SPECIALになるために   作:Zuiki

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第19話 VSエレブー

 伝説の三体がエンジュシティを飛び出して早数日が経過した。世間では彼らが復活した翌日からニュースで話題に取り上げられ、大いに注目されている。また、彼らの種族名もエンジュに伝わる伝説を基にライコウ・エンテイ・スイクンと正式に発表された。これからは各界のポケモン研究者たちも調査に乗り出し、真相を究明していくともされている。

 

 そしてカズトたちはアサギシティに帰還するミカンに付いてエンジュシティを旅立ち、無事何ごともなくアサギシティに到着していた。

 着いて間もなくしてイエローとその叔父は情報収集のために街へ繰り出すと言って既にカズトたちと別れており、現在カズトはジムに戻るミカンと共にアサギシティの街を観光している。

 

「噂には聞いてましたけど、すごいですね」

「他の地方からの船も来るから、色んな人やものが集まるのよ」

「あの大きな建物は……」

 

 カズトの視線の先には建設途中の巨大なタワーがそびえ立っていた。その名の通りポケモンバトルを主軸とした施設になるようで、いくつかのレベルに分けられることで下位のレベルはバトルの立ち回りを勉強したり、上位のレベルはタイムアタック要素を含んだバトルをしたりと多くのトレーナーたちがポケモンバトルを楽しむことができるようになるという。ちなみに建設中と言ってもほぼ完成には近づいており、あと一カ月もすれば一般にも開放されるのだとか。

 

「ミカンさん! おかえりなさい」

 

 声をかけてきたのはミカンが副業として働いているアサギの灯台守の同僚だった。長期間留守にしていたミカンの分も灯台守を務めてくれていたのだそうだ。

 

「ただいま戻りました。私が不在の間、街に変わりはありませんでしたか?」

「ええ、何ごともありませんでした。いや、そういえば先日はちょっとした事故がありましたね」

「事故?」

 

 ミカンがアサギに戻ると連絡を入れたその翌日、バトルタワーの工事で出た廃水を溜めておくタンクがその重量に耐えきれず破裂した。建設作業に当たっていた人やポケモンに被害は出なかったが、溢れた廃水が海の方へ流れ出てしまい、野生ポケモンたちに被害が出てしまったらしい。

 怒った野生ポケモンが人々に攻撃してしまう事態に発展したが、それも通りすがりのポケモントレーナーが全て捕獲して事なきを得たとのことである。

 

「排水の除去……時間がかかるわね」

「それについてですが、溢れた廃水は突如現れた水晶のような姿のポケモンが光を放つと同時にきれいさっぱりなくなってしまったんです。水質の調査もされましたが、普段通りの水に戻っていたと専門家も言っていました」

「水晶のような!? まさかそれって……」

「ええ、おそらくスイクンのことね」

 

 なんとエンジュシティを飛び立ったスイクンが翌日にはアサギシティにて目撃されていたのだ。汚れた水を綺麗にするという力も、伝説のポケモンならば不可能ではないだろう。

 現在はアサギから姿を消しており、行方も分からなくなってしまったみたいだ。

 

 灯台守と別れ、再びジムへ歩みを進めるカズトとミカンだが、その会話はスイクンのことで持ち切りであった。

 

「スイクンたちはジョウト地方の各地を飛び回っているみたいですね」

「やはり何かが起きているのは間違いないみたいわ。それが何か分かればいいんだけど……」

「ロケット団はホウオウを狙ってエンジュを攻撃したみたいなので、三体はそれを阻止しようとしているのかも」

「それでもジョウト中を飛び回るのはなぜかしら? ホウオウを守るというのならば、エンジュシティに留まっていた方が確実なのに……」

「確かに……」

 

 謎が謎を呼ぶとはこのことだろう。彼らについてはまだまだ分からないことが多すぎる。おそらくロケット団とは敵対関係にあるとは考えられるので、上手くいけば共闘という形にも持ち込めるとは思うが、そのためにはもっと彼らのことを深く知らなければならない。

 

「あら、もうジムに着いてしまったわ。ありがとうカズトくん、ここまで一緒に来てくれて」

「いえ、オレがそうしたかっただけです」

「待って!」

 

