SPECIALになるために   作:Zuiki

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第17話 VSデンリュウ

「おめぇ……一体何者なんだ?」

「……」

 

 ロケット団が立ち去り静寂が戻ったエンジュシティの空の下。ゴールドの問いかけにシルバーはだんまりを決め込む。

 

「スズの塔で見つけたポケモンの像に書いてあった名前、そしてロケット団の女も口にしてた『ホウオウ』。オレは見逃さなかったぜ。その名前に反応してたお前のことをな!」

「お前らには――」

「――関係ないって? またそれか」

 

 折角ゴールドが切り出したので、カズトも少し援護射撃をする。まずはシルバーをこの場に押しとどめなければならない。

 

「お前はいつも『目的』『目的』って、そんな風に『任務』みたいに戦ってばっかでよ。今まで本当に楽しんでポケモンバトルしたことあんのかよ?」

「なに?」

 

 ゴールドの言葉に、シルバーは今日初めて感情的な返しを見せた。脈ありのようだ。

 

「そこでだ。お互いポケモン図鑑とウツギ博士のポケモンを持つ者同士……。フェアに近い条件だ。一度本気で手合わせしてみてえと思わねえか? どうだ、シルバー!!」

「挑戦状か……。面白い!」

 

 シルバーが何者かという点については答えがもらえなかったが、ポケモンバトルという語りの場に引き出すことはできた。図鑑所有者というこのアプローチの仕方はゴールドにしかできなかったので、正直言ってカズトにはシルバーから答えをもらえるビジョンは見えていなかった。どうせ話を打ち切られて逃げられるのが関の山だと思っていたのである。

 時折突拍子もないことをするが、ゴールドは意外と頭が切れる。カズトが思いもしないところから解決策を生み出すこともある彼なら、シルバーが有する壁を砕くことができるかもしれない。

 

 カズトもゴールドと共にシルバーについて追求したいところではあるが、ここに来た本来の目的を忘れてはいけない。スズの塔で満身創痍の状態でいたミカン。塔が崩れてしまうというアクシデントの中で咄嗟に彼女のデンリュウに避難を託したが、無事に避難所まで辿り着けているかを確認しなければ育て屋老夫婦への報告もできないだろう。

 

「よーしカズト、審判は頼むぜ!」

「そうしたいのは山々だけど、オレは先に避難所の様子を見てくるよ。ミカンさんが心配だ」

「おっと、そうだったな。じゃあそっちはお前に任せるわ」

「ゴールドも、シルバーのことは任せたよ」

 

 コガネからエンジュまでの短い間ではあったが、ゴールドと一緒に旅をすることができて満足だ。続きはこのドタバタが落ち着いた頃に仕切り直してしたいものだ。街の中でも開けた場所を探しに移動すると言うゴールドたちに別れを告げ、カズトはエンジュシティ郊外の避難所へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「う……。ここは……?」

「あ、目が覚めましたか?」

 

 カズトがいるのはエンジュシティに複数存在する臨時避難所の一つだ。スズの塔から最も近い距離にあるこの避難所にミカンが運び込まれたのでないかと判断したが、予想通りだったようだ。避難所に入ったカズトをいち早く見つけたデンリュウがミカンの元まで案内してくれたのだ。

 医師によると、脚の捻挫や腕の擦り傷など小さな怪我は多かったものの、命にかかわるような重症は見られなかったらしい。詳しいことは後程病院で専門の検査を受けなければならないが、現状は安定しているとのことだ。

 

「育て屋老夫婦からお話を聞きました。無事でよかったです」

「そう……。心配をかけてしまったわね、助けてくれてありがとう」

「そのデンリュウのおかげですよ。あの明かりがなかったらあなたの存在に気づけなかった」

「アカリちゃん……ありがとう」

 

 ミカンのデンリュウはアカリちゃんという名前みたいだ。心配そうにミカンの顔を覗き込んでいる。

 カズトはミカンを助けた際の軽い経緯を伝えた後、この街を襲った地震が人の手によるものであることを告げた。これにはミカンを含め、街の人々の表情を驚きで満たすには十分だったようだ。犯人はロケット団という組織であることも伝えると、その瞬間、ミカンが今まで以上の反応を見せた。

 

