ハーメルン以外での活動も報告してるので、興味ある方は是非!!
あれから捕獲を逃れたルギアを巡り、クリスが中心となりポケモン図鑑の追跡機能を駆使したものの、結果は不発。目的を果たしたマチスはいつの間にか姿を消していた。
その後、シルバーの周囲の偵察により、ルギアが何者かの襲撃を受けた結果、我を失って暴れていたことが判明した。このことから、ルギアはカズトたちよりも一足早く、その襲撃者によって捕獲されてしまったのではないかという結論に至った。
一人で襲撃者を探しに行こうとするシルバーをクリスは止めるが、そのクリスの言葉をゴールドが遮る。
「アイツとオレは同じ敵を追ってる! だから、たとえ別々に動いてようと、その敵に行き着くときにゃあ絶対また顔を合わせる。そう思ってっからよ!」
ゴールドらしい言葉である。仮面の男を追う以上、きっと自分たちはどこかで交わるはずだ。今回、こうして四人が揃ったこともきっと運命の悪戯に違いない。ゴールドと同様に、カズトもそう確信していた。
「あ!! 釣り人のおっさん無事か!?」
「イエローさんも無事かしら!?」
「ん? イエロー? もしかしてその子って麦わら帽子被ってたりする?」
「ええ、そうよ。知り合いだったの?」
「まあね」
クリスの話すイエローが、かつてエンジュシティからアサギシティまで共に行動したイエローのことなら、ゴールドが言う釣り人のおっさんというのは、イエローの叔父のことかもしれない。
海でルギアの攻撃に巻き込まれて離れ離れになってしまったようで、少し心配だ。
イエローに電話をかけようとポケギアを手にしたクリスだったが、ちょうど同じタイミングでそこに着信があった。イエローからかと思われたが、どうやら電話の主は違ったようだ。
『もしもしオーキドじゃが!』
「は、博士ぇ!?」
『なんじゃ!? なに驚いとる!?』
カズトも時々ラジオで聞いているポケモン講座でお馴染み、ポケモン研究における第一人者であるオーキド博士だった。
クリスもゴールドと同様にポケモン図鑑を持っているのなら、オーキドに図鑑を託されたのだと考えられる。キキョウシティで「有名な博士の依頼を受けた」とも聞いたから、きっとその依頼主がオーキド博士だったのだろう。
「すごいな、本物のオーキド博士か……」
話を聞いていると、イエローの捜索・救助に関してはオーキドが調査隊に依頼をしてくれるようだ。ひとまずは安心である。
オーキドの話はまだあるようで、クリスにはセキエイ高原まで向かうよう頼んでいた。依頼についてだろうか。
『これは君の他にもう一人、ゴールドという図鑑所有者にも同じことを頼もうと思っとるんじゃが……。アイツはどこにいるのか。いつも連絡がつかんからどうしたものか……』
オーキドの声を聞いたカズトとクリスは、とある人物に視線を向ける。当の本人は頭の後ろで腕を組み呑気にしていたが。
「あの、博士。セキエイに行って何をするかはともかく、その彼なら多分……、今、私の横にいます」
「よ!!」
そう言ってクリスがゴールドの方にポケギアをやると、彼も意図を汲んだのだろう。それはまあ元気な声が、件の男から発せられた。
『な!?』
「わりぃなオーキドのじいさん。オレ、ちょうどさっきまでうずまき島で気絶しててよ。どうやら一カ月近く眠ってたらしいわ!」
『一カ月じゃと!?』
「初耳だぞ! ずっと眠ってたのか!? 体調に異常は!?」
『む? 他にも誰かおるのか?』
「ああ、すみません。ご挨拶が遅れました。ゴールドの幼馴染でカズトといいます」
邪魔をしては悪いと思い、黙っているつもりだったが、ゴールドが一カ月近くの期間を孤島で寝たきりの状態で過ごしていたとは思わず、つい声を荒げてしまった。それも無理はない。そんなに長い時間気を失ったままでは、外部の要因に関わらず、命が危ない。身体に必要な栄養などを全く摂取することができないからだ。
しかし、ゴールドは見る限り健康体そのものだ。どこかやつれているとか、顔色が悪いとかいうこともない。なんなら寧ろ、以前見た時よりも状態は良いかもしれない。そんなことがあり得るのだろうか。
「なんか眠ってる間、ずっと何かに見守られてた気がすんだよ。そいつが何かしてくれてたのかもな」
「その何かって、ポケモンだったのかしら?」
「多分な。オレらの周りを護るように炎が出てたぜ」
