SPECIALになるために   作:Zuiki

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別ゲーとリアルの合間を縫い、コツコツと書き進めております。

フスベジム戦後編、切り札キングドラとの戦いをお楽しみください。


第24話 VSキングドラ

 ついに始まった、ジョウトジムリーダー最強格の一人、イブキとの決戦。ここまでミニリュウ、ハクリューと強力なドラゴンポケモンたちが相手だったが、カズトはこれらを相次いで撃破。イブキを最後の一体まで追い詰めた。

 

 イブキの最後のポケモンであるキングドラは、普段は深海に住む珍しい種族だ。進化するためにも特殊な道具が必要になっているため、野生の個体だけでなく、それを有するトレーナーの数も少ない。

 ドラゴンタイプにふさわしい能力の持ち主でもあり、欠伸や身動きを一つするだけで船を飲み込んでしまう規模の激しい渦潮を発生させることができるという、海に生息するポケモンの中でも上位の強さを誇っている。

 

 そんなキングドラがイブキの切り札である。手強くない理由がない。

 

「勝利は譲らん。"あまごい"!」

 

 天気を晴れにする"にほんばれ"とは対称に位置する"あまごい"は、天気を雨へと変化させる。道場内に雲が現れ、ポツポツと雨粒を降らし始めた。

 

 ハクリューの天候を操作する能力は、あくまでも自然に働きかけて行うものであるため、先ほどダーテングが使った"にほんばれ"にはあまり干渉することができなかった。

 だが、イブキの手持ちポケモンで天気を変えることができるのはハクリューだけではない。キングドラもその身に宿す能力を最大限活かすために必要な要素として"あまごい"で雨を降らせることができる。

 

「キングドラの力、思い知れ! "りゅうのはどう"!」

 

 キングドラの口から衝撃波となって撃ち出された竜のエネルギーがダーテングに命中する。威力もさることながら、カズトが驚かされたのはその速さだ。

 

「"すいすい"……! 全く見えなかった……」

 

 "ようりょくそ"が晴れのとき、ポケモンの素早さを上げるものならば、"すいすい"は雨のときにポケモンの素早さを上げる特性だ。

 ダーテングが発揮したものと効果としてはほぼ同じものではあるが、練度が違いすぎる。雨を体に取り込み糧とする際の効率の良さがダーテングのそれとは大違いだ。

 

 今のキングドラはフィールドを縦横無尽に飛び回り、相手を撃ち抜く優れた狙撃手と言ってもいいだろう。それほどまでに捕捉が難しく、また一撃が重い。

 

「"みずのはどう"!」

「防御だ! "はっぱカッター"!」

 

 "りゅうのはどう"よりはスピードが遅く、迎撃も可能な"みずのはどう"に渾身の"はっぱカッター"を向かわせる。

 葉の刃は激しい水しぶきを散らしその勢いを削ぎ落としていくが、いつまで経ってもその勢いは衰えることなく、ダーテングへと近づいて来るではないか。

 

「ダメだ躱せ!」

 

 咄嗟の指示がなければ、あのままクリーンヒットし、さらなる追撃に晒されることだっただろう。

 

 "りゅうのはどう"が矛となり、"みずのはどう"が盾となる。

 

 これがイブキのキングドラが駆使する二つの波動。元々の技の地力もさることながら、特性の"すいすい"も加えれば、攻防一体にさらに速さが上乗せされるというわけだ。鬼に金棒とはこのことである。

 

「まだいけるよな? シード!」

 

 しかしカズトもただ相手の技を喰らうだけではない。技として次々と明かされる相手の手札を分析し、付け入る隙を見つけ出す。相手も一体のポケモンである以上、できる範囲には限りがある。そこを見抜き、一気に畳みかけるのがベストとなる。

 幸いにも、こちらはダメージを負っているとはいえ、三体ともまだバトルが継続できる。しかもカズトの切り札であるコモルーは、今回一度も戦っていないので体力は万全の状態。三体の連携を噛み合わせることでキングドラという強敵にも競り勝つことができるはずだ。