「ロケット団……! ポケモン協会から最近活発になっている組織についての通達があったけど、確か同じ名前だったはず」

「ポケモン協会からですか?」

「あ、私アサギシティでジムリーダーをしているの。この前アルフの遺跡やヒワダタウンで続けて活動報告が上がったから、ジムリーダーとして注意するようにってね」

 

 今度はカズトが驚く番だった。まさか探していた少女がジムリーダーだったとは。おそらくゴールドもこのことは知らないだろう。大事な情報は伝えておいてほしいと、少しだけ育て屋の二人を呪った。

 

「それじゃあ早くアサギに戻らないと……」

「ええ。でも、この街の傷ついた人々やポケモンたちを見捨てるわけにはいかないわ。急いでこの街のジムリーダーのマツバさんに連絡を取らなくちゃ……」

 

 ミカンが街の人たちにマツバの行方を聞こうとするも、人々から帰ってきた答えはどれも「マツバがはどこにいるのか分からない」だった。

 どうやらマツバは特殊な千里眼という能力を持っているようで、今回は外部からの依頼があったため、数日前からジムを留守にしているようだ。

 街の中心であるジムリーダーが不在とあっては、住民たちも不安なはずだ。カズトも、そのような状況下にいる人やポケモンたちを放っておくことは出来ない。

 

「なら、私が代わりにジムリーダーとしてこの街を守ります」

「オレも手伝います!」

 

 カズトとミカンがしばらくエンジュシティに残ると宣言したその時、ポケギアから着信を告げる音が避難所の中に響き渡った。その音はカズトの腕にあるポケギアからから聞こえてきており、画面には「ゴールド」の文字が出ている。周りの邪魔にならないよう、カズトは外に出て通話のボタンを押した。

 

「もしもし」

『よおカズト! あの子は無事だったか?』

「無事だよ。ゴールドこそ、シルバーとのバトルはどうだった?」

『あー、そんなことよりだな。聞き出せたぜ、シルバーの目的!』

 

 ゴールドの反応からして、おそらく負けたのだろう。だが同時に満足そうでもあるので健闘はしたようだ。それにシルバーについても話を引き出してくれていたようで、彼の声からは喜びの色がにじみ出ている。

 ゴールドが言うには、シルバーはロケット団を潰すことを目的としているようで、さらにはホウオウを追うという使命を抱えているらしい。その使命を果たすためならば、手段も選ばないとも言っていたようだ。

 

『オレはシルバーと一緒にあいつらと戦う。カズトはどうする?』

「オレも手伝いたいけど、困ってるエンジュの人たちを助けたい。しばらくはここに残るよ」

『そっか、ならまた別行動だな』

「うん、また追いつくよ。気をつけてね」

『ああ! 任せとけ!』

 

 ゴールドとの通話を切り避難所の中に戻ると、ミカンが街の人たちに指示を出していた。

 今はまだ夜であるために大掛かりな準備はできないが、明日の早朝すぐに街の中の捜索を行うとのことである。とはいえ、ロケット団の狙いが人気のないスズの塔であったことが幸いし、住人たちはその多くが無事に避難することができていたみたいだ。ミカンのように巻き込まれた人がいないわけではないが、その人たちもポケモンたちの協力の元、日中の段階で救助済み。あとは助けを呼べずに取り残されている人やポケモンがいないかを確認するのが主な作業になると説明された。

 

「人を探すとなると、エスパータイプのポケモンがいたほうが良い気がしますね」

「確かにそうね。エスパータイプのポケモンを持っている人がいたら教えてください! 捜索に協力をお願いします!」

 

 カズトの進言もあり、順調に捜索隊も編成されていく。僅か数十分で粗方の準備を整えてしまった手腕は彼女が優れたジムリーダーであることの何よりの証拠であろう。

 

「できれば私も現場に出たいけれど、明日はお医者さんに言われて他に怪我がないか検査を受けなければいけない。カズトくん、ロケット団を撃退したというあなたの実力を見込んで、捜索隊に加わってもらえないかしら?」

「分かりました!」

 

 どうやら明日はミカンの体調に異変が生じていないかを最速で確認するそうだ。確かに地盤の崩落に巻き込まれ意識を失ってしまっていたとなると、何が起こってもおかしくはない。真っ先に確認するのは正しい判断だろう。

