SPECIALになるために   作:Zuiki

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第3話 VSヘラクロス

「昨日はありがとうございました」

「いいのよ。一人増えるのも二人増えるのも変わらないわ。またいらっしゃい」

 

 ゴロウがゴールドの母親と話をしているのを横目に、カズトは家に帰る準備をしていた。週に数回ある兄・ハルヤとの特訓があるからだ。

 この特訓はカズトが何度もハルヤに頼み込んで実現にまでこじつけたもので、最初は頑なに拒否されていた。ハルヤが、カズトの体調が悪化することを恐れてのことである。しかし、カズトはそれならばと一人でなかなか無茶な内容の特訓を行い始めた。これを見たハルヤは自分が見た方がまだ安全だと判断し、渋々ながらも一緒に特訓することを許可したのだった。

 ちなみに、ここまで全てカズトの計算のうちだったりする。策士なところは母親に似たのだろうか。

 

「そんじゃ、またなカズト!」

「うん、ゴロウもまたね」

「また研究所にも来るでやんすよー」

 

 商店街の方に行くらしい二人を見送ったカズトは、二人とは逆方向へ歩き始めた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「お、来たか」

「ハル兄おはよう!」

「おはよう。朝飯は食ったか?」

「うん。ゴールドの家で出してもらった」

 

 朝のとりとめのない会話をし、そこから山へ行くのが特訓する日の二人のルーティンである。

 そしてその際、ハルヤはキズぐすりを少し多めに持っていくようにしている。

 

 カズトはどうも、小さい頃の大半を病室で過ごしていたからか、外に出たときの加減がまだ上手くいかないようで、しょっちゅう怪我をして帰ってくる。

 これに関してはハルヤが事前にカズトを止めるべきなのだが、ハルヤもハルヤで熱くなると自らの傷も厭わなくなってしまうので、口煩く注意する資格は実はあまりなかったりする。

 つまり、似たもの兄弟なのだ。

 

「これだけあれば足りるだろ」

「それじゃあ出発だね」

 

 特訓は家の裏にある山で行われる。五分も歩けばたどり着く距離だ。

 

「へえ、そんなに沢山いたのか」

「うん。また忙しくなるでやんすーって言ってた」

 

 カズトが楽しそうに昨日の出来事を話す姿とは逆に、ハルヤは神妙な顔でその話を聴いていた。

 

「ハル兄どうかした?」

「いや、なんでもない」

 

 咄嗟に話を誤魔化したものの、ハルヤはその話が妙に引っかかっていた。というのも最近、この近辺で何かきな臭い動きをしている連中がいるという報告が寄せられていたからだ。その連中がウツギ博士の貴重な研究成果・資材を狙って襲いかかってくる可能性がある。

 幸いゴールドも一緒にいるらしいので、町中で強襲というのは考えにくい。あの少年の周りはいつも賑やかだ。何かに夢中になって荷物を放置したりしない限りは安心だろう。

 

「…今は考えるだけ無駄か」

「ハル兄、早く!」

「お、おう! すぐ行く!」

 

 ハルヤは何か嫌な予感を抱えながら、カズトの元へ走った。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 二人の特訓は基本的に実戦形式だ。ひたすらバトルをして、何か気になることがあればお互いに聞き合う。シンプルだが有効な手段である。

 現在は、カズトがタツベイ、ハルヤはヘラクロスを出して戦っていた。

 

「"ずつき"だ!」

 

 弾丸のような勢いでタツベイがヘラクロスへ迫るが、ハルヤは慌てずにヘラクロスに指示を出す。

 

「そのまま受け流せ!」

 

 何とヘラクロスは、向かってくるタツベイをギリギリまで引き付け、勢いはそのままに宙へ放り投げてしまった。

 空中戦となってしまっては、羽を持つヘラクロスが圧倒的に有利だ。そのことを今までの修行から身をもって理解しているカズトは、即座に次の指示を出す。

 

「"ひのこ"で迎撃するんだ!」

「"メガホーン"で突っ込め!」

 