 

 ダーテングもカズトの問いかけに間髪入れずに頷く。

 幼い頃からのパートナーに信頼されている。その繋がりがあれば、ポケモンの力は極限まで引き出されていく。

 

「"ぼうふう"!!」

 

 ハクリューをも飲み込んだ一度目よりも、さらに一際巨大な竜巻が雨雲を裂いて出現した。雨という悪天候が影響を与えているため、どれだけ素早くとも、暴風雨となったこの技を避けることはできない。

 

「"はっぱ――」

「"りゅうのはどう"!!」

 

 だが"はっぱカッター"とのコンボ攻撃が発動するよりも早く、キングドラの"りゅうのはどう"が竜巻の中で放たれる。

 すると、何ということだろうか。"ぼうふう"により生まれた風の流れにキングドラの技が乗ることで、逆に竜巻の中にいるキングドラを守る防壁へと変化したのだ。

 波動のエネルギーが渦を巻くことで、"はっぱカッター"を弾き返している。

 

「あの風を利用するなんて……」

「キングドラは渦潮を生み出すことができる。たとえ風になろうと、渦の中で戦う上でキングドラの右に出るものはいない!」

 

 やがて"ぼうふう"の効果時間も切れ、風が止み、雨が残るのみとなった。このままでは相手のペースに持ち込まれてしまうと判断したカズトは、キングドラの足を止めるべく、要因となっている雨を打ち消すことを試みる。

 

「シード、"にほんばれ"だ!」

「させると思うか? "みずのはどう"!」

 

 ダーテングが打ち上げたエネルギーの塊が効果を発揮するかと思われた刹那。飛来した波動がエネルギーのバランスを掻き乱し、消失させてしまった。

 

「んな無茶苦茶な……!?」

「"みずのはどう"に向かって"りゅうのはどう"!!」

 

 "にほんばれ"を無効化してなお、宙に残存する"みずのはどう"に"りゅうのはどう"がぶつかった瞬間、波動が波動を増幅し、とてつもない威力をもってダーテングへと襲いかかった。

 ダーテングの使える技では、威力が際立った今の"りゅうのはどう"を止めることはできない。成す術もなく直撃し、着弾後の煙が晴れた場所には倒れこんだダーテングの姿があった。

 

「ダーテング、戦闘不能!」

「戻れシード。お疲れ様。シャーフ!」

 

 ダーテングを倒されたカズトが次に繰り出すのはメリープだ。しかし、先ほどのミニリュウとの戦闘や現在のフィールドの状態が尾を引き、メリープにとって良いとは言えない状況である。利点もないわけではないが、かなり厳しいことに変わりはない。

 

「やるしかない……! シャーフ、"でんきショック"!」

 

 メリープのでんき技がキングドラに向けて放たれるも、未だ雨が降り続く中ではなかなか狙いを定めることができない。

 

「雲に撃て!」

 

 直接当てることが困難であると判断したカズトはキングドラではなく、"あまごい"によって作り出された雲を狙うことにした。

 イブキもその狙いが何であるか理解したのだろう。それを阻止するべく攻撃を苛烈化させる。

 

「撃たせるな!」

「行けぇえええ!!」

 

 ミニリュウとの戦いで消耗したメリープではキングドラに勝ち切ることは難しい。これは事実として捉えるべきであろう。ならばメリープがこのタイミングで一矢報いるためには、最初から全力を振り絞った最大の技を仕掛けるしかない。

 

 キングドラの攻撃がメリープに命中すると同時に、その頭上から雷が降り注ぐ。

 雷は光だ。音よりも先に対象の元へと到達する。見てからの回避は通常間に合うことはない。

 

「メリープ、戦闘不能!」

 

 メリープの戦闘不能を告げる声がカズトの窮地を示している。だが、強烈な電撃に身体を少し焦がしたキングドラの様子を見たカズトには勝利のビジョンが浮かび上がっていた。

 それに今の落雷でエネルギーを使い切ったのか、上空の雲が消え、室内に響いていた雨音が鳴り止んだ。

 間違いなく、この勝負の中で一番の勝機である。

 