『ほのおタイプのポケモンか。そんなことができるポケモンがいたかどうか……』
オーキド博士でも知らないとなると、新種のポケモンの可能性もある。生命エネルギーを与えることができるならば、相当な力を持ったポケモンであるだろう。
『まあ、そのポケモンについて気になるところじゃが、一旦置いておくとしよう。君たちにはセキエイ高原にて開かれるポケモンリーグの会場に、観客として紛れ込んでほしいのじゃ』
「ポケモンリーグだぁ? それが何なんだよ」
『以前ゴールドが仮面の男から偶然採取した金属粉……、覚えておるかの? あれの解析結果が出た。各ジムリーダーのみが持つ、協会から正式に用意された純正のジムバッジの一部であるとな!!』
「それって! ジムリーダーの誰かが仮面の男だってことかよ!?」
『我々はそう見ておる』
悪人や脅威から街を守るはずのジムリーダーが、悪の組織であるロケット団を率いる仮面の男だというのか。彼らを疑わなければならないのは、今まで数々のジムリーダーと会ってきたカズトとしては信じたくない事実だ。
「ちょっと待って! 仮面の男とかジムリーダーとか、一体何のことですか!?」
『うむ、クリスくんには改めて話すとしよう』
そうしてポケモン協会が今まで集めた仮面の男についての情報が、クリスに伝えられた。ウツギ博士経由でカズトが仮面の男と関わっているのは既に協会側にも伝わっていたのだろう。乗り掛かった舟ということで、カズトも話を聞くことができた。
―――――――――――――――
『――というわけで、今回我々は仮面の男に対して勝負に出るというわけじゃ』
「なるほど、ジムリーダーの中に敵の主犯格がいる可能性がある以上、協会は大々的には動けず、外部の人間を使うしかないってことですね……。ゴールド、カズト、これは責任重大よ!」
「ああ、今度こそぜってぇとっちめてやる!」
二人とも気合十分といったところだ。元より仮面の男に因縁があるゴールドはあたりまえだが、クリスも正義感が人一倍強い。仮面の男の所業に黙っているわけにはいかないのだろう。
カズトもオーキドから、このまま二人と行動を共にし、セキエイ高原に潜り込む提案をされた。ジムリーダーに頼れない以上、戦力は一人でも多い方が良い。こうしたことからも、妥当な判断だ。
「ただ、オレだけは別行動させてもらってもいいですか」
「はあ? 何考えてんだよ。オレたちと行こうぜ!」
ゴールドもカズトが断るとは思っていなかったようだ。だが、今回ばかりはカズトにしか使えない手が残っている。
『……理由を聞こう』
「さっき、今回のポケモンリーグでルール変更がされると言ってましたよね」
『うむ。全てのジムを制覇した者は、無条件でポケモンリーグ決勝ブロックに出場できるようになる。じゃが、それが何か――、まさか!』
「オレが今持っているジムバッジは七つ。あと残っているタンバジムを制覇すれば、ポケモンリーグ出場者として堂々と潜入できる」
これだ。これがカズトにしかできない手段だ。
今日このルール変更が発表されるとして、ポケモンリーグ開催まであと一週間。そんな短い期間でジムバッジを全て集めるのは至難の業だ。カズトもここまで来るのに一カ月ほどかかっている。
つまり、シード権を獲得することができる可能性が最も高い人物の一人がカズトなのである。これほど潜入に適した手札もあるまい。加えて、カズトが表で目立てば、裏で動くゴールドたちが有利になるかもしれない。表と裏から仮面の男を追い詰めるのだ。
「初めて会った日、ジム巡りをすると決めたあなたが……。まさかそんなにも強くなってたなんて」
「背中を押してくれたクリスのおかげだよ」
「へーへー、おアツいこって。ま、そういうことなら、付き合うぜ。最後のジム戦!」
「え? 別にオレに付き合ってくれなくても……」
「リーグまで一週間あんだろ? ならちょっとぐらい寄り道したって構わねぇよ。な、クリス!」
「ええ、私も着いて行くわ! それに、折角再開できたもの。またすぐお別れなんて寂しいじゃない」
そういえば、二人ともこういう人物だったとカズトは苦笑いする。ここで「オレなんかのために」などと言っては二人を怒らせることになるに違いない。二人はカズトが自分のことを卑下するのを良しとしないのだ。
「じゃあ、一緒に行こう! 二人と旅するのちょっと楽しみだったし!」
『では、無事を祈ってるぞ。クリスくんや、ゴールドから目を離さないように!』
