SPECIALになるために   作:Zuiki

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第6話 VSイトマル

 旅に出て初日にして詐欺まがいのことをしてたおじさんを懲らしめるというかなり濃いスタートを切ったカズト。その後は何もなく二日目の朝を迎えたのであった。

 

「ん~~~っ」

 

 朝の日差しを目一杯浴び、一日をスタートするこのルーティーンはワカバタウンを出ても止めることはないだろう。何せこれをすると頭が冴えるのだ。相棒のタツベイとタネボーも一緒に光を浴びており、くさタイプであるタネボーは特に喜んでいるみたいだ。

 

「さて、今日は何かしら情報がほしいんだけど…」

 

 とはいえ昨日でポケモンセンターに宿泊していた人たちには粗方聞き終えてしまっているため、もうこの施設ではたいした情報は得られないだろう。

 そこでふと、ある人物に話を聞くのを忘れていたことに気づいた。昨日は旅に出ることでいっぱいいっぱいで考えられていなかったが、ゴールドにはゴロウがついて行っていたはずだ。というか寧ろ、ゴロウのおつかいにゴールドがついて行った形だ。ゴールドが音信不通ということで焦っていたが、ゴロウまで音信不通かどうかは不明だった。

 もしかするとという一縷の望みにかけて、ポケギアに登録されているゴロウの番号にダイヤルする。数回のダイアルの後、元気な少年の声が聞こえてきた。

 

『もしもし、カズトでやんすか? どうしたでやんす?』

「ゴロウ! よかった、無事だったんだ」

 

 ゴロウが無事だったことに安堵し彼から詳しい話を聞いたところ、どうやらウツギ博士に届ける予定だったポケモンたちが入ったバッグだと勘違いされてゴールドの家のポケモンたちが入ったリュックが誰かに盗まれたそうだった。リュックの中にゴールドのポケギアが入っていたため、彼の母親とは連絡をとることができなかったというのが事の次第のようだ。

 

「それで、その感じだとリュックは見つかったんだよね?」

『そうでやんす。リュックを見つけてくれたのはなんとあのオーキド博士だったでやんすよ!』

「オーキド博士ってあのオーキド博士?」

『あのオーキド博士でやんす』

 

 オーキド博士は昨日の雨で危ない状況に陥った二人を助けてくれたらしく、ゴールドにポケモン図鑑という機械を託したそうだ。ゴロウとゴールドはその場で別れ、ゴロウは一晩オーキド博士の研究所でお世話になり、現在ワカバタウンへ戻っている最中らしい。

 さらには、なんとゴールドが研究所襲撃事件の犯人と接触していたというのだ。その時、相手がオーキド博士の下から盗んだポケモン図鑑を持っていたこともゴールドが証言したと聞けた。モンタージュも作成したらしく、今から送ってくれるようだ。

 

「赤い髪に鋭い目、ワニノコを盗んだ上に図鑑まで…」

 

 追うべき相手の手がかりが一気に手に入ったため軽く拍子抜けもしたが、これからが本番で、この赤い髪の少年を追いかけなければいけない。

 

 情報をくれたゴロウにお礼を言い電話を切ったカズトは、引き続きポケギアから別の番号に電話をかける。

 

「……もしもし?」

『お~どしたカズト?』

 

 まるで何もなかったかのようにまぬけな声で電話口に出るその人物に理不尽だとは思うが怒りが湧いてくるのは間違っていないだろう。

 

「こんのバカゴールド!!」

『はぁ?!』

「人様の心配も考えろバーカ!」

 

 たった一日、たった一日だが消息不明になったことなど今までなかったのだ。心配するのは当然のことだろう。文句の一つでも言わないとやっていられない。

 

『ったく、悪かったよ』

「いいよ、分かってくれたら」

『でもよカズト、オレは――』

「戻らないんでしょ? ゴロウに聞いた」

『――あぁ、オレはシルバーのヤローをとっちめる。んで、バクたろうのためにもワニノコを連れて帰る!』

「バクたろう?」

 

