とあるヒモノ女の憂鬱。   作:SUN'S

2 / 21
第2話

◇月>日

 

早朝、私は武道館にて更識簪と拳を交わしていると織斑千冬に引きずられて織斑一夏がやって来た。更識簪は謝罪は受け取ったと言っていたが、どうにも彼のやる気の無さが気に入らない。

 

私の言葉を聞いて詰め寄ってくる織斑一夏の腕を弾きあげ、高速の拳撃を叩き込んで武道館の壁際まで吹き飛ばす。口先ばかりの男など使い物にすらならないと織斑千冬に告げ、起き上がろうとする織斑一夏へ未使用のタオルを放り投げる。

 

自分の欠点を突かれて「怒りに我を忘れる」ことを無くすように言い聞かせるのは誰に出来る。しかし、その男を支える矜持を見付けねば鍛えることすら不可能だ。

 

茫然と武道館の中を出入口で見詰めている織斑千冬の真横を通り過ぎる瞬間、私は「ヤツには期待するだけ無駄だ」と伝えておいた。

 

武術経験者の織斑千冬ならば言葉の意味を履き違えることはないだろうが、織斑一夏は明らかに数年間は武術と無縁な生活を送っている。

 

先ずは平常心を身に付けることをオススメしよう。なにしろ、この学園に通っている者の半数は先程の拳撃を止めることが出来る。

 

だいたい、私の拳法を教えるつもりはない。

 

◇月Ч日

 

布仏本音と話しているところへ織斑一夏がやって来るなり、土下座しそうな勢いで「武術を教えてくれ!」等と言ってきた。

 

先日の拳撃を受けて可笑しくなったのか?なんて思いながらも布仏本音を見ると「おっけー」と勝手に承諾していた。私の許可を得ずに弟子入りを許可するのは止めてもらえるだろうか?

 

私は布仏本音の頬っぺたを引っ張りながら言い聞かせ、これから反省するまで飴玉を渡すことはない。布仏本音に言うと「うぅ、ごめんねぇ…」と言いながらすり寄ってきた。

 

べつに抱き着くのは構わないが、私のポケットから飴玉を盗み取ろうとするのはやめような。オレンジ味の飴玉を布仏本音の口の中へ押し込んで離れるように言うと「もう一個ちょ~だい?」等と服の中へ手を入れてくる。

 

この性格は治さないと大変なことになりそうだな。そんなことを考えていると篠ノ之箒が木刀を振り回しながら織斑一夏を追い掛けているのが見えた。

 

まだ、この前のことを反省していないのか?なんて思いながらも喚き散らしている篠ノ之箒の口の中へ向かって飴玉を弾き入れる。これは更識簪と共に会得した真庭忍法撒菱指弾というモノだ。

 

彼女は私並みの知識量だと思うが、マイナーなモノまで知っている訳ではなかった。ただ、共通の趣味を持った友人がいると嬉しかったりする。

 

面倒なことに巻き込まれることもあるが…。

 

◇月Ш日

 

早朝、私は武道館にて嫌々ながら織斑一夏と向かい合うように構えている。更識簪と布仏本音は審判の役目をすると言っていたが、剣胴着を着ている織斑一夏へ対する不満はないのか?

 

確かに剣道の防具は多少の衝撃を防ぐことは出来るが、私の振るう拳打は鋼の柱を曲げることが出来るのは知っているはずだ。いったい、どういうつもりで防具を着けるように言ったんだ。

 

私は両腕を上下水平に保ち、頭の横辺りに腕を持ち上げる。これは私の会得した拳法の中では最速の拳撃だ。なにしろ、この技は好敵手である更識簪を倒すために導き出したモノだ。

 

大きな足を開くような踏み込みを行う織斑一夏の動きに合わせて詰め寄り、高速の拳撃を頭部から腹部まで一瞬の隙を作ることもなく打ち込み、トドメの左突きを剣道の面へ向かって放つ。

 

しかし、予想していたとはいえ拳撃を受け流すことも出来ず、一方的に殴られているだけだな。

 

だいたい、なぜ、織斑一夏は織斑千冬の動きを真似しようとしていた。男女の体格や筋肉の大きさを考えれば不可能だと分かるはずなんだが…。

 

そんなことに興味はないが、この山吹色の波紋疾走でお前を仕留めた時、私は最強の拳士として更なる高みへ歩むことが出来る。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。