「もうちょいオレを信じてくれよ……」
久しぶりの大所帯に、カズトは年相応に楽しそうに笑っていた。
―――――――――――――――
「ここがタンバシティか……」
「な~んかパッとしねぇとこだな」
「アサギと比べたらここは外部との交流も少ないの。確か良く効く薬が売っていることで有名だったから、ゴールドの怪我に効くものがないか見てみましょう」
「オレは別に――」
「ちゃんと手当て受けとかないと、いざって時ぶっ倒れるよ。これ実体験ね」
「カズトが言うとシャレになんねぇんだよ……!」
最初は手当てを嫌ったゴールドだったが、カズトのかつて病弱だった頃の話をブラックジョークとして披露すれば、渋々ではあったが大人しくなってくれた。
昔からずっと、なんだかんだ言ってはカズトの言うことを聞き入れてくれるところが、カズトがゴールドを兄貴分として慕う理由の一つでもある。
「へへ……、ん?」
ふとカズトの鼻先に、一粒の雫が落ちた。
「げ、こりゃ本降りも近いか?」
「ポケモンセンターまで急ぎましょう!」
三人が大急ぎでポケモンセンターに駆け込んだ瞬間、外で轟轟という音が聞こえ始めてきた。カズトたちの他にも雨を嫌って駆け込んできたであろう人たちが何人かいる。
「うひゃ~、こりゃしばらくは動けそうにねぇな」
「今夜はここで泊まるしかないわね」
「だね」
昼間にルギアと戦った三人はもうヘトヘトで、今すぐにでもベッドに倒れてしまいたいというのが本音だ。まだ夕方ではあるが、ゴールドの手当てをしてもらったら、眠りにつくのも時間の問題だろう。
「カズト? カズトじゃないか!」
ポケモンセンターの奥から掛けられた声に振り向いたカズトはそこにいた人物に目を丸くさせるしかなかった。
「ハル兄!?」
「俺もいるぞ」
「父さんまで!?」
なんとそこにいたのはカズトの兄と父――ハルヤとサトル――だった。父はポケモンレンジャーの制服を着ているので、おそらくこの近辺で任務があったのだと考えられる。
「こっちから様子を見に行く前に、逆にカズトの方から来るとはな」
「あ~、へへへ……」
以前ウバメの森で仮面の男のデリバードに殺されそうになって多大な心配をかけてしまったカズトとしては、ルギアと一戦交えた後の、このタイミングでは少々顔を合わせ辛い。
加えて、横にいるゴールドはボロボロの状態。何かやらかしてきたのは明白だ。
「初めてみる子もいるが……、カズト、ゴールド」
「「ハイッ!!」」
サトルの鋭い眼光に反射的に背筋を伸ばす二人。仕事モードのときのサトルは非常に厳しい人物であることは、息子であるカズトはもちろん、いつもカズトと一緒にいたゴールドもその身をもって知っている。ワカバタウンでやんちゃしては怒られていたのは、まだまだ記憶に新しい。
サトルは腕組みをして二人のことを見つめる。ピッピ人形があったとしても逃げることは到底叶わないことは今までの経験が物語っている。
「ちょ~っと、うずまき島で……」
「うずまき島……!? お前たち、あそこにいたのか!?」
横から声を荒げてきたのはハルヤだ。
ポケモンレンジャーとしての任務で、うずまき島周辺に潜む密猟者の船を追っていたハルヤとサトルは、その任務を完了した直後、とんでもない光景を目にしていた。
高速船アクア号が宙に浮いていたのだ。
かなり遠目だった上、その周辺の海域が巨大な渦潮によって航行が危険な状態であった。ポケモンレンジャーとしては調査すべきだったのだが、捕らえた密猟者を引き連れたまま調査するわけにもいかず、別動隊に引き継いでタンバシティに身を寄せた――、というのがこれまでの経緯だ。
「今はそいつらに捕まっていたポケモンを診てもらってるんだが……、まさかそんな危険なところに居合わせたどころか、渦中の存在だったとはな」
カズトたちの経緯も聞いたサトルは眉間に寄った皺を解していた。
「カズト、本当に体に異常はないか?」
「平気だって。ハル兄は心配性すぎ。オレよりもゴールドの方が酷いよ」
「ゴールドは無駄に丈夫だからな。心配してない」
「そこは心配しろよ!!」
「冗談だ。しっかり手当てしてもらえよ。何かあったらすぐ報告しろ。それから、クリスだったか? 弟たちが世話になったな」
「いえ! わたしも彼らには助けてもらったので……」