 これまた驚くべきことに、ゴールドからワニノコと一緒に研究所にいたヒノアラシと共にいるとカミングアウトされた。何でも、ワニノコを奪われて怒っているから一緒に来た、とのこと。

 

 一周回って感嘆するくらいゴールドもヒノアラシも思い切った行動だ。一応一報は入れたようだが、それでも下手したらワニノコ同様、盗まれたと博士に思われるかもしれない。

 

「確かに、あの子割と直情的なタイプだったっけ……」

 

 研究所で面倒を見ていた時のことを思い起こしながら、ゴールドなら大切に育ててくれるだろうと納得する。何より性格が似ている。

 

『てなわけで、オレしばらくは戻らねぇから』

「うん、そのことなんだけど、オレもそのシルバーってヤツ追いかけることにしたから」

『なにぃ??』

「今はヨシノシティで情報集めてたところ」

 

 流石にこのことはゴールドにも予想できなかったようで、先ほどより数段真面目なトーンでカズトに話しかけてきている。今までの経緯も含めて説明すると彼は納得したようだが、それでも心配するような声は聞こえてくるので、やはりそうした部分で彼の人柄を感じ取れてつい笑顔がこぼれてしまう。

 

「大丈夫、ゴールドみたいな無茶はしないから」

『あ? もっかい言ってみろや』

「ははは」

 

 笑って誤魔化したところで今後の方針について軽く話してみたところ、手分けした方が効率がいいだろうという結論が出たため、しばらくの間の別れを告げポケギアの通話を終了したのだった。

 

「さてと」

 

 先ほどのゴールドとの会話の中で盗人の名前がシルバーだということ、そしてゴールドは今30番道路の辺りにいるらしいことが分かった。

 ヨシノシティから次の町に行くにはどうしても30番道路を通ることになるのは確定となる。カズトはゴールドがその地域周辺は大体調査するだろうことを鑑みて、できるだけ早く先に進むことにした。

 

 30番道路を越えるには少なくとも二日は必要なため、できれば野宿をせず、通りの途中途中にあるポケモンセンターで夜を迎えたい。

 野宿、つまりキャンプもゴールドやハルヤらとワカバタウンの裏山で何度もしたことがあるので心得はあるが、何が起きるか分からない上、元々病弱だった体のこともあるため極力避けた方がいいと判断した。

 あくまで"いのちだいじに"だ。

 

「地図によると、こことここにポケモンセンターがあるから……よし」

 

 もっとも効率よくかつ最短経路を導き出したカズトは必要な道具を確認し、満を持してヨシノシティを出発した。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ヨシノシティを出発してから数時間ほど進んだところ。現在カズトは虫取り網を持って木々の隙間を歩いていた。

 

「お兄ちゃん見つけた~?」

「まだだよ~」

 

 カズトが虫取り網を持っているのにはとある理由があった。

 カズトよりも年下の少年が狙っていた、とあるポケモンを結果的にだがカズトが逃がしてしまったのだ。わざとではないとはいえ、自分のせいで少年に悲しい思いをさせてしまったのは申し訳ないということもあり、こうして彼の捕獲に同行しているというわけである。

 

 現在二人が探しているのはイトマルというポケモンで、体が全体的に緑色に近いため見つけるのに難儀していた。

 

「どこに行っちゃったんだろ…」

「ただ歩き回るだけじゃ駄目かもね。作戦を考えよう」

 

 なかなか見つからないということもあり、二人は休憩を兼ねてどうやってイトマルを見つけ出すかを考えることにした。日頃から"むしポケモン図鑑"を読んで勉強しているという少年によると、イトマルは巣に獲物が引っかかったとしても夜になるまでじっと待つ習性があるようだ。

 

 そうした点からカズトはイトマルは夜行性のポケモンであることを予想。昼間は滅多に姿を見せないポケモンで、そのため明るい時間帯は木の陰などにいるのではないかと考えた。

