キキョウジムでの戦いに決着がつき、ハヤトはカズトの立つ方へと歩みを進める。
「改めておめでとう。負けたのにとても清々しい気分だ」
「ありがとうございます!」
勝負後の握手と共に、ハヤトから実力を認めた証としてウイングバッジが手渡された。
これでカズトが手に入れたバッジは四つ。全部で八つあるジョウト地方のジムバッジの半分が揃ったことになる。遂に半分を手に入れ、しかしまだまだ半分が残っている。そして少なくとも、この残りのバッジの数だけ、カズトは成長することができる。
「それにしても、このポケモン……見たことないポケモンだ」
ハヤトが視線を向ける先には、エアームドを撃破し、カズトを勝利へ導いたコモルーがいる。
カズトの手持ちポケモンの中でも古参の彼が進化したことが、今は純粋に嬉しい。酸いも甘いも知っている相棒の成長はまだまだ止まることはないだろう。
「マグナ……は、オレがつけたニックネームなんですが、こいつはホウエン地方にいるドラゴンタイプのポケモンで、進化前がタツベイ、進化した今は確か……コモルーって名前だったかな? こっちに来る前からのオレのパートナーです」
「なるほど、君はホウエン地方出身だったのか。良い経験ができたよ。俺もまだまだ修行を積まないとな」
そう言ってハヤトは胸元から一枚の紙を取り出してカズトに差し出した。
「実は、オレは警官の仕事にも就いていてね。これはオレの個人番号だ。何かあったら連絡してくれ。できる限り力になるよ」
「そんな……いいんですか?」
「ああ。今回のバトルのお礼さ。残りのジムも頑張れよ」
カズトの肩を叩き快く送り出してくれたハヤトに、振り返りながら手を振ってお礼を言う。
「ありがとうございましたー!」
「気をつけるんだよー!」
次なる目的地はフスベシティ。新たな街へ旅立つ前の準備として、まずはポケモンセンターでバトルを頑張ってくれた二体を回復させなければならない。
カズトは軽やかな足取りで、ポケモンセンターまでの道を歩くのだった。
―――――――――――――――
そうしてポケモンたちを回復させ、一晩ぐっすり休んだカズトが向かった先は、キキョウシティを西に進んだ暗闇のほらあな。名前の通り、中には照明などが設置されておらず、自然の光も届かない真っ暗闇だ。
メリープに明かりを灯してもらい、急な高低差はヤンヤンマに運んでもらうことで洞窟内の障害を乗り越えていく。
ポケモンたちの力を借りることさえできれば、特別複雑な地形でもなかったため、僅か一時間足らずで出口へと辿り着いた。フスベシティまでは目と鼻の先なので、どうやら日が落ちてしまう前に目的地に到着することができたみたいである。
「ふう、ここがフスベシティか。いかにも山奥の里って感じで落ち着くなぁ」
辺りには茅葺き屋根の住宅もちらほら見られ、和のテイストが強いキキョウシティやエンジュシティとも、近代化が進んだコガネシティやアサギシティともまた違った雰囲気を醸し出している。
そして町の奥に見える、道場のような建物がきっとフスベジムだろう。建物の場所といい大きさといい、ドラゴン使いの聖地とも言われるこの町の中でかなりの立ち位置にあると窺える。
「さて、ジムに挑戦するか、ドラゴンポケモンについて教えてもらうか……どうしようかな?」
どちらにせよ、フスベジムの門戸を叩くことには変わりない。カズトは町の通りをいつもより気持ち少しだけ駆け足で進み、ジムの前に立つ。
「む、そこの少年。ここを我々ドラゴンポケモン使いの一族が治める地であると知っての来訪か?」
門前で中の様子をチラチラと伺っていると、外で修業をしていたトレーナーの男がカズトの存在に気づき、声をかけてきた。彼の傍には共に修行していたシードラが浮いており、カズトのことを興味深そうに観察している。
「はい。ドラゴンタイプのポケモンについてお聞きしたいことがあって……」
「おお、まさか入門者だったとは! ここで話すのもなんだ。奥へ案内しよう」
「入門……? いやあの、オレはそういうんじゃ……」
「まあまあ。こっちだ。付いてこい」
カズトはあくまでドラゴンポケモンの情報について尋ねたかっただけなのだが、男はそれを修行のことだと勘違いしたらしい。逃げる間もなく、男に腕を掴まれて奥の建物へと強引に連れていかれてしまった。
「長! 入門志願者をお連れしました!」
「だからオレは違うって……」