 ミカンと別れようとするカズトだが、その背中をミカンが呼び止める。少し待つよう言い残してジムの中に入るミカン。カズトは頭にハテナを浮かべながらも、時間つぶしにポケモンたちをボールから出してコンディションを見ながら待つ。

 やがて奥から小さな何かを手に持ったミカンが戻ってきた。

 

「これをあなたに渡しておくわ。スチールバッジよ」

「でもこれって……」

「受け取って。あなたには十分な実力があるわ」

 

 カズトが驚くのも無理はない。ミカンが差し出してきたのはジムバッジであり、通常ならジム戦を挑み、そこで実力を示さなければ手に入れることのできないものだ。

 ミカン曰く、エンジュシティでロケット団を追い返したことや復興作業中で起きたトラブルを解決したことなどの実績を見込んでバッジを渡すにふさわしいと判断したらしい。

 アサギまでの道中でチラッと話しただけのジム戦巡りの話を覚えてくれていたことにも驚きだが、このようなバッジの渡し方があるのにも驚きだ。ポケモン協会にはジムリーダーが与えるにふさわしいと認めたトレーナーにバッジを授与することを定められているだけで、その手段については言及されていないので、まあ納得と言えば納得ではある。

 

「いつか機会があればバトルしましょう」

「もちろんです。こちらこそありがとうございました」

 

 しっかりと握手をし、カズトはジムを後にする。

 今からイエローの調査に協力するのもありではあるが、折角来たアサギシティを観光しないのも勿体ない。ポケモンたちと街中を散策するのもまた一興だ。カズトは港に見える巨大な船を目指して再び歩き出す。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「でっかいなこれ」

 

 目の前の船はカズトが今まで見た船の中で文句なしの最大サイズを誇っていた。数百人が乗ることができるだろうその船は、白を基調としたシンプルなデザインで周囲の海ともマッチしている。

 船は「アクア号」という名前らしく、船員らしき人に見学してもいいかどうか尋ねたところ、今日は一日停泊しているのでゆっくり見ていってくれて構わないという風に快諾してくれた。

 

「中も広いなぁ。はぐれないように気をつけるんだぞ、お前たち」

 

 船内は廊下でポケモンを出しても問題ないほど広々としたスペースがあり、その広さにカズトのポケモンたちも興味津々の様子だ。

 客室内は絨毯が敷かれているので、まるで船の中にいるとは感じられず、地下には大きな食堂もあるので田舎出身のカズトは見ていて目が眩みそうな景色が広がっている。トレーナーの様子とは裏腹に、ポケモンたちは広い船内に目を輝かせ走り回っているのだが。

 

「SHIT?! なんだこいつらは!!」

「えぁ!? ごめんなさいうちのポケモンです!」

 

 カズトがあまりの豪華さに呆けていてほんの一瞬ポケモンたちから目を離したその時、大人の男の声が船内に響き渡る。声の方に目をやると、迷彩柄の服を着た金髪のガタイの良い男がカズトのポケモンたちを見下ろしていた。

 

「あん? なんでガキがこの船に乗ってんだ? ここは遊び場じゃねぇよ。帰った帰った」

 

 男の圧がものすごく、思わず冷や汗が噴き出す。まるで刃を向けられているような感覚だ。子どもにそんな殺気のようなものを発するなとは思うが、相手からすればこちらは侵入者も良いところなのだから仕方はないのかもしれない。

 

「あの、今は見学させていただいてます」

「見学だぁ? 誰に許可もらってんだ?」

「えっと、背の低い、男の船員さん……です。オレよりちょっと高いぐらいの」

 

 ジロリと睨まれるが、何とか気を振り絞って答えを返す。これで「そんな船員なんて知らねぇよ」なんて答えが返ってきたら絶望モノだ。その時は一体どこに連れていかれることになるのだろうか。逃げる準備もしていた方が良いかもしれない。

 

「背の低い……アイツか。ったく余計なことしてくれるぜ」

 

 返ってきた答えにホッと胸をなでおろす。どうやら船の外で会った人物はこの船の船員で間違いないみたいだ。騙されて入ってはいけない場所に入ってしまった、なんてことはなかったことに安心した。

 それでも目の前の問題は解決してはいないのだが。

 