カズトの身体をペタペタと触って異常がないか確かめていたハルヤも、いつもやっていたゴールド弄りをする程度には落ち着いてきたらしい。少し蚊帳の外だったクリスにも声を掛けるなど、気遣う余裕も出てきた。
カズトがふと父親の方を見やると、子どもたちは大丈夫だと判断したのだろう、サトルは「治療中」のランプが消灯した扉の先を見つめていた。ちょうど治療が終了したのだろう。担当の女医がこちらに顔を出した。
「サトルさん、お預かりしていたポケモンはすっかり元気になりましたよ! ただ、人に対して警戒心が強いみたいです。気をつけてあげてください」
「ありがとうございます。そうか、やはり……」
顎に手をやり考え込むサトルの前には一匹のポケモンが座っている。
「父さん、そのポケモンは……?」
「例のポケモンハンターが密輸しようとしていたポケモンだ。奴らはシンオウからホウエンまで広く活動してる巨大な組織でな。今回はそいつらの取引の一つを潰した。中でも、このポケモンはシンオウから連れてこられたみたいでな。酷く消耗していたんだ」
青と黒を基調とした体色に、人型のしなやかな体と犬ポケモンのような精悍な顔つき。特徴的なのは耳元から垂れた大きな房のような器官だろう。
「リオルというポケモンだ。ここらでは勿論、シンオウでも珍しいポケモンで、コレクターからも狙われやすい」
「リオルか……」
カズトがリオルに手を伸ばした瞬間、リオルの耳元の房がふわりと浮かび上がった。目を開けたリオルはカズトの手を、払うことこそしなかったが、触られないようそっと手で拒否した。
「おいおい、カズトがポケモンに拒否されるとこなんざ初めて見たぜ」
「これでもマシな方だ。俺や父さんは手を伸ばしただけで威嚇されたからな」
「指示や提案には従ってくれるが、人間に対する不信感は拭えないようでな……」
非常に悪辣な環境に晒されていたことが容易に想像できる反応だ。どういう仕組みかは分からないが、サトルたちが悪人ではないことは理解してくれているので、治療などの提案には素直だったという。
「ポケモンをこんな風に扱うなんて、許せないわ……!」
「ああ。ポケモンを道具としか見てねぇなんざ、トレーナーの風上にも置けねぇヤツらだぜ」
「父さん、リオルはこれからどうなるの?」
ポケモンハンターに対する怒りを必死に静めながら、カズトは父に問いかけた。シンオウはジョウトから行こうと思えばかなりの距離だ。どんなに速いポケモンや乗り物を使っても半日は掛かる。現在のリオルの状態で元の住処まで帰しに行くのは、とてもじゃないが難しいのではないか、というのがカズトの考えだ。
「本来ならレンジャーユニオンの管理の元、シンオウ地方まで輸送することになるが、大勢の人間が関わる以上、リオルの心にはあまり良くない。……カズト、お前が連れて行ってやってくれないか?」
「え、オレが!?」
「最終的にはリオルの意志次第になるが、お前が最もリオルが心を開く可能性が高いと俺は睨んでいる」
たじろぐカズトだったが、その足元にはいつの間に移動していたのだろうか、リオルが立っていた。カズトと直接目を合わせることはなかったが、着いて行っても良いとリオルは言っているような気がする。
カズトがリオルの目の前に空のボールをかざすと、一瞥したリオルは開閉ボタンに手を当て、ボールに吸い込まれていった。
「じゃあ、よろしくな。えーと……、レイン!」
再びボールから出てきたリオルは人と一定の距離を保ったまま、先ほどと同様にカズトの傍に立っていた。そして房を浮かせ、何やら集中している。
「さっきからフワフワしてるけど、コイツぁなんだ?」
「何かの技……なのかしら?」
カズトが観察した所感だが、房は周囲の探知のために使っているのではないだろうか、それがフワフワと浮く時、リオルは目を瞑っている。
「俺も詳しくは知らないが、シンオウにいる隊員から聞いたところによると、リオルには"波導"というものを扱う特殊な能力があるそうだ」
「へぇ……。もしかしたら今も波導を使ってるのかな」
カズトたちがじっと見つめる中、いきなり目を開けたリオルは、ポケモンセンターの出入り口となっている扉に振り向いた。
「レイン?」
カズトが尋ねた直後、ポケモンセンターの扉が開かれ、大柄な男と、彼の相棒だろうニョロボンとオコリザルが勢いよく入ってきた。
「砂浜でのランニング中に、大雨に降られるとは。天気予報を見ておくべきだったか」
「あれは……」