カズトの言葉は、男の耳には聞こえないらしい。どうにもすれ違いが酷くなっていくばかりだ。
途方に暮れて突っ立っていると、道場の中からとても背が小さく、それでいて立派な鎧兜を身に着けた、いかにも長老ですと言わんばかりの老人が現れた。後ろにはお付きだろう若い男が立っている。
「フガフガ」
「……え?」
「よくぞ来た、少年や、と仰っています」
「…………え??」
長老が何か話したようだが、カズトにはフガフガとしか聞き取ることができなかった。だが、お付きの男の口からは長老の言葉だろう文章がスラスラと発されるではないか。「仰る」ということは、長老の言葉を彼が翻訳しているのだろう。
呆然とするカズトをそのままに、長老はさらに言葉を続ける。
「フガフガフフガ」
「勢いのまま連れてこられて困惑するのも無理はない。彼に悪気はないのじゃ、と仰っています」
「あ、はい。それは分かります」
勘違いしてしまっているだけで、快く案内してくれたのだ。悪い人ではないというのは分かる。
「フフガフガフフ」
「して、そなたは何用があって我々を訪ねてきたのじゃ、と仰っています」
「あ、違うって言ったの聞こえてたんですね」
どうやら喋りに難があるだけで、長老はちゃんと話を聞いてくれていたようだ。一安心である。
「えぇと……オレはメリープを連れているんですけど、メリープがドラゴンタイプの遺伝子を持っているという噂を聞きまして。何かこちらで詳しいお話を聞くことができないかなと思って訪ねさせていただきました」
「なに!? 入門志望ではなかったのか?!」
「最初からそう言ってたじゃないですか!!」
わざとかと思うほどオーバーなリアクションを取る男に、つい大声で反応してしまった。
とはいえ、長老のところまで案内してくれたのも彼だ。カズトの力になろうと行動してくれたことは確かなので、怒りを向けるのはお門違いだろう。
「あと、オレ自身ドラゴンタイプのポケモンを持っているので、ジム戦を通じて成長したいなと思っています」
「なんと、イブキ様への挑戦者だったとは……!」
「フガフガフガ」
「残念じゃが、イブキは竜の穴に行っておる。しばらくは戻ってこないじゃろう、と仰っています」
竜の穴とは、古来より一族の修練場となっている場所で、多くの強力な野生のドラゴンポケモンが住まう聖域だという。イブキはバトルの腕が鈍らないよう、頻繁にこの洞窟に足を運んでいるらしい。
「フガフガ」
「書物については、うちの者が迷惑をかけたお詫びにある程度は自由に見ても良いそうです」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「フガフガフ」
「ただ、ワシもそなたの実力を見てみたい。一戦だけ、そこにいるリュウと戦って見せてくれんか、と仰っています」
なんと、長老直々にカズトのバトルを見てくれるというのだ。交換条件のように思えるが、ドラゴンポケモンに造詣が深い人物が興味を示し、アプローチをしてくれるというのは、カズトにとってはむしろプラスでしかない。断る理由はないだろう。
「喜んで挑ませていただきます!」
そうと決まれば早く、全員でジムが所有するフィールドへと移動する。
まさに道場といった造りになっているため、より一層、修行という意識が強くなって身が引き締まる。
「フフガフガ」
「ルールは一対一のシングルバトル、相手を倒した方の勝利じゃ、と仰っています」
「分かりました」
カズトの向かい側には、長老の元まで連れて行ってくれた男、もといリュウが立っている。
使用してくるのはおそらく、先ほども隣にいたシードラだろう。シードラ自体はみずタイプだが、ドラゴンの力を秘めていることから、フスベシティでも手持ちポケモンとする人は多いと考えられる。
それはつまり、育て方に関しては先人の叡智が残されており、強力なポケモンに育てられている可能性が非常に高いことを示唆している。油断は微塵も許されない。
「我が一族の力、しかと見るがいい! 行け、シードラ!」
「マグナ!」
みずタイプにはメリープが相性的に有利だが、折角のドラゴン使い一族に見てもらえる機会だ。こちらもドラゴンポケモンで行くのがセオリーとなるに違いない。
「そのポケモンは?」
「ホウエン地方のドラゴンポケモンです。こいつの戦いを見てもらいたいと思って」
「良いだろう。さあ、かかってこい!」