「おのれ……やってくれるな」

「オレは勝ちます! マグナ!!」

 

 カズトが繰り出す切り札を見て、イブキもその強さに気づいたのだろう。今まで以上に覇気を漲らせ、カズトとコモルーを睨みつける。

 

「やってみろ!! "りゅうのはどう"!」

「"りゅうのいぶき"!」

 

 ほぼ同時に両者から放たれた二つの技は上空で激しくぶつかり合い、爆発する。

 威力は互角だと見る人は言うかもしれない。しかし、間近でその威力を感じているカズトは気づいていた。このまま遠距離での撃ち合いを続けると負ける、と。

 

 タツベイだった頃から、コモルーが得意とするのは近距離での戦闘だった。"ひのこ"や"りゅうのいぶき"は長く愛用しているものの、これらはあくまで戦いの主導権を握るための布石や、仲間とのコンビネーションの際に使用されることが多い。実際に今までジムリーダーを打ち倒してきた最後の技も零距離での一撃ばかりだった。

 中途半端な遠距離技でジムリーダーに勝利することはおそらく難しい。可能ならば接近戦に持ち込み、得意な型で勝負を決めに行きたいというのがカズトの考えだ。

 

 幸いにもまだイブキにはこちらのスタイルを把握されているわけではない。隙を見つけて懐に潜り込めば勝ちを掴むことができると思ったカズトが戦略を練っていると、不意にイブキが声をかけてきた。

 

「接近戦ならば勝機がある――。そう考えていそうだな?」

「ッ!?」

「フフ、随分と分かりやすい反応をする。私が未知とはいえ、ドラゴンポケモンを見て何も気づかないとでも?」

 

 完全に迂闊だった。相手はドラゴンタイプのエキスパート。例え今まで見たことがなくとも、コモルーが有する特徴から逆算し、得意な戦い方を既に推測していることは想像できたはず。

 カズトは改めて自分の考えが甘かったことを自覚した。

 

「万に一つもあり得ない。徹底的に叩き潰すまで! "りゅうのはどう"!」

 

 再びコモルーに向けて放たれる大技。直撃してしまえば大ダメージは免れない。

 

「"ドラゴンクロー"!!」

 

 コモルーの爪にオーラが宿ると、迫りくる波動を文字通り切り裂いた。

 当たるとマズいのであれば、当たる前に打ち消してしまえば良い。攻撃こそ最大の防御という言葉があるが、よく言ったものである。

 これにはイブキも予想外だったようで、僅かな間ながらも呆然としている様子があった。だが流石ジムリーダー、その隙も一瞬で終わり、すぐに第二波となる技の指示を出す。

 

「くっ、まだだ。"みずのはどう"から"りゅうのはどう"!!」

 

 ダーテングが手も足も出ずに敗北した二種類の波動を組み合わせた合体技だ。これを喰らってしまうとコモルーでも危険であると感じ取れるほどの圧倒的な威力だったが、カズトはこれを見てもなお、その表情を崩さずに立ち向かう。

 

「突っ込めマグナ!」

「な……何を考えている!?」

 

 どうやらこの指示は完全にイブキの想定を超えていたようだ。動揺も隠しきれておらず、驚愕の表情を晒している。

 もちろん、カズトもやけくそで指示を出したわけではない。すべては次にコモルーが出す技へと繋がっている。

 

 膨大な力の奔流にぶつかる直前、コモルーの周囲に障壁のようなものが現れ、キングドラが放った波動を完全に受け流した。

 攻撃こそ最大の防御という言葉にはもちろん、対になるものもある。防御もまた、最大の攻撃と言えるのである。どれだけ正確かつ、強力な攻撃でも当たらなければどうということはない。それを体現することができる技が一つ存在する。

 

「"まもる"か……!」

「やっぱり気付かれた。でももう遅い! "ドラゴンクロー"!!」

 

 歴戦のトレーナーだけあって、コモルーが何の技を使って攻撃を弾いたかは瞬時に見切られてしまったが、どれだけ早く気付かれたとしても、この一撃だけは避けることができないはずだ。