「その、出ていった方が良いですかね? お仕事の邪魔になるとかなら悪いですし……」

「あー、まあ怖がらせちまったか。悪ぃな。気にせず見て回ってくれや」

「ありがとうございます! 実は今日、というかこれからのアサギでの予定がなくなっちゃったんで、どうしようか悩んでまして……この船って何時までに出なきゃいけないとかあるんですか?」

 

 あまりにもこちらが委縮してしまっていたのもあり、男は若干気まずそうに船にいることを許可してくれた。元々船から叩き出すつもりもなかったようである。時間も気にしないで良いと言ってくれた。ポケモンたちが楽しそうにしてくれているので、ここで今日は時間を潰したかったカズトとしては僥倖だ。

 ここでふと、カズトのポケモンたちを見た男からカズトに質問が投げられる。

 

「お前、ここにはジム戦に来たのか?」

「え……」

 

 突然の質問にカズトは動揺を隠しもせず、男の方を振り返る。何せ、アサギには予定があったとしか言っていないのだ。まるで探偵のように言い当てられ、思わず背筋が寒くなる。

 

「そう、ですけど……。なんで分かったんですか?」

「お前のポケモン、それなりに鍛えてるだろ。見れば分かる」

「一目見ただけですごい……! まるでジムリーダーみたいですね!」

 

 カズトの言葉に今度は男が驚きの表情を見せる。少々考える仕草をするも、堪忍したかのように、けれどぶっきらぼうに答えを返した。

 

「まあ隠すほどでもないんだがな……オレもジムリーダーやってんだよ。カントーのクチバシティってとこだ」

「ジムリーダー!? しかもカントーの!? なんでこんな船の中に!?」

「ああもう、うるせえ! これは仕事なんだよ!」

 

 男――名をマチスと言うらしい――はカントー地方有数の港町、クチバシティでジムリーダーをしている人物であり、以前サント・アンヌ号という船の船員をしていた経験から、このアクア号の船長を任されるようになったらしい。いわゆる副業と言うやつだ。

 

「話を戻すが、ジム戦の用事がなくなったってことはあれか。ジムリーダーが不在だったか?」

「いえ、ジムリーダーのミカンさんとはエンジュシティで偶然一緒になってここまで来たんですが、バトルをする前にバッジを渡されてしまって……」

「はぁ? バトルをせずにバッジをだ?」

「その、ロケット団を追い返したりだとか、エンジュシティでのトラブルを解決したとかで……」

「っ!? ロケット団だと!?」

 

 カズトがロケット団の名を口にした途端、マチスはミカン以上のリアクションでその単語に反応した。ジムリーダーだからポケモン協会から連絡が来ているのかと思ったが、どうやらそれ以上に何か思うところがあるようだ。

 

 話を聞くと、ロケット団とは数年前にカントー地方を拠点として活動していた組織であり、マチス自身もかなりの因縁があったことから、聞き逃すことはできないものになっているのだとか。

 「因縁があった」と言った部分が妙に胡散臭かったのはカズトの気のせいだろう。

 元々カントーで活動していた組織が、知らないうちにジョウトで活動を再開したとなれば、驚くのも無理はない。

 

首領(ボス)がいねぇところでロケット団が復活だ? どうなってやがる……」

「何か言いましたか?」

「なんでもねぇよ。それより、もっとその話について聞かせろ」

 

 カントーのジムリーダーであるマチスにはジョウトで活動しているロケット団についての情報はあまり来ていないらしく、詳しい情報を話すよう迫られた。相手がジムリーダーということもあり、カズトも快くそれに応える。

 カズトがこれまでの旅の中で経験したロケット団関連の事件を伝え終わると、マチスは少し苛立った様子を見せながらも礼を述べた。

 

「まさかジョウトでそんなことになっていたとはな。情報提供、感謝するぜ」

「いえ、お役に立ててよかったです。じゃあオレはこれで……」

「待てよ」

 

 あまり時間をとらせるのも悪いと思い、マチスと別れて再び船内の散策に戻ろうとしたカズトをマチスが呼び止めた。同時にボールから一体のポケモンを出してカズトに攻撃を仕掛ける。

 カズトに向けられた電撃は間にグライガーが立ち塞がることで防御されたが、突然攻撃されたことにカズトは驚きを隠せない。

 