どうやら先手を譲ってくれるみたいだ。
タツベイからコモルーに進化してまだ日も浅いので、慣れないところもあるが、しっかり対応してこの戦いを勝利で終わらせたい。
「行くぞ、"ずつき"だ!」
タツベイの頃からの得意技でシードラに向かって突撃するが、体が重くなった分、如何せん前よりもスピードが落ちてしまっているようだ。これに関しては他のポケモンでも同様の例が出てくるため、コモルーだけの悩みではない。
とはいえ、新たな戦い方を模索することで乗り越えなければならない問題ではある。それぞれのポケモンに合った戦い方ができて初めて、一流のトレーナーになれるというものだ。
「躱して"みずでっぽう"!」
「"まもる"!」
案の定、素早いシードラには動きを見切られ回避されてしまった。
やはり、コモルー最大の特徴である硬い外殻を活かした戦法をとる方向にシフトしなければならないかもしれない。だが一方で、硬いということはそれが防御だけでなく攻撃にも転じることができることを指しているので、完全に攻めを捨てることは悪手になる。加減を考えるのが難しいところだ。
「"ひのこ"!」
「"みずでっぽう"!」
撃ち出された炎は、シードラの"みずでっぽう"とぶつかり、辺りには水蒸気が満ちて視界が白む。
相手はみずタイプということもあり、やはりほのお技は利きが悪い。
「みずタイプのシードラに、ほのお技など効かん!」
水蒸気で相手の姿が見えない中、リュウの声だけがカズトの耳に聞こえてくる。今のところ、近距離攻撃も遠距離攻撃も対処できていることからか、随分と余裕を感じさせる声色だ。
しかし、もう布石は打ってある。その余裕を失わせるため、カズトはここで勝負に出る。
「"ずつき"!」
「その技はさっきも見たぞ。シードラ、避け――」
リュウの指示がシードラに届くより早く、コモルーの攻撃がシードラの胴体を捉える。
"ずつき"のクリーンヒットを受けたシードラは勢いよく道場の壁まで吹き飛ばされた。
「バカな?! まさか一度目は手を抜いていたのか!」
「いえ、二回ともマグナは本気でしたよ」
スピードに違いはない。ならば何が違うのかというと、それは「コモルーとシードラの距離」だ。
一度目はバトルが始まったばかりで、お互いかなり距離を取った状態だった。コモルーの動きは見てからでも十分に対応可能なものだっただろう。変わって二度目、フィールドは"ひのこ"と"みずでっぽう"によって発生した水蒸気により相手の姿はおぼろげにしか見えなかった。この状況を利用して、コモルーは一度目より数歩手前から技を繰り出した。
余裕を持っていたとはいえ、当たるか当たらないかはギリギリのラインだった。ならばこっそりタイミングをずらしてやれば、相手はそれに気づかず同じ感覚で避けようとし、気づいた時にはコモルーが目の前まで迫ってしまっているというわけである。
「く……不覚を取ったか。だがまだ終わりではない! "たつまき"! そして"えんまく"!!」
シードラは"たつまき"を放った直後、その周囲を覆うように"えんまく"を纏わせた。局所的ではあるが、カズトがたった今行った戦法とかなり近い。
"えんまく"で相手の視界と距離感を鈍らせ、対処に手間取られている間に本命の"たつまき"が襲いかかってくるコンビネーション技だ。
系統の違う二つの技を同時に対処しなければならないので、別個に対応していれば後手後手になって相手にペースを持っていかれてしまう。ならば、一気に突破するしかない。そして、それが得意なのがドラゴンポケモンだ。
「"りゅうのいぶき"で吹き飛ばせ!!」
進化したことで今までより増大した竜のエネルギーを技に乗せて解き放つ。
シードラの"えんまく"のさらに外側を包み込むように放たれた"りゅうのいぶき"が黒煙で覆われた視界を切り裂くように吹き抜けた。それはなおも勢いを増し、"たつまき"をも呑み込み、シードラへと向かう。
「ぐわああああ!」
あまりの強さに、シードラの傍にいたリュウにまで攻撃の余波が襲いかかってしまった。もちろん、直撃を受けたシードラは戦闘不能。カズトの勝ちである。
「バ、バカな……。この威力、イブキ様のハクリューに匹敵する……?」
「フガフガ」
「そこまで、と仰っています」
リュウが言うには、今の"りゅうのいぶき"はジムリーダーのイブキと手合わせした際に感じた圧と同等のものを感じたという。