 

 コモルーのオーラにより研磨された鋭い一撃が寸分違わぬ正確性でキングドラを穿つ。効果抜群のこの技にキングドラも軽くないダメージを負ったはずであるが、驚異の耐久力をもって未だ倒れることはない。

 今までダメージとして蓄積させてきたダーテングとメリープの攻撃も、過去のバトルと比較した上で最高レベルの威力を誇っていた。それにも関わらず、三体分の攻撃を受けてもなお倒れないキングドラのタフネスに、カズトは底知れないものを感じ身震いする。

 

「今までの挑戦者の中にもこの技を防御することができた者はいたが……。まさかカウンターまでとはな。つくづくお前には驚かされる」

 

 イブキの雰囲気がさらに研ぎ澄まされていき、空気が震えるような威圧感をも放つようになり、カズトは無意識に頬を伝ってくる汗を拭っていた。

 

「その強さに敬意を表し、この技で決着をつけるとしよう」

 

 伝う雫は一滴、また一滴と増えていく。勝負の熱により流れていた汗は冷や汗へと変化していた。

 

「"りゅうせいぐん"!!!」

 

 "りゅうせいぐん"。漢字にすると流星群だろう。一般的には宇宙を漂う複数の星が地球の大気圏に突入することで化学反応を起こし、次々と発光する現象のことを指すが、それをこのバトルフィールド上で起こそうというのか。

 

 あまりの規模の大きさにカズトは言い知れぬ疑念のようなものを感じていたが、それはすぐに解消されることとなる。

 キングドラが宙に放ったエネルギー体が光を放った瞬間、まさにカズトが想像した通り、無数の隕石とも言える何かがフィールドに降り注ぎ始めたのだ。

 

「"まもれ"ッ!!」

 

 それは理性による命令ではなかった。考える間もなく本能が、あの技は危険であると判断したのである。

 

「マグナ!」

 

 宙にあった隕石が全て地上に落ち、土煙が晴れたそこは筆舌し難い光景が広がっていた。コモルーの周りは隕石が落ちたことにより穴ぼこだらけとなっており、"まもる"による防御がなかったら間違いなく耐えることはできなかったことが容易に想像できた。それほどまでに他の追随を許さない圧倒的な力を感じる。

 

「これが、ドラゴンタイプを極めた者が修めることができる技――"りゅうせいぐん"だ」

「"りゅうせいぐん"……」

「二度は耐えられまい。キングドラ!!」

 

 キングドラが再び空へと、隕石の核となる力を凝縮させた高密度のエネルギー体を放出する。

 あの威力の技がもう一度来るとなると、防ぎきることは不可能だ。"まもる"も絶対防御と言えるものではない。強力なバリアを張るため、連続で発動すると反動により精度が著しく低下する。結果、相手の攻撃を防ぎきれなかったり、そもそもバリア自体を張ることすらできなかったりするのだ。

 つまり、直前に"まもる"を使って技を防いだコモルーは、今回の"りゅうせいぐん"を同じように防ぐことはかなり難しいという訳である。カズトの顔には、絶望の色すら浮かび上がっていた。

 

(どうする? あんな強力な技を連続で――)

 

 強力な技を、連続で……?

 

 カズトは自身の心を落ち着かせ、集中してキングドラを観察する。すると先ほどは気付かなかったが、キングドラの放ったエネルギー体の大きさが一度目のものより小さく見えた。それに輝きも心なしか淡く見える。

 

 カズトの頭の中では一つの推測が確証を得ようとしていた。そして同時に、希望の一手を見出すきっかけにもなっていた。

 

「散れ!! "りゅうせいぐん"ッ!!!」

「"りゅうのまい"」

 

 力強く吠えるイブキとは対称に、カズトは技名を小さく呟くだけであった。しかしその声ははっきりとコモルーへと届き、コモルーの体には竜の力が溢れ出す。

 