 ヘラクロスの角にエネルギーが集中し輝いた瞬間、先ほどヘラクロスがいた地面が抉られた。ヘラクロスがその強靱な脚力を発揮し、上空のタツベイに突進をかけたのだ。

 むしタイプのヘラクロスにほのおタイプの"ひのこ"は通常の場合効果抜群だが、ハルヤの鍛えたヘラクロスは簡単には後れを取らない。エネルギーを帯びたヘラクロスの角は"ひのこ"をものともせず打ち消した。

 

「っ!マグナ、"かみつく"!」

 

 すぐに指示を変えるが、タツベイの牙が届くよりも先にヘラクロスの渾身の一撃が決まってしまった。空中で力の抜けたその体は真っ逆さまに地面に落下する。

 カズトは慌てて落下地点に向かうも、そこにはヘラクロスがタツベイを抱えてゆっくりと降りてきた。どうやらタツベイに一撃を入れた後、すぐにUターンしてタツベイが自由落下するのを防いでくれたらしい。

 

「ありがとうデルタ」

 

 デルタと呼ばれたヘラクロスは戦闘中とは打って変わり、気の良い笑顔をカズトに見せた。

 彼を始め、ハルヤの手持ちポケモンは基本的には温厚な性格をしている。だがハルヤや、彼ら兄弟の父親であるサトルと同じ正義感を持ったポケモンたちであり、悪事に対しては一際敏感になっている。

 世の治安が保たれているのは警察の尽力もあるが、彼らポケモンレンジャーによる力も大きい。

 

 閑話休題。

 

 この後も二人は手を変え品を変え、時にはハルヤがハンデをつけながら特訓を重ね、気づけば夕暮れ時に差し掛かっていた。

 お互いに疲れもたまり、このままでは満足な訓練は積めないとハルヤは判断し、今日は家に帰ることになった。その道中で今日のポイントをおさらいするのは毎回忘れずに行われていることである。

 今日のポイントはカズトは複数体に指示を出す際、判断に手間取り隙が生じてしまうこと、そしてその時にタツベイに頼りすぎてしまうことが挙げられた。複数でのバトルは最近練習を始めたばかりで指示出しなど、どうしても不慣れな部分が出てしまうのは仕方ないが、一体のポケモンにかかりきりになってしまうことは癖のようなものになっているため、このままではあまりよくないとハルヤは告げた。

 

「でもポケモンバトルって一対一でしょ? 複数で戦うことってないじゃん」

「確かに普通のバトルではそうだ。だが手段を選ばない相手にはそれは言い訳にしかならない」

 

 俺の仕事もそうだろ?と言うハルヤの言葉にカズトは納得した。

 ハルヤの仕事はポケモンを連れ歩かないポケモンレンジャーたちが一人では対応しきれない時、我を失った野生ポケモンや、大勢のポケモンハンターたちの攻撃を引き付けることが主となっている。それに聞けば、数年前カントー地方ではロケット団なる組織が悪事を働いていたらしい。そうした者たちがもしジョウトにもいたならば、自分たちにとっても対岸の火事ではなくなる。

 流石に考えすぎな気もしなくもないが、複数でバトルをする経験も無駄ではないだろうとカズトは結論を出した。それに何より、できないことが目の前にあるのだ。このまま逃げることもしたくない。真剣に耳を傾け、五分という短いが濃密な時間を兄弟で話し合うのであった。

 

 そしてその夜、サトルからウツギ研究所に泥棒が侵入しワニノコが盗まれたと知らされるのであった。




本格的に3章の内容に関わっていく主人公。転生ものではないので、あくまでも巻き込まれていく人間です。
「何で3章から?」という疑問もあるかと思いますが、これはあくまで僕の感覚なので特に理由はありません。強いて言うなら、時系列の関係ですかね……

まだまだ読みづらい文章が続きますが、ご容赦ください。
7話~8話ぐらいからまともな文章に変わっていると思います(当社比)。
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