 こうして避難所では慌ただしい様子を醸しながらも、次第に夜は更けていくのであった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 早朝六時。

 徐々に日も昇り始めたこの時間に捜索隊は避難所を出発した。昨日ミカンが中心に編成した捜索隊は瓦礫を動かすことができる力自慢のかくとうタイプのポケモンと、サイコパワーで人やポケモンの捜索を効率よく進めることができるエスパータイプのポケモンを有する有志のトレーナーたちで構成されている。

 これに加え、万が一ロケット団が襲撃に現れた際の対処役として彼らとの接敵経験のあるカズトとジムリーダーとしてミカンが鍛え上げたデンリュウが編成されている。即席のチームにしてはかなりベストに近いメンバーを集めることができたと言っていいだろう。

 

「今のところ、何も感知されずか……」

 

 ヤンヤンマに掴んでもらい空から地上を探索しているカズトだが、こちらも何も目につくものは見当たらない。生き埋めになっていたり、怪我をして移動できない人がいたりしないことが幸いではあるが、見落としてしまうのが最悪のパターンだ。ヤンヤンマの優れた視覚もフル活用してもらい、一寸の動きも見逃さないように注視する。

 

「おい、なんだアレ!?」

 

 空を飛び先行していたカズトの後ろから、捜索隊のメンバーが慌てた声を上げる。

 振り返ると森の方角から何かが土煙を上げてこちらに走ってきているのが見えた。土煙の範囲からして、一体やそこらの数ではないだろう。

 目を凝らして見つめていると、心なしか周囲が歪んで見え始めてきていた。捜索隊の人たちも同じような錯覚に陥っているらしく、ざわつきが大きくなる。

 

「マグナ、シード!」

 

 タツベイとコノハナを繰り出し、"りゅうのいぶき"と"はっぱカッター"のコンビネーションで遠距離から集団に牽制を入れるも、思っていたより手ごたえが感じられない。

 やはり、皆が感じているあの空間の歪みは気のせいなどではなく、本当に視界が狂ってしまうらしい。ピンポイントで狙ったはずだが、目の前の相手にはあまり命中しなかったのだろう、勢いが弱まる気配を見せない。

 

「目に頼れないなら……ライガ、"いやなおと"!」

 

 "いやなおと"ならば、相手を直接狙わずとも聞こえる範囲にいさえすれば命中させることができる。カズトの思惑通り、"いやなおと"によって集団の勢いが衰えその全貌が明らかになった。

 

「オドシシの群れ……周囲が歪んで見えたのはあの角が原因か!」

 

 オドシシの角は絶妙な角度でカーブしており、そのまま見つめ続けてしまうと認知能力が一時的に大きく低下してしまうという特徴がある。

 また、攻撃がうまく決まらなかったのはオドシシの角が周りの空気の流れにも影響を与えて不思議な空間を生み出すという性質も持っているためだろう。カズトたちは角が生み出した蜃気楼に向かって攻撃をしていたのだ。

 

「きっと地盤沈下の影響で気が立っているんだ。手荒にはなるけど、大人しくさせないと!」

 

 オドシシの群れはざっと数えて十体前後の数からなっており、捜索隊の方が層も厚いため対処に苦労もしないはず――そう考えていた矢先、捜索隊のポケモンたちが次々と地面に倒れ伏していってしまう。

 

「おいどうした!?」

「こっちもダメだ! 眠っちまってる!」

 

 どうやら強制的に眠らされたことで意識を失ってしまったようだ。かくとうタイプのポケモンたちがほとんど眠らされてしまっている。

 

「"さいみんじゅつ"! 自分たちが苦手なかくとうタイプを封じに来たのか!」

 

 幸いにも、別の場所から攻撃していたカズトのポケモンたちには命中していなかった。数の有利はなくなってしまったが、まだまだやりようはある。

 

「接近戦だマグナ、シード! 角を見ないように気をつけろ!」

 

 遠距離からの攻撃ではどうしてもオドシシたちの角が目に入ってしまい狙いを逸らされる。ならば角を比較的見ずに済むよう接近戦に持ち込むしかない。

 目が良いヤンヤンマやグライガーは今回下がっていてもらった方が良いだろう。一体ならばともかく、群れで角の効力を発揮されるとこちらの攻撃はたちまちに無力化されてしまう。それほどまでにあの角には秘められた力があるのだ。