 昨日、フスベジムの資料室で初めて見て数度練習しただけの技。ぶっつけ本番ではあるが、カズトはコモルーならばその技の真価を引き出すことができると確信していた。

 

 何故ならば、コモルーがタツベイだった時、偶然にも同じ動きをよくしていたからである。思えば、あの動きをした後だけは異様に調子が良かった。きっと、本人も知らないうちに"りゅうのまい"を使っていたのだろう。理由は分からないが、その動きをすれば調子が良くなるといったあやふやな状態だったため、カズトもタツベイもそれが技の一つであることに気付くことがなかったのだ。

 しかし、技として明確なビジョンを得た現在ならば、以前の頃よりもさらに洗練された力を発揮することができる。

 

「"ドラゴンクロー"ッッ!!!」

 

 飛来する隕石がコモルーにもその牙を剥くが、カズトの推測通り、一度目で見た絶望感すら感じさせるあの威力は鳴りを潜めていた。この威力ならば、コモルーは数発程度耐えられる。にんたいポケモンの名は伊達ではない。

 

 "りゅうのまい"を使った際に生じた隙でいくらかの被弾はしたものの、やはり今のコモルーを止める決定打にはならない。カズトもコモルーの動きを見て、間違いなく過去最高のコンディションであることを感じ取っていた。

 

 次々と降り注ぐ隕石を躱しながら、まるでタツベイの頃のようなスピードで一気に距離を詰めるコモルー。連続した大技の使用により、キングドラは一瞬反応が遅れてしまう。

 刹那、竜爪がキングドラの体に命中し、纏っていた竜のオーラが爆発を伴い轟音を響かせる。地面に叩きつけられたキングドラは、その身をもう一度宙へ持ち上げようとするも、叶わず全身を大地に預けた。

 

「キ……キングドラ、戦闘不能!! よって勝者、挑戦者カズト!」

「ハァ……ハァ……勝った……」

 

 今まで保っていた集中が途切れたことで足の踏ん張りも効かなくなったカズトは、ペタリとへたり込む。そんなカズトの前に、しなやかな指をした手が差し出される。

 

「これでは、どっちが勝ったか分からないな」

「ハハハ……」

 

 カズトが、自身の差し出した手をしっかり掴んだことを確認したイブキは、軽々と少年の体を引き上げた。

 

「イブキ様……」

「リュウ、審判ご苦労だった。こやつと少し話がしたい。先にバッジの用意を済ませておいてくれるか」

「はい!」

 

 イブキを気にする様子を見せながらも、リュウは道場から席を外す。

 未だ放心状態でぼんやりと、立ち去るリュウの背中を眺めていたカズトは、突如顔――正確には頬――を掴んで来るイブキの手を避けることができなかった。

 

「うぶっ」

「このような小僧に私が負けるとはな。最後の"りゅうせいぐん"、気づいていたのか?」

「むぐ……答えるので放してもらっていいですか」

「ハハハ! すまない、からかってしまった!」

 

 不服の表情を浮かべるカズトを見て、イブキは心底面白そうに笑い声を上げる。清々しいまでの笑顔にカズトは苦笑いするしかない。

 

「あの状況……"まもる"が連続して使えない中、どうすればいいか考えていたときに気付いたんです。"りゅうせいぐん"も強力な技である以上、連発には何かデメリットがあるんじゃないかって」

「そうだな……。確かに"りゅうせいぐん"は一度撃つだけでかなりの力を消耗する。連発でもすれば、瞬く間に威力も下がっていくことだろう。だが、あの状況でそれを見抜くとは大した観察眼だ」

「正直賭けでしたけどね。読みが外れていれば、負けていたのはオレたちでしたから」

 

 そう言って笑うカズトだったが、イブキは感じていた。

 

 あれは、カズトたちが勝つべくして勝ったのだと。

 

 間違いなくイブキは本気で戦っていた。ドラゴン使いにとっては奥義である"りゅうせいぐん"も出したのだ。キングドラはダーテングやメリープも含めた三体分の大技を喰らっていたなどという要素を差し引いても負けることはないと思っていた。

