私には二人の親友がいる。
一人は従者として仕える家系の女の子で、もう一人は小学校の頃に出会った優しくて何でも出来る女の子だった。更識家の全権を握ろうとする分家の人に私達が誘拐された時、ちょっとしか話したことのない彼女は分家の人の屋敷へ一人で突入してきた。
私は彼女が一方的に飛んでくる銃弾の中を最短距離で駆け抜け、銃器を使えないようにスライドを引き抜いて無力化する光景をモニター越しに見ることしか出来なかった。
ナイフや警棒を振るう大人の腕をへし折り、顎を蹴って気絶させる彼女は格好良くてドキドキと心臓が速くなるのを感じた。
たぶん、本音もおんなじだと思う。
更識家は護国のために数多の教育を施すとお父さんが言っていたけど。私は実家でも分家でも彼女より強い人を見たことはない。
ただ、私を庇って彼女が心臓を撃ち抜かれた時は例えようのない"なにか"が押し寄せてきた。血を吐く彼女のことを蹴ろうと近寄ってきた分家の人は気が付くと呼吸することが精一杯になっていた。
あの時のことを本音に聞いても「かんちゃん、知らなくて良いこともあるんだよ?」と言葉を濁すだけで彼女に至ってはお父さんの独断で人間と機械の中間のような生物へと作り替えられ、定期的に自己修復用ナノペーストを摂取しないと死んでしまう身体となり、
「ムッちゃん、今日はなにしようか?」
この感情を表に出してはイケない。
それでも彼女は私のことを受け入れると思う。
彼女は更識家の次女ではなく更識簪として私のことを見てくれる数少ない人で、私や本音の大好きで絶対に離したくない大切な人だから織斑一夏なんかに固執する連中には近付けたくない。
「ねえねえ、人生ゲームしよおぉ~っ!」
私は本音の持ってきたレトロな人生ゲームよりテレビゲームとして有名な人生ゲームを二人にオススメする。本音は「かんちゃんのオススメは面白いから良いよぉ~っ!」と承諾してくれ、彼女は何も言わず三つ目のコントローラーを握って有望株の新人社員を選択した。
ちょっと姑息な手段を取るところも好き。
ただ、あのキャラを選んでも最良とは違ってストレスや鬱を発症してしまうことが多いシビアな人生ゲームだ。
「ムッちゃん、社長へ駆け上がれるかな?」
「たぶん、無理じゃない?」
私達は入社一年目で社長を殴り飛ばす選択を選んだ彼女の人生ゲームのキャラのことをコソコソと話し合おうとするが、現実と同じで彼女は嫌いなものは嫌いと言い切る。
たぶん、あのキャラはクビだ。
そんなことを考えていると彼女のキャラの所属する会社で社長の汚職発覚によって彼女のキャラが社長へ成り上がった。
この人生ゲームは秋葉で買ってきたモノだけど、ここまで変なシステムを持ち込むとは思いもしなかった。しかし、彼女の豪運には科学では説明できない得体の知れないモノを感じてしまう。
「簪、お前のキャラを貰うぞ…」
「え?」
唐突に話し掛けてきた彼女の言葉を聞いた瞬間、私のキャラと彼女のキャラが結婚した。ま、まあ、良いんじゃない?なんて思いながら彼女のことを見ようとしたら本音が頬をリスのように膨らませて拗ねていた。
「(ムッちゃんは略奪愛には靡かないわよ?)」
「(かんちゃんだからってあげないもん!)」
本音とアイコンタクトで話すのも日常茶飯だ。
彼女はポチポチとボタンを押しながらゴールまで最短距離を選んでいる。私達と過ごしているのに、彼女は平然としていることが多い。
私達は彼女と話すだけで胸が苦しくなるのに不公平だと思うんだけどな。