 

「群れのリーダーを狙うんだマグナ! "ずつき"!」

 

 タツベイ得意の"ずつき"が、群れの中でも一際立派な角を持つリーダーのオドシシへ向かう。しかしオドシシは目の前に"リフレクター"を張りその攻撃を受け止めた。かなりの強度のようで、一度ではタツベイでも壁を貫くことは出来ないみたいだ。

 そしてリーダーを狙われたことにより、他のオドシシのヘイトを買ってしまったようだ。数多の"とっしん"がタツベイを襲う。

 

「シード、"はっぱカッター"で援護だ!」

 

 コノハナが葉っぱの弾幕で何体かの気を逸らすが、これも"リフレクター"に阻まれ満足なダメージを与えることができない。

 

「っ?! マグナ!」

 

 さらに畳みかけるようにオドシシの角が"あやしいひかり"を放ち、至近距離でこれを見てしまったタツベイは混乱状態に陥ってしまった。

 

「大丈夫かマグナ! "かみくだく"!!」

 

 カズトの指示は届くものの、やはりタツベイの動きは鈍い。十分な力を発揮しきれず、またしても"リフレクター"に攻撃を受け止められてしまう。

 対するオドシシは今度は"リフレクター"を前方に張りながら"とっしん"を繰り出す合わせ技を披露してきた。混乱状態のタツベイでは上手く避けることができず、もろに喰らってしまう。

 

「戻れマグナ!」

 

 流石にこれは分が悪いと判断したカズトは一度タツベイをボールの中に戻す。

 タツベイほどではないが、接近戦が得意なグライガーを出さざるを得ないと思いボールを構えた次の瞬間、目の前を眩い閃光が包み込み、遅れて轟音が鳴り響く。そのあまりの眩しさに目を閉じてしまうも、再び目を開けた時にはオドシシたちの半数近くがなんと戦闘不能になっていた。

 

「これって……まさかアカリちゃんが?」

 

 後ろを振り返ると、デンリュウが電気を纏っているのが目に入った。どうやら"かみなり"を撃ったみたいで、デンリュウの周りにだけ小さな黒雲が漂っている。

 

 角の力で狙いを逸らされてしまうなら、その周囲まで丸ごと黒焦げにしてしまおうということだろう。これならば角の錯覚など関係なしに攻撃を命中させることができる。ただし、広い範囲をまとめて攻撃するだけの膨大なエネルギーが必要になるわけであるが。流石ジムリーダーのポケモンだ。

 直接攻撃ではない"かみなり"ならば、"リフレクター"による防御も効かない。この状況下で最も理に適った攻撃でもある。

 

「"かわらわり"」

 

 さらにコノハナの"かわらわり"によって"リフレクター"を破壊してしまえば、オドシシたちを守るものはもう何もない。そのままコノハナが近距離戦に持ち込み、一体ずつ倒していけばオドシシたちはすっかり大人しくなった。

 

「森の中にも地盤沈下の影響が出てるのかな。ひとまずオドシシたちを回復してあげましょう!」

 

 カズトが戦っている間に捜索隊のポケモンたちも目を覚ましたらしい。救急用に持ってきていたキズぐすりや木の実をオドシシに与えてくれている。

 真っ先に意識を取り戻したのはリーダーのオドシシだった。戦闘中に見せていたなりふり構わない様子は鳴りを潜めており、完全に落ち着いたようだ。

 

「森を壊されて気が立っていたんだね。大丈夫、オレたちも森を直すために頑張る。だから、ね?」

 

 カズトの言葉にオドシシも理解を示したのか、頷く素振りを見せる。徐々に目を覚まし始めた仲間のオドシシたちを連れ、森の奥へと退き返して行くのだった。

 

 そして後日、復興が本格的に開始されたエンジュシティには時々ではあるがオドシシの群れが顔を覗かせるのであった。




BDSP、LEGENDSの新情報きましたね!
オドシシの進化形が遂に登場ということで、すごいタイミングでこの話を書いていたな、とちょっとだけビックリしました。

何とか5000字超えで1話書けているので、このままの文字量で続きも書いていきたいですね。
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