「タンバジムリーダーのシジマ殿だな」
「んじゃあ、あのおっさんに勝てば、八つのジムバッジが揃うってことか!」
「もうゴールド! 失礼な言葉使わないの!」
「だぁ~もう、こまけぇことは気にすんなっての!!」
相変わらずゴールドとクリスは反りが合わないらしい。ある意味仲が良いとも取れるが、しばらくは距離感を掴むのにお互い苦労しそうだ。
「ジムバッジを集めているというのは、君か?」
ギャイギャイ言い合う二人をBGMに、そのシジマが声を発した。その声自体は大きなものではなかったが、明確に、カズトに向けられたものであった。
「はい。ただ、どうしてオレだと……?」
「俺は格闘家だ。相手の力量は見れば分かる。そっちの彼がそうかとも思ったが、これから八つ目をかけてとなると、既に少々強すぎるかと思ってな」
格闘家であることが、ポケモン勝負の実力を判断することに関係しているかは置いておいて、カズトとハルヤの正確な力量を一目で見抜いたシジマは、確かに一流のジムリーダーなのであろう。最後の対戦相手として不足はない。
「あの、シジマさん!」
声を上げるカズトを、シジマは手で制した。
「分かっている。ジム戦だろう? だが俺もポケモン協会から招集がかかっていてな。明日にもここを発たねばならん」
おそらく、オーキド博士が言っていたポケモンリーグでのジムリーダーによるエキシビションマッチに関わる招集が既にシジマにも届いていたのだろう。緊急での招集とのことらしいので、なるべく早くリーグへと参上するのは当然だ。
だが、それはすなわち、カズトとジム戦を行う時間がないとも言える。今日の晩はギリギリできるかもしれないが、カズトとポケモンたちの疲弊度合いを考えればベストな状況とは言えない。ベストコンディションで挑まなければ、ポケモンたちにも、相手のシジマにも失礼だ。それでも、今日を逃せばポケモンリーグまでに八つのジムバッジを揃えるのはほぼ不可能となり、道は断たれる。
「やっぱり今日無理やり――」
「三日だ」
「え?」
空元気だとしても、シジマと戦わなければならない。そう覚悟を決めたカズトの出鼻を挫くかのように、シジマの声が室内に響く。
「三日後、ここにいるニョロボンと戦ってもらう。最近は若手の成長に興味があってな。協会には事情を伝えれば大丈夫だろう」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし、使用ポケモンはそこにいる青いポケモンだ。君のポケモンだろう?」
「レインを……?」
シジマの提示した条件は、リオルでバトルすること。条件を付与される分にはカズトとしても構わないが、何故リオルを指名したバトルなのか、その理由はいまいち予想がつかない。
格闘家であるシジマのエキスパートタイプはおそらく「かくとう」であろうことから、格闘戦が得意そうなリオルを指名したのだろうか。
対戦日をあえて三日後にした理由も不明だ。カズトはシジマの説明を大人しく待った。
「そのポケモンは初めて見るが、見たところ、まだ人に対する警戒が強い。この三日間で共に修行をし、絆を紡ぐのだ。そして、二人で俺を倒してみろ!」
これはカズトだけに対する試練ではない。ポケモンとトレーナーが一体となることで得られる強さを証明するという、二人三脚の試練だ。
まだ互いをよく知らないカズトと、レインの名を貰ったリオルが一つの壁を乗り越えるための最初の一歩でもある。カズトの能力を見るだけでなく、同時にトレーナーとしての成長を促す方針の取り方に、シジマの教育者としての一面を感じた。
「まるで先生みたいだな……」
「先生か。だとしたら君は、俺の四年ぶりの弟子になるな。……忘れるな。ポケモンとトレーナー、共に強くなるのだ」
「分かりました! やろうぜ、レイン!」
リオルからの反応は返ってこなかったが、ほんの少し、彼の房が揺れたような気がした。
ネタバレ防止のためだけにサブタイにオコリザルを起用するというね。本文では一瞬しか出てきてないのにね……
ということで、カズトの最後の一匹はリオルです!
レイン(リオル) ♂
いじっぱりな性格 Lv.30
特性:せいしんりょく
覚えている技:不明
連載当時から20年後の現代で改めて書くポケスペに新鮮味を加えるため、別地方のポケモンを積極的に採用していますが、果たして良いフレーバーとして活かせるか……!?