ただの一人のトレーナーであるカズトとしては、そのことを一概に信じることはできなかったが、進化したことで強大なパワーを身に着けたコモルーならばあり得るのではないかとも考えられる。ドラゴンポケモンというのは、それほどまでに大きなポテンシャルを秘めているのだ。
「フガフガ」
「よく鍛えられたポケモンじゃ、お主の実力は本物じゃろう、と仰っています」
「ありがとうございます!」
「フガ……フガフガガ」
「じゃが……それ故に壁にぶつかることもあるだろう、頑張るのじゃ、と仰っています」
長老からは壁について詳しくは語られなかったので、ここについては自分たちで探していかなければならないのだろう。とはいえ、今は目の前の勝利を喜ぼう。今回戦ったリュウも、ジムリーダーの修練の相手を務めるほどの実力者だ。誰でも勝利することはできない相手である。
さて、ジムリーダーが戻るまでの時間潰しということで行ったバトルだが、イブキは未だジムを空けているため、カズトは先に道場からフスベの長老が管理する書庫へと案内を通された。
「これが全部……」
カズトの驚きも無理はない。見渡す限りの書物の山。ここには代々蓄積されてきた知識や伝統がこの部屋に本という形で残されている。一つの一族で集めたにしてもかなりの数であり、小さな図書館ならば開くことができるのではないだろうか。「フスベの歴史」、「ドラゴンの心得」、「聖なるドラゴンタイプ」などなど、ありきたりなタイトルから興味深いタイトルの本まで勢ぞろいである。
「こちらにある書物はご自由に読んでいただいて結構と長より仰せつかっております」
「全部ですか!?」
「はい、全部です」
嬉しいような、悲しいような、これだけの資料に目を通すとなると年単位での作業になってしまうことは間違いない。フスベシティに長く留まる予定は立てていないので、調べたいことをピックアップし、それに対応していそうな書物を手に取ることにする。
「まずは……デンリュウについての情報がないか調べてみよう」
ジョウト地方に多く生息しているとはいえ、本来でんきタイプであるデンリュウについての資料はここには少ない。予め長老からデンリュウについての資料の場所を聞いていたカズトは、目当てのものを早々に見つけた。
「かなり古いな。色もくすんでる」
奥付と呼ばれる本の発行された年月などを記したページを開いてみると、そこに記されていたのは今から数十年は昔のものであった。最近のものがないことから、デンリュウからドラゴンタイプの力が失われ、人々に認知されなくなってから久しいことが分かる。
「っ、この絵! 出てこいシャーフ!」
ボールから姿を現したメリープはいつもと同じくフワフワモコモコとした体毛に包まれている。メリープと絵を交互に見たカズトは、一つの確信を得た。
「やっぱり、この絵に描かれてるデンリュウはメリープの頃に生えていた毛がそのまま残ってる……!」
カズトが凝視しているその絵にはデンリュウが描かれていた。しかし、それは以前見たことあるデンリュウの姿ではなく、頭部から背部にかけて真っ白な体毛に覆われた姿をしているものだったのだ。メリープの進化後であるモココよりもさらにモフモフとした姿である。実際のメリープの体毛と見比べると毛の癖がよく似ていることから、進化してもなお、毛をそのまま保持しているのだと分かる。
「これが
資料には当時のことも記されており、強力な電力を蓄えた体毛を活かし他のドラゴンポケモンにも引けを取らない強さを有していたという。でんき技だけに留まらず、ドラゴンタイプの技も扱っていたようだが、人との共存生活が本格化すると同時にその力を振るう個体は数を減らし、この資料が書かれた当時ではもう数えるほどしかこの姿のデンリュウは残っていなかったそうだ。そうした経緯もあり、今では竜の力を持つ個体がいなくなってしまったことで、フスベでデンリュウをパートナーとするトレーナーの数も同様に減っていったのだろうと推測できる。
カズトが思うに、メリープの頃から体毛に非常に強力な電気を纏っているデンリュウが、何らかのアクシデントなどで毛に触れてしまった人間に危害を加えないため、進化する過程で段々と体毛を少なくしていったのではないだろうか。強さを失う代わりに、人と共に生きることを選んだポケモンとの絆を感じて止まない。
「なんて、考えすぎかなぁ?」