 だが、最後の"りゅうのまい"だけは完全に違った。コモルーがその技を習得していたことが予想外だったわけではない。当たれば負けるという絶体絶命の状況で変化技など、今日戦った中でも戦法として全く使っていなかったカズトが、あの最終局面で"りゅうのまい"を指示したことこそがイレギュラーだったのだ。

 

 避けることを前提とした"こうそくいどう"や雨を打ち消すための"にほんばれ"などはバトル内でも見られたものの、あくまでそれは不利な状況を脱するための策だ。今回の"りゅうのまい"は寧ろ危機を増長する選択肢であった。結果だけ見れば、それこそが最善の手であったものの、あれはカズトの普段のバトルスタイルとかけ離れたものであったことはイブキにも分かった。

 

 そしてそのスタイルを捨てたスタイルこそがイブキの読みを完全に上回り、勝利をもたらしたことも。

 

「いや、その選択こそが私たちを打ち負かす唯一の策だった。"りゅうせいぐん"を回避し、キングドラに近づくためには"りゅうのまい"しかなかったからな」

「いやぁ、実は"りゅうのまい"ってまだ完成してなかったんで使う気はなかったんですよね。あの時は藁にも縋る思いでした」

「な……」

 

 カズトのその言葉に、イブキは今度こそ声を張り上げて大笑いをした。

 

「ハハハハハ! 通りで読めなかったわけだ! しかしあそこで技をものにし、勝利を手繰り寄せたのはお前と相棒の力だ。誇るが良い」

 

 そうしてイブキはいつの間にか用意を済ませ戻って来ていたリュウから受け取ったものをカズトへと手渡した。

 

「受け取れ。ライジングバッジだ」

「ありがとうございます」

「久々に楽しい勝負ができた礼だ。これも持っていくと良い」

「これは……」

「"りゅうのキバ"だ。ドラゴンタイプの力をさらに引き出すことができる。相棒に持たせてやれ」

 

 その力は本物のようで、ボールにいるコモルーが引き寄せられるようにそのキバに興味を示している。

 

「良いんですか? こんなに良いものを貰ってしまって……」

「構わん。それに、お前とはまた会う気がするからな。その時も心震える戦いができるよう、先行投資の意味も兼ねている」

「それなら、オレももっと強くならないとダメですね」

「フフフ……」

 

 かくして、カズトは強力無比なドラゴンポケモンを操るジムリーダー・イブキとの勝負に勝ち、五つ目のバッジを手に入れた。フスベで学んだことはカズトにとって非常に大きなものとなる。得たものを自身の力とし、前に進むためにもカズトはさらなる挑戦へ望むのであった。




VSキングドラ、いかがでしたでしょうか。
気付かれている方もおられるかもしれませんが、当作品では覚える技数に制限はかけていないものの、一度のバトルで使う技は原作通り四種までしか出しておりません。
理由としては、制限を設けないと技のデパートになって演出が大変なことになるからですね。

今回のジム戦で使われた技もまとめておきます。


カズトのポケモン

シャーフ(メリープ) Lv.21
使った技:たいあたり、でんきショック、アイアンテール、こうそくいどう

シード(ダーテング) Lv.37
使った技:にほんばれ、はっぱカッター、じんつうりき、ぼうふう

マグナ(コモルー) Lv.40
使った技:まもる、りゅうのいぶき、ドラゴンクロー、りゅうのまい


イブキのポケモン

ミニリュウ Lv.27
使った技:まきつく、たたきつける、ドラゴンテール、ハイドロポンプ

ハクリュー Lv.35
使った技:でんじは、しんぴのまもり、りゅうのいぶき、げきりん

キングドラ Lv.55
使った技:あまごい、みずのはどう、りゅうのはどう、りゅうせいぐん

ちなみにハクリューについては原作ポケスペに登場した技構成のままになっています。あとは完全オリジナル。


次回は原作のストーリーに再び絡んでいく予定ですので、お楽しみに。
UAも10000超えて皆さんに見てもらえていることをヒシヒシと感じています。
ありがとうございます!
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