前も、何処の誰かも知らないのよ! そんなものに、何の意味があって!? あたしは生まれてから死ぬまで、誰かに愛された事なんてないわ!!〉

 

 殺意を隠して迫る刃にも気付かずに、怒りを叫ぶシャルロッテ。誰にも愛された事がないのだと叫ぶ少女に、クーデルカの心が大きく揺れる。

 どうしても共感してしまうのだ。女も心の奥底で、同じ情を抱いている。愛されなかったから、愛されたいのだと。だからクーデルカは、何も口に出来ずに居る。

 

「……それを断言するのは、まだ早いのではないですか?」

 

 そんな彼女に代わって、口を開いたのは少年だった。死者と対話など無意味だと考えている筈なのに、気付けば口を開いている。その事実に、誰より驚いたのはニコル自身だ。

 自身の言葉に目を丸くして硬直した少年。彼が手にしていた刃は、既にシャルロッテの首を刎ねられる位置にあった。

 

 気付かぬ内に迫られていたシャルロッテは、驚愕しながら大きく距離を取る。もう不意打ちはさせないと警戒しながらニコルを睨む少女の態度に、少年は自嘲するように深く嘆息してから言葉を続けた。

 

「貴女は母を知らぬと言った。ならば貴女は、確認していない訳だ。貴女の母が、貴女を愛していたのか否か」

 

 最大の好機は去った。己の愚かさで潰してしまった。ならば、このまま語りを続けてしまっても良いだろう。半ば開き直るような感情で、ニコルが告げたのは道理である。

 

 母を知らぬと言った。ならば否定された事もなかったのだろう。何せ少女は、何も知らないのだから。

 真実などは分かりはしまい。愛されていたのか、憎まれていたのか。それさえも知らぬのだから、愛されていなかったと言う証明なんて彼女自身にも出来はしないのだ。

 

「だと言うのに、誰かに愛された事はなかった? 何と愚かな無知蒙昧。己の愚かさを誇るように囀る姿は、哀れを通り越して最早滑稽。三流以下の道化芝居など、正直言って見るに耐えぬのですよ」

 

 理不尽な目に合ったから諦めた。真実を知ろうともせず拒絶して、他人を巻き込もうとする怨霊。癇癪を起こして唯拒絶を続けるだけの少女に、ニコルが抱いた情は軽蔑だ。

 せめて事実を知ってから、世を憎み恨めと言う。それさえしなかった少女を見る少年の瞳は、酷く冷たい嫌悪と侮蔑に満ちている。実に醜いその在り様に、救いなどは必要ないのだと。

 

〈うるさい! うるさいうるさいうるさい! 何が愚かよ! 何が滑稽よ! そんなの知らない! そんなの分からない! そんな目で、あたしを見ないでよ!!〉

 

 そんな視線を向けられて、シャルロッテは酷く動揺した。憐憫を向けられる事はあった。憎悪される事もあった。だが軽蔑されたのは、生前以来であったから。

 

「それが滑稽で無様だと言うのです。己の真実に向き合う事なく、周囲を巻き添えにする悪霊に存在価値などない。……ああ、そうだ。余計な修飾など抜きに語れば、私は貴方にこう言いたいのですよ」

 

 瞳に涙さえ浮かべて叫ぶ少女の霊に、冷たく言葉を突き付け続ける少年。ニコルの内面は微笑を浮かべたままの表層とは相反して、膨大な熱と形容し難い感情に荒れている。

 まるで熱したコールタールの様に、心の中にへばり付く感情。それは侮蔑であり軽蔑であり憤怒であり憎悪であり――そしてある種の、同族嫌悪と言うべき感情だった。

 

「死人は黙って死んでいろ。お前の居場所なんて何処にもない」

 

 冷たく語る少年は、その実シャルロッテと同類だ。或いは同類になるやもしれなかった、と言い換えた方が適切だろうか。

 だからその言葉は、シャルロッテの心に届いてしまう。彼女と痛みを分かり合えるのは、この場にたった二人だけしかいないから。

 

 もしかすれば、少女の心を救えたかもしれない二人。その内の一人は何を言えば良いのかも分からず言葉に詰まり、もう片方は救う所か一刻も早く滅ぼしたいと殺意を剥き出しにしている。ならばその結果に至るのも当然だった。

 

〈そんなことを言う奴なんて、死ねば良い! あたしをそんな目で見るアンタも! あたしを哀れむアイツらも! 皆、皆、死ねば良いのよ!!〉

 

 叫ぶと同時にシャルロッテは、現れた時と同じように宙へと消える。己の感情を抑えられなかった結果、彼女を逃したニコルは忌々しいと盛大に舌打ちした。

 