 

 そこで陰になっていてかつ巣の張りやすそうな地形を厳選し、そこを集中的に探索することにした。手持ちのポケモンたちにも手伝ってもらい何カ所か当たっていると、不自然に光が反射する場所があるのを発見する。

 

「あれ、イトマルの巣だよ!」

 

 どうやらイトマルの張った巣の一部が太陽の移動につれて日向に出てきたようだ。

 

「シード、あの木に"たいあたり"だ!」

 

 イトマルがいると当たりをつけたカズトはタネボーに指示を出し、自身は虫取り網を構える。

 それはもう勢いよく木にぶつかったタネボーにより木は大きく揺れ、葉や枝、きのみなどを落とす。そして予想通り、その影に紛れて一匹のイトマルがボテッと落ちてきた。

 

「そこだ!」

 

 すかさずカズトが網を振り下ろすも、意外にもイトマルは素早く回避し、体にある顔のような模様を見せて威嚇の体制をとってきた。

 イトマルのそのような様子を見たカズトはすぐに逃げられることはないと判断し、タネボーに指示を出す。

 

「"タネマシンガン"!」

 

 無数の種による弾幕が襲うが、イトマルは口から糸を出し向かいの木に絡ませると立体機動でその場を脱出した。あっという間にタネボーの背後を取ったイトマルは続けて"どくばり"での攻撃を放つ。

 

「左へ躱せ!」

 

 辛くも直撃を避けたが、あまり時間をかけすぎれば糸を使う分、地形的に有利なイトマルよりもこちらが早く消耗してしまうとみたカズトは短期に決着をつける方向へシフトする。

 

「一気に距離を詰めるんだ!」

 

 今度はイトマルが回避する隙を与える前に接近に成功。そこから一斉攻撃に入る。

 

「"おどろかせ"て"タネマシンガン"!」

 

 突然の接近にひるんでしまったイトマルは続く"タネマシンガン"を前に何もできなかった。至近距離からその小さい体に全弾クリーンヒットし、そのまま反撃する間もなく力尽き地面に倒れ伏した。

 カズトはすぐさまそのイトマルをボールに収め、ついでに落ちてきたきのみも回収すると唖然としている少年にイトマル入りのボールを差し出した。

 

「はい、どうぞ」

「あ、ありがとう。お兄ちゃんすっごい強いんだね」

「いや、オレなんてまだまだだよ。君も慣れればすぐにこれぐらいできるようになるさ」

 

 褒められて嬉しくないわけはないが、率直に持ち上げられるのは苦手なため、カズトは若干の気まずさを感じて少年から顔をそらす。

 返してもらった網を手に笑顔で去って行く少年に手を振り返して別れに答え、自分も本来の目的地へ赴くべく大通りに戻り、再び歩みを始める。

 

 先ほどはああ答えたものの、自分にも確実に強さは身についてきていると感じているのは確かだ。その感覚を胸にカズトは歩みを続け、目標としていたポケモンセンターの扉をほんの少し自信を持ってくぐるのだった。




今回の話に関しては設定も含め完全にオリジナルですね。
町と町の距離なんかは、現実の近畿地方やゲームのジョウト地方のマップを見比べつつ、徒歩でどれくらいの時間がかかりそうか、軽く縮尺したり誤魔化したりしながら計算しています。

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設定

マグナ(タツベイ)Lv.14
性別:♂
性格:やんちゃ
特性:いしあたま
覚えている技:ずつき、かみつく、ひのこ、りゅうのいぶき

シード(タネボー)Lv.12
性別:♂
性格:せっかち
特性:ようりょくそ
覚えている技:かたくなる、たいあたり、おどろかす、すいとる、タネマシンガン

二匹ともカズトがジョウトに来る前からの手持ちポケモン。
アケミがブリーダーとしての仕事の一環で孵したポケモンたちで、二匹が真っ先にカズトに懐いたため、そのままカズトのポケモンとなった。
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