「なっ……に、するんですか?!」

「オレがタダで情報もらって、その対価に何も渡さずにいるような恥知らずだとは思われたくねぇ」

「だからってなんで攻撃なんか!」

「そんな大した電流じゃねぇよ」

 

 マチスは電撃を放ったポケモン、エレブーをボールに収めるとカズトを米俵のように担ぎ上げ、そのまま船の奥に向かって歩き出した。

 

「ちょ、やめて――」

「あんまり喋ると舌噛むぞ」

 

 マチスの言葉に思わず黙ったカズトを良いことに、ズンズンと船の奥に進むマチス。やがて開けた場所に出ると、そこにカズトを放り投げる。

 たたらを踏みながらも着地したカズトはしかし、未だに何の説明もないマチスに不信感を隠さずに問いを投げる。

 

「どういうことですか。こんなバトルフィールドなんかに連れてきて」

「お前、ジム戦に来たんだったよな。代わりと言っちゃなんだが、情報提供の礼に一戦だけ付き合ってやるよ。時間も潰せるしバトルの練習にもなる。悪い話じゃないだろ」

 

 確かに悪い話ではない。プライベートでジムリーダーと一戦交えるなど、早々ある機会ではない。ましてや他所の地方のジムリーダーだ。これはジョウト民であるカズトにとってまたとないチャンスである。

 

「それなら先に言ってくれたらいいのに……」

「なんか言ったか!?」

「いえ! お言葉に甘えさせてもらいます!」

 

 トレーナースペースに立ち、再びエレブーを出すマチスを見たカズトは、マチスがでんきタイプをエキスパートとするジムリーダーだと判断した。相手がでんきタイプならば、その相性から出すポケモンは決まっている。

 

「ライガ!」

 

 じめんタイプを有するグライガーなら、先ほどエレブーからの電撃を防いだように、でんき技を無力化して圧倒的に有利に立ち回ることができるはずだ。

 

「"きりさく"だ!」

「"かみなり"ィ!」

 

 素早く接近し一撃を喰らわせるグライガーだが、まともに攻撃が当たったにも関わらず、エレブーは余裕の表情を見せる。そしてなんと、グライガーには効果がないはずの"かみなり"で攻撃してきたではないか。しかもさらに驚くことに、でんき技を無効化できるはずのグライガーが苦しそうに地面に足をつけている。

 

「言っておくが、こいつはジム戦用のポケモンじゃない。そこらへんのでんきポケモンと同じだとは思うなよ」

 

 マチスの言うことから鑑みるに、ジムリーダーという実力者として本気で育てたポケモンはそのレベルに差があるポケモンにならば、効果がない技でも十分なダメージを与えることが可能だということだろう。

 現にグライガーは"かみなり"しか喰らっていないのにそれなりのダメージを受けてしまっているのだから、これは真実だと理解するしかない。「事実は小説より奇なり」とはこのことだ。

 

「なら、"かげぶんしん"!!」

「ほお、面白え」

 

 何体にも分身したグライガーがエレブーの周囲360度を取り囲む。この中から本体を見抜くのは至難の業だ。

 

「"かみなり"で撃ち落とせ!」

「"でんこうせっか"」

 

 分身したグライガーが今度は"でんこうせっか"で上下左右、あちらこちらに飛び回る。エレブーの放った電撃はグライガーに掠ることなく地面に落ち、ようやく当たったとしても分身の一体を掻き消すだけに留まる。

 当たれば絶大な威力を発揮する"かみなり"だが、もちろん弱点もある。それは強力な攻撃ゆえの「使用可能数の少なさ」と「命中精度の低さ」だ。止まっている相手や至近距離にいる相手ならば、熟練のポケモンならば百発百中で当てることもできるだろうが、今みたいに分身を交えて回避率が上がった状態に加えて、素早い速度で移動されては命中させることも困難に違いない。そこでムキになって闇雲に技を放ってしまえば、即座にガス欠になってしまうというわけである。

 

「止まれ!」

 

 流石にマチスも分が悪いと判断し、"かみなり"を撃つことを止めさせた。全弾撃ち尽くすまではいかなかったが、かなりの数を消費させたことに変わりはない。相手のカードを一枚封じたと言っても良いだろう。

 そして攻撃が止んだこの瞬間、カズトたちにとっては絶好の攻撃チャンスとなる。

 