 そうして少女が消えた直後、轟音と共に独房が大きく揺れる。崩れ落ちた壁面から、入れ替わるように現れたのは新たな敵。中身のない亡霊剣士が其処に居た。

 

「なっ!? 何だよ、服と武器だけ浮いてやがる。透明人間の怪物か!?」

 

「あの少女が、マリスで呼んだようですね。こちらにとっても都合が良い。皆さん、壁に穴が開きましたよ」

 

 軍人貴族を思わせる装束と帽子。支えもなしに、空に浮かんでいるレイピア。それらを身に付けた、透明人間が居るようだ。

 見たままを思わず叫んだエドワードに、ニコルは運が良かったと笑って返す。募った苛立ちを晴らす為に、これは丁度良かったと。

 

「此処は、私にお任せください」

 

「ニコル!?」

 

「むっ、彼を一人で戦わせると言うのは」

 

 一声だけ言い残し、剣を片手に敵の下へと。そのまま一息に踏み込んで、貴族の亡霊と剣で打ち合いを始める。

 激しい金属音が鳴る中で、クーデルカとジェームズが戸惑いの声を上げるがもう遅い。既に両者は、近過ぎた。

 

「くそ、動きが早過ぎる。下手に撃てば、誤射し兼ねない」

 

 援護の為にと銃を引き抜いたエドワードだが、激しく立ち回りながら交差を繰り返すニコルと剣士の速度に追随出来ない。

 下手に撃てば、誤射してしまう。そもそも中身がないのに撃っても効くのだろうかと言う迷いもあって、彼は両手に銃を構えたまま棒立ちと成ってしまう。

 

 クーデルカやジェームズも同様だ。彼らが主とする攻撃手段である魔法は、銃弾よりも初速が遅い。銃で狙えぬ速度で動き回られてしまえば、やはり誤射を恐れて手が出せなかった。

 

「人型の怪異。人間以上のその膂力は、確かに脅威ではありますが」

 

 故にニコルが望んだ通りに、戦場は推移する。余計な手出しをさせない為の高機動戦。

 駆け出して、切り付けて、駆け抜ける。幾度も幾度も鋼の音を響かせながら、単騎で挑むは鬱憤晴らしを望むから。

 

「やはり動きが素直に過ぎる! 脳のないその身体は文字通り、大した能もないようですね!」

 

 繰り返す都度に、亡霊の持つレイピアの形が歪んでいく。剣の技量と言う点で、この貴族はニコルに大きく劣っていた。

 故に望めば、このまま剣を叩き折れるだろう。さすれば無防備になった身体を縦に、唐竹割に出来てしまう。

 既に結果は見えている。ならばどうして、そんな弱者を相手に戦うくらいで鬱憤晴らしが出来ようか。

 

「このままでも処理は容易ですが、その程度では鬱憤晴らしにもならない! ならば少し、実験にお付き合い頂くとしましょう!」

 

 強く息を吸い込んで、踏み込むと同時に裂帛の気合を。呼気と同時に剣を振るえば、咄嗟に受け止めた貴族のレイピアを堪え切れずに圧し折れる。

 武器を失い戸惑う亡霊を前に、ニコルは剣を鞘に納めた。自ら無手となると後方へと大きく跳躍し、顔の前で見えない何かを掴むように右手を軽く握り締めた。

 

(原作知識以外の、何処かの誰かが有した記録。創作物の知識の中でも、使えそうな物の再現実験)

 

 これは一つの試みだ。ニコルが知るのは原作の知識だけではなく、前世と言うべき誰かが経験した全ての記録。

 その内にあった創作物の知識。其処にあった技の一つを、この世界の法則を元に再現してみようと言う魔法実験。

 

 術式は既に出来ている。だが実戦で試すのはこれが初めて。敵が居服以外に実体を持たない貴族の亡霊ならばこそ、この技を試すのに相応しい。

 何せこれはニコルが有する魔法の中でも唯一と言うべき、物理的な干渉に特化した特殊な術式。

 もしも肉体のない者にも通じるならば、これは正しく切り札となるべき性能を有していると言う事になる。

 

「白魔法であるブレスは、僅かな衝撃と温かな熱を伴います。その物理現象のみ抽出した上で右手に収束し、纏わせたまま停滞させる。これを限界まで繰り返すと、一体どうなると思いますか?」

 

 再度、語ろう。白魔法も黒魔術も、物理的な威力は然程強くはない。魔法と言うのは元来、心に強く干渉する技術であるが故。

 言ってしまえば魔法が見せる光景とは、一種の幻覚作用である。あくまで物理的な威力は副産物であり、故に魔法とは無機物には通用し難い欠点を有している。

 