メリープの顔を撫でながら、今では見ることのできないライトポケモンの容姿に思いをはせる。
「お前はこの姿になりたいと思うか? シャーフ」
メリープの前に過去のデンリュウの絵を見せると、少し興味を示したものの、また何事もなかったかのように顔を背けた。カズトにはその光景が、まるで自分を選んでくれたかのように感じられて少し嬉しかった。
「さて、他のドラゴンポケモンについても調べてみるk――」
元の場所にデンリュウについて記された書物を戻し、新たな本を手に取ろうとしたカズトだが、その独り言を掻き消す音が資料室の中に響いた。音が入り口の方より鳴ったことから、カズトの視線も自然とそちらへ向かう。そこには特徴的なボディースーツを身につけた女性が仁王立ちしていた。先ほどカズトが聞いたのはドアを勢いよく開いた音だったのだろう。
「貴様か。リュウを倒し、長に認められたドラゴン使いとは」
「あ、はい。そうですがあなたは……?」
「名乗るのが遅れたな。私はイブキ。このフスベジムのリーダーを務めている」
「ジムリーダー……。あ、オレはカズトです。よろしくお願いします」
どうやら竜の穴から戻ったイブキが、カズトの元に足を運んでくれたようだ。堂々とした立ち振る舞いは修行の後とは思えない余裕を感じさせ、同時にその強さを醸し出している。
「私への挑戦ということだが、間違いないか」
「はい! ですが、今日は待ってもらっても良いですか? 折角貴重な資料を読む機会をいただいたので……」
まだデンリュウについての資料しか目を通せていない。これでは気になっているものが多すぎてこれからジム戦に集中する気にはなれないのだ。
「構わん。私も今日はポケモンたちを休ませたい。試合は明日にするとしよう」
「ありがとうございます」
「詳しいことはリュウに伝えておく。ここでの気が済んだら奴に話を聞け」
「分かりました。明日はよろしくお願いします!」
「ああ」
話を済ませたイブキは素早く身を翻して資料室を後にする。ドアを閉める音を最後に、部屋には再び静けさが戻った。
「さてと、じゃあこれとこれを読んで……夜はみんなのコンディションを確認しないとな」
明日への意気込みを胸に、今はひとまず、目の前にあるこれまたドラゴンポケモンの絵が印象的な本を読み進めるのだった。
―――――――――――――――
「カズト……」
イブキは道場に繋がる廊下を一人歩きながら呟いた。イブキが勝ちを譲っていないとはいえ、リュウもフスベシティに住むドラゴン使いの中ではかなりの実力を持つトレーナーである。そのリュウが敗北したという事実はイブキが少年を警戒するには十分な要素であった。
「先日のスイクンといい、やはり世界は広い。まさかあのような少年がドラゴンポケモンを扱えるとはな」
本来ドラゴンタイプのポケモンというのはプライドの高い種族である。イブキや彼女の従兄であるワタルからしてみればその力を十全に活かすことも造作ないことであるが、それには相応の修練が伴う。だからドラゴン使いはその数が少ないのだ。それをまだ年端も行かない少年が成すこと。少年の持つ才能の片鱗をヒシヒシと感じる。
「おっと、いかんな。柄にもなく楽しみに感じてしまう」
リュウも単純なパワーで考えると自身のハクリューとも良い勝負をすると言っていた。久しぶりの好敵手となり得る存在にイブキは無意識に上がった口角を抑え込む。明日のジム戦で自分にとっても何かのきっかけが見つかるかもしれないとイブキは予感していた。
投稿が大変遅くなり申し訳ありません。
この話は前回の投稿後すぐに書きあがっていたのですが、今後のプロットを考えたり、他の方の小説の描写の仕方を研究したり、積みゲー消化してたりして投稿がこんなに遅くなってしまいました。
少なくともジョウト編完結までに失踪だけはしないので、気長に待っていただけると幸いです。
ホウエン編の構成もちゃんと考えてるけど、そこまで書けるかはプライベート次第かなぁ。
細々と頑張ります。
メガデンリュウはヒスイの新ポケモンみたいに時代の変化と共に形態を変化させたという設定にしています。メガシンカはそれを後天的に再現する方法として利用されているという感じで。
まぁまだメガシンカ自体この地方ではあまり認知されていないので、触れるのもしばらく先になりそうですが。
次回はフスベジム戦。戦闘描写頑張らなきゃ。