「"きりさく"!」

 

 今度こそ良い位置にヒットしたのだろう。今まで余裕そうな表情を見せていたエレブーが初めて表情を曇らせた。

 

「ハッ、やるじゃねぇか」

「それほどでも!」

 

 その後も何度か手を変え品を変えてエレブーにダメージを重ねていくも、元のレベルに差がありすぎるからか、グライガーの方が先に体力が尽きてしまったことでバトルは終了した。

 マチスからは「頭も回るし、バトルのセンスは悪くないが、迫力がない」というコメントをもらった。攻撃の手段を豊富に用意しようとするあまり、決めきるべき際にトレーナー自身が勝負にあまりのめり込めておらず、ポケモンにもその影響が出てしまっているとのことだ。

 「ここだ」と思ったタイミングで全身全霊を注ぎ込むことでポケモンもトレーナーも真価を発揮することができるとマチスは言う。

 

「確かに。感情が高ぶったとき、今まで以上の力を出すことができたような気が……」

 

 ヒワダジムでの一戦が良い例だろう。相手の必殺の一撃を受けてもなお、タツベイはカズトの想いに応え、ツクシのストライクを打ち破って見せた。ポケモンとトレーナーが一つになった瞬間である。

 

「ま、あとは自分で考えな。礼とはいえ、オレもらしくねぇことしたもんだぜ」

「ありがとうございました!」

「借りを返しただけだ。おら、そろそろ宿に帰りな」

「ホントだ、いつのまにかこんな時間になってる」

 

 マチスも船の外に出るということで、二人で港に戻る。辺りはいつの間にかすっかり暗くなっており、灯台の明かりが良く目立つようになっていた。

 宿であるポケモンセンターに行くため、マチスと別れようとしたカズト。ところが、彼の足元に突然、小さいモコモコしたものがすり寄ってきた。

 

「うわっ?!」

「こいつぁメリープじゃねぇか」

 

 モコモコに覆われているのでパッと見では何か分からなかったが、よく見ると青い体や黄色い電球のような尻尾があることが分かる。

 メリープの顔を見るために邪魔な綿毛をどかそうとするカズトだが、その手をマチスが掴み取った。

 

「イタタタタ!!」

「迂闊に触んな。感電するぞ」

「分かりましたから放してください! 痛い痛い痛い!」

 

 メリープはその特性上、綿毛に静電気をため込んでいるらしく、何気なく触ってしまうと感電してしまうみたいである。

 触ってしまう前に止めてくれたのは助かったが、大人の握力でか弱い子どもの腕を本気で掴み上げるとはどういうことだろうか。あまりに痛みに掴まれた場所がジンジンしている。これなら感電していた方がマシだったかもしれない。

 

「でも、なんでここにメリープが……。群れからはぐれたんでしょうかね」

「反応を見る限り、その可能性が高いな。まあちょうどいい、こいつ旅に連れてけ」

「そうですね……って、えええぇ?!」

 

 あまりにも自然に話されたためについ頷いてしまったが、そんな気軽に連れ出して良いのだろうか。群れの個体ならば、そこに帰してやるのが一番良いと思うのだが。

 

「見るからにお前に懐いてる。群れを探すなりするのは勝手だが、このまま放置するわけにもいかねぇだろ」

「確かに……。でもじゃあマチスさんが捕獲すれば――」

「これ、お前のモンスターボールだな? おらよッ!」

「ちょっと!?」

 

 勝手にカズトのカバンの中から空のモンスターボールを取り出し、メリープに投げるマチス。そんな彼を止めることなど叶わず、大した抵抗もなくメリープもボールの中に収まってしまった。

 リズムを乱されたまま、あれよあれよと言う間にメリープをゲットすることになってしまったカズトは思わず頭を抱える。

 

「この人、ゴールド以上に無茶苦茶な人かも……」




イエローとミカンとの旅道中は全カットです。ネタが思いつかなかったんじゃ。
そしてマチスとの邂逅ですが、思ってたより面倒見が良い人になってしまった気がします。でも部下に慕われるくらいだし、しっかり面倒見る人かなと思うので、これもありかな? 今回の相手、10歳のガキンチョですしね。

UA7000突破、ありがとうございます!!
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