 ならばどうすれば、それを補えると思う。単純に出力を上げる事で圧倒するのが王道ならば、ニコルがこれより為すのは邪道と言う物。

 ブレスが伴う突風程度の衝撃と、温かな日差しにも似た微かな熱量。それらは物理的な現象であり、故にそれだけを術式解体で得た知識を使って発現させる。

 

 一度に取り出せる熱量は20~30℃。ならばそれを百と繰り返せば、到達温度は摂氏にして2000℃以上。人体など近付くだけで、骨すら残さず焼き尽くす程の業火となる。

 故に熱量だけを抽出するだけでは不十分。生み出した風を操り空気の断層へと変換させ、制御し続けなければ一瞬後には自滅が待つ。

 

「さあ、刮目して受けなさい」

 

 致命的な欠陥を抱えている不出来な魔法。だがその分、当たれば威力は桁違い。掠るだけでも人体では耐えられず、魔法でも防げない魔術師殺し。

 揺らめく炎は大気すらも歪めて、僅かに残るブレスの光を強く強く輝かせる。光輝くその右手は、朧げな記録と寸分違わぬ姿となった。

 

「この光輝く指先で、終わらせて差し上げましょう!」

 

 右手を上段に構えて、敵に向かって走り出す。頭部に向けて突き出した光の掌は、触れるまでもなく怪物の全身を焼き尽くす。

 折れた剣も、身に付けた帽子も、何もかもが掠れただけで燃え尽きる。同時に叩き付けられたのは、微弱に過ぎる浄化の力。

 

 されど精神が肉体に干渉するように、肉体もまた精神に干渉する物。古びた依り代を一瞬で蒸発させた程の超高温は、怨霊の精神を圧し折るには十分過ぎた。

 故に心折られた悪霊は、微弱な浄化にも耐えられない。触れるまでもなくこの一撃は、魂さえも焼き尽くしてみせたのだ。

 

「成程、シャイニングフィンガーとはこういうものか」

 

 敵は頭部を掴む前に、溶けてしまった。その事だけ僅か心残りに思いながらも、掌に残った熱量と纏う大気を解放する。

 頭上に向けて解き放たれた力は、巨大な光の柱へと。途中にある全てを焼き尽くして、成層圏の彼方へ消え去っていくのであった。

 

(扱い辛いが、十分な成果です。これは他にも、再現してみる価値があるかもしれませんね)

 

 溶断破砕マニピュレータ。再現された能力は、使い勝手が難しい物だ。これ程の火力を求めると、ニコルの持つ魔力のほぼ全てを一撃で消費してしまう。

 更に使える場所も、極めて限定的となるだろう。狭い室内などで考えなしに扱えば、行き場を失くした熱量で自滅する末路しか浮かばなかった。

 

 けれど火力の調整自体は、その性質上難しくない。高速で重ねる術式の数を減らせば、それだけで程良い火力に調整出来る事だろう。

 熱と風だけならば、ブレスの消費魔力の3分の1以下。連続発動による効率化を行えば、更に消費を抑えられる。

 制御の困難さこそ解決できない難点だろうが、コストパフォーマンスと言う点では十二分。

 

 物理的な攻撃手段としては極めて優秀で、実体を持たない相手に対しても十分通じる。ならばこれは、切り札の一つとしても問題ないだろう。

 予想以上の成果を得た事を実感して、ニコルは妖しい笑みを浮かべる。我が世の春が来たと言わんばかりに、少年は歓喜で嗤うのだった。

 

 

 

 

 




Q. 成程、シャイニングフィンガーとはこういうものか。
A. いいえ、それは溶断破砕マニピュレータです。原理的にはどちらかと言うとゴッドフィンガーです。


今回みたいな形で、憑依ニコル君は真面目な場面にクロスネタを平然とぶち込んで来ます。
真面目な顔のままノリと勢いだけでゴリ押してそのまま貫いて振り返らないので、皆様ご了承ください。

尚、既に原作知識すらうろ覚えな憑依ニコル。どうでも良い設定ではありますが、彼の頭の中ではGと∀がごっちゃに混ざってます。
曖昧な部分を想像で保管した結果、憑依ニコルの記憶の中ではドモンではなく御大将がGガンの主人公となっていたり。
シャイニングガンダムに乗った御大将がマスターアジアと一緒に超級覇王電影弾でデビルガンダムを倒すGガン。カオスかな?


エレイン強化カウンター 現在95点
(貴族の亡霊相手に技の実験。ノリと勢いで世界観を破壊した。+30点)

今後のストーリー展開は次の内どれが良いですか?

  • ヒロインは一人。純愛ルート。
  • ヒロイン複数。ハーレムルート。
  • ヒロインは甘え。求道者ルート。
  • ウルと二人で漢祭りルート。
  • 宿命の兄妹対決! ニコルとアナスタシア!
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